ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いつものウエルベック節を求めている人にとって期待以上に楽しめる本だと思う。
序盤から断頭台の図解が出てきて笑ってしまう。まだ上巻しか読んでないけど、ポールとプリュダンス夫妻の歩み寄り・関係の修復が見られそうなのがこれまでのウエルベック作品とは違う点かな。
ポールが人間嫌悪とテロリストへのシンパシィを独白するシーンは正直ドキッとさせられた。
一番印象的だったのはポールの妹セシルが得意の料理を武器に働きに出て、ブルジョワの家で作業をする中で社会的階層の違いを痛感するところ。「こんなの知りたくなかった」けど夫と合流する頃には「楽しかったわ」と表面上取り繕う。うーんしんどいな -
匿名
購入済み発売日がシャルリーエブド事件と重なったこともあってセンセーショナルな売り出しになった本書ですが、読むと基本的には他のウェルベック作品と同じく個人主義の行き着いた先でのインテリの絶望が語られています。
「キリスト教のフランス」ではなく「個人主義的で世俗的なフランス」がイスラームに飲み込まれていく小説なので、その点では服従する先はイスラームと姉妹宗教であるキリスト教でも良かったのだろうと思いますが、現代においてリベラルになったヨーロッパのキリスト教にはそこまでの力強さが無いので最終的にイスラーム(イスラームという言葉自体、神への服従という意味を待ちますね)が選ばれます。
ただ小説なのであまりこういうこと言うのも無粋なのでしょうが、穏健なイスラーム政党が政権握ったからといってただちに一夫多妻制になるかと言われると疑問ではあります(現にトルコも20年以上イスラーム主義政党が政権を握っていますが一夫多妻になりそうもありません)。またサウジアラビアは自国以外にスンニ派をリードする勢力を嫌うので本当ならイスラーム同胞党を弾圧する側に回りそうですが…。現にムスリム同胞団はサウジと関係悪いですし。 -
Posted by ブクログ
ミシェル・ウエルベックはフランスの作家で、ほとんどの著作が日本語訳されているように、世界的なベストセラー作家でもある。2022年のノーベル文学賞では受賞最有力とされていた。ちなみに実際に受賞したのは、おなじくフランスの作家であるアニー・エルノーだったので、もうウエルベックの受賞はなさそうである。長生きしていればあるかもしれないが、どうにも不健康そうだし。
ウエルベックのポルノ映画事件というものがあった。くわしくは検索してもらえばいいのだが、これ自体がくだらない話である。
それと、本書の始まりはウエルベックのイスラム教への発言についても触れられる。イスラム教徒を犯罪者と同列視する発言をしたとして、炎上したものである。こちらも呆れる話である。
本書は、これらへのウエルベックの弁明である。ただの言い訳ともいえるが、すぐに話が逸れて閑話が多い。むしろそっちのほうが安心して楽しめる部分もある。
本筋の弁明に関しては、あまり賛同を得られるとも思えない内容である。そもそも事の発端である映画というのは、ウエルベックの妻とオランダ人女性との3Pをするシーンというのがあり、さらにいえば妻がウエルベックのために女性を探しているという話もある。このような生活に、あまり共感できる人はいないだろう。
百歩譲って、それをウエルベックという作家の特質に還元し納得するとしても、そのあとのウエルベックの弁明も厳しく、見苦しいものである。
ただ、ウエルベックというひとはそういうひとでもある。あまり賛同を得られないことを前提として、なるべくおもしろい文章を書こうとしているように思える。だいたい、そのようなサービス精神がなければそんな映画にも、イスラム教への発言もなかっただろうと思う。 -
Posted by ブクログ
(2015/11/19)
なんでこの本を入手したかその経路を全く覚えておらず、
どんな本かもわからないまま読み始めた。
ときおり物凄い性描写があって引きつけられ、
その後政治的な話になって斜め読みし、、、
しかしそこがポイントの本だったようだ。
近未来、フランスにイスラム政権誕生、人が神に服従する。
O嬢の物語は女が男に服従する。
それを大学教授が両方同時並行的に体験する、、、
みたいな本だったような気がする。
シャルリー・エブドのテロがあったり、
イスラム国などが跋扈したり、
ヨーロッパならではの視点。
それにしても女にもてるのねこの人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ滅ぼすとはそういうことだったのかと、読み進めるにつれて、悲しい気持ちになった。オーレリアンは自殺し、ポールが末期の癌になるとは。喉頭や口腔癌になると、舌を切除しなければならないこともあるとは、知らなかった。
プリュダンスと仲良しに戻っていて、本当に良かったと思った。死期を悟った後も冷静で、手術を拒み、点滴の際は読書をして過ごしたポール。自分だったらどうしていただろうか。
所々に散りばめられたウエルベックのユーモアにはクスッとさせられた。デュボンとデュポンは特にお気に入りだ(笑)。
政治や歴史、文学に恋愛、扱う内容をフランスらしいと言って良いかは定かではないけれどそのように感じ、読み応えのある好みの本だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「人間の絶対的な幸福は服従にある」。
2022年のフランス大統領選で、ファシスト党とイスラーム党が決選投票に残り、イスラーム政権が誕生するお話でした。
楽しいの意味はなく、面白かった。
知識や教養は、超越神の前では脆い。インテリほど迎合も早いというのは驚きです、フランスはレジスタンスの国だと思ってたけどインテリはこうなのかな?
この主人公は、再び大学で教鞭を執って生活していくためにイスラームに改宗するというより、何人も妻が欲しい…の方が強そうなのにもやもやするところがありました。もともとノンポリなのも珍しいかも。
外堀から埋められるみたいなところに寒気がしました。その方向からか、と。
実際にこれが起こるかと言われれば8割方無かろうとは思います。でももしも…となれば、このお話の流れは自然に感じられました。
一神教の国でこうなんだから、多神教だともっと容易そう。だけど、男性観で拒否しそう。。
2024年に読んでいるので、解説にあるイスラエル人のご友人の「ハマスの主敵はイスラエル」がつくづくわかります。イスラーム国とハマスがガザ地区で内ゲバやってたのは存じなかったけれど…どちらもスンニ派なんだな。
世界的に世論はパレスチナ支持に傾いてる。イスラーム支持でなく、イスラエルがやり過ぎという方向で。
でももしもイスラエル側が「敗戦国」とされても、それがそのままイスラーム支持という意味にはならない気はします。見方が甘いかなぁ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代社会は、経済だけでなく、「性愛」も自由化され、富めるものとそうでないものの格差が拡大している。このような話は、しばしばSNSで話題になっている「弱者男性」問題にもつながっており、ここ数年は熱をもって議論されていることだが、ウェルベックがこの問題を30年も前に小説のテーマにしている点が興味深い。主人公は容姿がよくない同僚のティスランを心の中では散々馬鹿にしており、実際にティスランは性愛に関してひどい目に遭ってしまう。ただ、主人公の心情描写から、自由恋愛の世の中に果敢に立ち向かっていき、最後には不慮の死を遂げる彼を、著者は心の奥底では敬意を払っているのではないかという印象を受けた。愛を得られない者の哀れさを描きつつも、そういった者に対して寄り添いを感じる不思議な作品だった。
フランスでも話題になったようだが、現代の日本で広まればそこそこ議論を生みそうな一作である。 -
Posted by ブクログ
もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。
個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。
ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ・意匠が総動員されることで、作家自らの代表作といって過言ではない文学世界が構築されている。
正直、圧倒的な物語の面白さはありつつも、その陰惨たるテーマ・意匠の連続によって読み手の体力を著しく奪う書物に仕上がっている。そのような辛さを味わってでもなお先を読み進めたいという中毒性を与えてくれる作品というのは非常にレアであり、その黙示録的な現代社会の救いのなさの前でただ佇むことしか私にはできない。