【感想・ネタバレ】服従のレビュー

あらすじ

二〇二二年仏大統領選。極右・国民戦線マリーヌ・ル・ペンと、穏健イスラーム政党党首が決選に挑む。しかし各地の投票所でテロが発生。国全体に報道管制が敷かれ、パリ第三大学教員のぼくは、若く美しい恋人と別れてパリを後にする。テロと移民にあえぐ国家を舞台に個人と自由の果てを描き、世界の激動を予言する傑作長篇。

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Posted by ブクログ

イスラムの文化が現在の資本主義、キリスト教的世界に広がっていく様を、惰性や諦めと共に受け入れる主人公が印象的だった。大きな歳の差のある一夫多妻を最初は軽蔑していたのかと思ったら、最後は期待も込めて受け入れている。
ステータスのある男性目線ならあるかもしれない。一方で、女性の教養、社会進出への抑制が強くなるが、幸福の定義次第で受け入れられる、リアリティーのある内容なのか?分からなかった。

初めてのウェルベック作品。
文体の印象は、性的な描写が多い村上春樹。
なんとなく感じていたが、明文化されるとハッとする表現が多い。
現実的で直接的。表現がシャープで遠慮なし。
比較すると村上春樹のファンタジー性が強調される。

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2025年02月10日

Posted by ブクログ

タイトルから想像されるプロット(暴力的な場面も多いのでは?など)とはまったく違う、どちらかといえば知的な会話や主人公の内省によって展開に、やや意外な印象を受けた。読後、すべては「ぼくは何も後悔しないだろう」というラストに向かっての布石だったと知るのは、ある意味で衝撃的でさえある。
主人公の知人の乗車がルノー・トゥインゴと記されていたが、そんな身近なもの(他には、料理、酒、スーパーマーケットなど)によって、一気にストーリーが現実味を帯びてくるということにも気付かされた。
まるで村上春樹の小説を思わせるかのような訳文も秀逸。

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2020年05月14日

Posted by ブクログ

え?え?と驚いているうちに、状況がどんどん変化していく。
リアリティは半端ない。
背景として人口増と共にイスラム教徒が世界で増加していることもあって、背筋が凍る思いがするディストピア小説だった。とくにジェンダーをめぐっては皮肉と真剣さがない交ぜになって、深く考えさせられる。

最後にソ連崩壊後の世界に触れた佐藤優の解説もよい。

ただ、イスラムへの偏見は感じる。

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2019年04月16日

Posted by ブクログ

これはただのSF小説ではない。個人・国家・自由といった概念がこれからどのような変貌を遂げるのか、ウェルベック独自の視点で読者に提示する傑作である。私の理解では、この作品のテーマは先進国における個人主義・自由主義の未来であると考える。重要なのは「服従」というタイトルで、多様性の中で自由を謳歌していた個人がその自由によって疲弊し自己を見失い、共同体的なしがらみに「服従」することで「自由疲れ」からの解放と生の実感を得るという筋書きになっている。

「フランスにイスラーム政権が誕生!」「社会をリードする知的エリートがイスラームに服従!」という設定はセンセーショナルだが、よく読むと服従する先は何もイスラームに限った話ではなく、それこそ伝統的なキリスト教でもよかったことがわかる。その証拠に、「中世キリスト教文明が1000年も続いたこと」が、「近代文明が高々200年しか続いていないこと」と対比して描かれ、「近代社会に対する中世キリスト教文明の偉大さ」が賞賛される場面が多くある。本書の主人公はキリスト教の聖地を訪れ心の平安を求めようとするが、上手くいかず修道院を後にする。ウェルベックが「服従先」としてあえてイスラームを設定したのは、人々の思想や行動に対する拘束力・人々が進んで身を委ねようとする求心力を、今のキリスト教に見出せなかったからに相違あるまい。

個人的に尊敬する佐藤優氏が解説を寄せているが、「イスラームによるヨーロパの統合がウェルベックの作業仮説であり、知的エリートはとかく権威に服従するものだ」という氏の見立てはどこか的が外れているように感じる。 私は、本書はヨーロッパ統合の問題ではなく個人の生きかたを問いかけているのだと考える。より正確に言うと、「このままでは本書のような社会がやってきますよ、読者の皆さんはそれでいいんですか?」といった感じだろうか。本書で描かれる世界がすべて現実のものとなるということはないとは思うが、本書を構成する様々な要素は現実社会に大きな影響を与えることとなる気がしてならない。

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2017年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ウェルベック・ミーツ・イスラム教。
フランス大統領選の話だけど、政治ネタは3割くらい。セックスと食事の話が楽しい。
宗教やユイスマンスの話は、よく分からないなりに楽しい。

最近「一夫多妻制って制度化されてないだけで日本も実質そんなもんじゃ?結局、所得が高いやつが愛人とか囲ってるわけで」
って事を知っちゃって、せちがらい。

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2017年07月19日

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フランスは着々とムスリム化していき各界トップも改宗していくという近未来の予言的小説。虚しさを感じている現代ヨーロッパは大きな力に跪きたがっている。十分ありえる。ファシズムかイスラムか

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2025年09月11日

匿名

購入済み

発売日がシャルリーエブド事件と重なったこともあってセンセーショナルな売り出しになった本書ですが、読むと基本的には他のウェルベック作品と同じく個人主義の行き着いた先でのインテリの絶望が語られています。
「キリスト教のフランス」ではなく「個人主義的で世俗的なフランス」がイスラームに飲み込まれていく小説なので、その点では服従する先はイスラームと姉妹宗教であるキリスト教でも良かったのだろうと思いますが、現代においてリベラルになったヨーロッパのキリスト教にはそこまでの力強さが無いので最終的にイスラーム(イスラームという言葉自体、神への服従という意味を待ちますね)が選ばれます。

ただ小説なのであまりこういうこと言うのも無粋なのでしょうが、穏健なイスラーム政党が政権握ったからといってただちに一夫多妻制になるかと言われると疑問ではあります(現にトルコも20年以上イスラーム主義政党が政権を握っていますが一夫多妻になりそうもありません)。またサウジアラビアは自国以外にスンニ派をリードする勢力を嫌うので本当ならイスラーム同胞党を弾圧する側に回りそうですが…。現にムスリム同胞団はサウジと関係悪いですし。

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2024年10月02日

Posted by ブクログ

(2015/11/19)
なんでこの本を入手したかその経路を全く覚えておらず、
どんな本かもわからないまま読み始めた。
ときおり物凄い性描写があって引きつけられ、
その後政治的な話になって斜め読みし、、、

しかしそこがポイントの本だったようだ。
近未来、フランスにイスラム政権誕生、人が神に服従する
O嬢の物語は女が男に服従する。

それを大学教授が両方同時並行的に体験する、、、

みたいな本だったような気がする。
シャルリー・エブドのテロがあったり、
イスラム国などが跋扈したり、
ヨーロッパならではの視点。

それにしても女にもてるのねこの人

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2024年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「人間の絶対的な幸福は服従にある」。
2022年のフランス大統領選で、ファシスト党とイスラーム党が決選投票に残り、イスラーム政権が誕生するお話でした。
楽しいの意味はなく、面白かった。
知識や教養は、超越神の前では脆い。インテリほど迎合も早いというのは驚きです、フランスはレジスタンスの国だと思ってたけどインテリはこうなのかな?
この主人公は、再び大学で教鞭を執って生活していくためにイスラームに改宗するというより、何人も妻が欲しい…の方が強そうなのにもやもやするところがありました。もともとノンポリなのも珍しいかも。

外堀から埋められるみたいなところに寒気がしました。その方向からか、と。
実際にこれが起こるかと言われれば8割方無かろうとは思います。でももしも…となれば、このお話の流れは自然に感じられました。
一神教の国でこうなんだから、多神教だともっと容易そう。だけど、男性観で拒否しそう。。

2024年に読んでいるので、解説にあるイスラエル人のご友人の「ハマスの主敵はイスラエル」がつくづくわかります。イスラーム国とハマスがガザ地区で内ゲバやってたのは存じなかったけれど…どちらもスンニ派なんだな。
世界的に世論はパレスチナ支持に傾いてる。イスラーム支持でなく、イスラエルがやり過ぎという方向で。
でももしもイスラエル側が「敗戦国」とされても、それがそのままイスラーム支持という意味にはならない気はします。見方が甘いかなぁ。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

イスラム化していくフランスを強固な政治的リアリズムで描くという実験的な試みが小説の主軸にはあるが、見落としてはいけないのがユイスマンスの存在。享楽に埋没していた中年男性が精神的にも身体的にも危機に襲われる。
結末にやってくるのが、まさに主人公にとっての救い。
これはまさにユイスマンスの人生そのものとも共鳴してる。

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2023年08月15日

Posted by ブクログ

全体的に大きな爆発的なエピソードはなく、ゆっくりと食べ物が腐っていく様を見ているような話だった。
序盤は社会情勢についてどこか他人事で非常に呑気な振る舞いをしているがだんだん自身の生活が変容していき、なすがままに飲み込まれていく様子が異様にリアルだった。
主人公が人生を通しての研究対象としたユイスマンスと彼自身の人生との相似形な構造が生きる事の奇妙さを際立たせるように感じ、惹きつけるものがあったし、宗教の力に国が飲み込まれていく様が流麗で恐ろしさを感じた。
人は抗うよりも順応していった方が生きるのが楽だもんなぁ。それがヨーロッパでいち早く市民革命を起こしたフランスであったとしても。

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2022年04月21日

Posted by ブクログ

ずっと前に書店で『素粒子』というタイトルの文庫本を見つけ、物理学系の読み物かと思ったら小説らしかった。変わった題のを書く作家だなと思い、その後もあちこちでウエルベックの名を見かけたが、ついぞ読まずに過ごしてきた。
やっと初めて読んだのがこの本。
現在のフランスの大統領選で、極右政党とイスラム教系の政党がぶつかることになり、フランス国民がイスラム教の方を選択することとなって、結果、女性のスカートがなくなったり、一夫多妻が一般的になったり、大学等の教員はイスラム教徒でなければならなくなる、という話。
いま世界中で「あまり頭の良くない極右」が台頭しているので、それを受け入れない場合の選択肢は何が残るのか?という問題を提起している。
実在の現役政治家等の名前が多数出てきており、これがベストセラーになったのだから、かなりリアルな小説なのではないか。
イスラム教は、我々日本人にとってほぼ完全に未知の世界であるが、それよりは長い付き合いの筈の西欧人にとっても「異質な他者」であるようだ。
イスラム教とは何か? ここではルディジェという登場人物が開陳する物語として示されているのみだ。素晴らしい文明ではあったが、結局は敗北した西欧というイメージ。
とりあえず、小説として面白い作品だった。出てくるフランスの政治家の名前にまったく馴染みが無いとしても。
ほかにはどんなものを書いているのか。ミシェル・ウエルベックの小説をまた読んでみたい。

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2020年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022年、フランスがイスラム政権下に置かれ、潤沢なオイルマネーに懐柔されてソルボンヌ大学が買収され、女性はブルカを被り、労働を禁止され、イスラム教国になっていく。主人公の文学部の教授は改宗しなければ、教授を続けられずついに改宗し妻を娶るのだった。

世界をリードし、どこまでも個人主義を推し進めた西洋文明が自殺をとげ、人口減少、経済衰退の中、イスラム教を取り込むことでかつてのローマ帝国を復活させようと試みる。

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2019年02月10日

Posted by ブクログ

"2017年に行われたフランス大統領選では、中道政党であるアン・マルシェのエマニュエル・マクロン候補と、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補の決選投票となり、39歳のエマニュエル・マクロン氏が選ばれ、フランス大統領となった。
本書「服従」では、極右政党と移民系イスラーム政党の決選投票となり、イスラーム政権が誕生するシナリオ。2022年でも極右政党党首は、マリーヌ・ル・ペンさんであり、現実感あるストーリー展開。中盤のパリを離れる主人公の周りで起こっている出来事は、現在テロが頻発するフランスの様子を見事に描き出している。
一つの可能性を提起した小説で、世界中で翻訳され、話題になっているらしい。"

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2018年11月25日

Posted by ブクログ

フランスにて極右政党とイスラム穏健派政党が首班を争うことになったら、
という設定のもとに、
大学で教授を務める主人公の姿が描かれる。
政治の動きを実名政治家も用いながら説明しており、
フランス人にとってはかなりリアリティの高い作品なのだろうと思わされる。

正直なところ、読後感はすっきりしない。
れが実際に起きる出来事なのか、
といわれるとかなり確率が低いのでは、とも思う。

しかし本題は、その政治・社会的な混乱の中、
「服従」を選択するエリート層に対する批判なのではないだろうか。

日本だとここまでの思考実験は難しいのだろうな、とも思う。
左だ右だという形式にとらわれて、
本質的な危機があることに気付けない。

申し訳ないが、エンタメ・純文学を望むのであればお勧めしない。
ヨーロッパ圏での危機感やイスラムに対する不安感を感じたい方に教養の本としてお勧めする。
フィクションながらもノンフィクションのように感じさせる、
なんとも言えない小説。

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2017年11月26日

Posted by ブクログ

2017年の現実もル・ペンさんの敗北。

しっかしこれ、中年独身男が服従したのはイスラムではなく寂しさじゃないですか。

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2017年05月08日

Posted by ブクログ

西欧文明の行き詰まりからありうる近未来を描くということなのかな。一つの極端な基本的にはなさそうな可能性っていうことなのかもしれないけど、全体的なインテリ限定の世界にいまひとつ入り込めない印象。佐藤優の解説が余計に胡散臭さを感じさせる。この人の作品は初めて読んだけど女性の書き方はなんか酷い。この作品だけ?

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2023年09月28日

Posted by ブクログ

なんと文庫化していたので美容院の暇つぶしのために買って一気読み。フランスがイスラム政権の党に取られて徐々にイスラムに傾き、、、とのあらすじ、ふとした出来事をきっかけにじわじわと世界が変わっていく様、2021年に読むとなんとまぁ皮肉に思える。
スジとは別に本の全体に流れる強烈な差別意識というか、まぁはっきり言って相当きついセクシズム描写はまさかウェルベック本人無意識に書いてるわけでなく、この本の筋を浮き立たせるために意識的に使っているのだろう。というかそう思いたい。
それ以外にも、本から距離を取って読める人でないと危険な本になってしまう。それだけの求心力というかカリスマを発する本で、ウェルベックすげーなー

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2021年11月17日

Posted by ブクログ

おもしろいし興味深い設定なんだけど、一夫多妻制で釣ってるのか?おっさんの(ための)話か?ラストは、はあ?と思った。ずっとおもしろく読んでたのに。
この設定で、他視点での話を読みたいなあ。
と思ってたら「イスラーム・ジェンダー学」っていうのがあった。ネットでちょっと見てみたけど字がびっしりで読みにくい。段落分けするとかしてほしい。

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2020年05月25日

Posted by ブクログ

ウェルベックの作品は和訳も多く出版されていて、かねてより興味を持っていました。フィクションですが、フランスの政治や社会情勢については、かなり現実を反映しており、実在の政治家も登場します。ここに描かれるのは、イスラム政党のフランスでの台頭ですが、ウェルベックが描きたかったのは、「ヨーロッパの自死」ではなかったかと思います。

西欧文明が、キリスト教支配の頚城から逃れ、理性・啓蒙主義を軸に文明の発展を図ってきたものの、アナーキズムとニヒリズムが社会と精神の停滞を招き、この小説の舞台である近未来のフランスで、イスラームの信じる神とその世界観に「服従」していく。ウェルベックは、フランスが精神のバックボーンを喪失し、方向性を見失っていると考えているのでしょうか?

作中には、大学教授である主人公にウェルベックがこう語らせています。「希望が無くなったとき人々に残されているのは、読書だと信じるべきなのだろう」
フランス経済の低迷の中で、出版業界は比較的業容が良い状態を踏まえての言葉ではあるものの、読書が人にとって救いとなることがあることは事実ではないでしょうか。

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2020年01月23日

Posted by ブクログ

イスラム同胞党がフランスで勢力を伸ばすという架空近未来を背景に、文学者の訳のわからない生活を描く。自由な個人という概念は、中間的な社会構造を解体するには有効だが、家庭という基本的な社会構造を破壊するに至って、否定するべき概念であるという理論、自然淘汰圧によって一夫多妻とそれに伴う少数のエリート男性による女性の独占の肯定などが目新しい。

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2019年12月31日

Posted by ブクログ

ユイスマンス

カップルとは一つの世界、独立して閉じられた世界であって、もっと広い一つの世界の真ん中を、傷つけられたりすることなく移動できるのだ。

人間の絶対的な幸福が服従にあるということは、それ以前にこれだけの力をもって表明されたことがなかった。

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2019年07月07日

Posted by ブクログ

会話の中で登場するフランス文学や哲学を織り交ぜたストーリーは、消化不良であった。

しかし、主人公のユダヤ人の彼女・愛人がイスラエルへ避難したり、徐々にパリの街並みがイスラム教色に染まっていく風景に、ただ流されるだけの主人公の小説。

そして、思慮深いがノンポリな主人公が、環境適応するために、イスラム教へ改宗し服従するという文学的な作品。

観光や仕事で、パリを観た事がある私にとって、憧れのヨーロッパ的風景であるパリが、イスラム色に染まっていく本作のストーリーは衝撃的だった近未来小説。

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2019年04月14日

Posted by ブクログ

2022年のフランスでイスラム主義政党が国政を掌握するという、一見あり得ないだろうそんな事、と思いがちだけど、よく考えるとあり得なくもないのか実は、と思ってしまう、現在のフランス及びヨーロッパ諸国の激動を描いた作品でした。
著者はこの本の中で、ヨーロッパは資本主義を推し進める中でヨーロッパの良さを自ら放棄してヨーロッパを自殺に追い込んでいる、そしていまそこに残っているのは疲弊だけだ、と語っています。
そのヨーロッパの大国フランスで行われる2022年の大統領選で、移民の完全排除を掲げ内向きなフランスを目指す極右政党と、穏健派のイスラム主義政党との一騎打ちとなり、疲弊した国民がイスラム主義政党を勝たせてしまいます。
すると何が起きたか?
学校や企業から女性の姿がなくなります。女性は街を歩くときにイスラム教の伝統的な衣装を身にまとい肌の露出が一切なくなります。一夫多妻制が認められます(認められるどころか、世の中の人口構造に着目した場合、一夫多妻制により弱い雄が自然淘汰されることがイスラム教の摂理に基づく自然な結論だとされています)。
そして恐ろしいのが、既存のシステムに疲弊していたフランス国民は女性も男性もこのイスラム政権が繰り出す政策に次第に順応していき、主人公のフランソワを含め多くの人がイスラム教に改宗し、イスラム政権の下で新たな社会活動を築こうとしていく点です。著書のタイトル通りまさに「服従」です。
この本は2015年に刊行されたものですが、著者はこの本の中でEUの崩壊について言及しています。EUからの離脱を模索する国が現われたり、それとは逆にEUに取り入ろうとするイスラム系国家の台頭に触れていて、2016年のイギリスのEU離脱の決定を予言しているかのような内容で、恐ろしくも読み応えのある作品でした。

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2018年01月03日

Posted by ブクログ

主人公の研究対象であるユイスマンスのことをわからないとわからないんだろうな。。。と読みながら思った。これまで読んできた「闘争領域の拡大」「プラットフォーム」「ある島の可能性」とはなんか違う感じ。消化不良。

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2017年10月29日

Posted by ブクログ

フランスの政治状況について全然知識がないため、読むのが難しかったです。もっと知識があれば、もっとこの本の魅力を味わえるのだろうなと思います。

フランス大統領選挙で、国民戦線とイスラーム同胞党が決選投票に挑み、イスラーム同胞党が勝利します。イスラーム同胞党は、フランス人の子弟がイスラーム教の教育を受けられる可能性を持たなければならないとしています。イスラーム教育は男女共学はあり得ず、ほとんどの女性は初等教育を終えた時点で家政学校に進み、できるだけ早く結婚することが理想とされます。教師もイスラーム教徒でなければなりません。

そんな社会になっても、思っていたよりは反乱、暴動が描かれていないように思いました。もちろん銃撃戦があったり、人が殺されていたりする場面もあったのですが、想像していたよりも少なく、報道管制の恐ろしさも感じました。最終的に主人公もイスラーム教に改宗を決めてしまい、そうやってどんどんイスラーム教が受け入れられていくのも恐ろしくなりました。

主人公については、孤独な人、という印象を持ちました。その場その場で誰かと付き合ってはいても、誰かと深く関わることはないのではないかと思ってしまったからです。

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2017年06月18日

Posted by ブクログ

書店にて「文庫になってる!」と手に取り、そのままレジ直行。

イスラム教にヨーロッパが支配されたらどうなるのか、という挑戦的な内容の小説だということをテレビで知り、興味を持っていました。

ある程度哲学、文学、政治への素養がないと厳しいかもしれません。でも新聞の海外欄を読み通せるくらいの知識があれば問題ないと思います。
あとフランス人の作家のせいか(それは偏見でしょうか)ベッドシーンが多用されています。特に前半は。
読んでるときはちょっとくどく(っていうか主人公何してるんだよと)思っていましたが、あとから考えると、ヨーロッパの生命力を欲望として表現していたのかもしれないとも思えます。

ラストに非常に前時代的な結論が受け入れられてしまう様子は、何が正しいのかわからなくなる、足元が落ちていくような感じがしました。

失業者増加、賃金低下、出生率低下はすべて、イスラム教に基づき、女性が必要以上の教育を受けないこと、仕事につかないこと、一夫多妻制とすることによって一発解決してしまうという。

複雑です。

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2017年06月14日

Posted by ブクログ

だらだらごちゃごちゃゆってるな感はあるけど笑それも含めておもしろかった。何となくの村上春樹感ある。絶対的な幸福は服従にある。イスラーム世界は創造主による創世は完璧、称賛と法への服従。人間主義とインテリは弱く脆い。

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2017年05月25日

Posted by ブクログ

近未来を描くディストピア小説。
フランスの国民戦線とイスラーム党の政権抗争と、その帰結、およびそこから描かれる影響が表されている。視野狭窄と他者への寛容性を失った社会の起こり得る帰結と、そうした非日常が日常化していく中で作られていく新たな「当たり前」が描かれていく中で、現在の持つ特異性や良さ、改善点に改めて気付かされた。

著者の白人男性としての価値観も少々感じることがあった、ムスリムへのある種のぬぐいきれない固定観念みたいなものもところどころ感じたり。
自分はディストピア小説に割と心動かされることが多いのかな。ただ一方で、物語の大筋と個人の世俗的な欲望がどのようにリンクしているのか見えにくい部分があったことと、描写の直接性には少し違和を覚える場面もあったので、

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2017年04月23日

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