靴の話 大岡昇平戦争小説集

靴の話 大岡昇平戦争小説集

小説・文芸
495円 (税込)

2pt

3.4

太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。戦争の中での個人とは何か。戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。

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靴の話 大岡昇平戦争小説集 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    大岡昇平は名前だけ知っていて、今回はじめて読む(と思う)けど、最初の短編の数ページを読んだだけで、非常に優れた文学者であることに気付いて、もっと早くに読んでいたら良かったと後悔した。

    大岡昇平って中原中也と同世代だったんだ。びっくりするわ。

    大岡昇平のいた部隊では、交戦ではなくマラリアでどんどん人が死んでいった。薬さえあればほとんど犠牲者の出ない病気で、一日に三人も亡くなるなんて、戦時中とはいえ大変なことだ。

    0
    2023年11月11日

    Posted by ブクログ

    大岡昇平の戦争小説は前から読みたいと思ってたけど、読んでみたら期待通りの面白さだった。
    戦時下の戦場の日常なんていう戦争体験者しか書けない場面をとても面白く描き切っててとても読み応えがあった。今後時間があれば「野火」などにも手を出したい。

    0
    2011年07月10日

    Posted by ブクログ

    「大岡昇平」の戦争小説集『靴の話―大岡昇平戦争小説集』を読みました。

    『野火』に続き「大岡昇平」の戦争小説です。

    -----story-------------
    太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。
    自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。
    死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。
    戦争の中での個人とは何か。
    戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
    -----------------------

    自らの体験が色濃く反映された出征、戦闘、捕虜生活が描かれた作品なので、小説というよりは、戦記や戦争体験記という感じでノンフィクション作品に近い短篇集でしたね、、、

    以下の6篇が収録されており、語注や解説等も充実した作品でした。

     ■出征
     ■暗号手
     ■襲撃
     ■歩哨の眼について
     ■捉まるまで(原題:俘虜記)
     ■靴の話(原題:靴と食慾)
     ■語注 池内輝雄
     ■解説…時代を見つめる者 池内輝雄
     ■鑑賞…優れた小説を「鑑賞」してはいけない 村上龍
     ■年譜 池内敏雄

    『出征』は、中年(30歳代)の「私」が兵士として招集され、敗戦の色濃いフィリピンに輸送されるまでのことを描いた作品、、、

    無謀な戦争に巻き込まれ、抵抗もままならない一市民の姿が浮き彫りにされる物語でした。


    『暗号手』は、フィリピン・ミンドロ島南端のサンホセで、中隊の暗号手として勤務する「私」と、もう一人の暗号手となった「中山」という兵士との関係を描いた作品、、、

    「中山」は暗号手となったことをきっかけに上官たちに取り入り、自身の地位を上げることに成功… 「私」との関係は逆転してしまうが、それが「中山」の死を早めることになったという皮肉な物語でした。


    『襲撃』は、一人の衛生兵がゲリラに襲われて重傷を負い、「天皇陛下万歳」と言って死んだことを描いた作品、、、

    「天皇陛下万歳」は、日本人教育ですり込まれた「型」にすぎないと解説しつつ、普段いばっている軍曹が、襲撃を受けた際に真っ先に逃げがしてしまったという、前線での格好悪い実態が描かれた物語でした。


    『歩哨の眼について』は、敵の動きを見張っている歩哨のことを描いた作品、、、

    エッセイ風の短篇で、歩哨の風景の見え方や倫理状態を描きつつ、力ない一個人と進むべき道を誤った国家・社会が描かれた物語でした。


    『捉まるまで』は、昭和19年8月以来ミンドロ島西部南部の警備隊にいた私が、米軍の捕虜となるまでを描いた作品、、、

    マラリアに倒れ、部隊から置き去りにされ、山中で単独行動をせざるを得なくなった「私」は、遂にアメリカ兵を目にするが、銃を射つことはなかった… 自殺への思いと、喉の渇きとの戦い… そして、不発だった手榴弾… 知らず知らずのうちに運命が生存へ転がっていく姿を描いた物語でした。


    『靴の話』は、粗悪品のゴム底鮫皮の軍靴に関するエピソードから、欠乏(必要)のあるところだけに事実が生じることを描いた作品、、、

    マラリアで死んだ同年兵「松本」の持っていた新品の軍靴を、彼が死んでから手に入れることに成功するが、私もマラリアで倒れてしまい、軍靴が今度は同じ小隊の仲間に狙われていることに気付く… というブラックユーモアたっぷりの物語でした。


    派手さはないですが、心に染み入るような作品ばかりでした、、、

    戦争という大きなうねりの中で、もがいても抵抗できず、飲み込まれていく一市民の気持ち… 生とは、死とは… 考えさせられましたね。

    0
    2022年11月11日

    Posted by ブクログ

    昭和19年、35歳で召集。
    <私は改めて周囲の米兵を観察し始めた>
    捕虜となっても、冷静な姿勢を崩さないことに驚く、「捉まるまで」から。
    表題作「靴の話」は、ゴム底鮫皮の軍靴は脆く、山中の逃避行でダメになる。
    死んだ僚友から靴を奪いそれを履くというもの。
    <こういう脆い靴で兵士に戦うことを強いた国家の弱点だけが「事実」である>
    戦争の愚かさを淡々と語る。
    それだからこそ、読んでいて怖くなる。
    私は初の大岡昇平さん。
    いくつになっても、知ることは大切だと実感する。

    0
    2018年04月30日

    Posted by ブクログ

    食わず嫌いで読んでいなかった大岡昇平。
    偏見なんだが、軍隊の悪口のオンパレード、何もかも軍のせい、っていうのかと思ってた。
    私の方が偏ってたわけである。

    なんでこうも冷静なのか。
    兵隊になったり、一般人になったりする瞬間が右往左往する「捉まるまで」
    戦争に行くとき、作家の仲間に「経験じゃなく魂を書け」と言われたのだっけ、生きて帰ってきたら。
    そのとおりにしたのだなぁ。

    今まで読んできている手記は、現役兵とか軍人が多くて、勉強になった。
    別の視点からの、戦争の記憶だろう。大事にしていかなければならない。

    0
    2018年01月30日

    Posted by ブクログ

    人生は運命によって定められているものではなく、その時の偶然の積み重ねでできているということを大岡昇平から学んだという友人の言葉に興味を持ち読んでみる。短い間短編集が、どれも戦争という大きな幕の中のそれぞれの出来事を書いている。出征から捕虜になるまで、色んな戦争の形がある。渇き、飢え、マラリア、襲撃。戦争というものにシニシズムな視点を持ち、現場の状況や心理に対して非常に冷静な分析力を発揮し、ガリガリと鉛筆で原稿用紙に出来事を刻んでいる様がうかんでくる。これを書くとき、とてもまともじゃいられないのではないかと思うのだが、さめた温度の文章がリアリズムを強く感じさせる。

    0
    2016年08月08日

    Posted by ブクログ

    「野火」で初めて大岡昇平の作品を読み、壮絶な戦争体験の中での兵士の心理状態、とりわけシニシズムを余儀なくされる戦争の不条理が、深く心に刻まれた。
    それと比較するとこの「靴の話」(特に前半)は決して読みやすくはない。しかし本書は、出征前の兵士の心理状態や戦線外での日常生活について知ることができる貴重な書である。私たちは戦争のことを思うときはつい戦線のことばかり想起するが、敵軍やゲリラとの銃撃はほんの一部であり、兵士たちが専ら苦しんだのはマラリアや渇きであったことから、異国の地へと送られた先でも「生活」があったことを改めて実感させられた。
    最終章の「靴の話」は、死者の靴を奪うチャプター。靴の有無が精神の衛生状態を左右し、不当な靴の入手で良心が揺さぶられる。人間の尊厳が靴に上手く投影されており、大岡昇平の冷静すぎる分析力に、読み手としては一種の悲しさややるせなさを抱かずにはいられない。
    本書で書かれていることは「戦争」の中だけの話ではない。「死を意識した生活」は何も戦時中だけではなく、現代社会でも起こりうる。村上龍の解説(インフォメーションとインテリジェンスについて)は見事だと思ったが、本書を読んで「リアルな危機感を持つ」ことができない人間はインフォメーションで満足し人生を終える、という見解には脱帽した。

    0
    2016年03月21日

    Posted by ブクログ

    大岡昇平が実際にどのようにして捕虜になったのかわかる。分析がすごい。自分の心理状態はもちろん、哲学的な思考にいたるまで。さらに周囲の人間の感情、感覚をするどく見ている。
    ここから「俘虜記」「野火」などの心を打つ作品が生まれているのだなぁと感じた。まさに、後世に伝える義務を負っているがために、神か仏かが「生かしておいた」ような雰囲気がある。

    0
    2012年07月24日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    戦争経験者の小説家、大岡昇平自身のドキュメンタリー小説

    戦争経験者かつ小説家なのでリアリティーが凄い
    空想ではなく経験談なので読書というより勉強に近い、戦争経験者の話を聞くよりこの本を読んだ方が伝わると思う
    村上龍さんのあとがきもとてもいい

    0
    2025年05月22日

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