俘虜記

俘虜記

小説・文芸
990円 (税込)

4pt

著者の太平洋戦争従軍体験に基づく連作小説。冒頭の「捉まるまで」の、なぜ自分は米兵を殺さなかったかという感情の、異常に平静かつ精密な分析と、続編の俘虜収容所を戦後における日本社会の縮図とみた文明批評からなる。乾いた明晰さをもつ文体を用い、孤独という真空状態における人間のエゴティスムを凝視した点で、いわゆる戦争小説とは根本的に異なる作品である。横光利一賞受賞。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    俘虜記
  • タイトルID
    :
    254253
  • 電子版発売日
    :
    2014年04月04日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    2MB

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俘虜記 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    敗北がもたらす堕落を端的に示した作品で,まさに戦後文学を代表するものと言える。これぞ去勢だなと。後半になるにつれてユーモアが増して弛緩していくにつれ,前半の不殺のテーマが張り詰めるといった構成を感じた。

    0
    2023年08月31日

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争。フィリピンのミンドロ島へ出兵した筆者。そこで米軍に捉えられ捕虜となる。その体験を記した本書。殺せたはずのアメリカ兵をなぜ撃たなかったのか?なぜ自殺ができなかったのか?その問いをつぶさに、自分自身にぶつける誠実な手記。

    0
    2023年07月11日

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争後に"戦後派"と呼ばれる作家が登場しました。
    その内、一般的に、戦争体験を通して感じたことや、その意味を論じる文学者たちを第一次戦後派と呼び、戦争体験如何に依らず、戦前の文士たちによって培われた小説技巧を昇華させ、新たな手法を取り入れることで優れた小説を生み出していった作家たちを第二次戦時派と呼びます。

    大岡昇平氏は、第二次戦時派として真っ先に挙げられる作家だと思います。
    本作『俘虜記』は、氏の戦争体験を元に書かれており、小説というよりも体験記に近い内容です。
    ただ、他の戦争小説とは異なり、戦争の理不尽の中に置かれた人間の感情吐露などの批判や訴えかけを行っているものではなく、ユーモラスでシニカルな内容になっています。
    文章は堅苦しくなく、読者に読んでもらうことを念頭に書いているような感じがありました。
    今の大衆小説に通じるサービス精神のようなものが感じられ、そういったところが第二次戦時派として第一次と分けられる部分だと思います。

    米軍俘虜(=捕虜)になった主人公・大岡が、俘虜収容所の様子を思うままに書いたような作品です。
    大岡は比島のミンドロ島で作戦行動中、米軍兵士に捉えられ、俘虜として連行されます。
    米軍の姿は大岡が先に見つけていたのですが、彼を撃たなかったことに関する心情描写がリアルで是非読んでいただきたい箇所です。
    その後、マラリア治療のため野戦病院に入り、俘虜収容所で同じように連行された俘虜たちとの生活が描かれます。
    そこでの生活は制限された食事、虐待に近い米軍兵士の扱い、病に冒されても治療はされず、生きたまま腐っていく仲間たちの姿が待っている、わけではなく、条約に基づいて丁重に扱われた、それなりに人間らしい日々が描かれるものとなっています。

    戦争文学というと、生き地獄のような行軍や、銃弾行き交う凄まじい戦場を駆け巡る戦争ドラマを想像しますが、本作で描かれるのは、食事は残飯が出るほど与えられ、俘虜にも仕事を与えられ給金も発生し、芸術も培われや遊戯も行われる、想像していた戦争中とはちょっと違う内容です。
    これはこれで一つの真実だと思いましたが、戦争が終了した後とはいえ、この内容を出版するのは大胆というか、当時、批判があったんだろうなと思いました。
    ただ、切り取られた空間に押し込められた人々の本来の姿があぶり出されていて、文明批判のようなものを感じました。
    また、作中の大岡は戦争に負けることはもはや自明であると途中で考えていて、天皇制に対する思いのようなものも書かれています。
    そういった点で、広く一般的に読みやすい小説でありながら、これからの社会の旗振りを担おうとする、第二次戦後派の文学的傾向が感じられます。

    俘虜になってから日本へ帰るまでの、大岡昇平が経験したタイトル通りの"俘虜記"が、装飾されずに淡々と詳細に書かれています。
    結構厚く、通読には根気が必要と思いますが、戦争ものとして紛うこと無き名作です。

    0
    2022年01月25日

    Posted by ブクログ

    大岡昇平さんの小説はテレビドラマを見て読んだ「事件」以来かな。俘虜の心理を自ら分析してみせるくだりが秀逸です。俘虜となってから日本に帰るまでが描かれているのでけっして楽しい展開ではありませんが、戦時中の日本人の考え方など理解できました。

    0
    2015年07月18日

    Posted by ブクログ

    『野火』以来の大岡作品を読もうと思って本作をチョイスしたら、結果的に戦後70年にふさわしい読書となった。まずはこのタイミングで読めたことを喜びたい。さて、肝腎の内容についても、もちろん優れているのだが、なかでも白眉は冒頭の「捉まるまで」。著者が米兵と遭遇し、なぜ銃を撃たなかったかについて冷静に考察している。もちろんのちほど「潤色」した部分も多少はあるのだろうけど、戦時下の前線において、生死のはざまを前にして繰り広げられる「哲学」には、月並だが考えさせられるものがある。その他の部分も示唆的な内容に満ちていて、あまり注目されにくい俘虜というものの存在について、あるいはもっと広く日本人というものについて、そのすべてを浮き彫りにしている。負けたのもさもありなんという気がする。また、単なる文学としてのみならず、貴重な戦争の資料としても眼を瞠るべき部分は多い。捕虜の扱いはハーグ陸戦条約で明確に定められているが、そのことについて触れたくだりもあって、当時からすでにそのことが意識されていた――つまり、それに背く扱いがなされた場合は、意図的に条約を無視していた――ことがわかるし、また、いまだに論争のやまぬ「南京事件」についても、もちろんそれをメインに描いた小説ではないから多くは語られていないが、南京占領のさいに旧日本軍においてなにかしらの残虐な行為があったという記述もあり、この時期ですでにそういうウワサが広まっていたことを考えると、ネトウヨの一部にみられるような事実無根という主張は無理筋であることもわかる。わたしはふだんから歴史認識問題についてもある程度関心があるので、その点からいっても本作を読むことができてとてもよかったと思う。

    0
    2015年04月15日

    Posted by ブクログ

    著者がフィリピン・ミンドロ島で従軍し、収容所で日々を過ごした頃の記録。
    鋭い人間観察と心理描写。
    緊迫した塀の外とは裏腹にコミカルに描かれる収容所内部の様子。
    多彩な人物が織り成す一種の密室劇は純粋に面白く、ページをめくる手が止まらなかった。
    一小隊が飢えのあまりにフィリピン人を撃って喰おうとして、逆にアルミ缶をドンドン叩かれて集まった仲間にグルグル巻きにされて米軍に突き出されるシーンと、田辺哲学を信奉する学生との煙草の箱をめぐるやり取りが特に好き。
    あと自ら投降した兵士達のエピソードの数々。

    0
    2013年08月09日

    Posted by ブクログ

    久々にものすごく時間をかけて読みました。

    戦場での強姦に関する場面など(従軍看護婦なのに実際は従軍慰安婦という感じの、ということや)は正直吐き気がしましたが。

    うまく感想がいえません。こういう戦争モノを読むと何も言えません。

    0
    2010年08月01日

    Posted by ブクログ

    これは小説?「野火」の方が有名な気がするし、野火の方が小説らしい形。でも、私には俘虜記の後になぜわざわざ野火を書いたのか分からない。文体も内容も完成度が高いと思う。いや、ぜんぜん別物なのかもしれないが・・・。

    0
    2009年10月04日

    Posted by ブクログ

    読むのに時間がかかる。表現が難しい。難しい心理描写は読み飛ばした。南方へ行かされた兵士たちは何も戦わないまま無駄になくなった人がほとんどだったと理解した。なぜにこんな馬鹿な戦争をしたのか?また日本人は集団になるとなぜに非人間的なダメ組織を作るのか?また米国の人権意識の高さにも驚かされた。捕虜となってしまった人たちが本国にいる人たちよりもまともな生活ができたという皮肉。あまりに人命軽視。「60隻を持って上陸した米軍に対する150名の切り込み隊の成果について、我々は何の幻想も持っていなかった」

    0
    2025年12月18日

    Posted by ブクログ

    ちょっと古い時代の方の本なので文体が読みづらい。戦争の悲惨さと俘虜生活のいたたまれなさ、ちょっとおかしいエピソードなどが綴られる。時間をかけて読みました。こういう本を読むとつくづく今は幸せだと感じます。

    0
    2025年06月19日

俘虜記 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    新潮社
  • 掲載誌・レーベル
    :
    新潮文庫
  • タイトル
    :
    俘虜記
  • タイトルID
    :
    254253
  • 電子版発売日
    :
    2014年04月04日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    2MB

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