海外文学作品一覧
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-じっとしておらず、満足せず、求め続ける国民。 人種間の差別の構図、大統領への矛盾する感情―― 『怒りの葡萄』から『チャーリーとの旅』を経て見出したのは、 祖国への愛着と痛烈な洞察。 〈アメリカとは何か〉を探求し、その行く末を見据える スタインベック最晩年のエッセイ。 〈目次より〉 私自身のアメリカ――はじめに 1 多様の統一 2 逆説と夢 3 人民の政府 4 人種は平等に作られた 5 アメリカ属 6 幸福の追求 7 アメリカ人と国土 8 アメリカ人と世界 9 アメリカ人と未来 あともどりしないために――おわりに アメリカ論のエッセンス――訳者あとがき
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-彼女が「レシタティフ」を「実験」だと言うなら、本気でそれを意図しているのだ。その実験の被験者は読者である―― 施設で同室になったトワイラとロバータは、白人と黒人の二人組で「塩と胡椒」と呼ばれていた。 月日が経ち、二人はダイナー、スーパー、デモ集会、レストランで四度再会する。 二人が共有する記憶と彼女たちについて、何が正しいのだろうか? ノーベル文学賞作家、トニ・モリスンが唯一書き残した実験小説。 大好評「I am I am I am」シリーズ第五弾。解説:ゼイディー・スミス 二人の少女はこの世の誰も知らないことを知ってた――質問をしないこと。信じなきゃいけないことは信じること。 ずけずけと訊かずに広い心で接するのは、気遣いでもあった。 あなたのお母さんも病気? ううん、一晩中踊ってるの。 ふうん――そして、わかった、といううなずき。(本文より)
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-李箱文学賞受賞作「心の浮力」を含む最新短編集。 喪失と疎外、自責と愛などをテーマに、家族や介護、格差など同時代の社会問題を通して現代人の生を描く。 「言葉の届かない場所にあるはずの、人の心の複雑な薄闇に、李承雨は言葉で見事に光をあてる。精緻きわまりない八編。」――江國香織 「僕が感じてきたように、母も常に感じてきた、そうでなくてもいつか感じることになる深い後悔と罪悪感については思いが及ばなかった。喪失感と悲しみは時とともに和らぐが、後悔と罪悪感は時が経つほど濃くなることに、喪失感と悲しみはある出来事に対する自覚的な反応だが、後悔と罪悪感は自分の感情への無自覚な反応で、はるかにコントロールが難しいということに気づけなかった。」 母は僕を、もうこの世にいない兄の名前で呼ぶようになった。 夢を追い不器用に生きた兄と、堅実に歩む僕。兄弟と老いた母の愛の形を描いた李箱文学賞受賞作「心の浮力」を含む最新短編集。 【目次】 消火栓のバルブを回すと水が溢れた 空き家 心の浮力 電話に出る(出ない)べきだった 帰宅 声たち 水の上の眠り サイレンが鳴る時─剝製になった天才のために 作家の言葉 訳者あとがき 日本の読者のみなさんへ 【著者】 李承雨 1959 年生まれ、韓国全羅南道長興出身。1981 年、「エリュシクトーンの肖像」が「韓国文学」新人賞に選ばれデビュー。長編小説に『生の裏面』『植物たちの私生活』(ともに藤原書店)、中編小説に『真昼の視線』(岩波書店)、短編集に『香港パク』(講談社)などがある。大山文学賞、東仁文学賞、李箱文学賞など受賞多数。 平原奈央子 1980 年生まれ、福岡市出身。九州大学文学部史学科(朝鮮史学研究室)卒業。ソウルの梨花女子大学で語学研修、西江大学へ留学。
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 世界を嫌いになりかけた大人たちへ… 自分を取り戻す1日1語。 誰もが知っているあの絵本から、 知られざる名作まで。 児童書から名言、名ゼリフを厳選! ベストセラー『ワンダー』著者 R.J.パラシオ序文! やさしさ、勇気、悲しみ、家族、選択… テーマ別に心揺さぶる言葉がいっぱい。 “ほんとうに信じる者すべてに鐘は鳴る。 今もわたしに鐘は鳴っている” (『急行「北極号」』より) “あなたはわたしを助けてくれた あたえたものは、必ず返ってくるものだ。 わたしたちは、おたがいに助けあうために生きている” (『ピノキオの冒険』より) “おうちがいちばん” (『オズの魔法使い』より) “声をあげるべきときに黙っているのなら、 何のために声があるの?” (『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』より) クリスマス、年末年始に読みたい! プレゼントにも最適な本です。 【目次】 第1章 この世界で優しくいられる方法 優しさ/受け入れる/勇気/自信/許す 第2章 この世界で楽しくすごす方法 喜び/本と物語/食べて、飲んで、愉快にすごす/気ままに/冒険と想像力/意味のあること、意味のないこと/歌とダンス 第3章 この世界で強くいられる方法 悲しみ/恐れ/反抗/人は複雑なもの/個性 第4章 この世界でくつろぐ方法 家族/友情/つながり/動物/自然 第5章 この世界を信じる方法 楽天主義/愛/忍耐/本当の自分になる/選択/変化/
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3.8香港映画史上No.1ヒットとなった「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」待望の原作刊行! 1988年、香港。黒社会でその名を知られる義に厚い青年・陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、香港を牛耳る大ボスから突然命を狙われた。舎弟たちを傷つけられ、母親を殺された洛軍は、復讐を誓って九龍城砦に足を踏み入れる。そこは大ボスも手を出そうとしない〈龍城幇〉の頭目・龍捲風(ロンギュンフォン)が支配する地だった──。彼はそこで黒社会に生きる信一(ソンヤッ)、十二少(サップイー)らと絆を深め、大ボスの打倒に向けて動き出す! 映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』原作。*「幇」の字は正しくは封に白に巾
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-ノーベル賞作家でありラテンアメリカ文学を牽引した巨匠による、 喜劇と悲劇、そして音楽と本と祖国への愛に満ちた人間賛歌。 クリオーリョ音楽の研究者トーニョが出会った、世界で最も美しいギターの音色。そしてその奏者であるラロ青年の夭折。それはリマ近郊でつつましく暮らすトーニョの人生をすっかり変えてしまった。彼について、そしてこの国の音楽について本を書かなくては! 使命感に燃えるトーニョだが、その熱意は様々な人を巻き込んでいき・・・・・・。 2025年4月に逝去したペルーの巨匠、その最後の小説。 【著者プロフィール】 マリオ・バルガス=リョサ Mario Vargas Llosa 1936年、ペルーのアレキパに生まれる。20世紀後半の文学を代表する作家のひとり。 1959年に短篇集『ボスたち』でデビュー。初の長篇『都会と犬ども』で注目を浴び、生涯にわたってセルバンテス賞など数々の受賞歴を誇る。2010年にはノーベル文学賞を受賞した。 著書に『緑の家』『ラ・カテドラルでの対話』『フリアとシナリオライター』『世界終末戦争』『密林の語り部』『チボの狂宴』『楽園への道』『ケルト人の夢』『激動の時代』など多数。 2025年4月13日に逝去。本書は著者が生前に刊行した最後の小説となった。 【訳者プロフィール】 柳原孝敦(やなぎはら・たかあつ) 1963年鹿児島県名瀬市(現・奄美市)生まれ。東京外国語大学大学院博士後期課程満期退学。東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書に『ラテンアメリカ主義のレトリック』、(エディマン/新宿書房)、『テクストとしての都市 メキシコDF』(東京外国語大学出版会)。訳書にアレホ・カルペンティエール『春の祭典』(国書刊行会)、ロベルト・ボラーニョ『野生の探偵たち』(共訳、白水社)、セサル・アイラ『文学会議』(新潮社)、フアン・ガブリエル・バスケス『物が落ちる音』(松籟社)など。 【原題】 Le dedico mi silencio
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-初期から晩年までのエッセイ25篇を精選。未邦訳作品も多数収録し、現代に通ずるウルフの思想にふれるオリジナル・アンソロジー。
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-本をひらいて「ここへ行きたい!」って言うだけで、いろんな世界へひとっとび! ジャックとアニーはふしぎなツリーハウスで、恐竜の時代へまよいこむ――わくわくドキドキの大冒険がはじまった!! 全小学生必見の大ベストセラー、もっと読んでまなべる〈カラー新装版〉が登場! ☆カバーイラストも挿絵も、全イラスト描き下ろし ☆巻末には、たっぷり学べる資料つき 小学校全学年に対応、教材としての利用もオススメ。 たのしく読んで、地理、歴史、自然科学の知識が自然に身につきます!! [収録] 第1話 恐竜の谷の大冒険 第2話 黒い馬の騎士
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4.0「あのひとを死なせるわけにはいかない。ぼくが自分の足で歩いていけば助かるんだ」――重病の親友の快復を願かけて、ミュンヘンからパリへ向かい、雪と氷のなかを彷徨し、魂に呼応するような風景と忘れられたような人びとに出会う……。ニュー・ジャーマン・シネマの鬼才が綴る孤高の幻視行。 最新作『歩いて見た世界』の監督による孤高の幻視行 鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督は、人間と自然の壮大なドラマをテーマにした映画で広く知られる。『アギーレ・神の怒り』『フィツカラルド』など初期の代表作から最新作『歩いて見た世界』まで、野心的な作品は高い評価を受け、数々の映画賞を受賞している。 一九七四年十一月、ヘルツォークはパリにいる友人の映画評論家ロッテ・アイスナーが重篤と知らされる。自分の足でパリまで歩いていけば、アイスナーの病は治る……と願をかけ、真冬のミュンヘンを発つところからこの日記は始まる。 痛む足をひきずりながら、死んだような小さな村をいくつも通り過ぎ、空き家に泊まり、田舎道を彷徨する。あるときは、自分がまだ人間の姿をしているのを確かめようとガソリンスタンドのトイレに駆け込む。やがて寒さに凍えるカラスを兄弟のような感情を抱くようになり、リンゴの実がすべて落ちるまで木を揺さぶった直後の静寂に、孤独と疲労が頂点に達する…… 研ぎ澄まされた感覚で、魂を震わすような自然に身を投じるヘルツォークならではの眼差し。極寒のなかをひたすら歩く真摯な姿と、狂おしいまでの思いが読者の心を打つだろう。
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3.6各年末ミステリランキングにランクインした傑作! ・『2019本格ミステリ・ベスト10』 第2位 ・『このミステリーがすごい!2019年版』 第6位 ・「週刊文春ミステリーベスト10 2018」 第8位 ・カバーイラストはポール・アルテ氏自身の筆によるもの(日本語版だけ、日本の皆様だけのために)。 ・作品に出た怪事件のもとになったのは、アルテ氏自身の実体験。氏本人が撮った、その体験をした場所の写真をスケッチ風にした絵を本書の最後に収録。 ・ミステリ作家・芦辺拓氏による解説を収録。 ロンドンのどこかに、霧の中から不意に現れ、そしてまた忽然と消えてしまう「あやかしの裏通り」があるという。 そこでは時空が歪み、迷い込んだ者は過去や未来の幻影を目の当たりにし、時にそのまま裏通りに呑み込まれ、行方知らずとなる――単なる噂話ではない。その晩、オーウェン・バーンズのもとに駆け込んできた旧友の外交官ラルフ・ティアニーは、まさにたった今、自分は「あやかしの裏通り」から逃げ帰ってきたと主張したのだ! しかもラルフは、そこで「奇妙な殺人」を目撃したと言い……。謎が謎を呼ぶ怪事件に、名探偵オーウェンが挑む!
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3.012月上演! 大人気・東宝ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の原作をついに刊行! 孤児院に暮らす18歳の少女ジルーシャはある日、顔も知らない紳士から大学進学の援助を受けることになる。条件は、月に一度彼に手紙を書くこと。人気ミュージカル俳優・井上芳雄、坂本真綾と上白石萌音の織りなす世界を言葉でも堪能できるファン必読の小説。
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4.2老書店員と少女が織りなす現代のメルヒェン 本を愛し、書物とともにあることが生きがいの孤独な老書店員が、利発でこましゃくれた九歳の少女と出会い、みずからの閉ざされた世界を破られ、現実世界との新たな接点を取り戻していく物語。 老舗の書店〈市壁門堂〉に勤めるカール・コルホフは、特定の顧客にそれぞれの嗜好を熟知したうえで毎晩徒歩で注文の本を届け、感謝されている。カールは顧客たちをひそかに本の世界の住人の名前(ミスター・ダーシー、エフィ・ブリースト、⾧靴下夫人、朗読者、ファウスト博士など)で呼び、自らの暮らす旧市街を本の世界に見立て、そこで自足している。 ある日突然、シャシャと名乗る女の子がカールの前に現れる。ひょんなことからカールの本の配達に同行するようになり、顧客たちの生活に立ち入り、カールと客との関係をかき乱していく…… 歩いて本を配達するふたりの珍道中と、曲者揃いの客たちとの交流、そして思いがけない結末を迎えた後はほのぼのとした読後感に包まれる。読書と文学へのオマージュといえる、いわば現代のメルヒェンのような作品。 二〇二〇年の刊行後、ドイツで一年以上にわたりベストセラーの上位を占め、六十万部を記録した。現在、三十五か国で翻訳されている。 【目次】 第一章 独立の民 第二章 異邦人 第三章 赤と黒 第四章 大いなる遺産 第五章 言葉 第六章 未知への痕跡 第七章 夜の果てへの旅 謝辞/訳者あとがき
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-ヴェルヌの「驚異の旅」は1863年の「気球旅行」でスタートし、「地底」「月世界」と続いたが、本書は67年刊で、「グラント船長」や「海底二万リーグ」より前であった。本書の訳者は「これほど面白い作品がどうして邦訳されていないのか」と述べる。冒頭から、帆船フォワード号を取り巻く謎で、読者の心を掴む。その行先は分からず、船長は姿を現わさず何者であるかも分からない。同号は船長からの秘密の指令によって北極へ向かう。ついに姿を現わした船長は北極征服熱一色に染め上げられた誇り高きイギリス人であった。この人物は単一の情熱に支配され、目標に向かって邁進する。極北の酷寒、乗務員の反乱、未踏の地の不確実性との戦いに、冒険心と知識欲に駆られたハテラスの勇気と決意は微塵ともしない。推理小説と冒険小説が渾然一体となった傑作。
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-日本、韓国、沖縄、どこへ行っても本は木(なむ)で出来ていた。 ●概要 「三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す」。著者がこれまで生きてきた日本、韓国、沖縄で感じたこと、言葉にしたこと、詩で表現したこと。三点測量するように書いてきたエッセイを集大成。 ●本文より 韓国に来る前に持っている本を全部売った。古本屋のおじいさんが部屋まで来てくれて十年間私が引越しのたびにひきずって歩いた活字の群れをそっくり引き取ってくれた。さよなら 私の本たち。それはたいそう重かった。 「本って、本当に重いですよね」私が言うと おじいさんが答えた。「さようでございますもともと木でございますからね」(第一章「プラタナス」より) 三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す。日本語でも一冊詩集を出し、ソウルにいるときには朝鮮語で書き、それらが一九九三年に韓国の民音社から『入国』として出版された。外国人がハングルで書いた珍しい本ということで、当時かなり話題になった。それはちょうど、韓国でいくつかの詩集が驚異的なセールスを記録していた時期と重なる。特に、崔泳美(チェ・ヨンミ)という詩人の『三十、宴は終わった』(日本語版はハン・ソンレ訳、書肆青樹社)が一九九四年に刊行され、その年だけで五十万部以上を売り上げるという空前のベストセラーとなった。私の詩集が読まれ、すぐに重版がかかったのも、こうした流れの中のできごとだ。民主化からあまり時間が経っていなかった九〇年代初頭の韓国人たちは好奇心に満ち、新しいもの、変わったものに対して寛容だった。(「あとがき」より) ●著者プロフィール 1960年、新潟市生まれ。翻訳者。著書に『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』『本の栞にぶら下がる』『隣の国の人々と出会う――韓国語と日本語のあいだ』。訳書にチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、ハン・ガン『ギリシャ語の時間』、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、ファン・ジョンウン『ディディの傘』、李箱『翼――李箱作品集』、パク・ソルメ『未来散歩練習』などがある。2015年、共訳書パク・ミンギュ『カステラ』が第一回日本翻訳大賞受賞。2020年、訳書チョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』で第18回韓国文学翻訳大賞(韓国文学翻訳院主催)受賞。2025年、ハン・ガン『別れを告げない』で第76回読売文学賞(研究・翻訳部門)を受賞。 【目次】 「なむ」の来歴もくじ 一章 「なむ」の来歴 二章 沖縄で考えたこと 三章 言葉と言葉の間で 四章 コラムの日々 五章 日常と本と 六章 詩、夢、訳 あとがき
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-もう、気分は最高だ! 子どもが翼をつけて生まれ(「ウエハース君」)、宝石でできた蚊が人間の血と一緒に楽しかった記憶を吸い込み(「ジュエリーモスキート」)、結婚していない私が結婚した私を訪ね(「アナザーストーリー」)、健康な異性愛者だけを選別し、それ以外にはキノコになる液体が配られる(「キノコの国で」)……。 イ・ユリが描く14の世界を一つずつ通過すると、苛立ちや悩みはしばし遠くに追いやられ、私たちの手元から離れていた日常は鮮明になる。唯一無二のSFワールドに魅了される、韓国の大人気作家の傑作短編集。 大好評「I am I am I am」シリーズ、第4弾!
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-神という恐るべき謎に挑み続けた、北欧のノーベル賞作家ラーゲルクヴィスト。その孤高の作品群がここに全貌を現わす…! 神という恐るべき謎に挑み続けた、北欧のノーベル賞作家ラーゲルクヴィスト。その孤高の作品群がここに全貌を現わし、巡礼の果てに焼き尽くされた人間の罪が、聖なる地の澄明な風景としてよみがえる。20世紀の最重要作家を、「刑史」「こびと」の名訳で紹介した山口琢磨が、その渾身の力で遺した待望の翻訳が刊行されることは、ひとつの文学的事件である。(文芸評論家 富岡幸一郎) 【目次】 アハスヴェルスの死 海上の巡礼 聖地 マリアムネ ラーゲルクヴィスト著作目録〈山口琢磨編〉 あとがき〈中川美智子〉 【著者】 ペール・ファビアン・ラーゲルクヴィスト ペール・ファビアン・ラーゲルクヴィスト(Pär Fabian Lagerkvist) 1891年5月23日~1974年7月11日。スウェーデンの作家、詩人、劇作家、エッセイスト。スモーランド地方ヴェクショーに生まれ、伝統的なキリスト教信仰の環境下で育つ。生涯に亘って神と人間、善と悪という普遍的なテーマを追求し続けた。最も知られる小説「バラバ」は、1951年度ノーベル文学賞受賞の対象作品になった。1956年、本三部作の前編となる「巫女」を発表。 山口 琢磨 山口琢磨(やまぐち たくま) 1925年1月4日~2021年7月9日。旧制松江高等学校、東京大学第一工学部船舶工学科卒業。大学院進学後、療養生活中に独学でスウェーデン語をはじめとする4ヵ国語を習得。2010年、運輸界のノーベル賞といわれるエルマー・A・スペリー賞受賞。東京大学応援歌「ただ一つ」の作曲者。 訳書『ノーベル文学賞全集 11 フォークナー/ラーゲルクヴィスト』所収「刑吏」「こびと」(主婦の友社)他。
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-悲しみのトンネルの先にあふれる明るい光のように 長い時間を経て届いた切ない和解の挨拶 「遠い国や長い歴史を超えて、封印していた恋の秘密が解き明かされるとき、私たちはきっと前よりも少し成長している。」――島本理生(小説家) 美しい文章とあたたかなまなざしで描くペク・スリンの初長編にして最高傑作 派遣看護師としてドイツに渡っていた伯母を頼り、母と幼い妹とともに西ドイツに移り住んだヘミ。悲劇的な事故により心に傷を負ったまま、孤独な日々を過ごすヘミだったが、伯母と同じ派遣看護師のおばさんたちの子どもであるレナ、ハンスと過ごすうち、徐々に日常を取り戻していく。ある日ハンスから、再発の可能性がある大病を抱える母親・ソンジャの初恋の相手を探してほしいと頼まれる。ソンジャおばさんの日記を手がかりに捜索を始めたヘミだったが、急遽家族で帰国することに。 大人になったヘミは、ある日、大学時代にほのかな恋愛感情を抱いていたウジェと偶然再会する。彼との会話をきっかけに、ヘミは再び、ソンジャおばさんの初恋の相手探しを再開する。 【目次】 まぶしい便り 参考文献 著者あとがき 訳者あとがき 【著者】 ペク・スリン 短編小説「嘘の練習」(2011年京郷新聞新春文藝)でデビュー。2015年、2017年、2019年若い作家賞、2018年文知文学賞、李海朝文学賞、2020年現代文学賞、韓国日報文学賞。著書に短編集『惨憺たる光』『夏のヴィラ』(書肆侃侃房刊)『フォーリング・イン・ポール』、掌編小説『今夜は消えないで』、中編小説『親愛なる、親愛なる』、エッセー『やさしい毎日毎日』『とても久しぶりに幸せだという感じ』、近刊に『春の夜のすべて』などがある。 カン・バンファ 岡山県倉敷市生まれ。岡山商科大学法律学科、梨花女子大学通訳翻訳大学院卒、高麗大学文芸創作科博士課程修了。梨花女子大学通訳翻訳大学院、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー、同院アトリエなどで教える。韓国文学翻訳院翻訳新人賞受賞。和訳書にペク・スリン『惨憺たる光』『夏のヴィラ』、チョン・ユジョン『七年の夜』『種の起源』、キム・チョヨプ『地球の果ての温室で』『派遣者たち』『惑星語書店』など。児童書の韓訳も手掛ける。著書に『일본어 번역 스킬(日本語翻訳スキル)』(共著)。
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-2025年2月16日没後80年 彼の詩を読みながら、ゆかりの地をたどり、彼の歩いた地と彼の心を感じてほしい。 空を仰ぎ、星をかぞえ、 時代の朝を待った尹東柱(1917−1945) 自選の19篇を中心にした日韓対訳選詩集 韓国で最も愛される澄明な詩群 詩人の生涯を詩と写真でたどる旅 日本語と韓国語の詩をそれぞれ収載 【目次】 はじめに 2023 シンガポール 体感と独断による正直現地情報 シンガポール絵日記 2023 インド 体感と独断による正直現地情報 インド絵日記 2024 ウズベキスタン+日帰りタジキスタン 体感と独断による正直現地情報 ウズベキスタン、日帰りタジキスタン絵日記 2024 内モンゴル 体感と独断による正直現地情報 内モンゴル絵日記 2025 ふたたびのインド 南インド絵日記 あとがき 【著者】 尹東柱 1917年12月30日、旧満洲の北間島(現・中国延辺朝鮮族自治州)生まれ。1941年ソウルの延禧専門学校(現・延世大学校)を卒業。1942年日本に留学。東京の立教大学を経て、京都の同志社大学在学中の1943年に治安維持法違反(独立運動)の容疑で捕えられ、懲役2年を宣告される。福岡刑務所に収監され1945年2月16日に獄死した。1948年遺族と友人たちにより、尹東柱が遺した詩集『空と風と星と詩』が出版された。 伊吹郷 1940年生まれ。1984年『尹東柱全詩集 空と風と星と詩』(記録社/影書房)翻訳出版。1990年李陸史詩文集『青ぶどう』、1991年宋友恵著『尹東柱評伝』の抄訳版『尹東柱 青春の詩人』を筑摩書房より出版。 尹仁石 1956年生まれ。成均館大学校名誉教授。尹東柱の甥。尹一柱の長男。遺族代表として、長年にわたり保管していた尹東柱の遺稿・遺品を、2013年に尹東柱の母校・延禧専門学校(現・延世大学校)に寄贈。『写真版尹東柱自筆詩稿全集』(民音社、1999年)、『空と風と星と詩―原本対照尹東柱全集―』(延世大学校出版部、2004年)の編集に参与。
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-ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、聲[こえ]の旅人、その作品と生涯へ読者を招待する。渾身のハーン論を一挙集成し、大幅に加筆&集成した「大増補&改訂新版」。たくさんの絵図・写真も掲載する。 ギリシャ、アイルランド、米国、マルチニークをめぐり歩き、1890年に、40歳を前にしてラフカディオ・ハーンは来日した。 盲目の女性芸能民の三味線、行商人の下駄のひびき、大黒舞[だいこくまい]の踊りと歌、道ゆく笛の音……。富国強兵に突き進む近代化のなかで「雑音」として切り捨てられた口承文芸の調べ、民衆の暮らしの音が、ざわめきとなってハーンの耳を圧倒する。 シンシナーティやマルチニークでの濃厚な声もまた、潮騒のようにハーンに押し寄せる。「海の声は…たくさんの声がかもしだすざわめき」なのである。 このざわめきを聴き取るために、ハーンが小泉セツに怪談を語らせるさい、彼女にこう求めた――「ただあなたの話、あなたの言葉、あなたの考でなければ、いけません」。セツのそばで耳の孔をおしひろげながら、彼は「小泉八雲」となった。 凍てつく息を男の顔にふきかける「雪おんな」。耳をひきちぎられる琵琶弾きの盲僧「芳一[ほういち]」。変わり果てた故郷の姿に絶望する「浦島[うらしま]」。 小泉セツ、女たち、病者、獣、死者がざわめく声に、ハーンは耳の奥で、何かを聞いたのだ。 【目次】 【Ⅰ】ハーンの耳 序 文字の王国/大黒舞/ざわめく本妙寺/門づけ体験/ハーメルンの笛吹き/耳なし芳一 考 【Ⅱ】ハーンと女たち 語る女の系譜 「女の記憶」という名の図書館 【Ⅲ】ハーンと文字 文字所有者の優位から文字の優位ヘ:カフカ・ハーン・アルトー 盲者と文芸:ハーンからアルトーへ 【Ⅳ】宿命の女 「おしどり」とマゾヒズム 怪談 浦島太郎 【Ⅴ】ハーンと世紀末 ラフカディオ・ハーンの世紀末:黄禍論を越えて ハーンを交えて議論してみたいこと 【著者】 西成彦 西成彦 1955年生。立命館大学名誉教授。専攻はポーランド文学、比較文学。他の著書として、『森のゲリラ 宮澤賢治』(平凡社ライブラリー版 2004)、『ターミナルライフ 終末期の風景』(作品社 2011)、『胸さわぎの鴎外』(人文書院 2013)、『外地巡礼――「越境的」日本語文学論』(みすず書房 2018)、『多言語的なアメリカ 移動文学論 Ⅲ』(作品社 2024)ほか。また訳書として、ショレム・アレイヘム『牛乳屋テヴィエ』(岩波文庫 2012)ほか。
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4.3象徴学を専門とする著名な大学教授ロバート・ラングドンは、プラハを訪れていた。最近恋仲になった気鋭の純粋知性科学者キャサリン・ソロモンの講演を聴くためだ。講演でキャサリンは、人間の意識にまつわる驚くべき発見について解説した著書を発表予定だと話した。しかしそれは、何世紀にもわたって人々が信じてきた通念を脅かしかねないほど斬新な内容だった――。 残忍な殺人事件が起こってラングドンは大混乱に巻き込まれ、キャサリンは原稿とともに突然姿を消す。物語がロンドン、ニューヨークへとひろがるなか、ラングドンは懸命にキャサリンをさがしながら謎を解明していく。そして、未来の科学や謎めいた伝承と苦闘したすえに、ある秘密のプロジェクトに関する衝撃の真実を知る。それは、人間の心についての常識を根底から覆すものだった。
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5.0「エンタメの原点、シェイクスピア。 大先輩の偉大さに打ちのめされています。」三谷幸喜(脚本家) 嫉妬に狂い家族を破壊した男を、女は許せるのか? ロマンス劇の金字塔! シチリア王は妃ハーマイオニと親友ボヘミア王の密通を疑う。親友の暗殺を臣下に命じ、妊娠中の妻を投獄し、生まれた赤子を捨てるが……(『冬物語』)。ブリテン王女と身分ちがいの結婚をして宮廷を追放されたポステュマス。伊達(だて)男に王女の操(みさお)が奪えるかという賭けをもちかけられ……(『シンベリン』)。嫉妬に狂い家族を破壊した男を、女は許せるのか? 著者の人生に重なるロマンス劇の金字塔! 徹底解説&注釈で物語の真意がわかる! 【本作を楽しむ5つのポイント】 ・晩年のシェイクスピアの代表的ロマンス劇。上演多数の名作! ・日本初! ライムを全訳した決定版。リズムにもこだわっているから音読すると気持ちいい! ・嫉妬に狂った心が、家族と人生を破壊する。再生のセカンドチャンスはあるのか? ・家族を捨て、20年の時を経て、家族のもとへ戻ったシェイクスピアの人生との共通点 ・最新研究に基づく徹底解説&詳細な注釈付き! The Winter's Tale & The Tragedie of Cymbeline by William Shakespeare From The first Folio, 1623
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5.0あなたは僕を知らない。僕だって、あなたを知らない。 エジプト、カイロ。親に決められた既定路線の人生を歩む新婚の医師ターレクは、 ある日魅力的な青年アリーと出会い、その平穏な未来は一変した。 保守的な地域での同性愛と不倫は疑惑と波紋を呼び、そして物語は思わぬ方向へと転がり始める・・・。 喪失と欠落、そして家族の愛を描く珠玉の文芸作品。 カナダのフランス語圏の作家のデビュー作にしてフランスで大ヒット。フェミナ賞とルノードー賞の最終候補となり、「高校生が選ぶフェミナ賞」やリブレール賞(フランス版本屋大賞と呼ばれている)ほか様々な賞を受賞した、話題の一作。 [著者プロフィール] エリック・シャクール 1983年カナダのケベック州モントリオール生まれ。エジプト人の両親を持つ。パリ・ドーフィンヌ大学を経てモントリオール大学で国際関係論の修士号を取得した。 金融業界で働く傍ら小説を執筆。第一作である本書は2023年カナダでの出版後フランスでも刊行されたちまち人気となり、同年度の「高校生が選ぶフェミナ賞」を受賞したほか、フェミナ賞とルノードー賞の最終候補に選ばれた。翌年にはリブレール賞、フランコフォニー五大陸賞などを受賞。 現在はモントリオール在住。 [訳者プロフィール] 加藤かおり(かとう・かおり) フランス語翻訳家。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。訳書にガエル・ファイユ『ちいさな国で』、エルヴェ・ル・テリエ『異常【アノマリー】』、ダヴィド・ディオップ『夜、すべての血は黒い』、ブリジット・ジロー『生き急ぐ』(以上早川書房)、アントニオ・カルモナ『サヨナラは言わない』(小学館)、セシル・トリリ『ちぐはぐなディナー』(講談社)ほか多数。 [原題] Ce que je sais de toi
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-主人公はハリウッドの辣腕映画プロデューサー、モンロー・スター。 才覚と野心でのし上がり、映画製作の現場に君臨するこの男を待ち受けるのは、運命を揺るがす出会いと悲劇の影――。 創作メモに当たる「ノート」を含む未完の遺作が村上訳で甦る。 その早すぎる死の直前まで、フィッツジェラルドが書き続けた最後の長篇小説。
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3.850年ぶりに湖の封印が解かれるとき、追放された悲劇の皇后の伝説が幕を開ける――。歴史収集の旅をする聖職者チーは、ある時立ち寄った湖のほとりで、ひとりの老女に出会う。亡き皇后の侍女だという彼女に導かれ、チーは皇后が幽閉されていた屋敷を訪れる。そこで老女は思い出の品々を手に語り始める。美しく残酷な真実と運命の物語を……。「あの方には異国風の美しさがあり、それはあたかも私たちには読めない言語のようだった。肩まで垂れた長い二本の三つ編みは墨汁のように黒く、顔は皿のように平らで、完璧に近い円形だった」――著者デビュー作にして2021年ヒューゴー賞受賞作。全2篇。
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-「作家の評伝として最高の出来映え」(AP通信)と賞賛されたフィッツジェラルドの決定版伝記を完全復刻。
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-ドストエフスキー作品の謎に最も迫った翻訳者・江川卓による魂の訳業、初文庫化。 大審問官の問い、ゾシマ長老の死…… カラマーゾフ(黒塗)家の一族をめぐる壮大な愛憎劇は、やがて殺人事件へと向かう。(第2巻) カラマーゾフ家の人々の間にさまざまな思惑が入り乱れる中、ついに父フョードルが殺害される。はたして犯人は―(第3巻) 父フョードル殺害事件の裁判が進展する一方で、カラマーゾフの兄弟たちはそれぞれに転機を迎えていた。やがて、あの夜の真相が明らかになる。 彼らは、ロシアは、そして人類の運命は――「現代の予言書」として読み継がれてきた一大叙事詩はついにクライマックスへ!(第4巻)。 ※本コンテンツは、中公文庫『カラマーゾフの兄弟』1~4巻を合本化したものです。
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3.0中世ヨーロッパを代表する騎士道物語として愛され、今日でも様々な文化芸術に大きな影響を与えつづけるアーサー王物語。その起点をなすのが本書『ブリタニア列王史』であり、『アエネーイス』の主人公であるアエネアースの子孫ブルートゥスが紀元前12世紀にブリタニア王国を建設してから、ブリトン人が追放されサクソン人による支配がはじまるまでの二千年近くに及ぶ歴史がダイナミックに物語られる。本書を通じてその生涯や事績がはじめて体系化されることとなったアーサー(アルトゥールス)王や魔術師マーリン(メルリヌス)らの活躍が鮮烈な印象を残す、ロマンス文学の先駆的古典。
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4.0恐怖が、再定義される── 『ゲット・アウト』の監督・ジョーダン・ピールが送る 黒人作家たちによる恐怖の最前線 【ローカス賞】、【ブラム・ストーカー賞】、【英国幻想文学大賞】受賞! 【世界幻想文学大賞】最終候補作! 『ゲット・アウト』『アス』『NOPE/ノープ』で世界に衝撃を与えた映画監督・脚本家ジョーダン・ピールが編集を手がける、全編書き下ろしによるブラック・ホラー短篇集。 本アンソロジーに収録された19の作品では、奴隷制度の記憶、公民権運動のトラウマ、移民としての分断されたアイデンティティ、そして現代社会の見えざる暴力など、超自然の恐怖だけでなく、アメリカ社会に深く根を下ろした不正義や歴史的暴力といった“現実”の〈悪夢〉が描かれる。 作家陣には、N・K・ジェミシン、ンネディ・オコラフォー、レベッカ・ローンホース、タナナリーヴ・ドゥーら国際的に高く評価される作家たちが名を連ね、新進気鋭の書き手も多数参加。また、ジョーダン・ピール自身による序文も収録されている。 ローカス賞、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞を受賞したほか、Esquire、CrimeReads、シカゴ公共図書館の「年間ベストブック」にも選出された。また、英・ガーディアン紙は「今年最高のアンソロジーであるだけでなく、時代を超えて語り継がれる一冊」と絶賛している。 ブラック・ホラーの最前線を記録する、必読のアンソロジー。 あなたがまだ見ぬ恐怖が、ここにある──
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-『ソールズベリー伯爵夫人とエドワード三世』上下2巻、は『三銃士』や『ホロスコープ』という歴史小説を書いて世界文学史上に金字塔を建てたアレクサンドル・デュマが1836年から新聞連載小説として世に出した最初の歴史小説である。時は1337年、ロンドンのウェストミンスター宮殿での宴会における「サギの誓い」と言われるロベール・ダルトワの挑発で始まった。イングランド国王エドワード3世がフランス王の正当継承権を賭けてフランス王国へ挑戦するところから英仏百年戦争は開始された。ウォルター・スコットに触発され、フランスに歴史小説を誕生させようと意欲満々の若きデュマの精力みなぎる作品となった。ソールズベリー伯爵夫人はエドワード三世の横恋慕で悲劇の最後を遂げるが、ガーター勲章のエピソードで英国史に残った。この小説はエドワードとソールズベリー伯爵夫人アリックスの悲恋の物語と1377年に没するまでエドワード3世が執念を燃やした王位継承戦争の年代記と言うべきものである。
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-ゲットーで何が起き誰がどう生きたかを記録 1941年3月から43年12月まで設置されたクラクフ・ゲットー。その地で薬局を営むポーランド人の著者は、退去命令に従わず居座り、ユダヤ人への支援者、ナチの暴虐の記録者として2年半を過ごす。本書はその克明な回想録である。 ※本書は、大月書店刊『クラクフ・ゲットーの薬局』の電子書籍版です。 【目次】 初版まえがき 第二版まえがき 第一章 ゲットーの設置と編成―新しい生活―新しい知人たち 第二章 比較的平穏だった日々―最初の移送行動―ドイツの秘密諜報機関員―九四二年六月二日から四日にかけての移送行動 第三章 陸軍中尉ブスコ―一九四二年六月八日の移送行動―ゲットーの縮小―困難な生活環境―一九四二年十月二十八日の移送行動―迫害された人々の様子 第四章 プワシュフ収容所―ゲットー域の再縮小―プワシュフでの刑執行―移送者の確かな消息―ゲットーAとB―クラクフ以外から入ったゲットー住民―薬局閉店の試み―規則の厳罰化―児童施設の設置 第五章 プワシュフ収容所への移送―一九四三年三月十三日および十四日のゲットー撤収行動―心理的謎―病人および子どもたちの殺害―悪夢の光景 第六章 死者の町―ゲットーの「清掃」―ゲットーの死刑執行人―ユダヤ人警官の運命―一九四三年十二月 第三版あとがき チェスワフ・ブジョザ 訳者あとがき 登場人物一覧 【著者】 タデウシュ・パンキェヴィチ(Tadeusz Pankiewicz) タデウシュ・パンキェヴィチ 1908年サンボル(現・ウクライナ領)生まれ。ポーランドの薬剤師一家の出身。クラクフのヤギェウォ大学薬学部を卒業し薬学修士の学位を取得後、1933年父から “鷲”薬局を引き継ぎ店主となる。1947年本書の第1版刊行(1995年第3版)。1993年死去。 田村和子 たむら・かずこ ポーランド児童文学翻訳家。1944年生まれ。著書に『ワルシャワの日本人形』(岩波ジュニア新書)、訳書に『強制収容所のバイオリニスト』(新日本出版社)など。
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3.5H・P・ラヴクラフトの熱心な愛読者であり、とりわけ「クトゥルーの呼び声」に魅せられて自らも神話創造に参入したロバート・E・ハワードによるクトゥルー神話作品のほぼ全てを網羅する、21作品600ページを収録。 キンメリアのコナンが活躍した“ハイボリア時代”と『無名祭祀書』を結びつけるミッシング・リンクともいうべき無名の小説断片や、格闘ゲームでおなじみの”シュマ・ゴラス”の出典である「黄金髑髏の呪い」など、商業未訳作品を複数収録していることに加え、既訳のある作品についてもクトゥルー神話研究家・森瀬繚が語彙のひとつひとつを徹底的に監修。 ----------- 収録作品: アーカム(詩)/無名の断片(断章)/影の王国/黄金髑髏の呪い(断章)/バル=サゴスの神々/暗黒の民/大地の妖蛆/妖蛆の谷/スカル=フェイス/夜の末裔/黒の碑/屋根の上の怪物/憑かれた指輪/われ埋葬にあたわず/墓所に棲みつくもの/黒熊は噛む/例の屋敷(断章)/翡翠の神(断章)/アッシュルバニパルの炎/蹄のあるもの/庭園への扉(断章) -----------
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-作品に投影された、体験にもとづく多様性と身体性、アメリカへの批判精神。 従軍体験がもたらしたナイーヴな身体性と意外な成育歴から見えてくる多様性が、ヘミングウェイ作品の核をなしていた! 『老人と海』『敗れざる者たち』『移動祝祭日』『日はまた昇る』の4作品に、気鋭の翻訳家・アメリカ文学者が、ファンも驚愕し納得する独自の視点から光を当てる。特異な幼少期を送り、死線をくぐり抜けた彼だからこそ持ちえた、多様性への共感や深い倫理観、自然への畏敬の念。それらは、揺れる人格とセクシュアリティに悩んだヘミングウェイの意外な一面と共振する。その「弱さ」や「ナイーヴィティ」こそが、アメリカ文学を変える傑作を生み出す源だったと著者はいう。新たな解釈や読み解きから、ヘミングウェイ作品の現代性を詳述、いまこそ読むべき作品の本質を提示する。 2021年10月に放送されたNHK「100分de名著 ヘミングウェイ スペシャル」テキストに描き下ろし1章を加えた「別冊 100分de名著 集中講義」シリーズ最新刊。著者は2025年度・朝日新聞「文芸時評」欄を担当するなど、文学作品の読み解きの新しさに定評がある。その切れ味と深い説得力が発揮された、知るだけでなく「面白く読める」解説書。
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 15編の物語に出てくる植物に焦点を当て、お話のストーリーを楽しむとともに、咲き誇る花やハーブの知識を得るのに最適な本! 中学生の高学年ぐらいから大人まで、眼で見て楽しめるよう編集し、イギリスの物語の世界を知るだけでなく、そこにある美しい自然や庭園、花の世界を共に味わう〈ちょっと変わった〉案内書。 ▶各作品の編集項目◀①あらすじ ②注目したいセリフと描写 ③関連コラム(花、ハーブ他) 目次 はじめに ■パート 1 ゆっくり読みたい物語 1 ピーターラビットのおはなし 2 秘密の花園 3 不思議の国のアリス 4 幻のスパイス売り 5 小川のほとりで(『のばらの村のものがたり』シリーズより) 6 トムは真夜中の庭で 7 グレイラビットのたんじょう会 8 さくら通りのメアリー・ポピンズ 9 プー横丁にたった家 10 床下の小人たち 11 あかつきのパン笛(『たのしい川べ』より) 12 時の旅人 ■パート2 短くてかわいいお話 1 小さいお嬢さまのバラ 2 うさぎのフローレンス はじめてのダンスパーティ 3 チューリップ畑 ■この本で扱った作品の作者紹介 ◉ビアトリクス・ポター ◉フランシス・ホジソン・バーネット◉ルイス・キャロル ◉アリソン・アトリー ◉ジル・バークレム ◉アン・フィリッパ・ピアス◉P・L・トラヴァース◉A・A・ミルン◉メアリー・ノートン◉ケネス・グレーアム ◉エリナー・ファージョン◉リス・ノートン ◉イギリスの昔話より ■注目したいイギリスのイラストレーター 1 シシリー・メアリー・パーカー 2 バーナデット・ワッツ 3 ケイト・グリーナウェイ ■あとがき/主な参考文献
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-本書はポーの作品をめぐる批評集である。三部立て構成となっており、1つの章で1つの作品をとりあげ、厳密に読み解いてゆく。それぞれの章では異なった作品を扱うが、各部ごとに連関したテーマを含む。第1部は「ゴシック・ホラーの喪とメランコリー」。ポーのゴシック的な詩や小説における「横たわる」ことのモチーフに焦点を絞り、それが有する現世主義に対する「脱中心性」を読み解く。第2部は「SFの時空間」。ポーのSF的な冒険小説を取り上げ、そこにおける時空間や身体の超越の問題について批評し、「いま・ここ・わたし」を起点とする人間中心主義的思考を「脱中心化する想像力」を抽出することを試みた。第3部は「起源のミステリーとミステリーの起源」。一見すれば推理仕立ての小説にみえるポーの作品が、本当に謎解きを本質としたものなのか?その疑問から仮面の下にひそむモチーフに注目し、「脱中心性」をあきらかにする。そして補足補完すべく3つのエセーを付し、ポーの短篇小説を翻訳する。それは、ポー文学の脱中心性を知る上で、格好のものとなるのが小説だからである。 目次 序章 なぜ「脱中心」なのか 第1部 ゴシック・ホラーの喪とメランコリー 第1章 死者と横たわること――「大鴉」をめぐって 第2章 横たわることの詩学――「アッシャー家の崩壊」の謎をとく エセー(1)「夜の訪問者」 第2部 サイエンス・フィクションの時空間 第3章 空気の隠喩――「ハンス・プファールの比類なき冒険」探索 第4章 自我なき海への郷愁 ――「アーサー・ゴードン・ピムの冒険」SF・脱中心 エセー(2)萩尾望マンガの脱中心性 第3部 起源のミステリーとミステリーの起源 第5章 太陽の指針――「黄金虫」と「スタイラス」の図像学 第6章 脱中心の詩学――「モルグ街の殺人」における遊戯の規則 エセー(3)動物好きに捧ぐ 付録 翻訳「楕円形の肖像」「週に三度の日曜日」 「ウイサヒコンの朝」「本能と理性」
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-自然、人間、本当の豊かさとは?「現在の都市文明には限界が感じられる…喜びは金では買えない。自然のなかで暮らし、愛情や友情や隣人愛に包まれ、よく食べ、よく飲み、よく遊ぶことが必要である…現代文明が等閑に付してきたもの…そのことを考え直そうというような心境にさせるような着想が、ジオノ文学には満ちあふれている」(「天性の小説家 ジャン・ジオノ」(彩流社、2014))。本書は、ジオノ作品をこれまで10冊以上翻訳してきた山本氏により描かれた、その物語の魅力を広く紹介しようとする作品論集である。翻訳してきたジオノ文学作品の巻末に付してきた解説を、すでに出版からかなりの時間が経っているため、それぞれの解説文をより的確な表現となるよう練上げ、さらに多角的に、作品相互を論じることで、ジオノ文学に近づけるようにした。何といってもジオノの作品の中では『木を植えた男』が最も知られているので、まずは『木を植えた男』についての文章を冒頭に置き、次いで反響がよかった『青い目のジャン』を2番目に並べることにした。最後は『喜びは永遠に残る』についての文章にしたいため、3番目には、その『喜びは永遠に残る』と密接な関わりを持っている『本当の豊かさ』を配置し、そして、さらには個人的に大いに気に入っている謎に満ちた画家の物語『逃亡者』を4番目に登場させることとした。著者は、今後の読者からの評価次第であるとはいうものの、このジオノ論の第2集、第3集の刊行に向けた準備も始めている。 目次 『木を植えた男』――森林は水を生み出し人々を招き寄せる 『青い目のジャン』――子供の成長の記録 『本当の豊かさ』――鄙びた田舎に潜んでいる豊かさ 『逃亡者』――謎に包まれた画家の生涯 『喜びは永遠に残る』――それは、途方もなく美しい夜だった
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-ASLE-Japan/文学・環境学会 設立30周年記念出版 自然と環境を人文学の観点から照射する論考を収載 環境人文学の蓄積と現在地を提示する 目次 ◉はじめに──エコクリティシズムの「森」へようこそ【浜本隆三/甲南大学准教授】 ◉序章(鼎談)──環境文学研究のこの10年【小谷一明(新潟県立大学教授)×喜納育江(琉球大学教授)×結城正美(青山学院大学教授)】 第一部 環境理論の先へ ◉人新世文学のオルタナティブ──梨木香歩『ピスタチオ』における緑のエージェンシーと気候変動のサバイバル【芳賀浩一(城西国際大学教授】 ◉〈クィア・エコロジー〉〈トランスエコロジー〉の系譜学【森田系太郎(立教大学大学院兼任講師】 ◉空飛ぶサカナ──『ダーウィンの悪夢』とイメージの転移【塚田幸光(関西学院大学・大学院教授】 ◉「大デンマーク」幻想の解体と「幸福の国」への出発──ヘンリク・ポントピダン『幸福のピア』におけるユラン半島地方の開発【奥山裕介(摂南大学非常勤講師】 ◉映画『リリーのすべて』にみるトランスジェンダーの身体と自然表象【岩瀬由佳/東洋大学教授】 ◉映画『キラー・オブ・シープ』における日常としての屠畜場──1960~70年代のロサンゼルス・ワッツ地区を背景に【江口真規/筑波大学助教】 ◉隠喩としての猫を棄てる──動物愛護管理にまつわる構造的暴力と作家の倫理的選択【波戸岡景太/法政大学教授】 第二部 新しい共生を探して ◉(対談)文学と環境のはざまで【小谷一明×野田研一(立教大学名誉教授)】 ◉私とタスマニア──ピーター・コンラッドに関する考察【黒﨑真由美/関東学院大学教授】 ◉院生組織活動の歴史【伊東弘樹(早稲田大学大学院博士課程)・江川あゆみ(早稲田大学大学院博士課程)・笠間悠貴(明治大学非常勤講師)】 ◉アイヌ文学のニュー・アニミズム【松﨑慎也/群馬県立女子大学教授】 ◉ロバート・ハスとW・S・マーウィン──環境詩学による考察【高橋綾子/兵庫県立大学教授】 ◉つながる日加の水俣病──『ミナマタ』とアイリーン・美緒子・スミスの貢献【岸野英美/近畿大学准教授】 ◉柄谷行人の倫理と震災後文学【和氣久明/米国空軍士官学校助教授】 第三部 ネイチャーライティングの向こう側 ◉『テンペスト』の海をめぐって──見えない海、曖昧な人間【高橋実紗子/聖心女子大学専任講師】 ◉石牟礼道子と音──自伝『葭の渚』が語るサウンドスケープ【中村優子/順天堂大学、中央大学非常勤講師】 ◉石牟礼道子『十六夜橋』の自然と記憶【山田悠介/大東文化大学講師】 ◉ハイチ文学と環境──マリ・ヴュー・ショヴェ『愛、怒り、狂気』を中心に【齊藤みどり/都留文科大学教授】 ◉テリー・テンペスト・ウィリアムス『大地の時間』における見つめ返す風景──惑星を想像するネイチャーライティング【清水美貴/青山学院大学大学院博士後期課程】 ◉マーガレット・アトウッド『洪水の年』にみる言語の物質性と循環【巖谷 薫/早稲田大学大学院博士課程、日本工業大学非常勤講師】 ◉宮沢賢治と牛──モナドロジーから読むその宇宙【大田垣裕子/兵庫県立大学名誉教授】 ◉清潔さの暴力──フランク・ノリスの『ヴァンドーヴァーと野獣』におけるにおい【菅井大地/愛知学院大学准教授】 ◉終章 環境的不服従の未来【辻 和彦/近畿大学教授】 ◉おわりに【青田麻未/群馬県立女子大学専任講師】
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-ジョージ・エリオットのリアリズムの進展と作者自身の道徳観の成熟の関係を探る。ジョージ・エリオットは道徳の基礎にシンパシー(共感)を置き、彼女のリアリズムの目的は、読者の登場人物への理解とシンパシーを高めて「人類の団結」を図ることであった。本書は「リアリズム」を、「登場人物の心理や外部事実の合理的で詳細な記述があること」と「物語中の出来事の蓋然性が高いこと」という基本的要件で捉える。そして物語中のシンパシーに乏しい人間の描き方のリアリズムの進展に焦点を当て、その背後にある作者自身のシンパシーの対象が拡大していることを読み取る。作品のリアリズムの進展は作品から見て取ることができ、また作者のシンパシーの対象の広がりはシンパシーに乏しい人間の描写に顕著に表れるからである。エリオット作品のリアリズムを通時的に論じる場合、初期作品はリアリズムに沿っているが中期作品以降は「道徳的寓話」であると見なすのが、エリオット存命の時代から20世紀半ばまでの定説であった。1948年に発表されたF・R・リーヴィス『偉大なる伝統』以降は、エリオットの後期作品が19世紀イギリスのリアリズム小説の傑作と見なされるようになった。しかし作品に登場するシンパシーに乏しい人物は、相変わらず個人もしくは社会にとって一律に有害であると考えられ、彼らの被害者的心理や、個人もしくは社会に対する影響の吟味はなされなかった。本書は従来の見方とは異なり、シンパシーに乏しい人物が、家族や社会にとって有害で追放されるか改悛させられねばならない存在から、後期作品においてシンパシーに乏しいままで家族をより大きな絶望から救うという肯定的価値をもつ存在へ、あるいはその被害者的心理も描かれる存在へと変化しているというリアリズムの進展をテキストの「描写」および「物語の時代背景」から検証する。このことは同時に、作者のシンパシーの対象の拡大を示している。 目次 第1章 エリオットの小説のリアリズム 第2章 エリオットの道徳観とシンパシーとリアリズム ──「ジャネットの悔悟」の比喩表現を例として 第3章 語り手の心の鏡に映らないヘティ ──『アダム・ビード』のリアリズム再考 第4章 洪水の結末とシンパセティックなトム ──『フロス河畔の水車場』におけるリアリズムの進展 第5章 シンパシーとシンパシーの欠如の交差 ──『ミドルマーチ』における道徳観の成熟とリアリズムの進展 第6章 『ダニエル・デロンダ』におけるモダニズム的手法の採用 ──人間の根本的善性への信頼の揺らぎ
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-米文学史は植民地時代を含め、アメリカ例外主義と絡み合い、それに立ち向かってきた。アメリカ例外主義とは、米国は神に選ばれた自由と民主主義を標榜する大洋に挟まれた例外的な近代国家であり、世界の民主化を主導する義務がある、という考え方である。それはプロテスタントの教義によって強化され、国家の根幹をなし、黙示録的な終末を演じることで米国を帝国化してきた。マサチューセッツ植民地の形成から独立戦争、メキシコ戦争、そして南北戦争と世界の終末を思わせるレトリックで政治家や説教師、ジャーナリストらが差し迫った危機を語り、国民の団結を呼びかけてきた。20世紀以降も二つの大戦に、大恐慌、ベトナム戦争、そして9・11の攻撃、イラク戦争など大きな危機に遭遇する度に、民主主義の伝播、善悪の戦い、対テロの戦いなど、多くの言説が用いられ国民を方向づけていた。現代においてこの終末論的想像力は、第三次世界大戦という用語により世界に拡散され、プロバガンダとして大いに利用され、世界的パンデミックの不安と恐怖までもが後押しする形で、国民は将来の見通しを立てることができないような強迫的な寄る辺なさに苛まれることになってしまっている。トランプ政権において露わになることとなったアメリカ例外主義への反発からは、自国優先の政策に舵を切ることを望む人々も多く出てきている。そして、トランプの支持基盤であった極右集団QAnonは、トランプを世界の終末を阻止するためにやって来た救世主として扱っているのである。今を生きる我々が、この事態、現実を、乗り越える手立てを見出すことは容易ではない。本書は、米国が体験してきた不安や恐怖、それらを克服する過程を、作家たちがいかに描いてきたかを読み解き、そうした危機的状況やそれに乗じた終末論的プロパガンダ、それと絡み合うアメリカ例外主義の展開と分裂を視野に入れ、文学作品が、いかなる意義を生成してきたのかを読み取ろうと試みるものである。 目次 寄稿「アメリカ大統領と終末論的想像力」(巽孝之・慶應義塾NY 学院長) 「〈風景〉とマニフェスト・デスティニー」(成田雅彦・専修大学教授) 「わたしたちはどう生きるか―エマソンの『自己信頼』におけるヴァルネラビリティの倫理」(生田和也・長崎県立大学准教授) 「独身女性が書く家事手引書―キャサリン・ビーチャーのベストセラー改訂版」(秋好礼子・福岡大学准教授) 「反時代的考察者としてのヘンリー・アダムズ」(砂川典子・北海道教育大学准教授) 「絶滅という思想―十九世紀アメリカにおける環境終末論」(高橋勤・九州大学名誉教授) 「『大理石の牧神』における絵画と身体」(川下剛・京都産業大学講師) 「『ハックルベリー・フィンの冒険』とその批評的冒険にみる(非)ヘーゲル的精神の冒険」(吉津京平・北九州市立大学非常勤講師) 「『船乗りビリー・バッド』における黙示録的運命」(竹内勝徳・鹿児島大学教授) 「ポストアポカリプス的想像力とデモクラシーの「未来」」(渡邉克昭・名古屋外国語大学教授) 「彼らの夢は実現したのか——トウェインとフィッツジェラルドに見る夢の迷走」(江頭理江・福岡教育大学教授) 「『怒りの葡萄』の終末描写に見るスタインベックのアメリカ像」(前田譲治・北九州市立大学教授) 「「丘の上の町」は安住の地か」(綱智子・佐賀大学・久留米大学 非常勤講師) 「「終わり」のない旅―スティーヴン・キングのダーク・タワーの先に」(宮内妃奈・福岡女学院大学教授)
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-プラネタ賞受賞のスペイン・亡命作家の幻の名作が甦る! フラメンコに象徴される『情熱的実体』の解明に奔走する女子大生……レヴィ=ストロースを始め文化人類学の時代の風を受け、迷信、呪術、生活習慣などに大きな関心が向いた時代に、アメリカの女子大生ナンシーがスペインのセビーリャに留学したとの設定で、アメリカの娘からすれば、スペイン社会は「ジプシーの世界(情熱的実体)」そのものであるとするナンシーの博士論文を巡って、人や社会、歴史が縦横無尽に疾走する様がユーモアあふれる筆致で描かれる、スペイン社会のもう一つの世界“ロマ社会”を表現しきった長編ロマン! 目次 第1部 アンダルシアがナンシーを発見する 手紙 I ナンシー、セビーリャを発見する 手紙 Ⅱ ナンシー、ジプシー世界に入る 手紙 III ナンシーと映画館の冒険 手紙 IV ナンシーのハイキングとカフェの集会 手紙 V ナンシーならびにしゃべる鹿 手紙 VI ナンシーと金色スズメ蜂 手紙 VII 中庭、ライバルそして魔法の井戸 手紙 VIII ナンシーと花 手紙 IX ガスーレスでの通夜 手紙 X ガスーレスでの顛末 第2部 ナンシーの博士論文『ジプシーの世界』 I 方向指定の座標 II ニューヨークからの手紙とバルデペーニャのジプシー III バル1・2・3にて IV 移り気なナンシーとブッダ V アカデミックでドラマチックなナンシー VI 歴史的考察 VII ジプシーの弁証法ならびに《ホッカノ・バロ》 VIII いくつかの適切な代理人 IX ブレリアス、ファルッカ、グラナディーナス X ソレアとトリアーナのジプシー XI 《毒》、ボレロとログローニョの書肆 XII カルセレラと彷徨える魂 XIII サエタ XIV 笑いと戦慄の幕間 XV 《大悪霊》、ベルセブブと隻眼達 XVI カントゥエソがガンディーについて意見を言う
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-20世紀的な「日常」を問い直し、ポスト・コロナの地平を探る、野心的な米文学論! コロナ・ウイルスが引き起こしたパンデミックによって、私たちはいま、従来の20世紀的な日常とはすこし異なる「非日常」の世界を生きている。 本書『非日常のアメリカ文学』は、コロナという人知を超えた災厄と対峙する知恵を、ヘンリー・ソロー、マーク・トウェイン、スコット・F・フィッツジェラルド、カート・ヴォネガットらの作品から、先住民作家ヴェルマ・ウォーリス、カリフォルニアのビッグ・サー文学作家やベイエリア現代詩の詩人、身体の日常/非日常を問うファット・リベレーション作家の諸作品まで、「非日常」という共通項を軸に探る。 本書が提案する「非日常」をアメリカ文学に探る試みは、単なる「アウトサイド」な文学の系譜をたどるばかりか、アウトサイドから日常を見直し、ひいては現代文明を問い直す視座をもたらすことになるだろう。コロナ禍とはつまるところ、これまでの文明社会の見直しが迫られた経験であったとはいえまいか。本書を通して、ポスト・コロナの地平を見通す視座を、十人のアメリカ文学研究者達が探る。
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第17課「シャルル・ボードレール『窓』『スー プと雲』」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第16課「ジョルジュ・サンド 『花たちのおしゃべり』」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第15課「イレーヌ・ネミロフスキー『舞踏会』」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第14課「オノレ・ド・ バルザック『砂漠の情熱』」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第12課「ギョーム・アポリネール『オレンジエード』」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 〈音声データ付き、ダウンロード方式で提供!〉 フランス文学を無理なく読んで、しっかりレベルアップ!<b/> 初級文法を終えた学習者に、無理なく読めて、かつ手ごたえのあるテクストに取り組んでもらい、中級へのレベルアップをはかりたい……。そんなフランス語教員共通の願いから、このアンソロジーは生まれました。いわゆる名作選ではなく、近現代を中心に、家族、友情、恋愛、都市生活、戦争、芸術、自然、動物など、多岐にわたるテーマの文章をそろえ、現代人の幅広い関心にこたえます。 テクストは20課で、難易度順に構成されています。本書は、そのなかの第11課「アルチュール・ランボー『夜明け』」」をピックアップした分冊版です。作品紹介と詳細な「読解のヒント」、巻末の「中級文法解説」は、自宅学習の大きな助けになるはずです。教室では辞書を用い、文脈に合った語義をていねいに選び出す訓練を重ねてください。末尾の「作者について」のコラムでは、かくも個性的なテクストを書いた作家たちの横顔をコンパクトに伝えます。(2020年初版)
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-本書は、古代ローマ「黄金時代」後期を代表する詩人オウィディウス(前43-後17/18年)が『変身物語』とともに手がけた、もう一つの代表作です。 愛する男女の往復書簡という体裁をとる『ヘーロイデース』、恋愛詩人としての本領を発揮した『恋の歌』といった初期作品で知られるオウィディウスは、愛を成就させるための技法を性的なものまで含めて赤裸々に指南する『愛の技術』を書いたことが一因となって、のちに流刑の憂き目に遭いました。そのあと後期の円熟を迎えるオウィディウスが唯一の叙事詩である『変身物語』とともに着手したのが、本書『祭暦(Fasti)』です。 ローマの祝日や祭礼の縁起をエレゲイア詩で歌うこの作品は、『金枝篇』で知られるジェイムズ・フレイザーをはじめ、多くの歴史学者、宗教学者、人類学者の関心を惹いてきました。月ごとに構成される本書は、しかし流刑のため未完に終わり、現存しているのは一月から六月まで、つまり一年の半分にとどまっています。今日はこの出来事があり、今夜はこの星座が見られ、明日にはあの祝祭が行われる……といった記述がカレンダーのように積み重ねられていく形式は、前例のない大胆な試みです。そのような大衆受けしそうな形式をとった本書で扱われるのが国家的な性格をもつローマの祭祀であることは一見矛盾しているように思えます。しかし、そのような自己アイロニーによるユーモアこそ、本書を文学的伝統の中で類を見ない稀有な作品たらしめていることもまた事実です。 大詩人が残したもう一つの代表作、初の文庫版をここにお届けいたします。 [本書の内容] 第一巻 ヤーヌス月 第二巻 フェブルア月 第三巻 マルス月 第四巻 アプリーリス月 第五巻 マーイウス月 第六巻 ユーニウス月 訳者解説 補 遺 ローマの暦 学術文庫版訳者あとがき 固有名索引
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-井戸で発見された溺死体のお腹から取り出された胎児。彼には大地の「水脈を聴く」能力が宿っていた──。 ひどい頭痛に悩まされるマリアムは井戸の深淵からの「おいで、おいで」という囁きに導かれ、ついには溺死体として発見される。しかし、その体には胎児が宿っていた。無事(サーレム)に救われたことでサーレムと名付けられた息子は、耳を澄ませると地中を流れる水の音が聴こえるようになる。その噂はあっという間に広がり、避けられ孤立するようになるが、水源を探し当て村を襲った干ばつから救うことで必要とされるようになる。その評判は遠方まで轟き、15歳の少年は「水追い師」として各地で引く手あまたになるのだが──。 アラビア半島に位置し、雨のほとんど降らない小国オマーン。地下水路(ファラジュ)による独自の灌漑システムは、峻険な岩山や荒涼とした砂漠の地を潤してきた。『バグダードのフランケンシュタイン』などが過去に受賞したアラビア語圏最高の文学賞「アラブ小説国際賞」に輝いた、水をめぐる傑作長編。 「気候変動や水資源の枯渇が世界的な課題となっている今日、この小説が描く「水に囚われる人間の姿」は、過去の物語ではなく、今まさに現代社会が直面する現実の縮図として読み解くことができる」(本書解説より) 【目次】 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章 第十章 第十一章 エピローグ 解説 訳者あとがき 【著者】 ザフラーン・アルカースィミー(Zahran Alqasmi) 1974年オマーン生まれの小説家・詩人。これまでに4冊の小説と10冊の詩集を刊行している。4作目となる『水脈を聴く男』(2022年)が、2023年度のアラブ小説国際賞(International Prize for Arabic Fiction)を受賞し、一躍注目を集める。 ⼭本薫 慶應義塾⼤学総合政策学部准教授。東京外国語⼤学外国語学部アラビア語学科卒業、東京外国語⼤学博⼠(⽂学)。専⾨はアラブ⽂学。訳書にエミール・ハビービー『悲楽観屋サイードの失踪にまつわる奇妙な出来事』(作品社、2006年)、アダニーヤ・シブリー『とるに⾜りない細部』(河出書房新社、2024年)など。 マイサラ・アフィーフィー(Maisara Afifi) エジプト出⾝。カイロ⼤学卒業後、1996年に来⽇。通訳者として働きながら、平野啓⼀郎『⽇蝕』、村上春樹『騎⼠団⻑殺し』ほか、森鴎外、太宰治、三島由紀夫らの⽇本語⼩説をこれまでに約20冊、アラビア語に翻訳している。
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4.8リアルで力強く、驚くべき知性と社会性を持った動物たちの世界――今こそ「本当のシートン動物記」に出会う、大人のための新訳・決定版! シートンの作品が好評を博したのは、動物たちの生態をありのままに生々しく描いたからだった。作品の根幹にあるテーマは人間と野生生物の共存であり、これは21世紀に生きるわれわれにとってもきわめて大きな関心事である。そして、シートンが描くのは「動物たちとのふれあい」などといったきれいごとではない。動物たちは、弱肉強食を基調とする自然界のきびしい摂理のなかに生き、恋の鞘当てもあれば不倫もあり、腹黒い策略もあれば失脚した者の煩悶もあり、新たな生命への讃歌もあれば老いへの恐怖もあり、とにかく人間よりも「人間くささ」に満ちている――。
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3.5「正義」は誰のものか??歴史に埋もれた冤罪を描く、衝撃のブッカーノミネート作 1952年、英国カーディフ。殺人事件の容疑をかけられたのは、港町で暮らす若きソマリ人船乗りだった。証拠ではなく偏見が、彼を追い詰めてゆく。実際の冤罪事件に基づき、多文化社会の光と影、司法の不条理、そしてひとりの男の誇りを描ききるブッカー賞候補作
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-本書は、英国の作家、A.A.ミルンが書いた児童文学の名作、『Winnie-the-Pooh』と『The House at Pooh Corner』の2作を現代風に翻訳したものである。 本書は三つのパーツから成り立っている。一つ目は2作品の訳文である。本文の翻訳に当たっては、訳として正確であることを期するのは当然であるが、多くの方々に親近感をもってもらえるよう口語表現を多用することを心がけた。冒頭の「現代風に翻訳した」とはそのような意味である。 二つ目は各章末の注である。ここでは、原文のなかの難解な単語や表現を著者なりに解説している。また、内容理解を深めるために参考となるような事柄も注のなかに記してある。 三つ目は本書の最終章「主なキャラクターについての寸評」である。ここでは、各キャラクターたちの特徴を簡単に述べるとともに、併せて、ミルンが描きたかった世界観・人間観について触れている。この20世紀初頭の英国に生まれた児童文学が、21世紀の我が国の現状を予言し、さらにそれに対する厳しい批判となっていることについて、例を挙げながら説明している。 最後に、本書は絵本の形を取っていないことを述べておく。プー・シリーズ2作品の魅力の一つにE.H.シェパードのイラストがあるが、本書では著作権の関係でイラストは一切使用していない。
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3.8北村紗衣さん推薦! SF/現代ホラーの産みの母の人生 『フランケンシュタイン』はメアリ・シェリーが十代で執筆した代表作だが、人口に膾炙している怪物の視覚的イメージが先行しているからか、この物語が誕生した伝記的な背景は、この有名すぎる作品ほどは知られていない。 メアリ・シェリーの作家人生は、彼女の両親である急進派思想家のウィリアム・ゴドウィンとフェミニズムの先駆者と呼ばれるメアリ・ウルストンクラフトの出会いから宿命づけられていたといえる。 本書で綴られるメアリ・シェリーの伝記的な情報は、『フランケンシュタイン』の思想のバックボーンと彼女が生み出したほかの小説や旅行記とどのようなつながりがあるかを理解するうえで、不可欠なものである。 メアリが実人生で体験する苦しみ――産褥熱による母の死、流産、夫パーシー・シェリーの死、生き残った一人息子をめぐる義父との協議など――と『フランケンシュタイン』以降のメアリ・シェリーの思想と行動も瑞々しい筆致で描かれている。 女性作家として、あるいはシングルマザーとして直面した問題意識がいかに形成され、作品として結実したか、余すことなく論じた記念碑的名著! [目次] 謝辞 第1章 遺産 第2章 ゴシックの叛逆 第3章 『フランケンシュタイン』 第4章 初期の女性の語り手──『フランス、スイス、ドイツ、オランダの一地域をめぐる六週間の旅行記』、『マチルダ』(一八一七~一八二一年) 第5章 『ヴァルパーガ』、『最後のひとり』、『パーキン・ウォーベックの運命』、そして新たな『フランケンシュタイン』(一八二一~一八三一年) 第6章 最後の仕事、一八三五~一八四四年 訳者解説 読書案内 図版一覧 訳注
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4.3全米図書賞受賞作家の最新作! 台湾グルメ×レトロ建築×女子共同生活 「あんたと一緒にいない日々は、とても寂しかった」 ワケあり住人たちが味わう未知の痛みと、百年前の台湾料理。 昭和十三年築の日式建築・四維街一号には、 四人の大学院生と酒呑み大家が暮らす。 一階は、BL作家の知衣と聡明でモテる小鳳、 二階は、苦学生の家家とシャイな乃云。 互いに秘めた想いを抱え食卓につく住人たちは、 あるとき『臺灣料理之栞』という古書を発掘する。 五人の孤独が手繰りよせた〈ある家族の苦い歴史〉とは――― ◆池澤春菜さん満腹◆ 「なんでこんなに懐かしいの? 四維街一号に、きっとわたしも住んでいた」
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-イラン生まれのクルド人ジャーナリストで難民となったベフルーズ・ブチャニーが、オーストラリアの悪名高いマヌス島の難民収容所に6年にわたって収容された実体験をもとに書かれた物語。本書は収容施設の監視の目を掻い潜って携帯電話のテキストメッセージとして書かれ、支援者の手によって出版された。 国家権力による恐怖と支配にさらされた人々の生を、鋭い観察眼と洞察力をもって克明につづったモノグラフでもあり、あらゆる抑圧に抗う究極の反戦文学、ポストコロニアル文学、そして収容所文学ともいえる。
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4.3Great Expectations by Charles Dickens, 1861 この新訳、最高!! ラストの意味が初めてわかった! 【これが本当の『大いなる遺産』だ】 貧しい少年ピップに譲られた謎の遺産…… 英国文学の金字塔×名作サスペンス! 推薦・中江有里(女優・作家) 「人を惑わせ、高ぶらせ、幸せの絶頂へ導き、時に傲慢にする。 そうわかっていても、人は恋と遺産に抗えない。」 「本作、オシャレすぎて、このオシャレさを説明できません!(ToT)」(by担当編集) 親のいない少年ピップは意地悪な姉に育てられる。唯一の味方は優しい義兄ジョー。その跡をついで鍛冶屋になるのが夢だ。ある晩、脱獄囚の命を救うが、その日を境に、不可解な出来事が起きる。何者かから譲られた莫大な遺産。謎の暴行事件。資産家の美しい養女エステラとの出会い。彼女に見合う男になろうと、故郷を捨ててロンドンへ紳士修行に向かうが……。文豪ディケンズの最高峰! 原文に忠実な新訳でラストの真意が初めてわかる! ★ここがスゴイ! 河合訳の5つのポイント 1.これは快挙! 今まで訳されずにきたセンスが良すぎる(ユーモラスで皮肉な)文体を見事に全訳! 2.言葉遊びや掛詞(かけことば)、隠喩(いんゆ)、演劇的セリフもすべて日本語で再現 3.既訳では描かれない、行間にあるロマンスを表現 4.ディケンズの生い立ちや作品背景がよくわかる解説(訳者あとがき)を20P掲載 5.没になったラストシーンも掲載。読み比べれば物語の真意がわかる! 【原文に忠実な新訳で、ラストシーンの意味が初めてわかる! これが本当の『大いなる遺産』だ!】 カバー図版/アンリ・マティス カバーデザイン/須田杏菜
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4.5「描かれた世界は情熱的で、目が眩くらむほど壮大で、 遺伝子レベルで心を揺さぶる魅力を放つ」 解説・角幡唯介(探検家・ノンフィクション作家) 冒険SF小説の金字塔を読みやすい新訳で! ロンドンの若き新聞記者マローンが恋焦がれる才女グラディス。 彼女との結婚の条件は「英雄的な行いを為すこと」。博覧強記で乱暴者の 科学者・チャレンジャー教授が話す「未知の台地と恐竜の存在」。 その真偽を確かめるため、マローンとチャレンジャーはロクストン卿、サマリー教授と船で旅立つ。 たどり着いた台地で彼らを待ち受けるものとは――。 心揺さぶる冒険SF小説の古典的傑作を読みやすい新訳で贈る。
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-本書は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》で知られる「トリスタン伝説」の最古の姿を伝える書の本邦初となる全訳です。 ケルト起源のトリスタン伝説は、11世紀後半から12世紀初頭にウェールズとブルターニュに伝えられ、語り継がれていったと推測されます。多様に発展した物語を12世紀後半に古フランス語でまとめたものがトリスタン伝説の原典(エストワール)ですが、残念ながらこれは散逸しています。 しかし、この原典に基づいて物語を作る人たちが現れます。その一人が同じく12世紀後半に活躍したフランスの詩人ベルールでしたが、作品は断片しか残されていません。それと同じ時期、同じ原典に基づいてドイツ語で物語を書いたのがアイルハルトであり、その作品こそ本書にほかなりません。完全な姿で残されたこの作品によって、私たちは原典の内容を推測できます。ここにはトリスタン伝説の最古の姿があるのです。 韻文で書かれた本書は、その後「民衆本」と呼ばれる散文作品として流布し、16世紀にはハンス・ザックスによって戯曲『トリストラントと美しきイザルトの悲恋』に翻案されました。一方、ベルールと同様に原典(エストワール)を基にして12世紀後半にフランス語で『トリスタン物語』を書いたトマの系列としては、ドイツ語で叙事詩『トリスタンとイゾルデ』を書いたゴットフリートがおり、ワーグナーに着想を与えました。 複雑な経緯をたどって伝承されたトリスタン伝説は、現代でも小説にされたり(ローズマリー・サトクリフ)、映画にされたり(ジャン・ドラノワ)、多くの人を魅了し続けています。その最古の姿がようやく日本語で味わえるようになります。 [本書の内容] 1 聴衆への前置き 2 トリストラントの出生と養育 3 トリストラントのマルケ王宮廷への旅 4 トリストラントとモーロルトの闘い 5 トリストラントの傷を治すためのアイルランドへの旅 6 トリストラントのアイルランド求婚の旅 7 愛の媚薬 8 ブランゲーネ 9 トリストラントとイザルデの愛をめぐっての揉め事 10 有罪の判決と逃走 11 森での生活 12 アルトゥース騎士ヴァルヴァーンとトリストラント 13 追放後のトリストラントとイザルデの一度目の逢瀬 14 ハヴェリーン王のもとでのトリストラント 15 追放後のトリストラントとイザルデの二度目の逢瀬 16 追放後のトリストラントとイザルデの三度目の逢瀬 17 ケヘニスとガリオーレ(1) 18 追放後のトリストラントとイザルデの四度目の逢瀬 19 追放後のトリストラントとイザルデの五度目の逢瀬 20 ケヘニスとガリオーレ(2) 21 トリストラントとイザルデの愛の死
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3.7“ありそうもないこと”を具象化した グロテスクな犯人像に脳のざわめきが止まらない。 犯罪小説とフーダニットの区分を帳消しにする早すぎた傑作。 ――法月綸太郎氏(作家) 風光明媚なノーフォーク海岸沿いの保養地イーストレップスで、老婦人が友人宅を訪れた帰りにこめかみを刺されて殺害される。 続けて第二、第三の殺人が同様の手口で繰り返され、街は謎の殺人鬼「イーストレップスの悪魔」の影におびえることに。 地元警察はついに有力な容疑者を確保するに至るのだが……。 意を凝らしたミスディレクションと巧妙なレッドへリング、白熱の裁判シーン、フーダニットとしての完成度。 映画『白い恐怖』原作者による、本格ミステリー黄金期の知られざる傑作を本邦初訳!(解説・塚田よしと) 探偵小説オールタイムベスト10のひとつ。 ――ヴィンセント・スタリット(作家、シャーロック・ホームズ研究者) 鮮やかで独創的な連続殺人犯(シリアル・キラー)のフーダニット。 素晴らしい海辺の舞台設定と巧妙なツイスト。 ――マーティン・エドワーズ(作家・評論家)
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3.3ホメロスによるギリシア英雄譚『オデュッセイア』。男性的な叙事詩の中で、女たちの声は語られてこなかった。 オデュッセウスの帰還を待つ20年、妻ペネロペイアは国を守るため、噂話に耳をふさぎ、無鉄砲な息子を育て、財産狙いの求婚者らを追い払う。 その内心はいかなるものだったのか。12人の女中たちはなぜ殺されたのか――。 『侍女の物語』『誓願』の巨匠アトウッドが想像と語りの才を発揮した、新たなる傑作! 解説・小川公代 ★2025年6月 NHK Eテレ『100分de名著』(M・アトウッド『侍女の物語』『誓願』) 指南役:鴻巣友季子
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3.8WOMEN TALKING by Miriam Toews,2018 「これは必読!『侍女の物語』から抜けだしてきたよう」マーガレット・アトウッド(←NHK Eテレ「100分de名著」で話題) 「私たちは子どもを守りたい」 教団で起きた大量レイプ事件。「悪魔の仕業(しわざ)」「作り話」とされてきたが、実は身内による犯行だった。実話にもとづくサスペンス! あるキリスト教系団体の村(コロニー)で起きた大量レイプ事件。最年少の被害者は3歳の少女。それは「悪魔の仕業(しわざ)」「作り話」とされたが、実は身内の8人の男による犯行だった。彼らを保釈させようと村の男たちが外出する2日間。女たちは子どもを守るために未来を選ばねばならない。何もしないか、闘うか、村を出ていくか。文字の読めない女たちの会議(ウーマン・トーキング)が始まる。実話にもとづくサスペンス。マーガレット・アトウッドが「必読」と絶賛。第95回アカデミー賞脚色賞映画、原作! 「これは必読! この驚異的で、悲しく、衝撃的にして心を打つ小説は現実の事件を元にしており、まるで『侍女の物語』から抜けだしてきたようだ」M・アトウッド 「痛烈……悪の本質、自由意志の問題、集団的責任、文化決定論、そして何よりも赦しについてふれる」ニューヨーク・タイムズ カバーイラスト/千海博美 カバーデザイン/鈴木成一デザイン室
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4.0巨大魚と格闘する老漁夫の姿を通して描く、現代の神話。 20世紀アメリカを代表する作家、アーネスト・ヘミングウェイ。 彼の生前に発表された最後の小説にして、ピュリッツァー賞・ノーベル文学賞を受けるなど世界的に高い評価を得た『老人と海』。 劇作家・批評家の福田恆存によるその翻訳は、日本でも初訳(1955)以来、改訂を重ね、累計500万部を超える大ベストセラーとして読み継がれてきました。 本書は、いわば、日本語訳としてこれまで最も愛されてきた福田訳の、待望の新版です。 今回新たに、ヘミングウェイ作品および『老人と海』が日本でいかに読まれてきたかを示す、作家たちのエッセイを巻末に収録。 〈一生に一度は読みたい、文学の底力を示す名作〉として今も親しまれ続ける小説の、装い新たな復刊です。
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-チャールズ・ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』の英文すべてに日本語訳と、必要に応じて単語の意味や解説がつけられ、英文の朗読ファイルも用意されています。 「英文の朗読を聞きながら英語の本を読む」という "視覚や聴覚などの五感をフルに活用して体全体で英語を感じる、まったく新しい読書体験" をお楽しみください。 『クリスマス・キャロル』は、経済的に成功したどケチで自己中心的な金貸しの老人スクルージが、クリスマスに過去・現在・未来の三人の精霊と出会い、時空を超えた旅をすることで改心するという、あまりにも有名な作品です。 目 次 はじめに この本の使い方 STEVE I 第一章 マーレイの幽霊 STAVE II. 第二章 第一の精霊 STAVE III. 第三章 第二の精霊 STAVE IV. 第四章 第三の精霊 STAVE V. 第五章 エピローグ あとがき
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4.5白い犬の後を追いかけてきたタロコ族の少年と、自分を売ろうとする父親から逃げてきた少女。山の深い洞穴で二人は出会い、心を交わす。 少年が少女の村に、少女が少年の村へ入れ替わり出ていくのを、巨人は見つめていた。 山は巨人の体であった。人々に忘れ去られた最後の巨人ダナマイ。彼の言葉を解すのは、傷を負った動物たち。 時を経て再会する二人を軸に、様々な過去を背負う人々を抱えて物語は動き出す。 舞台は原住民と漢人、祖霊と神が宿る台湾東部の海豊村。 山を切り崩すセメント工場の計画が持ち上がり、村の未来を前にして、誇りを守ろうとする人々と、利益を享受しようとする人々が対立する。 巨人がなおも見つめ続ける中、かつてない規模の台風が村を襲い、巨人と人間の運命が再び交差する――。 物語を動かすのはつねに、大いなるものに耳を傾ける、小さき者たち。 ★2023年台湾書店大賞小説賞受賞 ★「博客来」ブックス・オブ・ザ・イヤー入選
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 『タイタス・アンドロニカス』は、1588年~1593年あたりに書かれた最初の悲劇で、残酷な復讐劇である。この作品はローマの歴史劇の設定であるが、フィクションである。残酷趣味のタイタス皇帝が、奴隷らをライオンのいるアリーナに投げ込んで殺されるのを見て楽しんでいたが、ある日アンドロニカスという奴隷を投げ込んだら、ライオンが平伏した。皇帝が理由を問い質すと、ライオンの足に棘(とげ)が刺さっているのを抜いてやったことがあるとのことだった。それが題名になった。この作品には「わけもなく簡単に人を殺し、死体を洞窟に投げ捨て、その妻を自らの性欲を満たすために、兄弟二人で凌辱し、自分たちの罪を告げる手段を失くすために、その両手を切断し、舌を切り取る」話がある。人としてあるまじき行為である。天罰が下るのか。報復行為があるのか。正義とは何かを考えさせられる作品である。シリーズの「13」番目の表紙の色は黒くした。
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5.0監視の目を盗み、ゾンダーコマンドによって撮影された四枚の写真から、アウシュヴィッツの真理に触れることはできるのか。
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-「少女レベッカ」の続編と言ってもよく、「少女レベッカ」の場合とおなじように、女性としての自覚にめざめてゆく一人の少女の心理過程が現実的なさまざまなエピソードとともに語られていく。ただ前作とちがい、それらの出来事は、レベッカ自身の手記や回想という形で描かれ、記述がいっそう内面的になっている。後半には、青春期を迎えた十八歳のレベッカが登場して、繊細な感受性をたたえた、静けさと内省を愛する一人の女性に生長していく。作者は、米国フィラデルフィアで生まれの作家で、英米の若い世代から熱狂的に迎えられ、やがてその名はひろく世界に知られるようになった。
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-原題は「サニーブルック農園のレベッカ」…ほこりだらけの田舎道を、旧式な馬車が、がたごと揺れながら走っている。馬車の窓から黒い髪の少女が乗っているのが見える…そういう情景がバックとなって、空想家で、たいへんな情熱家でもあるレベッカの、少女時代から、しだいに女としてめざめてゆく過程を描いた物語だ。発表されるとすぐ評判となり、『若草物語』とならんでアメリカ家庭小説の古典として、いまなお愛読されている。女史は米国フィラデルフィア生まれの作家で多くの児童文学を書いたが、幼児教育にも力を注いだ。
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-「四十歳になって、突然私は女たちを理解したいという欲求に駆られた。そのときまで、私は小説のなかで女を、男の登場人物の単なる相手役にすぎないような扱い方をしていた。しかし、実のところ、私は一種類の女しか知らなかったのだ。急に、他の女たちとも出会いたいと思った……デニーズと出会ってから、私は以前とおなじ目線で女と愛をもはや見られなくなった」これはシムノンの告白で、デニーズとは彼がニューヨークで出会った女であり、本作はその時を綴った自伝的小説と見られている。
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-ハガードの秘境冒険小説『洞窟の女王』の続編。前作で猿のミイラのような醜怪な姿となってコールの洞窟で息絶えた不死の女王アッシャの、なんと18年後の復活! 『洞窟の女王』の最後で、ホレース・ホリーはつぎのように、はっきりとアッシャの復活を予言していた。「科学と現実の世界に関するかぎり、これでこの物語は終る。レオと私に関しては、この物語がいつになったら終るのか、私には推測もつかない。二千年以上も前にはじまった物語なのだ。漠とした遠い未来まで、はるかにつづくかもしれない」…そして復活は、輪廻の思想の国チベットを舞台にして始まる。
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-イギリスの植民地だった第一次大戦後のインドを舞台にした物語。英国人女性アデラはインド在住の治安判事で婚約したロニーのもとを訪ねてくる。二人はインド人医師アジズや哲学者ゴッドボール、英国人教授フィールディングらと近しくなる。だがある時、アジズの提案でマラバー洞窟へ出かけ、アジズとアデラは二人だけで洞窟に入ることに。アデラは原因不明の錯乱状態になって洞窟から出てきて、性的暴行を訴え、ついにアジズを告訴する。裁判の経過とともに、英国人とインド人との軋轢が高まっていく。最終的には和解にたどり着くが、それには長い道のりが必要だった。英国の作家フォースターの代表作。
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-運命の激流、許されぬ恋、新訳決定版 19世紀半ば、セント・オグズの町はずれを流れるフロス河と、代々受け継がれてきた水車の周辺を庭にして、トムとマギーは育った。お転婆な妹を兄がからかい仲よく遊ぶ牧歌的な生活は、父がある裁判に負けたことから一変。マギーは質素な禁欲生活を送るようになるが、やがて兄の元学友で父の宿敵の息子フィリップや大好きな従妹の婚約者スティーヴンに出会ったことから、運命がさらに大きく動き出す……。 本書は、夏目漱石が読むべき英国女性作家に挙げ、プルーストやヴァージニア・ウルフなど後の欧米文学に大きな影響を与えた作家の、最も自伝的とされる作品である。マギーに投影される著者の膨大な教養は、既訳書では長い訳註つきで物語が分断される形で紹介されることが多かったが、本書では生き生きした描写、脚注なしでスムーズに読め、心に深く響く。激しく切ない愛の物語、新訳決定版。
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-ロンドンの出版社で、殺害された男の死体が発見される。 警察の捜査が難航するなか、社で刊行される原稿をめぐり、奇怪な人物たちが動きだす。 キリストの遺物=聖杯が、じつは英国に実在する!? この至高の宝をめぐり、聖と邪の争闘がいまはじまる…… トールキンやC・S・ルイスらの文芸集団〈インクリングズ〉に参加、ドロシイ・セイヤーズの『神曲』英訳に影響をあたえ、T・S・エリオットから作品を「超自然的スリラー」と称賛された、作家チャールズ・ウィリアムズのデビュー長編、ついに登場。
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5.0Anne of Green Gables By Lucy Maud Montgomery,1908 これからの女の子たちへ。かつての女の子にも。 【NHKアニメで話題】 本当の子じゃない。でも、家族になれた。――永遠の名作を新訳&完全訳で。 偏屈な年寄り兄妹マシューとマリラは、孤児院から働き手として男の子を引き取ることに。なのにやってきたのは、赤毛でそばかすの少女アン。マリラはアンを追い返そうとするが、アンは号泣し…。自然豊かな美しい島を舞台に、夢見る少女が起こすおかしな騒動。そそっかしくて失敗ばかりのアンが感動をもたらします。泣いて笑ってキュンとする、世界中の少女が恋した名作を新訳・完訳で。アンが親しんだ英文学の徹底解説も掲載。 「新訳 赤毛のアン」シリーズ、1~3巻を、2ヵ月連続刊行 1巻『新訳 赤毛のアン』発売中 2巻『新訳 アンの青春』2025/4発売 3巻『新訳 アンの初恋』2025/4発売 英文学研究の第一人者だから訳せた、文学少女としての『アン』。 訳者あとがきで、アンが親しんだ文学作品についても徹底解説! カバーイラスト/金子幸代 カバーデザイン/鈴木成一デザイン室 ※本書は二〇一四年三~四月に角川つばさ文庫より刊行された児童書『新訳 赤毛のアン(上) 完全版』、『新訳 赤毛のアン(下) 完全版』を一般向けに大幅改訂したものです。なお、訳者あとがきは書き下ろしです。
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4.5ペドロ・パラモという名の,顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく.しかしそこは,ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった…….生者と死者が混交し,現在と過去が交錯する前衛的な手法によって紛れもないメキシコの現実を描き出し,ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作.(解説 杉山 晃)※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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4.3詐欺師チチコフは戸籍面では生きていることになっている死んだ農奴を買いあつめて,これを抵当にして銀行から金を引出すため,ロシア各地を遍歴する.作者はこの遍歴のなかで,随所に道徳的破綻者を発見し,それに対して鋭い社会的解剖を加え,腐敗したロシアの全貌と,その生活につつまれた「夢」とを白日の下に暴露して,誤った社会制度と国家組織に痛烈な批判を下す.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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