1930年代のカリフォルニアを舞台に、貧しい渡り労働者のジョージとレニーを主人公とした小説。あらすじだけ読んで労働者の悲哀を描いた作品かと思っていて、じっさい厳しい境遇は出てくるのだが、あまり労働そのものを描いた場面は登場せず、どちらかというと人間関係で苦労する様子が描かれる。結論もまた人間関係に起
...続きを読む因するものである。レニーは読んでいてややもすれば肩入れをしたくなるような無垢な人物であることがわかっているので、その彼が殺されてしまうというこの結論は結構つらかった。「夢オチ」ではないかと期待してしまったほどである。しかし、(作中でそうとは明言されていないが)知的障碍を抱えているが無垢であるという一種のステレオタイプのような人物像は、いまの価値観でいうとどうであろうか。もちろん執筆当時の背景を無視して現在の価値観で断罪しようというつもりはない。ただ、やはりどこか受け容れがたい部分も感じてしまったのは事実である。あと、レニーはあまりにも怪力すぎないか? そこもちょっと気になってしまった。よい小説ではあるし心に響くものもあるのだが、やはり「古さ」も否めない。