作品一覧

  • 「内向の世代」初期作品アンソロジー
    4.0
    1巻1,771円 (税込)
    1970年、文芸誌『文芸』は2度にわたり、当時たびたび芥川賞候補に挙げられていた若手作家5人を集め、「現代作家の条件」「現代作家の課題」と題した座談会を開く。翌年、小田切秀雄に「内向の世代」と呼ばれる彼らは、現代作家に大きな影響を及ぼすことになる。本書は座談会出席者の一人黒井千次氏が、初期作品の中から瑞々しい魅力を放つ中短篇を精選した作品集。収録作家:後藤明生、黒井千次、阿部昭、坂上弘、古井由吉。
  • 田園風景
    4.0
    1巻1,672円 (税込)
    貿易会社に勤める主人公の日常を東南アジアを舞台に描いた表題作「田園風景」、知り合いのアメリカ人夫婦の子供を預かる話「夏野」「向かいて聞く」、ほかに「コネティカットの女」「土手の秋」「寒桜」など9篇。明瞭な日常風景が、抽象世界へと転化し、人間の存在が、描かれる風景に同化し吸収されてゆく独得の世界を展く、傑作短篇小説集。野間文芸賞受賞作。
  • 優しい人々
    -
    1巻660円 (税込)
    兄夫婦の交通事故という天災のような事態が、一族の人間関係の中にひき起した大きな波紋。父が母が妻が妹が、ベッドの上の兄と死んだ義姉をめぐって、時にはかくされていた心理をあらわにしながら、ぶつかり合う。不意に緊張状態に置かれてしまった家庭を見つめて、現代における真の愛の可能性を探る、問題の長編小説。
  • 初めの愛
    3.0
    1巻715円 (税込)
    男は危機的な状況にある。愛人と暮しながら、妻子のほうにも週に一度帰る、そんな状態が会社の取引先社員の失踪によって、明るみに出かねない。自分にも他人にも誠実であろうとする彼が、ふと立ち返るのは、おのれの愛の初源の場……。35歳、中間管理職の、真摯な宙ぶらりんの生。芸術選奨新人賞受賞の野心的長編。
  • 枇杷の季節
    -
    1巻550円 (税込)
    「異郷人」の自覚は、すでに彼には親しいものだった。父の転勤のたびに繰り返した転校、いつも身近にあった戦争の翳、渾沌としたそれらの日々に訪れた、人生への早い目覚めがうながしたものは……。原点としての幼少年時代とその心の領域の移りゆきを、よく醒めた文体で感銘ふかく描きつくす好短篇集。5篇を収録。
  • 百日の後 坂上弘自選短篇集
    -
    1巻1,320円 (税込)
    「第三の新人」世代に続く、「内向の世代」グループの一人である坂上弘は、「第三の新人」とは違った意味で、生活者の視点から小説世界をつくり上げてきた。文学が特別な社会を対象としたものでなく、日々の暮しのなかでのサラリーマンであり、同人雑誌仲間との交友でありと、一見、平凡な日常のうちに、ニュアンスを含んだ人生を見出す。表題作ほか著者自選の5篇を収録。
  • 故人
    -
    1巻1,881円 (税込)
    自分を文学の世界に導いてくれた、兄のように慕う先輩作家が、原稿を郵便で出した帰途、トラックに轢かれ死んだ。理不尽な死を前に混乱、自失する家族や友人たち。青年は深い喪失感を抱えながら、社会との折り合いに惑い、生と死の意味を問い続ける。三四歳で早世した山川方夫の人生を、彼の最も近くで生きた著者が小説に刻んだ鎮魂の書。

ユーザーレビュー

  • 「内向の世代」初期作品アンソロジー

    Posted by ブクログ

    後藤明生。今だと完全にクズ扱いされる男性像だけど、この当時はまるで問題視されない「モテ自慢」の域だったのかと驚愕。そんなに昔ではないのに。
    黒井千次。多人数視点の現代的な構成だが、いかにも小説的な登場人物の行動の突飛さにやや違和感を覚えるのはやはり時間の為せる技か。
    阿部昭。私小説風だけど障害者の兄弟など現代にも通じるテーマを扱っていて、本書の中では一番印象的。
    坂上弘。阿部昭にも通じる家族の葛藤を扱うが、近親相姦的な描写が生理的に無理。
    古井由吉。現代的な視点でみると一番の問題作ではないか?男性作家による「女性」という主題の扱いがとにかく難しくなったと痛感する。


    0
    2023年03月10日
  • 田園風景

    Posted by ブクログ

    坂上弘は、昭和から平成ひと桁まで
    一流企業でサラリーマンをやりながら、そのことをネタに書いていた人だ

    「短い一年」
    年功序列社会にはひとつの欠陥がある
    組織が老人だらけになってしまうことの弊害だ
    1980年代の日本では
    多くの大人たちにとって
    それはまだ漠然とした不安にすぎなかった

    「巡回授業」
    人間は独りだ
    そうであるからこそ、コミュニケーション能力が必要とされるのだ
    しかし逆のことも言える
    人間が独りで生きていけないものとすれば
    コミュニケーション能力の過剰ゆえに
    孤立するということもありうるだろう
    21世紀の今も、国際社会のなかで日本人は引き裂かれ続けている

    「田園風景」
    日本の敗

    0
    2014年05月07日
  • 初めの愛

    Posted by ブクログ

    古井由吉、後藤明生とともに「内向の世代」と呼ばれる作家である著者の長編作品です。

    35歳の黒瀬二郎は、妻の比呂子と子どもの慎太郎との生活を捨てて、愛人のマサ子と同居しています。一方、彼の務める会社では、取引先の社員である土井が失踪し、彼の上司の占部と折衝をおこない、問題の解決を図ります。他方で二郎自身も、人員整理と組織の再編の仕事を引き受けることになります。

    「それじゃ、何故、僕と一緒になったんだ」という二郎の問いかけに対して、比呂子は「あなたの言葉を信じたからよ。あなたは、わたしが別れてもいい、と言ったとき、別れれば自分が駄目になる、とおっしゃったからよ」とこたえます。比呂子は、二郎の嘆

    0
    2023年03月29日

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