ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この手の穏やかながら深い波のある小説を久々に読んだ。
主人公は徹底的に世の中を俯瞰した風に見て、あらゆる人間を小馬鹿にしているように見えつつ、自身の欲求に素直な、所謂普通のやつ。
ヴァレリーという20代の女っぷりのいいキャリアウーマンというザ21世紀の女性と一緒にいることで幸せ全開。
性産業をビジネスチャンスと捉え邁進するところに、金儲けだけではなく、西洋人の欲求追求の姿勢(西洋人は資本主義社会にいて、物質的幸福を追求する一方、彼らだけで性の満足を得られなくなっている。ある意味それは非文明国よりも哀しいことでもある。だからアジアで自身の性を解放する旅行には着実なニーズがある。)を深く見据えてい -
Posted by ブクログ
人と感想を話すことって大事だなーと思う
特に本の入り口が、「人からお勧めされた」時は感想を必須で誰かと話さないと自分の中にモヤモヤが残ってしまう。
これ面白いね!だけじゃなくて、これ気持ち悪いね、、って時は特にそう。
ウェルベックはめちゃくちゃハードル上げられた本だった。でも、2005年にこれが出てきたのが凄いことだなって思うだけで、本当に深いことを語っているのか?となってしまった。
中年男性のセックスに焦点を当てすぎているし、その描写が無理だったとかではないんだけど、シンプルにもっと短くその惨めさを描くことはできたんじゃないかと思う。描きたいことに対して冗長だと思ったんだ。あでも「人生 -
Posted by ブクログ
物語後半で展開されるのは人生の不条理劇。解明しようとしてたサイバーテロ攻撃も父が残した謎も大統領選もこれ以上進展がのぞめない。なぜならポールは口腔癌によって「滅ぼされる」から。
自分はまだ重い病気に罹ったことがないから、癌の告知、治療の選択、家族へ知らせる過程等をポールと共に追体験した。嘘つくまではいかないが言うべきことを妻に言わなかったりセカンドオピニオン受けて治療法を天秤にかけたりと、細部にリアリティがあってこんな感じなのかーとしみじみ思った。
やっぱり、妻であるプリュダンスとパートナー関係が修復できてるのが今までのウエルベック作品と異質だと思う。
知人とも話したけど、ウエルベック年々作風 -
Posted by ブクログ
いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな -
匿名
購入済み発売日がシャルリーエブド事件と重なったこともあってセンセーショナルな売り出しになった本書ですが、読むと基本的には他のウェルベック作品と同じく個人主義の行き着いた先でのインテリの絶望が語られています。
「キリスト教のフランス」ではなく「個人主義的で世俗的なフランス」がイスラームに飲み込まれていく小説なので、その点では服従する先はイスラームと姉妹宗教であるキリスト教でも良かったのだろうと思いますが、現代においてリベラルになったヨーロッパのキリスト教にはそこまでの力強さが無いので最終的にイスラーム(イスラームという言葉自体、神への服従という意味を待ちますね)が選ばれます。
ただ小説なのであまりこう -
Posted by ブクログ
ミシェル・ウエルベックはフランスの作家で、ほとんどの著作が日本語訳されているように、世界的なベストセラー作家でもある。2022年のノーベル文学賞では受賞最有力とされていた。ちなみに実際に受賞したのは、おなじくフランスの作家であるアニー・エルノーだったので、もうウエルベックの受賞はなさそうである。長生きしていればあるかもしれないが、どうにも不健康そうだし。
ウエルベックのポルノ映画事件というものがあった。くわしくは検索してもらえばいいのだが、これ自体がくだらない話である。
それと、本書の始まりはウエルベックのイスラム教への発言についても触れられる。イスラム教徒を犯罪者と同列視する発言をしたとし -
Posted by ブクログ
(2015/11/19)
なんでこの本を入手したかその経路を全く覚えておらず、
どんな本かもわからないまま読み始めた。
ときおり物凄い性描写があって引きつけられ、
その後政治的な話になって斜め読みし、、、
しかしそこがポイントの本だったようだ。
近未来、フランスにイスラム政権誕生、人が神に服従する。
O嬢の物語は女が男に服従する。
それを大学教授が両方同時並行的に体験する、、、
みたいな本だったような気がする。
シャルリー・エブドのテロがあったり、
イスラム国などが跋扈したり、
ヨーロッパならではの視点。
それにしても女にもてるのねこの人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。
プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。
所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。
政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えの