ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧

  • H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って

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    フランスの作家・詩人であるミシェル・ウェルベックによるH・P・ラブクラフト論。

    まず、著者であるウェルベックのラブクラフトに対するクソデカ感情に恐怖した。

    論じされている内容は概ね納得できるものではあるが、やや暴走気味な感もある。序文をスティーヴン・キングが書いているけど、キング自身は割と納得いってない感じなのも判らんでもない。とりあえず、著者であるウェルベックがラブクラフトのこと好き過ぎるということは良く判った。

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    2025年08月20日
  • プラットフォーム

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    この手の穏やかながら深い波のある小説を久々に読んだ。
    主人公は徹底的に世の中を俯瞰した風に見て、あらゆる人間を小馬鹿にしているように見えつつ、自身の欲求に素直な、所謂普通のやつ。
    ヴァレリーという20代の女っぷりのいいキャリアウーマンというザ21世紀の女性と一緒にいることで幸せ全開。
    性産業をビジネスチャンスと捉え邁進するところに、金儲けだけではなく、西洋人の欲求追求の姿勢(西洋人は資本主義社会にいて、物質的幸福を追求する一方、彼らだけで性の満足を得られなくなっている。ある意味それは非文明国よりも哀しいことでもある。だからアジアで自身の性を解放する旅行には着実なニーズがある。)を深く見据えてい

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    2025年08月06日
  • ある島の可能性

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    人と感想を話すことって大事だなーと思う

    特に本の入り口が、「人からお勧めされた」時は感想を必須で誰かと話さないと自分の中にモヤモヤが残ってしまう。

    これ面白いね!だけじゃなくて、これ気持ち悪いね、、って時は特にそう。

    ウェルベックはめちゃくちゃハードル上げられた本だった。でも、2005年にこれが出てきたのが凄いことだなって思うだけで、本当に深いことを語っているのか?となってしまった。
    中年男性のセックスに焦点を当てすぎているし、その描写が無理だったとかではないんだけど、シンプルにもっと短くその惨めさを描くことはできたんじゃないかと思う。描きたいことに対して冗長だと思ったんだ。あでも「人生

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    2025年07月19日
  • 滅ぼす 下

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    物語後半で展開されるのは人生の不条理劇。解明しようとしてたサイバーテロ攻撃も父が残した謎も大統領選もこれ以上進展がのぞめない。なぜならポールは口腔癌によって「滅ぼされる」から。
    自分はまだ重い病気に罹ったことがないから、癌の告知、治療の選択、家族へ知らせる過程等をポールと共に追体験した。嘘つくまではいかないが言うべきことを妻に言わなかったりセカンドオピニオン受けて治療法を天秤にかけたりと、細部にリアリティがあってこんな感じなのかーとしみじみ思った。
    やっぱり、妻であるプリュダンスとパートナー関係が修復できてるのが今までのウエルベック作品と異質だと思う。
    知人とも話したけど、ウエルベック年々作風

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    2025年03月19日
  • セロトニン

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    ウェルベック3冊目。
    毎度暗い話が多いけど、今回も暗い。
    それなりの学校に行って、それなりに仕事して、恋愛して…
    としてきたけど、充実感が得られない、ずっと頽廃的な雰囲気が漂う。

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    2025年03月09日
  • ある島の可能性

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    闘争領域の拡大に続いて2冊目のウェルベック。 序盤は冗長的で少し読むのが億劫になるが、途中から先の展開が気になって一気に読んでしまった。 人間の老いや愛することなど人間的な営みに対する大きな問いかけなのかなと感じた。近未来のネオヒューマンを通して過去の人間だったときの人生記を見ていく様が後半グッとくる。

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    2025年02月01日
  • 滅ぼす 上

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    いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
    序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
    ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
    一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな

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    2025年01月21日
  • 滅ぼす 下

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    少しだけ未来、フランス大統領選と同時並行して起こる、不思議な出来事。
    それは主人公ポールの公私に広がる。

    ポールの見る夢、時には白日夢に近い空想……暗示なのか深層心理なのか。

    ネットという怪物
    拡散というパワー
    妄信という暗黒
    これまでの経験からくる未来への安心感が、ガタガタと音を立てて崩れていく、「滅ぼす」という行為。

    恐らく、現代フランス社会の歪みをもう少しだけ理解していて読んだなら、この本の出来事がもう少し現実的に感じたであろう。

    最後は「愛」……
    「私たちには素敵な嘘が必要だったの」
    ……

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    2024年11月19日
  • 滅ぼす 下

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    初ウェルベック。
    多彩なテーマも、ラスト近くになり俄然、性と死、そして看取りの話に収斂していく
    では大統領選やテロは何だったのか、ってことにはなるが、人間の社会や人の一生なんてそんなもの。
    大枠の理解などできないまま死んでいく。

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    2024年11月04日
  • 滅ぼす 下

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    ウェルベックの新作。上下巻それぞれ300ページを超える長編だが、ほとんど一気読み。少なからず消化不良のストーリーではあるのだが、高度テクノロジー時代のテロに始まり、生と死、人工受精が普通になった近未来における原始的なセックスの意味などを描いて読ませる。『素粒子』『プラットフォーム』の上、『服従』『地図と領土』の下くらいか。

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    2024年11月02日
  • 滅ぼす 上

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    初めてのミシェル・ウェルベック
    惹き込まれる。
    大統領選を補佐する情報解析員。親子、兄弟、夫婦の問題が非常にリアルで違和感なく読める。そこに時折絡んでくるテロの話題。上巻の最後に父親とテロの話題が交錯してきた、、、

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    2024年10月27日
  • 服従

    匿名

    購入済み

    発売日がシャルリーエブド事件と重なったこともあってセンセーショナルな売り出しになった本書ですが、読むと基本的には他のウェルベック作品と同じく個人主義の行き着いた先でのインテリの絶望が語られています。
    「キリスト教のフランス」ではなく「個人主義的で世俗的なフランス」がイスラームに飲み込まれていく小説なので、その点では服従する先はイスラームと姉妹宗教であるキリスト教でも良かったのだろうと思いますが、現代においてリベラルになったヨーロッパのキリスト教にはそこまでの力強さが無いので最終的にイスラーム(イスラームという言葉自体、神への服従という意味を待ちますね)が選ばれます。

    ただ小説なのであまりこう

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    2024年10月02日
  • わが人生の数か月 2022年10月-2023年3月

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    ミシェル・ウエルベックはフランスの作家で、ほとんどの著作が日本語訳されているように、世界的なベストセラー作家でもある。2022年のノーベル文学賞では受賞最有力とされていた。ちなみに実際に受賞したのは、おなじくフランスの作家であるアニー・エルノーだったので、もうウエルベックの受賞はなさそうである。長生きしていればあるかもしれないが、どうにも不健康そうだし。

    ウエルベックのポルノ映画事件というものがあった。くわしくは検索してもらえばいいのだが、これ自体がくだらない話である。
    それと、本書の始まりはウエルベックのイスラム教への発言についても触れられる。イスラム教徒を犯罪者と同列視する発言をしたとし

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    2024年09月04日
  • 服従

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    (2015/11/19)
    なんでこの本を入手したかその経路を全く覚えておらず、
    どんな本かもわからないまま読み始めた。
    ときおり物凄い性描写があって引きつけられ、
    その後政治的な話になって斜め読みし、、、

    しかしそこがポイントの本だったようだ。
    近未来、フランスにイスラム政権誕生、人が神に服従する。
    O嬢の物語は女が男に服従する。

    それを大学教授が両方同時並行的に体験する、、、

    みたいな本だったような気がする。
    シャルリー・エブドのテロがあったり、
    イスラム国などが跋扈したり、
    ヨーロッパならではの視点。

    それにしても女にもてるのねこの人

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    2024年09月04日
  • セロトニン

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    はじめてのウエルベック、衝撃的。
    日本人女性、モンサント、フランスの農業など気になるキーワードに惹かれて読み始めたが、
    賢いのにずるくて、流されやすくてまったく共感できないはずの主人公の思考に取り込まれた。
    不思議な読後感。

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    2024年06月25日
  • 滅ぼす 上

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    ネタバレ

    家族のキャラクター設定がものすごく良いと思った。
    シニカルで真面目な官僚の長男、慈悲深く家族を繋ぐ役割をしている妹、うだつが上がらず、災難ばかり降りかかる弟。父やマドレーヌ、そして彼らの結婚相手しかり。みんながキャラクターとしての役割を見事に演じていて、物語の情景が自然と頭に浮かんだ。

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    2024年06月09日
  • 滅ぼす 下

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    ネタバレ

    滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。

    プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。

    所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。

    政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えの

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    2024年06月09日
  • 滅ぼす 下

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    テロや政治の大きな物語を背景としつつ、フォーカスされるのは、一人の人間がどのように己の死に向き合うかということ。
    文明の滅びのイメージと人間の滅び、自然の巡りなどを相互に響かせながら物語は進んでいく。

    伏線では?と勘ぐりたくなるような匂わせが頻発するが、それらの記述は解決されず、物語の背景で滞留し続ける。
    その解決されない問題に取り巻かれながら、もやっと曖昧に、でも確実に死に向かって歩んでいく流れが、私達の現実の肌触りに似ているような気がして震える。

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    2024年05月26日
  • 滅ぼす 上

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    同年代の自分と重なる部分があり、導入の巧みさ、
    ウェルベックの過去作で一番面白かった ある島の可能性 より引き込まれてしまった

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    2024年04月03日
  • 闘争領域の拡大

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    闘争領域で闘う同僚など、身の回りの人物を、主人公のシニカルでありつつも同情に満ちた目線で描く。最後、主人公は鬱になって闘争領域を完全に脱落するのだけれど、何故か清々しい。現代人に向けた、いい小説だ。

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    2024年03月15日