ミシェル・ウエルベックの作品一覧
「ミシェル・ウエルベック」の「ある島の可能性」「H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「ミシェル・ウエルベック」の「ある島の可能性」「H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
下巻の方が動きがあって飽きずに読める。不穏なタイトルから結末は壮絶な破局が描かれると思っていたけど、ポールとプリュダンスの愛が肯定的に描かれていて意外だった。
老いによる性的な魅力の減衰、病気といった年齢を重ねることの肉体的なネガティブな面と価値観の多様化や急速な変化、インターネットテクノロジーの隆盛によって齎された精神的な満たされなさ、孤独、年齢を重ねることの空虚さといった現代社会を生きる壮年の人のリアルを描いている。
ウエルベックの人間や世界に対する露悪的だったり、皮肉的な眼差しだけじゃなく、オカルト的だけどウィッカの輪廻転生を信じるプリュダンスのように滅びることの別の可能性みたいなものを示唆することが一味違ったウエルベック作品だと思った。
Posted by ブクログ
人は、自らの美学を体現する領土を立ち上げながら生きる。それは、家庭であったり、アート、小説であったり、思想であったり、建築物であったり。そして、納得如何に関わらず、領土はいつのまにか画定されていて、そのうちに死が訪れる。
美を追うことは、しばしば政治やマーケット、いわゆる「社会」的な障壁によって阻まれる。領土がつねに道に面しているように、私たちは社会から逃げることはできない。
ただ、そこにいて、何もせず、不安に駆られながら、プロセスがひとりでに動き出すのを待つ。
また、人は、移動を繰り返しながら生きる。多くの土地に出向いて、多くの他人と出会い、そのたびに草が踏み分けられ、足跡が増え、道ができた。
地図は全てを説明する。地図には、いくつかの行き止まりがあり、いくつかの合流が描かれている。あるいは、領土の分割があり、統合がある。どうしようもない不安も、どうしようもない断絶も、全てが地図に描かれる。
地図は何度となく改訂され、私たちはそれを見ながら、再び移動を繰り返す。
死ぬとき、私たちは一人で自分の領土に戻らざるをえない。画定してしまった領土、完成された領土に戻って、何枚かの地図のバックナンバーを畳んで、死を待つほかない。ただ、その孤独は、美に長く忠実にいた人ほど、不可欠で豊かなものになると思う。そして実際、そのような人々にとって、死はもはや恐怖ではないのだ。
Posted by ブクログ
難しいところと、
分かりやすいところが、
ねじねじと巻かれて
出来上がった作品という感じ。
生物学と化学と物理学の区別さえ
はっきりとつけられない私にとっては、
とにかくそのあたりの描写がよく分からなかった。
(一般教養が足りない自覚があります。
読み終わってからAIに聞いて、少し学びました!)
でも「そんなのは分からなくても全然平気〜」と、
読みながらはとりあえずバンバン切り捨てて
読んでいきましたが、
問題なくストーリーを追えました。
そしてストーリー、面白かった。
フランス特有の暗さ、
救いようのなさ、
タブーという概念は存在するのか?
と疑いたくなるほどの過激さが
私は好きなので、
とても興味深く最後まで読みました。
読むきっかけとなたったのは
YouTubeの『バキ童チャンネル』。
(インスタで教えてもらった)
どうして気になったかというと、
正直に言います!!
主人公が自分のお◯ん◯んを
定規で測るシーンがあったり、
そんなことをヨーロッパ人男性が
気にするようになったのは
アメリカ人のせいだ!
というような説明がされていたりすると、
動画の中で紹介されていたから笑
(確か)
それですごく気になってしまって笑
差別的な言葉はめちゃくちゃ出てくるし、
主人公の性欲の異常さは普通にアウトだし、
犯罪だし、
沢山の人には全然おすすめできないです。
バタイユさんの『眼球譚』ほどではないけど、
やはりフランス文学の
そこまでやっていいの?的な
挑発的なところが私は好きです。
刺激的です笑
そしてフランスではとにかく
性欲について色々な思考を
巡らせているのだろうか。
そんな中でも、
弱者に焦点を当てる言葉や、
この世の根本がどのようにして世界大戦後から
ひん曲がって育ってきたかを
辛辣に指摘する言葉が、
この本の重要さを物語っていると思う。
(ヒッピーの時代とか本当に何だったの?)
切ないし苦しいけど、
読めて良かった。
Posted by ブクログ
『クトゥルフ神話』の創造者として今日まであらゆる分野で影響を与えている怪奇幻想作家のH.P.ラヴクラフトの作品と生涯を独自の目線で語った、小説家ミシェル・ウエルベックのデビュー作。
1991年に発行した本文に、作者本人による「はじめに」(1999年)とスティーヴン・キングによる序文「ラヴクラフトの枕」(2005年)を加えた普及版を底本にしているとのこと。
怪奇幻想文学を読む上でラヴクラフトは外せないとのことで、最近発売されていた新潮文庫のシリーズを読んでみたがいまいちノリが掴めず断念していた。魅力を知る人の感想は作家の世界に入る足がかりになるものなので、ラブクラフトを「熱烈な偏愛で語る」という裏表紙の文句に縋るように購入。しかし、キングの序文で早々に心配になる。嫌な予感は当たるもので、呪いの何たるかを知りました。元気な時に読みましょう。
端的に言ってしまうと、時代と社会に徹底的に合わない人間の不運の物語だった。副題は世界と人生に「抗う」というよりは「呪う」が相応しい気がする。ラブクラフトは『クトゥルフ神話』という呪われた物語を世に出すつもりはなかった。ラブクラフトにとって創作というのは、居場所のない類稀なる想像力を慰めるための場所であって、誰かのために書かれた物語ではない。故に多くの共感を得たというのも、あまりにも皮肉な話である。本書を読む人は、救いのない人生にとって死こそが唯一の救いなのだという絶望と正面から対峙することとなる。
人生に希望の光を当てることが創作物の役割の一つであるが、現実問題として夢も希望も失くした人々は世界に山ほどいる。夏休みが明ける頃に自殺をするこどもたちがいる。光に怯えるようになった人をどうやって救うことができるのかわからないが、『クトゥルフ神話』には絶望と親しむような力があるのかもしれない。これも人間なんだなと本書を読みながら何とも言えない気持ちになった。
「幸」とういう字は、手枷の形が字源であるという説がある。なぜ手枷が「幸せ」なのかというと、死罪は免れたからだそうだ。それを思えば随分と幸せな時代を生きているのだが、『クトゥルフ神話』が多くの人の救いになるような時代がまた来るのかもしれない。などとだんだん悲観的になってくる。
少しでも前向きに捉えるなら、歴史には決して残らない闇に消えていった人々の代弁者と言えるかもしれないが、そんなものは気休めにもならないか。しばらくは引きずりそうな本でした。
Posted by ブクログ
愛をテーマに書かれる異父兄弟の物語。美しい幼馴染と相互に惹かれながらも結局は愛への興味を持たず、研究に没頭する天才科学者の弟ミシェルと、学生時代に壮絶ないじめを受け、モテない青春時代を送ったことで、性愛に卑屈になりながら執着する文学教師の兄ブリュノ。
兄弟の物語がそれぞれ章ごとに語られ、時に交差する様な構成となっている。兄は性に振り回され人間性が壊れた様な人物像として描かれ、一方で弟は知的だが、奥手すぎてタイミングを逃しまくる。どちらも最終的には恋仲になりそうになった人を亡くす。愛に対して全く異なる向き合い方をする兄弟が、結末では同じ様な着地を迎える点が印象的だった。
エピローグの書き方が面白った。この小説自体がミシェルの研究をもとに誕生した「新人類」が、旧人類=人間へ向けて記した記録であることが明かされ、小説自体の現代社会への批評性みたいなものを感じた。小説の中でちょこちょこ研究や人に関する補足説明がカッコ書きで入るので、読みながらフィクションなのかノンフィクションなのかが曖昧に感じていたが、エピローグを読んでなるほどと思った。