ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧
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ネタバレ『クトゥルフ神話』の創造者として今日まであらゆる分野で影響を与えている怪奇幻想作家のH.P.ラヴクラフトの作品と生涯を独自の目線で語った、小説家ミシェル・ウエルベックのデビュー作。
1991年に発行した本文に、作者本人による「はじめに」(1999年)とスティーヴン・キングによる序文「ラヴクラフトの枕」(2005年)を加えた普及版を底本にしているとのこと。
怪奇幻想文学を読む上でラヴクラフトは外せないとのことで、最近発売されていた新潮文庫のシリーズを読んでみたがいまいちノリが掴めず断念していた。魅力を知る人の感想は作家の世界に入る足がかりになるものなので、ラブクラフトを「熱烈な偏愛で語る -
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愛をテーマに書かれる異父兄弟の物語。美しい幼馴染と相互に惹かれながらも結局は愛への興味を持たず、研究に没頭する天才科学者の弟ミシェルと、学生時代に壮絶ないじめを受け、モテない青春時代を送ったことで、性愛に卑屈になりながら執着する文学教師の兄ブリュノ。
兄弟の物語がそれぞれ章ごとに語られ、時に交差する様な構成となっている。兄は性に振り回され人間性が壊れた様な人物像として描かれ、一方で弟は知的だが、奥手すぎてタイミングを逃しまくる。どちらも最終的には恋仲になりそうになった人を亡くす。愛に対して全く異なる向き合い方をする兄弟が、結末では同じ様な着地を迎える点が印象的だった。
エピローグの書き方が面白 -
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ネタバレ光合成によるエネルギー自己生成が可能となったクローンと、そのオリジナルの生き様の物語。
オリジナルは成功者だけど、愛を知らない。
シニカルに人を魅力する才能の裏返しで、自分は冷めている。その虚しさを紛らわすためか、極めて廃退的な生活を送る(性描写が多く疲れる)。
そのなか、新興宗教にのめり込み、重要な立ち位置を占める。
殺人事件を教祖転生に仕立てて逃れ、奇跡があるわけではないが、それが世間に受け入れられる。信じてDNAを保存すれば入信。代わりに死後の財産は教団に寄付となり、豊かな財源でクローン技術開発を行う。
フィクションだが、なぜかリアリティーを感じた。
長いし重いし疲れるし、でも読んでしま -
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イスラムの文化が現在の資本主義、キリスト教的世界に広がっていく様を、惰性や諦めと共に受け入れる主人公が印象的だった。大きな歳の差のある一夫多妻を最初は軽蔑していたのかと思ったら、最後は期待も込めて受け入れている。
ステータスのある男性目線ならあるかもしれない。一方で、女性の教養、社会進出への抑制が強くなるが、幸福の定義次第で受け入れられる、リアリティーのある内容なのか?分からなかった。
初めてのウェルベック作品。
文体の印象は、性的な描写が多い村上春樹。
なんとなく感じていたが、明文化されるとハッとする表現が多い。
現実的で直接的。表現がシャープで遠慮なし。
比較すると村上春樹のファンタジー -
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謎の組織によるテロ行為はエスカレートし遂に犠牲者が出る。
その煽りを受けながら大統領選は終結する。
家族内での不幸。もっとも若い息子が死に、体の不自由な父親は生き延びる。
主人公は妻との関係を修復するも過酷な運命が待ち受けていた。
上巻から物語の重要な要素と思われていたテロとの戦いや大統領選は尻すぼみに終わり、家族の話、そして主人公個人の生死をめぐる話へと収束していく。スケールの縮小。
弟オーレリアンはともかく、妹セシルや義妹インディーは最後まで活躍するかと思ったが。イラストまで用いたテロ組織の正体は投げっぱなし。
大統領選もあれだけ騒いでおいていざ終わればあっけない。その終わり方も味気な -
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作家ミシェル・ウエルベックの最新刊。時は2027年、大統領選挙を間近に控えるフランスを舞台に、経済財務大臣補佐官のポールを通して同国および世界の抱える病理と苦悩を見つめた大作。
相次ぐ国際テロ事件、選挙に向けた候補者応援活動、そしてパラレルに進行するポールと彼を取り巻く親族の家庭問題が、筆者の皮肉やジョーク、近現代の哲学思想をふんだんに交えて展開される。
ポピュリズムに支配される政治ゲーム、晩婚化と少子高齢化、過酷な介護の現場、メディアによる暴露など日本とも無関係ではないトピックに彩られながら、救われたいと願いつつ運命に翻弄される現代人を浮き彫りにする。滅び行く世界の中で、ポールと妻プリュ -
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ネタバレ-くだらない、下衆の極み、フェミニズムのなれの果て-
-神が望まれたのは不平等であって、不当ではない-
-退屈というものは長引くと、退屈のままではいられなくなる。それは遅かれ早かれ、よりはっきりとした痛み、確固たる痛みの感覚に変わる-
【性的行動はひとつの社会階級システムである】
・ウェルベック作品の主題は「自らとその周囲の解明」
・第三者目線からの観察的な記述が多い
・傍観者的な主人公。でも対象化には失敗している
・ショーペンハウアーに毒されただけの事はある
(感想)
現代日本に非常によく当てはまる。
オフパコYouTuberを批判している人も多いが、彼らはこの自由主義社会のヒ -
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ネタバレ3年ぶりに読み返したことによって、より落ち着いて考えられた気がする。
「仲介」(本ではインターメディエーションとなってる)として人間を捉えることができると思う。ネオ・ヒューマンは確かにダニエル1の時代の人類と、未来人を橋渡しする存在であったかもしれないが、ダニエル1も結局は「遺伝子の乗り物」という意味で、各世代を繋ぐ存在にすぎなかった。
ダニエル1が自覚しつつも直視できない老いは、自身が「遺伝子の乗り物」としての役割を果たせなくなりつつあることを意味する。子供を捨てた経験のある彼は、生殖としての性に入れ込んでいたわけでもないが、愛と結びつく性の意味でも、機会を逸してしまった。イサベルとは愛 -
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ネタバレウエルベックの処女小説。批判的な描写が多く、はじめは読みづらかったけど、半ばくらいから面白くなって一気に読んだ。
内容は、自由競争に疲れた(あるいは敗れつつある)者の独白となっている。ときどき哲学的な思弁が入ってきて面白かった。
勝手に要約すると、経済、セックスといった自由を求める競争はさらなる戦いを生み、戦線は日々拡大している。そして、その戦いから押しやられ落ちこぼれた者たちはどこへ向かうのか――といった感じだろうか。
つまらない街並み、退屈な仕事、派手派手しい広告、頻発するデモやテロ、実りのない異性へのアプローチ、主人公はもうなにもかもがうんざりといった様子だ。うだつの上がらない男女 -
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老いるのが怖くなる小説だった。
人が不死の技術を手に入れて、肉体が老いてもまた新たな肉体を手に入れることができるようになり、そうした未来の可能性において人類はほとんど解脱に近い静穏な状態なのだけど、そうした描写になぜか息が詰まる。宗教SF。
その未来のダニエルの視点で現代のダニエルの手記を見通すなかでそこに何かしらの郷愁の念があって、手記を読むという行為そのものにやはり「感情」に対する執着が描きこまれているように思う。
そうした構造も面白いし、さらに現代ダニエルは皮肉屋のコメディアンかつ映画監督として栄華をものにし、快楽主義をつらぬいてセックス三昧。またこの性描写がたまらないのだけど、やはり -
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人生の成功者による快楽の追求。その果ての絶望を描いた傑作である。人は誰も老いには勝てない。描写は情け容赦なく、描かれた性への渇望はグロテスクである。主人公のダニエル1の若い女性に対する執着心、特に最後の無様な姿は見苦しく醜悪だが、それは単なる性欲を超えた一人の人間としての絶望の叫びだ。愛と性に対して彼はとにかく誠実で、故に、彼の絶望は痛いほどに理解できる。若者と老人は対等ではない。未来に対する絶対量が違う。性的な意味での需要の無さや性的不能がそのまま人間としての価値に直結し、それはカネではどうにもならない。若さの価値を理解していればいるほどに、この物語は悲しく映る。だからこそある島に可能性を求