【感想・ネタバレ】紫苑物語のレビュー

あらすじ

優美かつ艶やかな文体と、爽やかで強靱きわまる精神。昭和30年代初頭の日本現代文学に鮮烈な光芒を放つ真の意味での現代文学の巨匠・石川淳の中期代表作――華麗な"精神の運動"と想像力の飛翔。芸術選奨受賞作「紫苑物語」及び「八幡縁起」「修羅」を収録。

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歌詠みの家に生まれた宗頼、才能は豊かだが心に鬱屈したものを抱え、辺境の地に追いやられる。人を憎む狐の化身である美女を手に入れた宗頼は邪魔者を殺し続け、その跡には死者を想う紫苑が植えられた。そしてついに魔の矢により地上を焼き尽くす。
 / 紫苑物語

山の岩戸に住む石別(いしわけ)一族は、里の人々と適度な交流を持って独自の生活を成り立たせていた。しかし里の支配者は彼らの名なしの神を奪い征服しようとする。いつしか名なしの神はその由来を大きく書き換えられ、八幡大菩薩(源氏の氏神)になる。
 / 八幡縁起

人から外れた胡摩姫(コマ=駒=馬)と、山賊、足軽、盗賊たちを通して日本の起源を描いた物語
 / 修羅 

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2016年08月15日

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あ…ありのままに今起こったことを話すぜ…

『学校の課題で糞つまらん文学作品を読まされていたと思っていたが
いつの間にかカッコよすぎて言葉を失っていたッ!』
美文とか漢籍の素養とか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

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2009年10月04日

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若い国守は歌を捨て、狩へすすみ、やがて人を殺すことを覚える。雪崩れるような勢いの、妖艶な美文にくらくら。

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2009年10月04日

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言葉が光り輝きキラキラしています。テクストがまさに織り上げられ敷き詰められている。そんな感じがします。小説って織物なんですね。

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2009年10月04日

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所収の「八幡縁起」がベスト。太古からの日本人精神史でもあります。石川淳の文は読むと力が湧く貴重な文です。こんな文章を書く人、また現れないかなと願ってます。

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2009年10月04日

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再読。

最初に読んだ時からかなりの時間(30年くらい昔)が経つ故に、ほぼ初めて読んだように向きあった。

若かりし日に読んだ時の印象は、著者の他の純文学作品と比較して読みやすいな、ぐらいのものだった。改めて読むと、熟練の技とでも言いますか、洒脱な文章に舌を巻く気持ち。この味は、外国語に翻訳するとリズムとコクが再現できないだろうな、などと考える。

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2023年10月16日

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著者の作品を初めて読む。文体のリズム良く、音楽を聴くように読める。私の、少ない読書体験から近いものを選べば半村良氏。フィクションだからこそ、歴史を引き寄せて想像出来る。

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2021年07月12日

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ネタバレ

紫苑物語
P12
7歳の時 年の初めに作った歌を父が見て あからさまに 褒めあげた。確かに 手 筋が良い。すでに 一かどの歌 読みの歌である。
しかし 父は主室を取って ただ1ところ言葉をあらためた。
「これで非の打ち所はない。」
その塩 入れられたところは宗頼もまた 迷ったところであった。そこに 二色の言い回しが考えられて、どちらにすべきかと思案の末に勝ったと思われたものを取り劣ったと思われたものを捨てた。しかるに 父が 改めて 書き記した言葉は先に宗頼自ら捨てた言葉そのままに他ならなかった。己が踊ったと見たものを 長者である 父はまさったと見ている。歌の道に於いて父は己より劣っているのだろうかしかし 支出の後紛れなく改められたところを見直すとどうやらこの 捨てた 言葉の方こそ 混ざっているようにも思われてくる。父はやっぱり己 よりも混ざっているのだろうか。いや 今更何を迷うか。そもそも 勝ればこそ取りを取ればこそ 捨てたものである。朱筆の後は詠草の汚れであった。重ねて筆を入れて これを元のごとく に改めなくてはならない。
P20
ただ その不思議の謎が解けたと思ったのはようやく 今である。宗頼は途端に悟った。謎は歌にあった。思えば都から遠く 荒々しい 天地の中に突き放されてきて、走る獣飛ぶ鳥を折って駆け巡りながら、この1年の間 一体何を追い何を求めていたのか。あなたに見つけた 自然の豊穣と荒涼との境に身を置いて手の中の弓は実は忘れられたに等しく、この時おのずから発したものは矢ではなくて 歌、ただし すでに 禁じられた 長歌短歌の類とは違うもの、まだいかなる 方式も定型も知らないような歌が体内に 湧き 広がり音にたたむ 声となって宙に溢れその聞き取りがたい声はのに山に水に空に舞い狂った。狩に憑かれたということはすなわち 歌によったということに他ならなかった。忘れられた 弓 から 心なき矢が飛んで獲物 もろとも 歌声の漂う 彼方に消え去ったとしても不思議とは言えまい。

・???

P22
「お主の体内には 二色の血が流れていると見えた。」
「二色の血とは。」
「はて 歌の血と弓矢の血じゃ。生ぬる歌の血が濃い限りは 弓矢のことは 悟るに至るまい。己の手がしたことに 目が開かないというのも 道理か。因果な あきめくらよ。」

P34
高きに立って 彼方の血を見下ろした時 宗頼は足の痛みを忘れて思わず感嘆の声をはなった。
荒地どころではなかった。燃える落日のもとに 地は 広々と暢びて水 記憶モリアーク 田畑は実り 秋の景色豊かに花あり果実 ありここに馬を買いそこに牛を放ち 木がくれに見える 藁屋の屋づくりこそ鄙びていたが、ゆうげの煙 暖かく 立ち上り鶏犬の声も間近に聞こえるかと思われた。およそ 亮太にこれほど美しい豊穣の地は他になかった。

P59
「この世に笑うのは 今を限りと思え。」
宗頼の放った矢が2本 いや 3本 一体一すじまっすぐに繋がって宙に光った。弓麻呂はその2本の矢を両手につかんだが 第3の矢 ありと知って片足で跳ね上がり目にも止まらぬ速さの稲妻の形に飛び違えた。しかしやもまた獲物の後を追って 同じく 稲妻の形にあやまたず飛んでその背を貫いた。
「小せがれめ。」
そう叫んだ時には弓麻呂の体は うつ伏せに 地に倒れていた。
「けものめ。」
宗頼は叫び返して獲物に 踊り かかり背を蹴った。
いくたびも蹴り しらがの髪が土に黒くま みれるまでに踏みつけ 押し付けた。

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2025年10月14日

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☆3.5 復古派、石川淳
 王道の幻想譚であらう。
 後半にかけておもしろく読めたが、もっぱら筋のなりゆきゆゑ。雲の上のたゆたふ筆致は、読み手に依れば川のやうによどみ、ともすればしづんでしまふ。使ひ慣れぬ漢語和語の連打の蕩揺としたとりえが読み初めはこころ苦しくあり、のびた麺のやうに好むところがすくないこともある。竹を割った切れを味はひたいと願った。世の中を文章で美化しても、卑下しても、本質は変らない。自分には実直な方がいい。

 構造としては、上田秋成「雨月物語」の影を落す。日本霊異記、宇治拾遺物語の滑稽感はなく、むしろ徳川期に多いやうな人間のくろぐろしい浅ましさをゑぐった王道の寓話伝奇が形を変へ、内容もそぞろに、現代の作家でいへばイタロ・カルヴィーノ、の方向性か。藤枝静男の奇想とちがって、すでにある物語の型になぞらへて、おもてに出した。

 瑕瑾はあり、歌詠みが主人公なら実際に和歌を出せばよいが、出さない。天才的な歌詠みであることに説得力がない。ひとに、和歌の素養はなかったのかと勘繰ってしまふ。古典的長文ではあっても、日本古典と異なる趣きは和歌があひだに挟まらず、あくまでもよそほった文体だからだと思ふ。それに、平太、妖狐と出逢ふまでの前半はいかにも説明的でつまらない。歌詠みである必要も筋の意匠としてない。歌詠みが狩にのめり暴虐のかぎりを侵して、死ぬ。谷から聞えてくる歌も辻褄合せにとってつけたやうである。

 夏目漱石の漢文素養とは違ふ。漱石時代の教養がまぢかであった前時代の遺物なのは仕方ないとしても、かれはあくまで町人然とした粋人にこだはったふうである。
 粋人は弟子の丸谷才一まで受け継がれ、それは文章読本の例文の趣味や、忠臣蔵の評論、花柳小説であきらかだ。斎藤美奈子の、例文に祝詞まで持ちだす、といった批判はただしい。王朝復古と評したのはまさに適当な表現だらう。

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2024年10月06日

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 「紫苑物語」「八幡縁起」「修羅」の3作が収められている。このうち「紫苑物語」についてドナルド・キーン氏が自伝の中で、美しい日本語で書かれていると絶賛していたので読んでみた。
 石川淳は今回初めて読んだ。解説を書いた立石伯氏によれば、石川淳は第一等の詩文の大家だったそうである。それ故戦いの場面でさえ美しい文章で書かれているのだという。
 ストーリーについてはあまり良く理解できなかったが、キーン氏の言う「美しい日本語」には出会えたような気がした。

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2013年07月15日

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【お金が無いので再読】
ダイガクの文学総論みたいなのでやった。
その時はまったく理解できなかったが、数年経ってまた読んでみたけど、ピンとこなかった。
あたしの感性の問題か??

表現のすばらしさも良くわかんなかった。

勝手言ってみると、やりまくりブーの白痴姫の理由をもっとかいてみれば、おもしろいのではないか、と。

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2009年10月04日

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