ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
事実、現実をただ見つめ、そこにある無機物を装飾したり解釈したりすることなく表すのが好みなのか
エピソードやテーマが伝わるような形でストーリー性を帯びさせたいのか、両方を目指してるのか、アーティストとしての視点はよくわからなかったけど、商業や生産で価値を規定されるのではなく真実性に触れたかったジェドの熱さは一貫するものとしてあった
対極的に対外的には謙虚な無頓着さを保っているところ、社会との接点が薄く変化や出来事に過度に意味を持たせないながらも父やオルガ、ウェルベクといった限られた人にはそれなりに執着や情をもち諦観と現実味のバランスがとれているところも好きだった
人間の作り出したものや人物が時間と共に崩壊していく
産業の流れも変化を帯び、支持されるものがかわっていく
どんどんと繁茂していく自然により視覚的に表される時間経過の中で、移り変わりゆくものの流れを愛惜と憂愁を感じさせながらも真実としてとらえた最後のビデオ作品が1番好きだなあと思った
すごく面白いわけではないかなあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ闘争領域の拡大
パリに住むシステムエンジニアが徐々に、緩慢に壊れていく作品
特にあらすじを見ずに読んだため、ストーリーのなさに驚きつつも、主人公に共感しながらページを手繰らされた
最初は人々はロールプレイをしているし、社会の機構に定められた行動をこなしているだけで、自由主義を語っておきながら自由意志から来る選択とは毎日選ぶ食事くらいだと悲観的になる
教会で働いている唯一の友人に、主人公は人との関わりの希薄さを忠告される
「合意に向かうように言葉をはいた」
次にペアでエンジニアリングの営業に行くことになった
ペアの男はどうていを拗らせ、醜い容姿にコンプレックスを抱き、常に女性とやる事を考えていた
そんなペアの男がやれるように主人公はクラブにさそったり、タイミングを見計らったり、ささやかながらサポートしていた
ここまでの人間関係で、主人公は表面上仲間思いの人物に見えるが、1度もその関係に対する主人公の感情表明は行われない
主人公は淡々とロールプレイをしているだけなのだ
そしてこのペアの男とクラブに駆り出し、やけくそになりセクハラをしたら10代に嘲笑され、そのまま気になっていた女性とその彼氏を車で追いかけることになった
主人公はナイフを携帯しており、それをペアの男に進める
しかしペアの男は海で性行為をする2人をみながら自慰行為をしただけだった
その日の帰り、泥酔しながら運転したペアの男は死亡する
主人公はそれを連休だったためにしらず、3日後に知る
それが関係したのかどうか、主人公はここから拍車をかけて狂っていく
しかし淡々と分析と独白を行う文体は変わらず、どこからが狂っているのかはわからない
窓ガラスを割って喜んだり、涙が止まらなくなったり、会社の女をビンタしてみたり、いままでは内心留まっていた欲望が表面化してきた描写から、初めてわかる
それから主人公は、ずっと「女を尊大に、自己中心的にさせるだけ」と評していた精神分析医に頼ることにする
鬱病と診断され、精神薬を貰い、それでも治らず結局は入院することになった
その病院内でもう1人の精神分析医と多少親しくなり「あなたに足りていないのは性行為」と言われるが、それ以来別の人物に担当が変わってしまった
退院した主人公は、40キロの山道を自転車で越えようとする
あたたかい村にも行き、「誰も僕に挨拶以上のことをしないでくれ」といいながら、描写と心情と矛盾を見せる
最後によく晴れた、こもれびの多い山で、黄水仙を見ながら、「幸福と感じる幽霊と共に生きてきた」と、締めくくる
つまりこの小説は、客我を演じ続けた現代個人主義者の寂しさによる崩壊の物語
自分の欲望を出さず、自由なようで実際には社会的抑圧により自由ではない社会に生きた主人公の物語だ
その独白では、資本主義においては資本の寡占があり、規制や社会保障が施策されるのに対して、恋愛の自由競争では帝国主義のように上位者による占有が怒るばかりで下位のものは貧困に喘ぐばかりだ
やら
最初のように人々や自分の振る舞いを「ロール」と呼び、その関係の中での感情の起伏を感じないこと
やら
悲観的な分析、観察が綴られる
それがおもしろい
服従で主人公がとある小説家を友人のように感じると言ったように、自分も徐々にウェルベックのこの思弁的な主人公の書き方に親近感を覚え、ハマってきてしまっていることを自覚した
次がたのしみ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「女性が投票できること、男性と同じ学問をし、同じ職業に就くことが本当に良いことなのか」という考えを女性の前で平然と語る大学の准教授であるフランソワ25歳。彼はなぜ家父長制が批判されるようになったのか、女性の権利がどうして拡大してきたのか、歴史的にどのような問題があったのかを考えず、昔の男女の役割のほうが自然だったのではないかという、自分に都合のいい部分だけを切り取って見ている。彼の女性観も女性を一人の人間として見るのではなく、男性との関係や役割から都合よく捉えているように思う。例えば、家父長制が復活すれば出生率が上がるという考え方は、女性が自由な意思で選択することを前提としていない。女性の選択肢を狭めることで社会的役割を固定する発想であり、その結果として生じる女性の権利侵害については考えていない。彼は政治や宗教そのものよりも自分が安心できる男性中心の社会を求めているように見える。イスラームへの接近も男性としての地位が保証される社会への憧れに近い。自分に都合のいい秩序なら受け入れてよしとし、その負担を女性に負わせても構わないと思っている。このような若い男性のみ優位に立てる社会は、いずれ弱い立場の人を切り捨てる社会へ進むだろう。女性、子ども、障害者、高齢者へと広がった権利侵害は、最終的には男性自身の自由や選択肢も狭めることになっていく。他者の権利を軽視して築いた社会は、最終的には自分自身の首を絞めることになる。
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Posted by ブクログ
結構頑張って読み切った。
理解できなかったのでいつか読み返したい。
病的に異性を追い求めるブリュノと性的なことに関心が無いミシェル。
正反対な2人。
セックスに関する描写は多いが、いつどこでセックスをした。という事実しか読み取れず、セックスに伴う感情の変化や快楽などは読み取れなかった、温度の無い愛。
セックスを求めるブリュノとそれを求めないミシェルどちらの人生の描写も淡々としたもので、だからこそ行為の意味や愛の意味、異性を追い求めるということ自体について考えさせられた。
もう少しヒッピー文化などに関係する知識があったら楽しめたのかな〜
最後SFっぽくなる??
すごい作品なんだろうなとは思うけど今の私には手が余る作品だった、残念。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ部分的には面白いのだが、総合的には正直面白くない
たぶん大衆的な面白さを獲得するのをわざと拒んでいることが原因なのだろう
展覧会に関わるキャッチーな運営メンバー、アクの強いキャラクター、急に始まるサスペンスパートなど
高水準なエンタメの片鱗を一瞬覗かせるが、すべてあっけなく収束してしまう
なんといっても一番の見所は、著者自身の分身キャラのウェルベックである
自分を批評し俯瞰からキャラクター化していながら、更にそれに憑依し内から外からと相当に難易度が高いことをしているように思われる
この珍妙な人物像が物凄くいい味を出している
自身を演出してこれほど面白く仕上げられる作家は希少な才能で、大衆ウケを狙ってできる実力があることは間違いない
漂白された肖像画家、ロシア人美女、細かいディテール、これは村上春樹じゃないのかと一瞬思ったが違う
もっと直截的で社会への批評、総括、予測を含んでいる
数々の細かいネタは自分がフランス人だったら、フランスに精通していたら傑作だったかもしれないが
地理も物も知らないので、ちょっと感覚がわからない
フランスの文化的な風潮を皮肉った、笑えない微妙なさじ加減のユーモアセンスは好きな方だが、そもそもネタ自体について行けなかった
その文化とは世論形成を生業としている業界的なある種の見せかけの文化ではなく、もっと本質的な実態を伴う文化なので共有できる部分もあるにはある
いやこれは皮肉ではなく実際の投影なのではないか
例えばパリ五輪の開会式が酷いなどと一部で騒々しかったが、この本を読んでいれば普通のことだと感じるだろう
本を読む意義はこういう部分にあると思う
タイトルから感じた先入観は精神的縄張り意識であったが、その逆で縄張り意識にあまり興味のない男の話であった
地図は社会、領土は個人なのだろうか
そう捉えた場合の勝手な解釈による概要は次のようなものだ
主人公は生来の芸術家気質で、育った環境もあって、あまり人への興味がない
それには母親を失ったことも起因している
母の死について父を責めることも出来ず、似たようなタイプである主人公には、最初から他人や人生に対してある種の諦観がある
そうして、当初は高い視点から世の中を無機的に見つめていたのだが
徐々に社会から人へと興味の対象が移り、幸福とはなんであるかを探求し始める
しかし恋人も親も失い、最後には芸術への期待も無くしてしまう
残った希望は、温めなおしたポトフと妙な真面目さのある珍妙な会話であった
意味の無い世界において、数少ない意味のあること、それが他人との真面目な会話と非製品的な食事だったのだ
しかし最終的にその機会すらも永久に失い、世捨て人のようになってしまう
資産はたんまりあるので、築いた自分の領土に長年引きこもるが、ある日ふいに地域社会の脈動を見て――領土から地図への回帰が起きて――再び創作意欲が活性化し最後の作品に取り掛かる
その作品は自然の中で自然と格闘するしかない、つまり人工的であるしかない人間の生産活動は無意味であるというものだった……。
社会の本質とは客観的にならないと掴めないのだろうか
地図は客観で集団的、反対に領土は主観、個人的である
しかし地図の内には、道路、鉄道、飛行機、標識、各種ランドマークなど人間の文化活動の痕跡があり、更に領土も内包する
本質を掴むにはこの相反する概念が必要だろうが、地図にはそれがある
地図だけに注目する観光者は盲目、領土しかない個人は監獄で、地図から領土を読む観光者の認識も中途半端であり
領土から地図を見て領土を地図に焼き付けた時に、ようやく隠されたものが認識できる
しかし個人の内面で煮えたぎる熱情はそれらの文化活動とは無関係であり、見えないからこそ見ようとする動機が創作の源泉であって、領土と地図が融合して完全となった時、見えざる本質の表象を形にしようとするタイプの芸術家であれば目的意識を失い世の中に冷めてしまう可能性が高い
一見曖昧なタイトルは著者が言いたかったことそのものを示していると思う
著者は直感的な洞察力から普遍的な真実を引き出すのが非常に得意であると感じる
例えばこんな調子である
・ ビルゲイツについての考察からわかる市場の本質 → 市場にとっての善は、世の中の善と一致する
・ 不妊に悩む刑事夫婦から導かれる少子化の要因 → 子供が全く好きではないから(子供の生来のエゴイズム、ルールへの根本的な無理解、反道徳性が好きではない)
・ どうして日本製品は存在感を失ったのか → 沈黙を美徳だとする日本人が実は尊大だから
・ パーカーを通してみる商品流通市場の欠陥 → 価値の高い既存製品は新製品によって駆逐される運命にある(こうして世の中に無駄なゴミが増える)
このように政治家や専門家が何十年も議論して見当外れな方針を打ち出す諸問題の核心をいとも容易く書いている
やはりなぜ読書をするのか?という問いに対しての一つの答えはこういう部分にあると思うが
全くフィードバックがないとなると(日本ではマイナーな作家だが)、こういった作風の作品がなにか高尚で難解になってしまうのもやむを得ないのだろう -
Posted by ブクログ
初ウエルベックなので読み方が手探りだった。
主人公の「僕」と醜男ティスランが主流になり、恋愛という自由主義を求めて彼らの世界が「拡大」していく。
そう信じていたにも関わらず、その拡大の仕方が頑張れば頑張る程に良くない方向へと転落してしまう。
ウエルベックを読むにあたり、登場人物に同情(共感)する事によって読み手の世界も拡大していくとあとがきで分かった。
仕事、恋愛、性生活とテーマが3つあるけど、登場人物全てが日常に潜む人間ばかりでよりリアリティを帯びる。
主人公は観察者であり、観察する事により自分の内部で噛み砕いて分析をするけれど、取り込むことはせず、だけど敏感に感じやすい体質なのかマイナス面ではかなり感化されて苦しそうに感じた。
最初はうっすらとだけど進めていくと、その感情や分析が重く苦しいものに様変わりしてしまう。
哲学的描写なのでもっと色々考えたりしたいけど、あと何冊かウエルベックを読まないとそこら辺はなんとも言えない。
確かに面白かったけど、その先にまだまだ何か色んなものが隠されている感じがした。
時には含みを持っていた書き方だったりしたから、作品をもっと読んでそれが何かを加味していきたい一冊だった。 -
Posted by ブクログ
ブリュノとミシェル、両方ミシェルウェルベックが実際に辿ってきた人生をかなり濃く反映したキャラクターなんだな。
自由が、かえって男を生きづらくさせた。西欧社会の転換が生んだ翳りを、生々しく露悪的に捉える。自らの人生において、あらゆる面で強烈なコンプレックスを抱くブリュノ、なりふり構わず性に乱れる姿は滑稽だし彼の過去を踏まえると物悲しさすら漂う。でも後半吹っ切れたか振り切れたかしてる。より彼に対する切なさが増幅しちゃう。
根底にウェルベック自身の痛烈な自己批判があるんだろう。社会を世界をシニカルに捉えているのに、その眼差しは自身の振る舞いにすら向けられている。