坂上弘のレビュー一覧

  • 「内向の世代」初期作品アンソロジー

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    後藤明生。今だと完全にクズ扱いされる男性像だけど、この当時はまるで問題視されない「モテ自慢」の域だったのかと驚愕。そんなに昔ではないのに。
    黒井千次。多人数視点の現代的な構成だが、いかにも小説的な登場人物の行動の突飛さにやや違和感を覚えるのはやはり時間の為せる技か。
    阿部昭。私小説風だけど障害者の兄弟など現代にも通じるテーマを扱っていて、本書の中では一番印象的。
    坂上弘。阿部昭にも通じる家族の葛藤を扱うが、近親相姦的な描写が生理的に無理。
    古井由吉。現代的な視点でみると一番の問題作ではないか?男性作家による「女性」という主題の扱いがとにかく難しくなったと痛感する。


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    2023年03月10日
  • 田園風景

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    坂上弘は、昭和から平成ひと桁まで
    一流企業でサラリーマンをやりながら、そのことをネタに書いていた人だ

    「短い一年」
    年功序列社会にはひとつの欠陥がある
    組織が老人だらけになってしまうことの弊害だ
    1980年代の日本では
    多くの大人たちにとって
    それはまだ漠然とした不安にすぎなかった

    「巡回授業」
    人間は独りだ
    そうであるからこそ、コミュニケーション能力が必要とされるのだ
    しかし逆のことも言える
    人間が独りで生きていけないものとすれば
    コミュニケーション能力の過剰ゆえに
    孤立するということもありうるだろう
    21世紀の今も、国際社会のなかで日本人は引き裂かれ続けている

    「田園風景」
    日本の敗

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    2014年05月07日
  • 初めの愛

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    古井由吉、後藤明生とともに「内向の世代」と呼ばれる作家である著者の長編作品です。

    35歳の黒瀬二郎は、妻の比呂子と子どもの慎太郎との生活を捨てて、愛人のマサ子と同居しています。一方、彼の務める会社では、取引先の社員である土井が失踪し、彼の上司の占部と折衝をおこない、問題の解決を図ります。他方で二郎自身も、人員整理と組織の再編の仕事を引き受けることになります。

    「それじゃ、何故、僕と一緒になったんだ」という二郎の問いかけに対して、比呂子は「あなたの言葉を信じたからよ。あなたは、わたしが別れてもいい、と言ったとき、別れれば自分が駄目になる、とおっしゃったからよ」とこたえます。比呂子は、二郎の嘆

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    2023年03月29日