講談社文芸文庫の検索結果
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自伝の世紀
文学の長い歴史のなかで成長を続けた小説ジャンルといえども、20世紀になるとその地位がゆらぎ、あたかも生命体のごとくに、老化衰退の様相を呈し始める。その間、自伝ジャンルは、「私」のイメージの拡大とともに、目ざましい急成長をとげる。本書は、自伝ジャンルこそ20世紀文学の中核的位置を占めるものである、という主張を基軸に執筆された、著者畢生の自伝論である。芸術選奨受賞作。 -
猛犬 忠犬 ただの犬
こよなく動物と自然を愛し続けた著者の自伝的小説。少年から青年へと成長していく過程でさまざまな犬との出会いと別れを綴った作品。……「動物文学」というカテゴリーを確立し、国民の支持を得た戸川幸夫の原点ともいうべき自伝的小説。もの心つく前から動物好きであったという著者が、さまざまな気質の犬と育った幼い頃から、運命的な犬との出会いをする旧制高校時代までを、愛情を持った動物への的確な観察眼で描き切る。それは犬への鎮魂歌であるとともに、おのれの成長の証であった。動物文学の第一人者が犬と語り続けた自伝的小説。 -
伊東静雄
萩原朔太郎が「日本に尚一人の詩人がある」と激賞した伊東静雄の第一詩集『わがひとに与ふる哀歌』。その詩群に魅了された著者が伝記的通説を排除し、註釈に徹した画期的詩人論。『哀歌』全篇に用心深く隠された連繋を、「私」と「半身」というふたりの擬作者に割り振り、『古今和歌集』、ヘルダーリンの詩、セガンティーニの絵に範例を求めつつ詩人の「意識の暗黒部との必死な格闘」を読み解く。 -
日本の家郷
長谷川利行のデッサンが想起させた、著者自身の家郷――。 川端康成や富岡多恵子、徳田秋聲、永井荷風などの作品と、家郷を求めて彷徨する「くらさ」の関係を読み解く第一章。 「みやび」の連鎖が「日本」を形作ってきたと説く第二章。 「日本」とは「現実」ではなく「空無」と向き合う時にのみ「日本」だとする第三章。 日本文学の本質を画期的な手法で抉出することを目指した、第六回三島由紀夫賞受賞の鮮烈な文芸評論集を、著者をよく知る元編集者による解説と教え子による年譜と著作一覧を付して文芸文庫に収録。 -
溶ける街 透ける路
――わたしの旅は言葉の旅でもある。多言語の中を通過しながら、日本語の中をも旅する―― 「エッセイの元祖」モンテーニュ縁のサンテミリオン、神田神保町を彷彿させる「本の町」ヴュンスドルフ、腕利きのすりが集まるバーゼル、ヘルダーリンがこもったチュービンゲン、エミリー・ディキンソンが生涯過ごしたアマスト、重い記憶を残すアウシュヴィッツ。ブダペストからリガ、アンマンまで、自作の朗読と読者との対話をしながら世界四十八の町を巡り、「旅する作家」が見て、食べて、出逢って、話して、考えた。心と身体を静かに揺さぶる、五十一の断章。 -
石の来歴 浪漫的な行軍の記録
現実と非現実の交錯を描く芥川賞受賞作。石に異常な執着を示す男の人生。長男の死、妻の狂気、次男の学生運動、夢と現実の交錯のなかで描かれる奥泉光の芥川賞受賞作。他に「浪漫的な行軍の記録」所収――太平洋戦争末期、レイテで、真名瀬は石に魅せられる。戦後も、石に対する執着は、異常にも思えるほど続くが、やがて、子供たちは死に弄ばれ、妻は狂気に向かう。現実と非現実が交錯する、芥川賞受賞作「石の来歴」。兵士たちの、いつ終わるとも知れぬ時空を超えた進軍、極限状況の中でみたものは……。帝国陸軍兵士の夢と現を描く、渾身の力作、「浪漫的な行軍の記録」所収。 -
夏の流れ 丸山健二初期作品集
平凡な家庭を持つ刑務官の平穏な日常と、死を目前にした死刑囚の非日常を対比させ、死刑執行日に到るまでの担当刑務官と死刑囚の心の動きを、緊迫感のある会話と硬質な文体で簡潔に綴る、芥川賞受賞作「夏の流れ」。稲妻に染まるイヌワシを幻想的に描いた「稲妻の鳥」。ほかに、「その日は船で」「雁風呂」「血と水の匂い」「夜は真夜中」「チャボと湖」など、初期の代表作7篇を収録。 ◎「丸山健二の文学性は、ジェームズ・ジョイスに通じる。本作品集に収録されている初期短編を改めて読みながら、私はそう思った。(中略)すぐれた芸術家は生涯を通して変貌を続けるが、若き日の作品群は作品を受容する側にとっての定点を提供する。ピカソのキュビズムは、初期の見事な絵画によって担保される。このような文脈において、本文庫に収められた初期の短編の数々は、弱冠23歳で芥川賞を受賞し、長年文壇と一線を画して孤高の道を歩んできた丸山健二の文学の全体像を理解する上で、重要な意味を持つのではないか。」<茂木健一郎「解説」より> -
槐多の歌へる 村山槐多詩文集
夭折の天才画家の迸(ほとばし)る詩魂 個性主義芸術の時代あるいは生命主義芸術の時代と呼ばれた一九一〇年代に、彗星のごとく画壇にデビューし、二十二歳で早世した天才画家・村山槐多。彼は生得の詩的才能にも恵まれていた。人生と社会の矛盾に打ち拉(ひし)がれながらも、野生の生命力の回復を希求する詩魂は、鮮烈な色彩感覚と結びつき独自の世界を構築した。放浪、デカダンスのうちに肺患により短い生を駆け抜けた槐多の詩、散文詩、短歌、小説、日記を精選収録。 酒井忠康 時代の一隅を、嵐のなかで哮(たけ)り狂ったように、その野性的ともおぼしき詩魂の光を放って、彼は疾走した。そして燃え尽きたのである。――〈「解説」より〉 -
マス・イメージ論
カフカ、小島信夫、中島みゆき、山岸涼子ら、文学・漫画・CM・歌謡曲などを全体的な概念として捉え、「現在」を読み解く斬新な評論。新しい時代を予見した格闘の書! ――文学、少女漫画、現代詩、歌謡曲、テレビCM……。マスメディアを通して現れた言葉やイメージを産み出している「現代」という名の作者をめぐって、果敢に挑んだ評論集。小島信夫、高橋源一郎、萩尾望都、糸井重里、中島みゆきらの諸制作品を、個別の批評方法から離れて解析・論述し、「戦後思想界の巨人」の新たな側面を示して反響を呼んだ。来るべき時代を予見し、今さらに輝きを増す画期的論考。 -
月光・暮坂 小島信夫後期作品集
かつての作品の引用から、実在する家族や郷里の友人らとの関係のなかから、ひとつの物語が別の物語を生み出し、常に物語が増殖しつづける<開かれた>小説の世界。<思考の生理>によって形造られる作品は、自由闊達に動きながらも、完結することを拒み、いつしか混沌へと反転していく。メタ・フィクションともいえる実験的試み9篇を、『別れる理由』以降の作品を中心に自選した作品集。物語のあらゆるコードから逸脱し続ける作品世界!〇小島信夫 私は、彼女がいなくなると、何か安心したように、いっきょに、たいへんな速さで娘時代から幼い頃へとさかのぼり、そのあたりのところに、自分が停滞するというか、そんな状態に見舞われた。その時代から、ゆっくりと先へ進みはじめ、不意に彼女がカチンと音を立てる。我に返ると、それがほかならぬこの私であった。――<「月光」より> -
贈答のうた
「うたはあのようにも詠まれてきた。/ひとはあのようにも心を用いて生きてきた。」ーー歴代の勅撰和歌集、私家集、さらに物語や日記文学の中で、華やかな独詠の陰に埋もれがちな贈答のうた。詠み交す事で深化増幅する人の心と精妙に響き合う贈答歌に光をあて、自在な口語訳を付しつつ読み解く。王朝人の豊饒な言葉の贈物への密やかな答歌とも評された名著。野間文芸賞受賞作。 -
わが文学生活
編集者によるインタビュー、また「群像」および「小説現代」で長く担当した編集者との対談を、作家自らが構成した貴重な文学的自伝。高い芸術性と人気を備える小説家、洒脱な随筆や座談の名手、ヘンリー・ミラーや井原西鶴の作品の現代日本語への翻訳者、豪腕アンソロジスト……多彩な相貌が臨場感を湛えて語られる本書は、吉行淳之介を知るための必読書となろう。