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Posted by ブクログ
歌詠みの家に生まれた宗頼、才能は豊かだが心に鬱屈したものを抱え、辺境の地に追いやられる。人を憎む狐の化身である美女を手に入れた宗頼は邪魔者を殺し続け、その跡には死者を想う紫苑が植えられた。そしてついに魔の矢により地上を焼き尽くす。
/ 紫苑物語
山の岩戸に住む石別(いしわけ)一族は、里の人々と適度な交流を持って独自の生活を成り立たせていた。しかし里の支配者は彼らの名なしの神を奪い征服しようとする。いつしか名なしの神はその由来を大きく書き換えられ、八幡大菩薩(源氏の氏神)になる。
/ 八幡縁起
人から外れた胡摩姫(コマ=駒=馬)と、山賊、足軽、盗賊たちを通して日本の起源を描いた物語
/ 修羅
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☆3.5 復古派、石川淳
王道の幻想譚であらう。
後半にかけておもしろく読めたが、もっぱら筋のなりゆきゆゑ。雲の上のたゆたふ筆致は、読み手に依れば川のやうによどみ、ともすればしづんでしまふ。使ひ慣れぬ漢語和語の連打の蕩揺としたとりえが読み初めはこころ苦しくあり、のびた麺のやうに好むところがすくないこともある。竹を割った切れを味はひたいと願った。世の中を文章で美化しても、卑下しても、本質は変らない。自分には実直な方がいい。
構造としては、上田秋成「雨月物語」の影を落す。日本霊異記、宇治拾遺物語の滑稽感はなく、むしろ徳川期に多いやうな人間のくろぐろしい浅ましさをゑぐった王道の寓話伝奇が形を変へ、内容もそぞろに、現代の作家でいへばイタロ・カルヴィーノ、の方向性か。藤枝静男の奇想とちがって、すでにある物語の型になぞらへて、おもてに出した。
瑕瑾はあり、歌詠みが主人公なら実際に和歌を出せばよいが、出さない。天才的な歌詠みであることに説得力がない。ひとに、和歌の素養はなかったのかと勘繰ってしまふ。古典的長文ではあっても、日本古典と異なる趣きは和歌があひだに挟まらず、あくまでもよそほった文体だからだと思ふ。それに、平太、妖狐と出逢ふまでの前半はいかにも説明的でつまらない。歌詠みである必要も筋の意匠としてない。歌詠みが狩にのめり暴虐のかぎりを侵して、死ぬ。谷から聞えてくる歌も辻褄合せにとってつけたやうである。
夏目漱石の漢文素養とは違ふ。漱石時代の教養がまぢかであった前時代の遺物なのは仕方ないとしても、かれはあくまで町人然とした粋人にこだはったふうである。
粋人は弟子の丸谷才一まで受け継がれ、それは文章読本の例文の趣味や、忠臣蔵の評論、花柳小説であきらかだ。斎藤美奈子の、例文に祝詞まで持ちだす、といった批判はただしい。王朝復古と評したのはまさに適当な表現だらう。
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小説・文芸
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