ミシェル・ウエルベックのレビュー一覧

  • 地図と領土

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    ネタバレ

    ミシェル・ウェルベック「地図と領土」

    今何かと話題のミシェル・ウェルベック、ついに手に取ってみた。結論、猛烈に面白い。以下、微妙にネタバレを含む。

    母親を自殺で亡くした内向的な青年が写真、さらには絵に打ち込む。その才能を見出すのは手練れの「芸術のプロフェッショナル」たち。ミシュランの広報という絵にかいたような業界エリートである美女との恋をきっかけに作品にはいつのまにかすさまじい高額がオファーされ、主人公は目もくらむような高みに導かれていく。

    テーマはずばり「芸術に値段をつけられるか」。著者のビジネス視点がいかにも正確で、通俗的な「金儲け悪徳論」とは一線を画す。そしてそれ故になおさら個人の

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    2019年01月02日
  • 服従

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    "2017年に行われたフランス大統領選では、中道政党であるアン・マルシェのエマニュエル・マクロン候補と、極右政党である国民戦線のマリーヌ・ル・ペン候補の決選投票となり、39歳のエマニュエル・マクロン氏が選ばれ、フランス大統領となった。
    本書「服従」では、極右政党と移民系イスラーム政党の決選投票となり、イスラーム政権が誕生するシナリオ。2022年でも極右政党党首は、マリーヌ・ル・ペンさんであり、現実感あるストーリー展開。中盤のパリを離れる主人公の周りで起こっている出来事は、現在テロが頻発するフランスの様子を見事に描き出している。
    一つの可能性を提起した小説で、世界中で翻訳され、話題にな

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    2018年11月25日
  • ある島の可能性

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    ウェルベックはすでに何冊か読んでいるが、この作品でようやくウェルベックの愛に対する執着の凄さが分かってきた。思い返してみると、いままで読んだ作品にも愛への執着は十分あったと思うのだが、それよりもペシミスティックさの方ばかりに注意が行っていた。これを読んだ後では作者の印象が少し変わった。単なる先鋭なペシミストではなく、自由主義的な現代の風潮を否定するその態度の根底には、愛こそが唯一求めるべき価値のあるものであるという熱烈な価値観があるのではないか、というふうに思えてきた。ペシミストが愛を熱烈に肯定する。面白いではないか。しかもその愛は、精神面よりも肉体面を強調した愛である。実に挑発的だ。それでい

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    2018年06月10日
  • 素粒子

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    作者の掌の上できれいに転がされた感じがする。一本の小説の中で何回、不幸と一瞬届きそうになる幸福の間を行ったり来たりしただろうか。これでもかというくらい振り回され、同情を誘い、もはや「素粒子」というタイトルが匂わすSF的結末への期待をも忘れて、途方もなく哀愁漂うなけなしの性愛物語として十分満足だ、と観念しかけた頃、ついに結末がやってくる。そのカタルシスたるや、圧巻である。一切の苦悩から解放されたときのような浄福を自分は味わった。自由と進歩主義に対するにべもない唾棄には思わず笑ってしまったが、このとき、登場人物たちに対する自分の数々の共感と同情も一緒に笑い飛ばされてしまった。それがまた爽快。ウェル

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    2018年03月18日
  • 闘争領域の拡大

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    ネタバレ

    ちょっと後半の展開が急なきがするけど、ウェルベック独特の視点がもう現れている気がする。

    恋愛の自由主義化によって経済と同じ階層が出現してしまった。

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    2018年02月27日
  • 服従

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    フランスにて極右政党とイスラム穏健派政党が首班を争うことになったら、
    という設定のもとに、
    大学で教授を務める主人公の姿が描かれる。
    政治の動きを実名政治家も用いながら説明しており、
    フランス人にとってはかなりリアリティの高い作品なのだろうと思わされる。

    正直なところ、読後感はすっきりしない。
    これが実際に起きる出来事なのか、
    といわれるとかなり確率が低いのでは、とも思う。

    しかし本題は、その政治・社会的な混乱の中、
    「服従」を選択するエリート層に対する批判なのではないだろうか。

    日本だとここまでの思考実験は難しいのだろうな、とも思う。
    左だ右だという形式にとらわれて、
    本質的な危機があ

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    2017年11月26日
  • 地図と領土

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    ネタバレ

    アーティストのジェドの一生の話。世界そのものを表現するために「工業製品の写真」→「ミシュランの地図の拡大写真」→「職業人の肖像画」と表現が変遷していくが、ジェドその人は、単なる鏡としての人なのか、空虚で、情熱のようなものがあまり伺えないように見えた。晩年の圧倒的な諦念・孤独の中で制作された作品群にようやくエモーション、想いのようなものが感じられたような気がする。とかいって、すべて芸術作品を文章で読まされているわけですが。エビローグの、寂寞さがすごいのと、ウェルベックのテーマがてんこ盛りなのが、なんだか微笑ましい気持ちにさせられた。でも、自分の人生における交友関係も先細りだし、最後はこんな状態に

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    2017年11月01日
  • ある島の可能性

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    ネタバレ

    人間・ダニエルと、彼をクローニングして生み出され、何十代もクローンとして再生を繰り返したネオヒューマン・ダニエルの手記が交互に語られる変則的な構成。
    『素粒子』の続編的な作品と聞いて読みだしたけれど、読み終わってみると、『素粒子』よりドライでハードな物語だった。続編というよりも、訳者あとがきで説明されているように、『素粒子』の本編とエピローグの中間に位置する作品。
    数多くの、真実に見えるフレーズが散らばっているけれど、総体として見たときには、やはりこの主題―性欲のみが人間の持てる唯一の欲望かつ喜びであり、若者のみがそれを享受し、それ以外の人間はその欲望の向こうに作り出した愛という概念に引きずり

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    2017年05月15日
  • 服従

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    2017年の現実もル・ペンさんの敗北。

    しっかしこれ、中年独身男が服従したのはイスラムではなく寂しさじゃないですか。

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    2017年05月08日
  • 服従

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    ネタバレ

    どうしても惹かれて、本当は本を買っている余裕がなかったのに、一冊なら!と購入。
    呼ばれたなー。

    というのも、直前に萩耿介『グレイス』を読み。
    その前にフリードマン『新100年予測』を読んでいたんですねー。
    フリードマンの方は読み終えていたので、ドイツとフランス間のアレコレが気になって手に取ったのは間違いない。
    ただ、『グレイス』に出て来たデュルタル神父が、まさかユイスマンス経由でこの作品に繋がってくるとは。呼び本、恐ろしや!

    そんな訳で運命的に手にした一冊なのだけど、なかなかすごすぎる。
    国民戦線とイスラム党の決選投票。
    そこから目まぐるしく変化するフランス内部。
    主人公が車で移動するとき

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    2017年05月05日
  • 素粒子

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    ネタバレ

    人間存在の孤独についての物語が、どこまでも個人的なエピソードを通じて、しかし普遍的な確信をもって語られる。

    小説の主軸になるのはふたりの異父兄弟。兄は女にもてず、不惑を超えても性的な彷徨を続けている文学教師。弟は、相手が男であれ女であれ、他者と人間関係を築き難い天才科学者。
    西欧文明の終焉を背景に、兄弟と彼らを取り巻く人間たちを透かして、孤独の絶対性が描かれる。

    ラストで明かされる物語構造と人間存在への視点は超越的で、冷徹でありながら甘美だ。それはニーチェの超人思想を思い出させる。人間は生まれながらに重荷を背負ったものであり、人間の先に続いて現れるもの(があるとして)への架け橋でしかない、

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    2017年04月20日
  • プラットフォーム

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    衝撃から未だ覚めない。終盤まで延々つづく叙述。ときおりその主体は主人公から脇役に譲られる。しかしそれは補足のように存在していて物語への効果は大きくない。読み終わってから2週間、未だ混沌のなかにいる。

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    2016年03月28日
  • プラットフォーム

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    ネタバレ

    「服従」がベストセラーとなっているミシェル・ウェルベックの長編2作目。彼の作品は初めて読む。現代のフランス(を中心とした西欧社会)において、彼の視点はただただ人間の欲望というものの発露の仕方に向けられているようだ。露悪的ともいえる文体で、「普通の」人間の中にある欲望、殊に性欲についての描写がしつこくまとわりつくようで、濃密である。どこかで開高健が「作家の善し悪しは食事とセックスをきちんと書けるかどうかでわかる」というようなことを書いていたが、この作品では(フランスが舞台でありながら!)食事の描写はわりあいさらりとしていて、その分すべての技巧やレトリックをセックスとそれにまつわる哲学に費やされて

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    2016年01月16日
  • プラットフォーム

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    旅行会社に勤めている?ウエルベック『プラットフォーム』だね。え、なにそれ。という新しい出会いのスタイルを提案する本として私の中では記憶されたこの書籍は、ウエルベック特有の高度に発展した資本主義社会への呪詛に溢れていて、悪意という意味では最も楽しめました。

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    2015年10月25日
  • 素粒子

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    難解な内容。終始ストーリーの方向性が見えない。全体的に叙事的かつ客観的描写が多い。感情論に頼らない文体は孤独な、あるいはシニカルなニュアンスを強めると同時に人類の本来の姿・性質(動物性)を想起させる。観念論や唯物論、更にはヒューマニズムの歴史に関する言及が多く、「今後人類の思想はどう展開してゆくか」といった壮大なテーマを含んでいるよう感じた。

    その答えは十人十色。

    いろんな読み方があります。とにかく近代西洋史や思想史に興味がある方はきっとインスパイアされるだろう問題作だと思います。物語として読むより思想本として読むことをおすすめします。

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    2011年12月13日
  • 素粒子

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    邦題「素粒子」。フランスで最も物議を醸す作家、ミシェル・ウェルベック。初めて読んだ。入り込むまでに時間がかかるのは、その作家の世界観を知らないせい。入り込んでからはのめり込むように読み耽った。これほど悲しい物語を読んだのは久しぶりかもしれない。ガツンとくる物言いと悲しきストーリー展開。読んでいて、こんなに悲しい最後が待ち受けているとは思わなかった。最後だけが悲しいわけではない。後半は常に悲しい。怠惰。頽廃。擦り減っていく感触。現代性をここまで確実に捉えている作品て、そうないと思う。この人はすごい。。。なんといってもアナベルに心捉えられてしょうがなかった。(07/8/20)

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    2009年10月04日
  • 地図と領土

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    事実、現実をただ見つめ、そこにある無機物を装飾したり解釈したりすることなく表すのが好みなのか
    エピソードやテーマが伝わるような形でストーリー性を帯びさせたいのか、両方を目指してるのか、アーティストとしての視点はよくわからなかったけど、商業や生産で価値を規定されるのではなく真実性に触れたかったジェドの熱さは一貫するものとしてあった
    対極的に対外的には謙虚な無頓着さを保っているところ、社会との接点が薄く変化や出来事に過度に意味を持たせないながらも父やオルガ、ウェルベクといった限られた人にはそれなりに執着や情をもち諦観と現実味のバランスがとれているところも好きだった
    人間の作り出したものや人物が時間

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    2026年08月23日
  • プラットフォーム

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    ネタバレ

    フランスの公務員である主人公・ミシェルの父親が亡くなる。入り込んだ遺産と生への渇望もないまま、タイに観光に行き、ツアー内で知り合った女性ヴァレリーと関係を持つと、彼女はそのツアーのプランニングをする会社に勤めていた。

    セックス観光ビジネスを提言し、成功を治めるもイスラム教のテロリストたちに襲撃される。。。

    淡白かつ子細に語られる性描写と性に取り巻かれる人間の弱さと本質が十分に語られている。
    結局、テロが起きてご破産という結末は残念だが、雑にくくると「弱者」が好きなタイプの本。自分も含めてね。

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    2026年08月19日
  • 闘争領域の拡大

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    闘争領域の拡大

    パリに住むシステムエンジニアが徐々に、緩慢に壊れていく作品
    特にあらすじを見ずに読んだため、ストーリーのなさに驚きつつも、主人公に共感しながらページを手繰らされた
    最初は人々はロールプレイをしているし、社会の機構に定められた行動をこなしているだけで、自由主義を語っておきながら自由意志から来る選択とは毎日選ぶ食事くらいだと悲観的になる
    教会で働いている唯一の友人に、主人公は人との関わりの希薄さを忠告される
    「合意に向かうように言葉をはいた」
    次にペアでエンジニアリングの営業に行くことになった
    ペアの男はどうていを拗らせ、醜い容姿にコンプレックスを抱き、常に女性とやる事を考えてい

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    2026年08月14日
  • 服従

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    ネタバレ

    「女性が投票できること、男性と同じ学問をし、同じ職業に就くことが本当に良いことなのか」という考えを女性の前で平然と語る大学の准教授であるフランソワ25歳。彼はなぜ家父長制が批判されるようになったのか、女性の権利がどうして拡大してきたのか、歴史的にどのような問題があったのかを考えず、昔の男女の役割のほうが自然だったのではないかという、自分に都合のいい部分だけを切り取って見ている。彼の女性観も女性を一人の人間として見るのではなく、男性との関係や役割から都合よく捉えているように思う。例えば、家父長制が復活すれば出生率が上がるという考え方は、女性が自由な意思で選択することを前提としていない。女性の選択

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    2026年08月04日