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Posted by ブクログ
1文が10行にわたることもあり、さらに側から見れば発狂した者の口述記録でもあるため、完全に排他的な文体となっており、私も数ヶ月前に一度読み始め、途中で断念することとなった。
今回また読み始めたのは、大江の晩年の作品『水死』を読むことを目指すにあたって避けては通れない作品だからである。
「純粋天皇」というセンシティヴかつ荘厳なテーマを、なかば発狂した者の口述を通したユーモラスな文体を採用したおかげで、また小説という“フィクション”が保険として働いてくれるおかげで、重々しくなり過ぎずに扱えている。
この本を読んで、自分は大江作品の中でも神秘主義に重きを置いた作品の方が好きだと気づいた。もちろん、この本でも神秘主義を利用して「純粋天皇」の神格化を有効に表せているのだが。
大江の「父と天皇制」というテーマは、歴史や政治に疎い私にはまだ尚早なのかもしれない。
とりあえず今は『懐かしい年への手紙』『燃えあがる緑の木』に共に通底する命題である「魂のこと」に触れた地続きの作品である、『宙返り』を読みたい。
Posted by ブクログ
大江健三郎が三島由紀夫による自決を受けて執筆した小説と知り、興味を持って手に取った。三島は簡単にいえば右翼的な思想、大江はおなじく左翼的な思想で知られているが、それがどのように結節して小説に反映されているのか、注目しながらまずは表題作を読んでみた。しかし、たしかに天皇に対する言及は存在するが、なかなか理解が難しい小説で、まず、主人公が通常の状態ではない。みずからをガンに罹患して瀕死の状態にあると思い込んでいるという特殊な設定で、そうなると当然そのなかの物語もストレートに受け止めることはできなくなる。あるいはこの描きかたじたいが、天皇を語りづらいものであると暗に示しているのかもしれないが、どうにもうまく吞み込みがたい。ただ、大江にとっても天皇というものの存在が大きなものであったことはよくわかった。三島が自決に向けたようなエネルギーを大江は持たなかったが、けっして軽んじていたわけでもないだろうというのが読んで思った感想で、そうなると冒頭で触れたようにほんとうに左翼的だったのかどうかということをまず問い直さなければいけない。大江は大江でこれもまたひとつの右翼的愛国的な態度なのだという解釈はありうるだろう。そういうあらたな大江像が「発見」できたという点で、本作を手に取ってみて正解だったといえる。
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