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Posted by ブクログ
ウエルベックの処女作。冒頭のデブス二人がミニスカートは男の気を引きたくて履いているわけではないと高らかに宣言するのに対し「くだらない。粕の極み。フェミニスムの成れの果て」と主人公が毒づくのは苦笑してしまった。ウエルベックは相変わらず差別的だが、ある種の絶望した男性を描くのは本当に上手い。
自由主義が経済市場や恋愛市場に行き渡ること=すなわち闘争領域の拡大が本作のテーマである。Twitterでよく論じられるキモカネ論(キモくてカネのないおっさん)にも通じる内容で、それは主人公の観察対象であるティスランを見ているとよく分かる。彼は経済的には成功しているものの、性的行動は満たされていない。性的行動は一つの社会階級システムであると本書は語っているわけだが、生まれつき醜く容姿の悪い人間はそれを得ることができない。カネで代替することはできるものの、そこに愛はなく、狭い闘争領域の中に愛は存在しない。これは残酷な真実であり、どうしようもなさを感じてしまう。処女作ということもあって後の作品と比較するとやや淡々とした運びであり、救済も答えもないのだけれど、ウエルベックの暴きたい欺瞞がわりと露骨に出ている秀作である。
Posted by ブクログ
初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事によって読み手の世界も拡大していくとあとがきで分かった。
仕事、恋愛、性生活とテーマが3つあるけど、登場人物全てが日常に潜む人間ばかりでよりリアリティを帯びる。
主人公は観察者であり、観察する事により自分の内部で噛み砕いて分析をするけれど、取り込むことはせず、だけど敏感に感じやすい体質なのかマイナス面ではかなり感化されて苦しそうに感じた。
最初はうっすらとだけど進めていくと、その感情や分析が重く苦しいものに様変わりしてしまう。
哲学的描写なのでもっと色々考えたりしたいけど、あと何冊かウエルベックを読まないとそこら辺はなんとも言えない。
確かに面白かったけど、その先にまだまだ何か色んなものが隠されている感じがした。
時には含みを持っていた書き方だったりしたから、作品をもっと読んでそれが何かを加味していきたい一冊だった。
Posted by ブクログ
フランスを代表するベストセラー作家であるミシェル・ウエルベックのデビュー作。フランス現代思想のような衒学的なタイトルであるが、その意味するところはシンプルであり、痛切なものだ。
近代の資本主義は、企業やそこで働く個人を市場という絶え間ない闘争領域に追い込んでいく。最初は生産・販売などの経済的活動が闘争領域で繰り広げられたが、止む事のない資本の自己増殖能力は徐々に闘争領域を拡大させていく。その結果、恋愛そしてセックスまでもが闘争領域に飲み込まれていく。
身の回りを見渡してみれば良い。良いセックスができる人間はますますそのチャンスを増大させる一方で、そうした機会が与えらない人間はますますそのチャンスを逃していき、格差が増大していく。
常に現代社会の残酷な一面を切り取り、小説という形態にテーマを昇華させ見事な作品に仕立て上げるウエルベックの方法論はデビュー作からして確立されていた。そうしたことを感じた一冊。
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