ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧

  • 素粒子

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    人に薦められて手に取る。恐らく自分では選ばない内容。
    最初は性的なものも含む衝撃的な描写と、物理学や哲学の難解な文章に頭が混乱しながら、また辟易しながら、何度も挫折し、少しずつ読み進めた。だが次第に登場人物たちの絶望的な哀しみに寄り添うようになり、最後にはページを捲る手がとまらなくなった。なんとも不思議な、ジェットコースターみたいな小説。面白かった。
    でもどうかな、やっぱり好き嫌いがはっきりとわかれる小説なんだろうな。

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    2024年02月14日
  • 服従

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    ネタバレ

    「人間の絶対的な幸福は服従にある」。
    2022年のフランス大統領選で、ファシスト党とイスラーム党が決選投票に残り、イスラーム政権が誕生するお話でした。
    楽しいの意味はなく、面白かった。
    知識や教養は、超越神の前では脆い。インテリほど迎合も早いというのは驚きです、フランスはレジスタンスの国だと思ってたけどインテリはこうなのかな?
    この主人公は、再び大学で教鞭を執って生活していくためにイスラームに改宗するというより、何人も妻が欲しい…の方が強そうなのにもやもやするところがありました。もともとノンポリなのも珍しいかも。

    外堀から埋められるみたいなところに寒気がしました。その方向からか、と。
    実際に

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    2024年02月11日
  • 闘争領域の拡大

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    ネタバレ

    現代社会は、経済だけでなく、「性愛」も自由化され、富めるものとそうでないものの格差が拡大している。このような話は、しばしばSNSで話題になっている「弱者男性」問題にもつながっており、ここ数年は熱をもって議論されていることだが、ウェルベックがこの問題を30年も前に小説のテーマにしている点が興味深い。主人公は容姿がよくない同僚のティスランを心の中では散々馬鹿にしており、実際にティスランは性愛に関してひどい目に遭ってしまう。ただ、主人公の心情描写から、自由恋愛の世の中に果敢に立ち向かっていき、最後には不慮の死を遂げる彼を、著者は心の奥底では敬意を払っているのではないかという印象を受けた。愛を得られな

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    2023年12月25日
  • プラットフォーム

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    オトラジシリーズ。
    初のウェルベックさん作品。
    過激な描写が多い中、にじみ出るような開放感と自由な雰囲気がとても魅力的だった。
    燃えるような恋、性、そして…

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    2023年10月19日
  • 滅ぼす 下

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    上巻はのろのろ読みだったけど、下巻はあっという間に読めた。
    上巻始めの感じはハッキングなどの技術による社会崩壊の話かと思ったら全然違った。もちろん世の中の在り方の事も含まれているけど、もっと大きな生死についての話だった。
    意外な展開で、帯に書かれているように「読み出したら止まらない」
    フランスらしさがふんだんに出ていて良い。
    ベストセラーに納得。

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    2023年10月01日
  • 滅ぼす 下

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    もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。

    個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。

    ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ

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    2023年09月09日
  • 滅ぼす 上

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    もはや一種の黙示録とも呼べる文学作品を作り続けているフランスの鬼才、ミシェル・ウエルベックによる新著であり、過去の作品と比べても単行本上下巻という大著。

    個人的に新著が出たら、迷わずに買うことを決めている現代作家の一人がウエルベックなのだが、迷わずに買ったことを全く後悔しないほど完成度高く魅惑的な作品であった。

    ウエルベックの作品は登場するテーマや意匠に強い共通性がある。デビュー当初は、カルト宗教やセックス/性の問題に始まり、ここ10年ほどは極めてアクチュアルな移民問題やテロリズム、資本主義の限界など政治・経済学的な側面が強まっている。本書はまさにウエルベックを構成するであろう様々なテーマ

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    2023年09月09日
  • 服従

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    イスラム化していくフランスを強固な政治的リアリズムで描くという実験的な試みが小説の主軸にはあるが、見落としてはいけないのがユイスマンスの存在。享楽に埋没していた中年男性が精神的にも身体的にも危機に襲われる。
    結末にやってくるのが、まさに主人公にとっての救い。
    これはまさにユイスマンスの人生そのものとも共鳴してる。

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    2023年08月15日
  • 闘争領域の拡大

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    ネタバレ

    23.3.25〜4.10

    この作品の語り手は、後のウエルベック作品の主人公とはちょっと饒舌さの趣向が違うように感じた。
    自分の中で死にゆくものへの愛が溢れ出てくる最後で感動した。

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    2023年04月27日
  • ある島の可能性

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    22.11.12〜12.19
    快と不快のバランスがゼツミョーだった。ウエルベックの作品はいつもそうかもしれないけど。
    Back2Backな構成だから形式は『素粒子』に似ているけど、この小説は構造として『人生記』があるから、全体的にカッチリしてる印象を受けた。
    アイデアとしての人生記の面白さと、書き手であるダニエル1たちが定義する彼の人生の滑稽さと悲しいまでの正直さ。人生記には書かれなかったダニエル1の顛末、ままならなすぎる。
    ネオヒューマンは自分自身のことが分かりすぎていてやけにサッパリしているから、その孤独な生き方に滑稽さも含まれているような感じがした。
    読んでいてウエルベックは正直な人だな

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    2023年04月27日
  • セロトニン

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    ネタバレ

    22.9.30〜11.11
    夜中にテレビを無音でつけると落ち着いて〜って描写、鬱の時から個人的な習慣化してたから、ここまで人間の行動とか心理は似るものなのかと愕然とさせられた。どうしようもなくウエルベックの作品に共鳴する部分が自分の中にあるなあと、読みながら何度も思った。

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    2023年04月27日
  • 闘争領域の拡大

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    初ウエルベック。インセル鬱病エンジニアの主人公が同僚の非モテ醜男と旅に出る。小説の形態をとりながらその中身はエッセイのような、論文のような、アジテーションのような。厭世的ではあるが世界を観察する眼差しを捨てることは決してできない。そんな哀しさに満ちている。皮肉たっぷりの持ってまわった言い回しは痛快で面白いけど物語として面白いかと言われると…??

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    2023年01月27日
  • 素粒子

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    この小説は天才的な科学者と典型的な文系人間の兄弟を両輪として展開する。1960年代より文化面で進行した個人主義と性の解放によって訪れたのは、人間の分離と欲望の無制限な増大だった。その社会を間近で観察し続けたミシェルは個人性を排除した新人類を生み出した。それは人類の緩やかな絶滅をも意味していた。

    行きすぎた個人主義の他から逸脱したいという欲求から生まれたセックス至上主義、エロチック=広告社会に対するアンチテーゼであり、現代社会への諦めを感じる。そこでは歴史上類を見ない規模で不均衡がばら撒かれる。エヴァの人類補完計画にも通ずる部分がある。みんな一個になっちゃえばいいじゃん。
    ミシェルとブリュノの

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    2022年12月30日
  • 素粒子

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    "「唯物主義と近代的科学を生み出した形而上学的変動は、二つの大きな結果をもたらした。合理主義と個人主義だ。ハックスレ―の過ちは、それら二つの結果のあいだの力関係を測りそこねたことにある。とりわけ、死の意識が強まることによって個人主義が高まることを過小評価したのは彼の過ちだった。個人主義からは自由や自己意識、そして他人に差をつけ、他人に対し優位に立つ必要性が生じる。『最良の世界』に描かれたような合理的社会においては、闘いは緩和されるかもしれない。空間支配のメタファーである経済的競争は、経済の流れがコントロールされる豊かな社会ではもはや存在理由を持たない。生殖という面からの、時間支配のメ

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    2022年11月04日
  • 地図と領土

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    ①文体★★★☆☆
    ②読後余韻★★★★★

     この小説の主人公は現代アーティストです。この主人公が物語のなかで作り出す芸術作品の表現描写がすばらしく、とても感銘を受けました。この作品群は視覚を主にしたものがほとんどといっていいのですが、文章でこれほど表現されているものを私は読んだことがありません。実際この作品を見てみたいと思いました。
     そしてそのお父さんが建築家、というか大手の設計会社の経営者というほうが近い人物なのですが、そのお父さんが彼の創作活動のひとつのキーパーソンにもなります。主人公の彼のお父さんとの会話からは、若い頃はデザイナーであるウィリアム・モリスにあこがれたはなしであったり、反

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    2022年10月29日
  • 素粒子

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    終焉に向かう人類。それぞに「愛」の意味を探して苦悩する二人の兄弟。
    ストーリーが面白いので、序盤はどんどん読み進められました。途中から哲学や物理の考察が多くなり、どっちも疎い僕は読むのがキツかったですが、最後で納得!めちゃくちゃ深い伏線。
    読み終えてみると、かなり面白い作品!

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    2022年06月12日
  • 服従

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    全体的に大きな爆発的なエピソードはなく、ゆっくりと食べ物が腐っていく様を見ているような話だった。
    序盤は社会情勢についてどこか他人事で非常に呑気な振る舞いをしているがだんだん自身の生活が変容していき、なすがままに飲み込まれていく様子が異様にリアルだった。
    主人公が人生を通しての研究対象としたユイスマンスと彼自身の人生との相似形な構造が生きる事の奇妙さを際立たせるように感じ、惹きつけるものがあったし、宗教の力に国が飲み込まれていく様が流麗で恐ろしさを感じた。
    人は抗うよりも順応していった方が生きるのが楽だもんなぁ。それがヨーロッパでいち早く市民革命を起こしたフランスであったとしても。

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    2022年04月21日
  • 素粒子

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    フランス近代の変遷とともにあった異父兄弟の人生は背中合わせで、同じ光景を見ることはない。
    体を燃やす孤独、雪のように降り積もっていく孤独。欲望も快楽も幸福も愛も、個人主義がもたらした孤独を前にしては人はゆっくり狂いゆくばかり。
    人は滅んでいくのだろう、無抵抗に、音もなく。

    兄の人生は「これが延々と続くのか…」と思う描写ばっかりでそりゃ地獄だわと思うし弟の人生も自分では解決の術もわからない孤独に厚く包まれていてそれもまた内側から凍っていく絶望がただただ冷たい。エピローグのまとめ方はウェルベックの才能に唸るけれど、やっぱり何か怖いんだよねこの人は…

    明確に反出生主義の流れを汲んだ小説だと思う。

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    2021年02月06日
  • ある島の可能性

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    性と老い、そして不死をキーワードに、現在と遺伝子コピーされたクローンが生きる破滅を迎えた世界を描いた、SFというかディストピアの向こう側のような作品。
    セックスから男と女の話、そして文明と広がる話の中で、男と女がそれぞれが求めるものをつきつめると、結局一夫多妻が正解だったのかもしれないと感じ、そして文明が崩壊していく中で、人生に居心地の悪さを感じた人々は、最終的にはイスラム的な共和国の建設を願うようになるの部分は、後のウェルベックのベストセラー「服従」につながるように思った。
    むしろ「服従」につながると思わせながらも、設定としては「服従」後の作品といえるようなのが面白い。

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    2020年10月21日
  • 素粒子

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    ミシェルウェルベック 「 素粒子 」 

    新しい人間学。形而上学(多数の人が共有する世界観)の変異から「人間とは何か」を考察している

    ショッキングなエピローグ。素粒子レベルまで物質化した人間像。性別と死がない新人類。未来の新人種が三人称的に語る構成。

    面白いけど 性描写がしつこい。

    祖母の遺骸や恋人との再会のシーンは、人間とは何か 考えさせられた

    人間とは何か
    *心の内に〜善と愛を信じることをやめない
    *生きることは 他人の眼差しがあって初めて可能になる〜遺骸となっても 生きていた頃を想像できる
    *お互い敬意と憐みを抱くのが人間らしい関係


    時代背景
    近代科学が キリスト教道徳を一

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    2020年10月20日