哎呀!!好好玩!!
こちらの本、今年の2月に映画館で見て面白くってぇ。原作の日本語訳に大喜びで手を出した次第。映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦」の原作本です。
あとがきで作者の余兒(ユー・イー)さんが書いていたのですが、映画を見た熱心な日本人ファンの方は日本語訳の本が出る前から原書を翻訳機を使って熱心に読んでらした方が多くいたとか。すごい熱量のファンの方たちだぁ。
この映画、登場人物が多く、揃いも揃ってキャラが濃く、映画を見た人によってハマるキャラが違うんですよね。私はルイス・クーの演じた龍捲風(ロンギュンフォン)にずっと痺れていました!九龍城砦を統括する人徳溢れた龍兄貴!
ただ、本を読みだすと、初っ端から映画と全く違うので困惑。
手に取る前から、原作は映画と全然違うという噂は聞いてたんだけれど、設定のみならず、キャラも映画と原作じゃ全然違ってて本当にびっくりしました。映画の信一(ソンヤッ)も器用なタイプではあったけどそんな喋るタイプじゃなかったよね?とか、四仔(セイジャイ)の医者設定が原作には無いんだー……とか、飯屋の店主の阿七(アチャッ)がさー……とか。多分、この調子でやってると百物語どころか千夜一夜物語になりそうなので、この辺でやめます。原作から映画にするにあたり、ありとあらゆることが組み替えられていました。
主人公の陳洛軍(チャン・ロッグワン)も映画にあった「陰」が原作には無い!
映画に出てこない原作キャラが何人かいて、そうしたキャラと主人公のロマンス要素がガッツリあるから「誰よ。その女。」状態でした。
読んだ人の中にはあまりにも映画と違っていることがかなりショックだった方もいたみたいですね。私が映画で好きだった龍兄貴は一番映画と原作でキャラの差が無かったように思います。映画の王九(ウォンガウ)ファンの方は大丈夫だったのかなぁ……(別人みたいでしたね?)
私の一番思い入れのあった龍兄貴のキャラ造形が原作と映画で一番差が無かった、というのもデカかったのかもしれないのですが、私は原作をすごく面白く読みました。映画は惜しみないアクションが連続する派手な映画だと思っていたけれど、原作は人間が演じないので、限界が無く、もっと飛び抜けるようなアクションが連続していました。作者の余兒さんは日本の少年漫画が好きだそうです。スラムダンク、ドラゴンボール、ワンピース、明日のジョー、ジョジョといった要素が中国任侠スタイルにいっぱい詰め込んでありました。「読んでいる間ずっとハイテンションで味の濃いものを食わせてもらえる。わんこそばスタイルで。」という感じです。これ、全然個人的な感覚で書いているんですけど、原書は中国語だから紙面は全部漢字なんですよね?わぁ。目に迫る。きっとすごい強い漢字が列挙してあるに違いないなぁ……。
初っ端からずっと「ケレン味しかないのか」という書き方をしていて恐縮です。でも、「そうはならんやろ」な展開が満載でありながら、登場人物たちの会話は軽快で活き活きしてて、九龍城砦の賑やかな感じはちゃんと伝わってくるんですよね。
私、歴史は全然ダメな人間だけど、この本も、その映画も、ストーリーを楽しんでいたら自然と「時代感」を感じることができて、言うほど軽くない読後感がありました。
これも作者のあとがきに書いてあったのですが、この本を映画化するとしたら、九龍城砦のリアルな再現ができないなら実写化しないつもりだったらしくて。
人が拳で数メートル飛ぶようなストーリーだけれど、背景と時代感のリアリティがちゃんと力を注いでいるから、ぶっ飛んだ拳法の使い手でもちゃんと「生活感」をまとっている。
本から実写に移行するに至って、本の登場人物たちをもう少し規格内の「人間」に収めないと、この「実在感」を消しちゃうから……ということであれば、この大改造も納得できるような気がします。
こんな人間離れした黒社会があってたまるか!というストーリーですが、1980年代、香港に確かに「九龍城砦」というものがあって、そこで沢山の人々が生活していた、という今は無い時代を感じることができる作品でした。
九龍城砦Ⅰは九龍城砦が撤去される目前の話になっていますがⅡは過去編になり、より九龍城砦の歴史を書き込んだ作品になっているそうです。次の巻も読まなくちゃ。
手触りのある文化を作品に落とし込めるのはそれぞれの文化圏に属した人が書くからこそですね。
これからもお互いの文化に敬意を払い、尊重し合い、交流し続けられる社会であることを心から望みます。原作を読んで、これは日本に暮らしている人間には書くことは難しい物語だと改めて感じました。
ああ!!おもしろかった!!