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大岡信が、六年間に亘って「万葉集」に立ち向かった『私の万葉集』の最終巻。巻十七から二十。この第五巻は「歌日記」が中心であり、万葉最末期の歌 移り行く 時見るごとに 心痛く 昔の人し 思ほゆるかも 大伴家持天平時代の人間を生き生きと伝える、大岡信渾身の、実作者による日本美起源の鑑賞、完結。
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Posted by ブクログ
シリーズ最終巻で、巻十七以降があつかわれています。 著者によると、巻十七以降の四巻は大伴家持のいわば「歌日記」であり、家持と彼の生きた時代についての説明を交えながら、歌の魅力が語られています。 著者は、家持の生きた天平時代の歌が、それ以前の歌とは異なり、「私」的な関心事に集中しているといいます。...続きを読むそうしたなかで、家持は「公」と「私」の緊張関係とたえず感じずにはいられないような状況に置かれており、そのなかで彼の歌が詠まれていったのだと著者はいいます。すなわち、藤原家が皇室との結びつきを強めて勢力を拡張し、古代以来の名門であった大伴家が衰退していくなかで、傑出した感性をもっていた家持が、その孤独感を基調としながら「自然」のあたらしい把握にたどり着いたというのが、著者の家持評です。 巻二十をあつかった章では、そこに収録されている防人歌と、その収集・編纂にあたった家持についての解説がなされています。著者は、「東国十ヵ国の農民は、たとえ下層の一兵士でも、その作る和歌を見れば、和歌に対する慣れや教養において、全体として驚くに足る水準に達していた」といい、また「日本の詩歌史の中核をなす和歌、その重大な担い手として女性がいた」ということを指摘して、その点に『万葉集』の重要性のひとつがあると語っています。
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