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芭蕉全発句
国文学に通暁し、実作と研究双方のよき理解者たる文芸評論家が、渾身の情熱を注いで正面から俳聖に挑む。全句の訓詁注釈を通して実景、実感、伝記的事実、言葉の意味、詩性――芭蕉の世界に迫り、「軽み」論から「いのち」と「かたち」へ、日本人の魂に根ざす文学的本質へと読者を誘う。今日の俳句・短歌隆盛の礎となった不朽の一冊。(解説・尾形 仂)※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
万国お菓子物語 世界をめぐる101話
たかがお菓子というなかれ。甘さのかげに歴史あり。愛とロマン、政治に宗教、文化の結晶としての世界のスイーツ101の誕生秘話! すっかり日本でもおなじみとなったマカロン。原形は数あるお菓子の中でも大変古典的な部類に数えられます。 宗教の時代ともいわれる中世ヨーロッパ、その流れを引いた近世で政略結婚を含めた各国の交流が進んだ背景のもと、マカロンの旅も始まりました。まずイタリアのフィレンツェの名家メディチ家のカトリーヌ姫が嫁ぐ時に帯同した製菓職人の手によってフランスにもたらされました。それを機にフランス各地で作られるようになり、それぞれの地で銘菓として評価されていきます。17世紀~18世紀には各地の修道院でつくられるマカロンが有名となり、それを求めて時の皇太子ご夫妻が修道院を訪れたこともありました。――政略結婚によって他国へ伝わったマカロン、参拝記念として配られたレープクーヘン、名称をめぐって裁判にまで発展したザッハートルテ、また大航海時代、ポルトガルによってはるばる日本までやってきたカステーラ……。南蛮菓子からヨーロッパ・アメリカへ渡り、またアジアへ戻るお菓子にまつわる物語。ヨーロッパとアジアをつなぐトルコのロクムやちょっと切ない誕生経緯のハワイアン・バター餅など新たに9話を追加しました。製菓業界の第一人者がお届けする世界をめぐるお菓子101話。 (原本・吉田菊次郎『万国お菓子物語』、晶文社、1998年。文庫化にあたって新たに9話追加しました。) 本書で取り上げるお菓子 南蛮菓子 カステーラ ボーロ コンペイトウ ビスカウト 世界のお菓子 マカロン チョコレート シュトレン ザッハートルテ ポルボロン プディング スペキュラース 悪魔のお菓子と天使のお菓子 月餅 日本のお菓子 ショートケーキ 饅頭 お汁粉 どら焼き 外郎 ちんすうこう ほか -
パラダイムとは何か クーンの科学史革命
トーマス・クーンという名前を知らない人でも、また科学史や科学哲学などの分野に縁のない人でも、「パラダイム」という言葉なら聞いたことがあるに違いありません。 いまや日常語として「物の見方」「考え方の枠組み」の意味で使われているこの言葉は、もともと1962年刊『科学革命の構造』というクーンの著書の中で語られたもので、「一定の期間、研究者の共同体にモデルとなる問題や解法を提供する一般的に認められた科学的業績」を意味していました。 この概念は、それまでの「科学革命は17世紀に起きた1回きりの大事件」という科学史の常識を覆す衝撃的なもので、「<科学>を殺した」といわれたほど、大きな影響を及ぼしました。 パラダイム・シフトは歴史上何回も起こり、それは社会・文化の歴史と密接な関係があるとするクーンの見方は、フーコーが人文科学的知の布置の変化を考古学的方法によって解き明かしたと同じスタンスで、「知」の連続的進歩という通念を痛撃しています。 本書は二十世紀終盤の最大のキーワードとも言うべき「パラダイム」の考え方を面白く、わかりやすく説くものです。 ●主な内容 第1章 <科学>殺人事件 第2章 科学のアイデンティティ 第3章 偶像破壊者クーンの登場 第4章 『科学革命の構造』の構造 第5章 パラダイム論争 第6章 パラダイム論争の行方 【原本】 『現代思想の冒険者たち クーン パラダイム』1998年 講談社 -
パリ歴史探偵
景色にまぎれた不自然な段差、小さな抜け道。かすかな違和感に導かれ、古地図を広げて一九世紀のガイドブックや文学作品を繙けば、モーパッサン、ランボー、ゾラが暮らした時代の空気がみるみる立ち上る! 当時の風習や世相までをも、ユーモラスな視点で活写。中世から一九世紀を自在に飛び回る旅へ、中世・ルネッサンス研究の泰斗が貴方を誘う。 (一部抜粋) 本書は、パリ街角のさりげない光景のなかに、この都市の記憶を、あるいはこういってよければ、パリという馥郁(ふくいく)たる香りの酒瓶の底に沈んだ澱のようなものをたどろうとした試みである。「神々は細部に宿れり」をモットーにして、半ば意識的に、モニュメントとはいいがたい些細な「モノ」をめぐるささやかなる探偵旅行を展開してみた。――「プロローグ」より 目次 プロローグ 1章 三つの壁、三つの時代・ 1 中世に飛ぶ 2 古地図のなかのパリ 3 入市税関の時代 ●コラム『タブロー・ド・パリ』 2章 パサージュを渡り歩く 「昔の香りただようショワズール小路よ」/ヴァリエテ座の楽屋口 /パサージュ対ギャルリー/ジュフロワ小路からヴェルドー小路へ /「ソルボンヌ小路」を発見!/セピア色のパサージュ ●コラム『ナナ』 3章 昔のガイドブックから 1 『パリ= ディアマン』一八六七年版 ●コラム『居酒屋』 2 局留め便、ひとむかし前のメール ●コラム『肉体の悪魔』 3 写真館の時代 「小さな肖像」/ランボーを撮った写真家/「立体写真」ブーム 4章 まぼろしの公衆トイレを求めて 5章 記憶の場としてのマルヌ川 1 『居酒屋』の時空間 2 マルヌ川の岸辺で思うこと 3 思いがけず廃線歩き 6章 印象派の散歩道 学術文庫版付録「青春のカルチエ・ラタン」 あとがき 本書は2002年、講談社現代新書より刊行された『パリ歴史探偵術』を改題、一部、加筆修正したものです。 -
比叡山
その山のふもとに生まれ育ち、少年のころから、あらゆる小路を幾度となく歩いては、様々な風景を目にしてきた、著者にとっての母なる山・比叡山。 歴史を学んだのち、再び同じ路をたずね、峠を越え、川を渡りながら、仏教美術学者はあることに気づく。自然の山、川、その位置を度外視して、決して歴史は考えることができないのだとーー。 天台法華宗の根本道場にして、学山として数多くの高僧を輩出した比叡山。 その3塔16谷の霊谷を案内しつつ、歴史地理というユニークな観点から、1200余年にわたる叡山の宗教と歴史をひもとく! 本書は『比叡山 日本仏教の原型とその展開』 (角川選書 1975年9月刊)を底本とし、文庫化にあたり、ベストセラー『京都ぎらい』の著者であり、国際日本文化研究センター所長・教授の井上章一による解説を加えました。 目次 1 地文と人文のあやなす位置 2 霊峰比叡へはいる路 3 山上の霊所をめぐる路 4 最澄と比叡山 5 入唐求法の旅 6 天台法華宗の開立 7 比叡山寺の規模と構成・ 8 教学と法儀 9 回峰修験 10 一山大衆 11 僧兵強訴の歴史 12 山門派と寺門派のあらそい 13 巨大な経済をささえた山門領 14 東塔 15 西塔 16 横川 17 門跡寺院の出現 18 日吉山王社 19 門前町坂本 20 近江路の主要な末山 21 信長の焼き打ちとその再興 比叡山歴史年表 比叡山の道しるべ あとがき 解説 井上章一(国際日本文化研究センター所長) -
ビゴーが見た日本人 諷刺画に描かれた明治
文明開化とともに訪れた日本の近代化。そこには、劇的な社会変化に戸惑いつつも、たくましく生きる人々がいた。そんな彼らの姿と変貌する日本を描きつづけた在留フランス人画家ジョルジュ・ビゴー。日本で過ごした17年間に彼が残した多くの作品から漫画・挿画・銅版画など、百点を厳選。愛着とアイロニーに満ちた諷刺画を通して見る日本人論。(講談社学術文庫) -
風姿花伝
世阿弥元清が、亡父観阿弥の教えをもとにまとめた『風姿花伝』。「幽玄」「物学(物真似)」「花」など、能楽の神髄を語り、美を理論化した日本文化史における不朽の能楽書を、精緻な校訂を施した原文、詳細な語釈と平易な現代語訳、解釈を深めるための余説で読み解く。息子の観世元雅に幽玄能の奥義を伝えるべく書きつづった『花鏡』の翻刻を併録する。(講談社学術文庫) -
フロイトとベルクソン
ジークムント・フロイト(1856-1939年)とアンリ・ベルクソン(1859-1941年)。ウィーンとパリで同じ時代を生きた二人は、同じ知のネットワークに属していたばかりか、同じ対象に関心を抱き、独自の思索を展開した末、対極から同じ領域に迫ろうとした。しかし、彼らには直接の交流はおろか、著作での言及も皆無に等しい。この謎めいた事実は何を意味するのか──本書は、この問いに挑み、二人の知の巨人を隔てる深淵に肉薄する。 著者は言う。「精神医学にせよ、哲学にせよ、およそ学問的な企てが総じて追求しているのは、人間の幸福だと言っていいだろう。つまり、幸福を否定してくる不幸事の調査研究も含めて、人生の幸不幸の研究こそが、いっさいの学問の根本の任務なのである」(第V章)。この「幸不幸」という問題に決着をつけるために、著者は「フロイトとベルクソン」という問いに到達した。だが、その問いは著者が生み出したものではなく、「この二人の「無意識の発見者」から発せられていると強く実感される」ものだった。 本書は人間と切り離せないこの問題に向き合うすべての人への贈り物である。 [本書の内容] プロローグ 小林秀雄の声を聴いたこと/直覚された二人の関係 第I章 生 同時代人/誕生の頃/修学時代/無意識・心の基体の発見/ユングという体験/ミンコフスキーの精神病理学/晩年/再び、直覚された二人の関係に焦点を合わせる 第II章 夢 記憶の円錐体について/ベルクソンの「夢」の講演/『夢解釈』の裏側の世界/冥界への歩み、果てしなく/快原理のもろさ/刺激保護膜の無機物的性質/快原理の/夢の「彼岸・前史」/涅槃原理のほうへ/無意識から、無意識へ/ベルクソンという覚醒 第III章 抑 圧 ベルクソンの思索と「抑圧」メカニズム/抑圧されたものとエスについて/生命のダブル・バインド/円錐体という意味過剰の渦動/「一ツの脳髄」から「感想」の破綻(終焉)へ/現実原理/快原理と円錐体、エロース/死の欲動とエス/シュレーバー語のダブル・バインド/円錐体の時間とエスの時間/無機物(フロイト)と物質(ベルクソン)と 第IV章 自 我 自我制作を企てるか否か/ベルクソンの精神病観/フロイトの自我(概念)制作の必然について/フロイトの企ての特質/中断された投射メカニズム研究/投射から企てへ/オイフェミスムス/アナクロニスムに発する投射のメカニズム/記憶の円錐体と投射メカニズム 第V章 進 化 ベルクソンと進化/死後の霊魂の不滅について/トルストイの『イワン・イリッチの死』を再読する/『イワン・イリッチの死』と正宗白鳥/弛緩の至福/フロイトと退化/反復 エピローグ――エスが企てる -
武士道
“彼は「侍(さむらい)」である”という表現が今日でもしばしば使われる。では、侍とはいかなる精神構造・姿勢を指すのか――この問いから本書は書き起こされる。主従とは、死とは、名と恥とは……。『葉隠』『甲陽軍鑑』『武道初心集』『山鹿語類』など、武士道にかかわるテキストを広く渉猟し、読み解き、日本人の死生観を明らかにした、日本思想史研究の名作。(講談社学術文庫) -
仏教の歴史
およそ2500年前にインドで生まれ、アジア各地に伝播してさまざまな発展を遂げた世界宗教、仏教。インドで誕生した仏教が、中国を経て日本に伝わり近代に至るその軌跡を、仏教学の泰斗がコンパクトに通観する。 原始仏教の誕生から、仏滅後に部派仏教に分かれ、そこから大乗仏教、さらに密教が出現するインド仏教史。 ときに大規模な迫害にあいつつも、鳩摩羅什、さらには玄奘らの尽力による経典の翻訳を重ねながら、浄土教や禅宗など独自の哲学的な思想が花開いた中国の仏教史。 そして、朝鮮半島を経て欽明天皇の時代に列島に伝わり、奈良時代の皇室の仏教から平安時代の貴族仏教、そして広く民衆の仏教である鎌倉新仏教へと展開し、明治の廃仏毀釈を経て清沢満之らの新仏教運動に至るまでを描く日本の仏教史。 「唯識」や「中論」など難解に思われがちな仏教用語も、歴史的文脈のなかで平易に解説。世界中で多彩な展開を見せた宗教の全体像をつかむ、最良の入門書!(原本:仏乃世界社、1972年) 【本書の内容】 はじめに インド仏教史 仏教の成立/原始仏教の教理/仏陀滅後の教団/部派仏教の教理/大乗仏教の出現/新しい仏陀の出現/法華経と龍樹/唯識と如来蔵/密教の出現とチベット仏教 中国仏教史 中国仏教のはじめ/羅什以後の仏教/禅と念仏の興起/隋唐時代の仏教/唐より宋へ/宋代以後の仏教/中国の寺院 日本仏教 仏教の伝来/聖徳太子の仏教/奈良仏教/平安仏教/鎌倉の新仏教/宗派仏教の発展/明治の仏教 解 説(佐々木閑) -
仏教名言辞典
何万、何億もの人々の批判に堪え、何百年もの世の変遷を超えて今に残る仏家の言葉を、悩み問題別に選定し、歴史的背景と思想的系譜を解説。インド仏教の理論性、中国仏教の実用性、日本仏教の情緒性の違いを味わいながら、仏教通史を学べる。 検索に便利な人名解説と名著リストも備えた、日々に役立つ画期の書! 目次 1 人 間 人/心/人生 2 世 間 自然/夫婦・家/国家・社会/歴史 3 学 問 真実/知恵 4 道 徳 感情/道徳 5 宗 教 修行・信仰/仏/各宗 付録 人名辞典 書目改題 仏家別名言 本書は『仏家名言辞典』(1971年12月 東京堂出版)を改題したものです。 -
仏像の誕生
古代初期から紀元後2世紀前半まで、決して創られなかった「仏の像」。形象化タブーの時代から何を転機に、いつ、どこで、どのように「仏像」が生まれたのか? 考古学、美術史、仏教思想、仏教史上、重要なテーマでありながら長らく明かされなかった疑問に、圧倒的多数の仏像図版を掲げて、仏教学の泰斗が正面から対峙する! 見どころ) 70点を超える仏像図版。 構図、テーマ、表情、髪型や衣のひだまでに至る 細やかな考察から、仏像誕生の系図を眺める、はるかなる宗教の旅――。 やっぱ人型を模した偶像にグッときてしまうのは人間の性。 ――みうらじゅん 本書の原本は、1987年10月に岩波新書より刊行されました。 目次 序 ガンダーラかマトゥラーか 一 伝承のなかの仏像 二 仏像の起源を求めて 第1章 仏像のない時代 一 仏教美術のはじまり 二 仏陀なき仏伝図 三 仏教徒は何を拝んでいたか 四 なぜ仏像がなかったのか 第2章 ガンダーラ美術と仏像 一 ギリシア・ローマからガンダーラへ 二 仏像のガンダーラ起源説 第3章 ガンダーラ仏の誕生 一 ガンダーラの仏教文化 二 仏伝図と仏像 三 単独仏像の出現 四 西北インドの仏教情勢 第4章 マトゥラー美術と仏像 一 古いまちマトゥラー 二 マトゥラー起源説 第5章 マトゥラー仏の成立 一 初期のマトゥラー仏 二 マトゥラー仏の出現 三 初期仏のインド的成立 四 「菩薩」という名の仏像 クロノロジー 参考文献 あとがき 解題 「仏像ファンとして」 ーーみうらじゅん 索引 -
物理学の世紀
「物理帝国」の栄光と黄昏 アインシュタインの相対性理論、量子力学、そして原爆を生んだオッペンハイマーのマンハッタン計画から、コンピュータ、ニュートリノへーー。物理学が科学のみならず知・経済・社会のあらゆるシーンにおいて「王者」として君臨した時代を、自身も一線の物理学者として活躍してきた著者がダイナミックに活写。 「黄昏」も囁かれる時代の転換期、「ものの見方」を探究する物理学の現状とあるべき未来をも示す、無二の証言にして提言の書! [目次] はじめに 第一章 物理学の世紀ーー百年のうねり 第二章 原子の言葉ーー創造 第三章 物理帝国ーー展開 第四章 物理のデザインーー成熟 おわりに 学術文庫版へのあとがき -
ブリヤ=サヴァラン「美味礼讃」を読む
18世紀フランスの政治家・法律家にして稀代の美食家であったサヴァランが著した『Physiologie du Gout(味覚の生理学)』は、「ガストロノミー」、食というものについての総合学の聖典として、世界中で現在まで読み継がれている。 とりわけ日本においては、『美味礼賛』という邦題と、「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人であるかを言いあててみせよう」という警句とともによく知られるが、では実際にどのような事が書かれているのか、なぜこの本が、サヴァランという人物が、かくも偉大なものとされているのかについては、詳しく知る者は多くはないだろう。 日本の料理文化を大きく展開させた辻静雄が、食はもとより歴史・地理・美術・文学についての広汎な知見を総動員し、サヴァランの思考を辿り、料理の精髄を縦横無尽に語り尽くす! 【本書より】 「私は豚肉を食べています。それで……」と言ったら、ブリヤ=サヴァランは人となりなど言ってくれるどころか、絶句して卒倒してしまうんじゃないでしょうか。 【本書の内容】 第一講 ブリヤ= サヴァランと『味覚の生理学』 I ブリヤ= サヴァランはどういう人だったか II 『味覚の生理学』初版その他 III 『味覚の生理学』の構成、その他 第二講 食べ物と新しい歴史学 I 『味覚の生理学』の背景も知っておきたい II ブリヤ= サヴァランの対極にいた人たち III パリの食糧、その他 第三講 「おいしさ」とその表現 I 「教授のアフォリスム」を読む II ブリヤ= サヴァランが好んだ料理 III 「おいしい」という言葉/味の表現 第四講 ワイン事情 I ブリヤ= サヴァランとワインのことなど II 一九世紀のワイン事情 第五講 ガストロノミーとガストロノームの系譜 I ガストロノミーとグルマンディーズ II ガストロノームの系譜 あとがき 参考文献 ※本書の原本は、1989年に岩波書店より『ブリア-サヴァラン「美味礼讃」を読む』として刊行されました。 -
プラトンと反遠近法
三次元の立体を二次元の平面のうちに表現する遠近法。プラトンはこの遠近法を嫌ったという――しかし古代ギリシアでは遠近法はいまだ成立していなかったとしたら? なぜ、このような奇妙な事態が出来したのか。そして光学に対する偉大な哲学者の沈黙は、後世にどのような影響を与えたのか。遠近法は歴史的産物であると喝破する著者が、古代ギリシアから近代に至るまで、美術はもちろん数学、哲学、文学をも織り込みながら紡ぎあげた、視覚をめぐる空前絶後の思想絵巻。 遠近法は、世界を表現する方法として身近な手法であり、時にこれが唯一の正しい世界の眺望であるかのような神話的性格さえ帯びている。しかし著者によれば、遠近法は西欧における自然に対する見方の、歴史的な積み重ねの結果に過ぎない。 プラトンは、対象を描く際に、見かけにあわせて実際とはかけ離れた比率にすることを「虚像術」と呼んで退けた。古代ギリシアには存在しないはずの遠近法を、プラトンはなぜ批判しえたのか。そしてプラトンの光学に対する沈黙は何を意味し、それはどのような影響を与えたのか――。 これらの問いは、人間はどうして、常に何かを通して世界を見ようとするのか。実物を見ていても、しかしこれも「何かを通して」だと考えるのは何故か、という根源的な問いにつながっていく。 ミケランジェロとダヴィンチの緊張関係、デカルト、パスカル、ライプニッツに遠近法が与えた三者三様の影響、さらにニーチェの価値の相対主義に至るまで、遠近法を軸に、古代ギリシア演劇の背景画から、絵画や彫刻、数学・幾何学、その応用としての光学、哲学・思想、文学作品や文芸理論をも巻き込みながら絢爛豪華な思想絵巻が織り上げられる。早逝が惜しまれる碩学の記念碑的著作。(原本:新書館、1999年) 【本書の内容】 まえがき 序 章 遠近法の神話 第一章 ミーメーシス 1 詩人追放と画人追放 2 陰影画と背景画 3 背景画は遠近法の導入か? 第二章 測定術 1 洞窟の光学 2 不文の教説? 3 視覚の空間・思考の空間 第三章 ミーメーシスからファンタシアーへ 1 場所・透明体・気息 00 2 芸術的専制と専制的芸術 00 3 もう一つの世界劇場論 00 終 章 隠喩としての遠近法 あとがき 解 説(山内志朗) -
平安王朝
■桓武天皇による平安遷都から摂関政治前夜まで、■ ■明と暗が交錯する歴史を名手が生き生きと描く!■ 貴族たちの豊かな古典文化に彩られた九~十世紀、しかしその繁栄の底流では律令体制の解体が静かに進行し、中央は全国統治の力を失いつつあった。 平安遷都から摂関政治前夜まで、古代国家の崩壊と封建社会の誕生のあいだの長い転換期を政治・社会・文化から多面的に捉え、 表舞台で脚光を浴びる者のみならず、闘争に敗れ表舞台から去っていった人々の姿にも目を配りながら、光と影が交錯する歴史像を描く、無二の論考。 ■ゆるやかに時は移り、世は変わる。―本書より■ 「社会の根本的な変化は、奥底の流れとしてきわめてひそかに、しかもおだやかに進んでいた。したがって、地方や被支配層の発展あるいは国家体制の転換をはっきりと具体的に示す史料は極端に少ない。このもどかしいまでに悠長で不透明な移り変わりこそ、この時代の特徴である」【「まえがき」より】 解説=佐藤全敏(東京女子大学教授) *本書の原本は、一九六九年刊「日本歴史全集」第四巻を元に改訂された「日本の歴史文庫」第四巻として、1975年に刊行されました。 ■本書の内容■ 第一章 律令体制崩壊の端緒 1 平安時代の前奏曲 2 桓武朝の権力と政治姿勢 3 律令体制の矛盾 4 長岡京の暗い影 6 桓武朝の蝦夷征討 第二章 宮廷と詩文と密教と 1 平城朝の悪戦苦闘 2 「平安的なもの」の発展 3 花開く唐風の詩文 4 巨人、最澄と空海 5 渡海僧と仏教の貴族化 第三章 良房・基経の時代 1 承知の変と良房の権力把握 2 反抗者と疎外者 3 基経の天皇廃立 4 律令政治の衰退 5 地方勢力の胎動 第四章 寛平・延喜の治 1 「寛平の治」とその挫折 2 菅原道真の運命 3 延喜の荘園整理令 4 「古今和歌集」なる 5 延喜の太平とその暗転 第五章 承平・天慶の乱と「天暦の治」 1 武者の起こり 2 平氏一族のあらそい 3 東西二つの謀反 4 将門・純友の末路 5 藤原氏と後宮 6 「天暦の治」の内幕 7 退廃の栄え 8 藤原氏の時代へ -
平治物語 全訳注
壊滅的な打撃を受けた源氏とこの世の春を謳歌する平氏――。やがて『平家物語』へとつづく、一族の明暗を分かつことになった平治の乱を題材にした『平治物語』の諸本のうち、劇的に構成された合戦や、個性を際立たせた巧みな人物造形が、流麗な文体によって描き出される四類本は、「もっとも面白い『平治物語』」と言われる。この四類本を底本に、本文と現代語訳に加え、校訂注、読解の助けとなる語釈と解説、補注も充実した、物語世界の隅々まで楽しめる一冊。 悪源太義平がわずか17騎で、500騎の平氏を蹴散らす痛快な合戦、牛若丸ら幼い息子を必死で守ろうとする常葉の哀切、そして運命の子頼朝……。個性豊かな登場人物が縦横無尽に躍動する合戦絵巻、いざ開幕! 時は平安時代の末、のちに「武者の世」の始まりと評された保元の乱から三年後、平治元年(1159)に平治の乱は勃発する。上皇・天皇の近臣同士の争いに端を発する政治闘争は、待賢門と六波羅での源平両軍の激突となって噴出した。その結果、源氏の棟梁である源義朝が敗走。東国へと落ち延びる途中で討たれ、子息たちも命を落とし、源氏は壊滅的な打撃を受ける。一方、見事勝者となった平清盛はこの世の春を迎え、それぞれの一族の明暗が決定的に分かれることになった――。 『平家物語』の舞台を用意したともいえる平治の乱を題材とした軍記物語、『平治物語』。時代を越えて語り継がれるうちに、筋立てが異なる異本が複数存在することもこの物語の大きな特色の一つである。そのなかでも、本書が底本とした「四類本」は、劇的に構成された合戦や、個性を際立たせた巧みな人物造形が、流麗な文体によって描き出される「もっとも面白い『平治物語』」になっている。本文と現代語訳に加え、校訂注、読解の助けとなる語釈と解説、補注も充実した、物語世界の隅々まで楽しめる。 義朝の息子、悪源太義平がわずか17騎で、500騎の平氏を蹴散らす痛快な合戦、義平とは対照的に不甲斐なくて滑稽な藤原信頼、牛若丸ら幼い息子を必死で守ろうとする常葉の哀切、そして運命の子頼朝の姿……。個性豊かな登場人物が縦横無尽に躍動する合戦絵巻、いざ開幕! -
ベルクソン哲学の遺言
フランスの哲学者アンリ・ベルクソン(1859-1941年)は、1937年2月8日に記した遺言状で「私は、公衆に読んでもらいたいものすべてを刊行したと宣言する」と断言し、生前に刊行した7冊の著書以外の死後出版を厳に禁じた。 ベルクソンが自身の著書として指定したのは、4冊の主著『意識の直接与件に関する試論』(1889年)、『物質と記憶』(1896年)、『創造的進化』(1907年)、『道徳と宗教の二源泉』(1932年)、2冊の論文集『精神のエネルギー』(1919年)と『思想と動くもの』(1934年)、そして『笑い』(1900年)である。現実には死後、遺稿集や書簡集のほか講義録まで出版された。それらが研究上、重要な資料をなすことは言うまでもない。だが、その一方で哲学者の遺志が無残なまでに裏切られたことも否定しようのない事実である。 本書は、どこまでも遺言状に忠実であろうとする。ベルクソンが自身の著書として指定した著作だけを愚直に、真摯に読んでいくこと。その当たり前の営みによってのみ浮かび上がるものがあることを、本書の読者は知ることができる。すでに定評を得た本書に新たな書き下ろしを加えた「完全版」を、ここに満を持してお届けする。 [本書の内容] 第I章 遺言状 1 生涯を貫くシンフォニー/2 単純なひとつの行為/3 自伝的遺書/4 哲学に欠けている「正確さ」 第II章 ほんとうの障碍物に出会う 1 「持続」は障碍物だということ/2 「持続」を語る困難/3 持続という問題への入口/4 予見不能であるとは 第III章 砂糖が溶ける時間 1 映画フィルムは回転する/2 砂糖水ができるまで/3 誤った回顧から解放されること 第IV章 直観が〈正確〉であること 1 思考を誂える/2 「直観」という努力/3 直観の対象/4 「直観」を定義する困難 第V章 〈記憶〉についての考え方 1 持続において思考する例/2 「記憶」と「過去」との関係/3 それ自体で在る過去/4 脳と記憶 第VI章 〈器官〉についての考え方 1 哲学はいかに〈努力する〉のか/2 持続において思考する例/3 器官としての「眼」/4 進化の原因としての持続 第VII章 持続が目指すところ 1 飛躍の結果としての人類/2 直観と本能/3 潜在的本能による仮構機能/4 持続において思考する例 第VIII章 哲学の目的 1 神秘主義と機械主義/2 〈停止〉を〈運動〉それ自体に送り返すこと/3 持続において思考する例/4 手仕事の効用、感覚の教え/5 〈深さ〉において思考する喜び 補 章 哲学の未来のために 1 科学の半身たるべき哲学/2 「共感」という事実/3 この地上に生きている哲学 -
ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定
「生の哲学」を提唱しノーベル文学賞を受賞した、フランスを代表する哲学者、アンリ・ベルクソン(1859-1941年)。彼は、伝統的な哲学を根本的に批判し、転覆させた特異な存在です。 その影響は、20世紀の名だたる哲学者たち、ハイデガー、ウィリアム・ジェームズ、サルトル、レヴィナス、メルロ=ポンティ、デリダ、西田幾多郎など、多方面に及びます。そして何より、生成のリアリティーを巡る思考の原理を徹底させ、ベルクソンを蘇らせたのが、ジル・ドゥルーズでした。 本書は、ドゥルーズのすぐれた読解に身を寄せながら、ベルクソンの主著を丹念にたどり、その核心を浮かび上がらせます。同時に、ドゥルーズ自身の哲学の出発点ともなった、斬新で独創的なベルクソン解釈を提示してもいます。 ベルクソンにとって実在とは、持続とは何か。どのようにして、直観によって本質的な差異を見出すのか。他者のない、否定性のない、そして外との弁証法的な統合もない哲学とは、どのようなアイデアなのか。 著者によるベルクソンの現代思想における位置づけ、主要著作を通した整理、これ以上なくクリアで精密な解読は、ベルクソンに取り組もうとする読者にとって、最良のガイドとなるでしょう。解説には、『物質と記憶』の訳者である杉山直樹氏の書き下ろし原稿を収録しました。 [本書の内容] 学術文庫版まえがき 序 論 ベルクソンの哲学とその位置 第一章 連続的で異質的な特徴――『試論』について 第二章 知覚の機構と実在する過去――『物質と記憶』について 1 純粋知覚について 2 記憶と認識の機制 3 記憶の即自存在とその心理的な働き 4 持続の存在論 第三章 分散する一者としての生命――『創造的進化』について 第四章 持続の一元論/結晶と層――ベルクソンの存在論について あとがき 解説 杉山直樹 ベルクソン関連略年表 -
ベースボールの詩学
百年以上も前に、ピラミッドをバックネット代りに試合をしたアルバート・スポルディングの世界一周興行。塁間九十フィートを決めたアレグザンダー・カートライト。その距離が、盗塁や併殺のクロスプレイをうみだしてきた……。ベースボールの起源をたどり、詩との同一性を見出す鮮烈な名篇。「ただ一個の白いボールが、この本全体なのである」。(講談社学術文庫) -
ベートーヴェン 巨匠への道
1792年、ウィーンの地に立った一人の青年音楽家は、その後いかなる道のりをたどって、「楽聖」となったのか。 師ハイドンはじめ同時代の音楽家たちとの出会い、《エロイカ》《第十交響曲》創作の謎、家族関係の苦悩と波乱の生活、各界の理解者や奇人らとの友情、そして恋人…… 音楽のあり方を根本から変え、傑作を生み出し続けたその生涯に、音楽評論の名手が全角度から光を当てる、珠玉の二十話。 【本書の主な内容】 青春のボン/ベートーヴェンの愛―婚約説をめぐって/第十交響曲のゆくえ/《シンフォニアエロイカ》の謎/ 「メルツェルさん、さようなら」―メトロノーム考/ 《ウェリントンの勝利》の顛末/べートーヴェンと宗教―フリーメーソンだったのか?/イギリスへの夢―ニートとの交際をめぐって/オペラのライヴァル―同時代人ウェーバー/「第三の故郷」ボヘミア/ヴァイオリン・コンプレックス/コントラバスとマンドリン/ダンス音楽への愛着/「歓喜」の背景―日本人とベートーヴェン など ※1987年刊『ザ・ベートーヴェン』(春秋社刊)の文庫化 -
人格の哲学
「人格(ペルソナ)」とは、単にかけがえのない個であるばかりでなく、他者との交わりにおいて存在し、自己を実現する主体である――。 古代以来の神学から現代の哲学までを渉猟。真の「人格」理解を通してあらゆる存在の価値の基礎づけと倫理の構築を目指す、著者畢生の書。 これを知らずして、「人間の尊厳」も「善」も語れない! [本書の内容] 序論 人格(ペルソナ)について語ることの難しさ 第一章 個人から人格へ――人格の哲学をめざして 第二章 「世俗化」と「人格」概念 第三章 行為と人格 第四章 存在としての人格 第五章 人格の形成 第六章 人格(ペルソナ)の神学的考察 -
方言の地図帳
ゴミは、「なげる」? 「ほかす」? 「うっちゃる」?「明後日の次の日」、あなたの町では「やのあさって」?「しあさって」?全国2400箇所の調査記録をもとにした「お国言葉」の一大パノラマ。さまざまな方言が列島に広がるさまを地図に表すと、そこから日本語の豊穣な世界が見えてくる!辞典としても使えて方言の基礎知識も満載!国立国語研究所が総力を傾けて製作した『日本方言地図』をもとに、言葉がいかに伝播し、姿を変え、生成していくのかを描き出す。懐かしい言葉の記録でもあり、日本の長い歴史の探究でもあり、あたらな言葉の動態を探る探究でもある、無二の地図帳。「方言は日本人の心のふるさとであると同時に、日本語に新たな活力を与えるエネルギー源でもある。共通語は周囲の方言を吸収しつつ成長を続けてきた」(本書より)【本書の内容】第I部 自然/第II部 人間と生活/第III部 動植物音韻編 方言の基礎知識 -
北条時宗と安達泰盛 異国合戦と鎌倉政治史
生まれながらに執権の地位を約束された若き執権北条時宗と、彼を支え無謀にも思える大胆な幕府改革を試みた硬骨の政治家安達泰盛。二人が中核を担う13世紀の日本に、ユーラシア大陸を席巻したモンゴルの嵐が迫る――。 「救国の英雄」では決してなかった時宗の素顔とは? 泰盛の弘安徳政は、幕府が構造的に抱えていた限界にどのように挑んだのか。二人を主人公に、絵巻や彫刻、宗教など多様な視点を取り入れ、血なまぐさい権力闘争相次ぐ政治史を、著者ならではの手腕で立体的に編み上げた労作!(原本:日本放送出版協会、2001年) はしがき――時代、世界、個人 プロローグ――若君誕生 第一章 時宗誕生前後の幕府政治 第二章 北条得宗と御家人安達氏 第三章 蒙古襲来のなかで 第四章 絵にみる時宗時代 第五章 時宗と日中禅宗世界 第六章 時宗死後の政治改革 エピローグ――記憶のなかで あとがき 付録1 書評と紹介 川添昭二著『北条時宗』 付録2 研究余滴 大河ドラマあやかり本の大罪 学術文庫版あとがき 主要人物の生没年 安達泰盛の経歴 北条時宗の履歴書 -
ホメロスの世界
古代ギリシアの詩聖ホメロスと、その2篇の叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』。文学だけでなく、芸術と思想、道徳や人間観、社会規範など、西洋文明のあらゆる分野に影響を及ぼした「古典の中の古典」である。しかし、日本人にとっては読みにくく難解であり、挫折した読者は多いだろう。そんな「読まれざる古典」の世界を、古代ギリシア史の泰斗がやさしく案内する。 古代ギリシア人の著作の多くは、現在では世界的な古典になっているが、その古代ギリシア人自身の間で「古典」といえばただ1種類、ホメロスの叙事詩だった。ミュケナイ文明が崩壊し、文字の使用も途絶えた「暗黒時代」に、なぜこの傑作が朗誦によって残されたのか。著者は、ホメロスの奇跡的な天才だけでなく、それを支えた社会の構造も奇跡的だった、という。貴族と一般民衆の全体を聴衆とし、担い手としたからこその生命力を備えているのだ。 トロイア戦争における総大将アガメムノンと戦士アキレウスの「喧嘩」を発端とする50日間のドラマ『イリアス』。トロイア戦争に勝利し、故郷に凱旋するオデュッセウスの漂泊と冒険を描く『オデュッセイア』。神々と人間が入り乱れる物語の読みどころと、反映された史実、古代人の人間観が、この1冊で初めてわかる。1966年の初刊以来、半世紀にわたって読み継がれる定番解説書。〔原本:1996年、新潮社刊〕 目次 はじめに 第一章 ホメロスの背景 1 歴史的背景 2 吟遊詩人としてのホメロス 3 口承詩の筆記と原典の成立 第二章 『イリアス』について 1 アキレウスの怒り 2 アガメムノンの権力 3 アキレウスの友情 4 戦闘の栄光と悲惨 5 ヘレネの苦悶 6 ヘクトルの責任感 7 プリアモスによる閉幕 8 英雄の条件 9 死者の魂の行方 10 オリュムポスの神々 11 詩的な宗教 12 比喩の世界 第三章 『オデュッセイア』について 1 戦後十年目の世界 2 英雄叙事詩と民話 3 オデュッセウスの冒険談 4 桃源境での三日間 5 漂泊の精神的意味 6 漂流地はどこか 7 テレマコスの活躍 8 王妃と求婚者たち 9 オデュッセウスの帰国 10 夫妻の再会 11 詩篇の背後にある現実の社会 第四章 古典としての価値 -
魔性の文化誌
聖にして穢、善にして悪、神にして魔! 人類普遍の「魔の構造」を明かす、文化人類学の到達点。 聖なるものはなぜ呪われたものでもあるのか。清純な白と無気味な白・左の神秘・双子の習俗、魔女・憑きもの・不思議な来訪者……日本・バリ・アフリカの民俗をたずね、文化/自然・男/女・昼/夜など、二元的カテゴリー間の均衡を攪乱する「どちらつかずの中間領域」に魔性の発生を見いだす。文化人類学の大家による画期の書! [目次] 序章 妖怪と両義性 ■第一部 自然の認識――原初的分類 第一章 清純な白と無気味な白 第二章 左の神秘 第三章 方位の意味 ■第二部 水・双子・音 第一章 さかさ水 第二章 双子の習俗 ■第三部 魔性の構造 第一章 魔女、死霊のイメージ 第二章 女性の魔力 第三章 不思議な動物 1 第四章 不思議な動物 2 第五章 不思議な動物 3 第六章 不思議な来訪者 注 あとがき みすずライブラリー版あとがき 解説 聖の迷宮 真島一郎 索引 (*本書の原本は1976年に研究社出版より刊行されました。学術文庫化に際しては、1998年刊行のみすず書房版を底本としています。) -
松と日本人
松はいつの時代にも、日本人には特別な存在でした。奈良時代より松明(たいまつ)として照明に使われ、平安貴族は、贈り物や文を、〈雅(みやび)〉なしきたりとして、松の折り枝を結んでいました。神が宿るといわれた聖なる木は、いかに私たちの美意識や文化に影響を与えてきたのでしょうか。『古事記』『万葉集』『日本書紀』などの文学、『源氏物語絵巻』や仏画、和歌での描写を渉猟し、そこに隠された、日本人の死生観や宗教観を探ります。 本書の底本は、人文書院より一九九三年に刊行されました。 目次) 第一章『魏志倭人伝』の植生と松 第二章 やまとたけると松 尾津崎の一つ松 磐代の浜松 童子女(うない)の松原 聖徳太子と飛仙 第三章 正倉院絵画の松 東大寺領の山境絵図 藤をまといつかせた松樹「樹下囲碁図」 第四章 のびやかな松と平安時代 宇治平等院鳳凰堂扉絵の松 雅のしきたり・松の折り枝 「源氏物語絵巻屏風屏風の松 第五章 松明と明かり 第六章 人の死と松 第七章 日本人と松 あとがき 主な参考文献 学術文庫版あとがき -
幻の東京オリンピック 1940年大会 招致から返上まで
東京が招致しながら、自ら返上した1940年のオリンピック。「皇紀2600年記念」として構想されたこの大会は、招致のためのヒトラーやムソリーニとの取り引き、満洲事変への厳しい国際世論など、最初から戦争と政治に振り回された。また、「満州国」は参加できるのか、天皇の開会宣言は可能なのか、など問題山積みのまま、準備は遅れに遅れる。そんな中、招致に尽力したIOC委員・副島道正は「返上やむなし」と腹を決める。(講談社学術文庫) -
満州事変 戦争と外交と
泥沼の十五年戦争は、なぜ、どのように始まったのか? 端緒である1931年の満州事変と翌1932年の上海事変は、中国北洋軍閥間の争いの混乱に乗じた前者、民族的抵抗の形成を見た後者と、それぞれ異なる性格を有している。両者について経緯を詳述し、さらに5年後の盧溝橋事件による全面戦争展開へつながる時代の流れを示す。その時内閣は、軍部は、日本の世論は、列国や国際連盟の反応は、両国各部隊の進路は――? イデオロギーを排し、史実のみを丹念に追うことで中国侵略の発端の全貌を明らかにする、近代史研究における古典的名著。(原本:中公新書、1974年刊) -
満鉄全史 「国策会社」の全貌
明治40年(1907)、「10万の生霊と20億の戦費」といわれる犠牲を払って獲得した南満洲の地に誕生した一鉄道会社は、「陽に鉄道経営の仮面を装い、陰に百般の施設を実行する」実質的な国家機関として大陸政策を牽引した。しかし必然的に政官軍の縄張り争いと対中・対ソ事情の変化、そして場当たり的な政策の影響が直撃する位置に置かれた組織は、図らずも近代日本を体現する存在として日本の支配政策のお粗末さを象徴する存在として現代に伝えられている。日露戦争から敗戦まで「日本の生命線」の表舞台に立ち続けた組織の足取りを正確にたどり、「国策」という言葉が包含する曖昧さと無責任さを炙り出す。年表、首脳陣人事一覧、会社組織一覧付き。(原本:講談社選書メチエ、2006年刊)プロローグ――「国策会社」満鉄とは何だったのか第一章 国策会社満鉄の誕生第二章 「国策」をめぐる相克第三章 使命の終わりと新たな「国策」終 章 国策会社満鉄と戦後日本エピローグ――現代日本にとっての満鉄関連年表歴代満鉄首脳陣人事一覧南満洲鉄道株式会社組織一覧 -
ミットフォード日本日記 英国貴族の見た明治
幕末維新の激動期に外交官として活躍した著者は、明治39年、英国皇族の首席随行員として再び来日。その様子を日記体で綴り、感想を添えて故国へ送った。40年ぶりに見た日本はいかに変わったか。徳川慶喜公、東郷平八郎提督や当時の高官との会見、宮中晩餐会、歌舞伎見物、日本各地での大歓迎の様子、大きく変貌した明治の姿などを生き生きと描き出す。 -
〈身〉の構造 身体論を超えて
前著『精神としての身体』で、心身二元論では我々が具体的に生きている身体のダイナミックスは捉えられないとした著者は、本書では、皮膚の内にとざされた身体という固定観念を取り払い、身体を超えた錯綜体としての〈身〉を追究。さらに、空間が均質化して「身体は宇宙を内蔵する」という身体と宇宙との幸福な入れ子構造が解体している今日、我々にとってどのようなコスモロジーが可能かを問う。 -
弥勒
世界が終わるとき、やってくる。 蘇我馬子も藤原道長も惚れ込んだ弥勒(みろく)信仰。五十六億七千万年後に降臨し人々を救う、未来仏とは何か? 広隆寺の国宝として有名な、弥勒菩薩半跏思惟像。弥勒とは、五十六億七千万年後に現れて衆生を救うという、阿弥陀や釈迦と並ぶ仏のことである。古代日本に伝わると、災害や飢饉と結びつき、末法思想(メシアニズム)として全国の民衆に広がった。戦後民俗学の泰斗が、中国・朝鮮との比較を通して、日本独自の弥勒信仰の歴史と民俗を復元し、日本文化の原型を描き出す。宗教民俗学を土台にした日本文化論! 【目次】 はじめに 第一章 民間伝承としての弥勒 第二章 宗教運動と弥勒 第三章 比較宗教論における弥勒 第四章 日本仏教における弥勒 第五章 鹿島信仰と弥勒 第六章 朝鮮半島と沖縄の弥勒 第七章 世直しと弥勒 第八章 大本教の中の弥勒 まとめ -
民俗学
民俗学って何だ? 戦後の民俗学を発展させた泰斗による、決定的テキスト。人々の日常への探究は、いかに始まり、どう展開し得るか。これを読めば全体像がわかる!ハレとケ、山民/海民、カミとホトケ、ケガレ、女性と子ども……。人々の営みを学として探究するための最重要事項を、初歩から核心まで明快平易に講義。近世の萌芽から柳田国男、南方熊楠、折口信夫らに至る研究史をふまえ、さらには都市の民俗などアクチュアルな学問としての可能性を展望する。【本書より】 民俗学は二〇世紀後半、世界の文明民族の間で必然的に起こった学問である。イギリス、ドイツ、フランスなどヨーロッパ文明社会の知識人たちが、同じ民族の内部で、キリスト教以前の文化や、先住民族の遺習などに気づき、それらが辺境の地域社会に残存していることを研究対象にしてスタートさせた。日本においては、ほぼ同時期に、本居宣長や平田篤胤、菅江真澄などの国学者や知識人たちが、田舎の習慣に古代を求めたり、他界観、神観念についての考えを深めたりしており、さらに明治時代末に至り日本の近代化、工業化に対する批判の姿勢をもった柳田民俗学が出発したのであった。 各国の民俗学のあり方には、それぞれ特徴があり、一括することは難しい。しかし共通している点は、古習の残存をとらえるという観点ではなく、むしろ現代社会に現実に生きている民俗の意味を問うということであり、日本の民俗学にはそのための枠組みとして、「常民」や「ハレ・ケ」の概念が用意されたが、近年それだけでは不十分であることからつぎつぎと修正意見もだされてきている。民俗学は出発の時点においてまず都市化を経験しており、民俗が外在的にも内在的にも変容しつつあることを大きな前提としていた。民俗はつねに変化しているからこそ、変化の相のなかにプロトタイプや変化のプロセスを探ることが可能になっている。民俗の消滅は変化の仕方であり、そこに原則をとらえる必要があるだろうし、一方に民俗の再生、再生産、創造という認識もなされてくる。近代化・都市化に応じての民俗のあり方が現代民俗学にとって不可欠の視点となっているのが現状の認識といえるだろう。【本書の内容】1 民俗学の成立と発達2 日本民俗学の先達たち3 常民と常民性4 ハレとケそしてケガレ5 ムラとイエ6 稲作と畑作7 山民と海民8 女性と子ども9 老人の文化10 交際と贈答11 盆と正月12 カミとヒト13 妖怪と幽霊14 仏教と民俗15 都市の民俗※本書の原本は、1990年に放送大学教材として刊行されました。 -
明代二大茶書 張源『茶録』・許次ショ『茶疏』 全訳注
唐代に、陸羽によって著された世界最古の茶書『茶経』に次いで、明代に書かれた最重要茶書二書の全訳注版です。 日本の煎茶道や最近盛んになりつつある中国茶の源流ともいえるのが、明代に行われていた「喫茶」です。 明代には、茶の文化が隆盛をしており、数多の茶書が著されましたが、それ以前の茶書の剽窃や焼き直しがほとんどでした。 そういった中にあって、本書で取り上げる『茶疏』と『茶録』は、独自の探究によって書貴重な貴重な茶書です。 製茶法、貯蔵法、茶器の選択、飲み方、客人の迎え方、などなどを具体的に描きます。 茶を、おいしく、楽しく、清らかに飲むやり方を追究します。 中国のみならず、日本にも伝わり、江戸時代には上田秋成『清風瑣言』をはじめ、多くの書物にも引用され、おおきな影響を与えています。 全訳注として、 【訓読】【現代語訳】【原文】【注釈】 を加えました。 喫茶愛好家必携の一冊です。 理解を助ける図版も収録しています。 本書は、訳し下ろしです。 【目次】 まえがき 1 張源『茶録』 張源『茶録』について 凡例 茶録引 顧大典 採茶 造茶 弁茶 蔵茶 火候 湯弁 湯有老嫩 泡法 投茶 飲茶 香 色 味 点染失真 茶変不可用 品泉 井水不宜茶 貯水 茶具 茶盞 拭盞布 分茶盒 跋茶録 沈周 2 許次しょ『茶疏』 許自しょ『茶疏』について 許自しょ伝 凡例 題許然明茶疏序 桃紹憲 茶疏小引 許世奇 凡例 産茶 今古製法 採摘 炒茶 収蔵 置頓 取用 包せき 日曜頓置 択水 貯水 煮水器 火候 烹点 秤量 湯候 甌注 とう滌 論客 茶所 洗茶 童子 飲時 宜輟 不宜用 不宜近 良友 出遊 権宜 虎林水 宜節 辯訛 攷本 -
「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄
阪急創業者・小林一三は、「政治中心」の東京に対して、大阪を「民衆の大都会」と呼んだ。 ターミナル・デパート、高級住宅地……国鉄に対抗し「官」からの独立を志向する関西私鉄は、沿線に市民文化を花開かせ、「民衆の都」大阪は東京を凌駕する発展を見せた。 だが、大正から昭和への転換、昭和天皇行幸を機に、街は次第に「帝都」へと変質してゆく―。 権力の装置=「国鉄」と関西私鉄との葛藤を通し、「都市の自由」の可能性とその挫折を描く、原武史の代表作。 第20回(1998年) サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞。 [解説(鹿島茂)より] 「横軸としての鉄道に、縦軸としての天皇が交差することによって、思考の座標軸が形成され、二つのパラメーターが思考の軌跡をさまざまに描き出す」 [本書の内容] はじめに―昭和大礼の光景 第一章 私鉄という文化装置 「帝国」と「王国」 『細雪』から 関東私鉄と関西私鉄 第二章 「私鉄王国」の黎明 第五回内国勧業博覧会 法の抜け穴 二つの風土 第三章 「阪急文化圏」の成立 往来ふ汽車を下に見て―小林一三という人物 民衆の都 沿線文化の確立 反官思想の結実―阪急デパート 第四章 昭和天皇の登場 「大大阪」の誕生 昭和大礼と都市空間の変容 官民協力奮励セヨ―一九二九年の行幸 第五章 阪急クロス問題 「官」の巻き返し 逆風 小林一三、社長を辞任す 第六章 「帝都」としての大阪 大阪市民たるもの 天皇のまなざし 一生一代の御奉公 おわりに―「紀元二千六百年」の光景 解説=鹿島茂 ※本書の原本は1998年に講談社選書メチエより刊行されました。 -
室町幕府論
〔あなたはまだ、義満の"本当の凄さ"を知らない〕 朝廷権力の「肩代わり」から「主体」の政権へ――室町幕府を読み直す画期的論考! かつて京都には百メートルを超える巨大な塔が建っていた。この「大塔」、眩く輝く金張りの仏閣、華やかな祭礼― 首都京都の強大な経済力を背景に空前の「大規模造営」を為した室町幕府は、朝廷を凌ぐ威光を確立したのである。 弱体政権論を覆し、足利政権が「権力」と「権威」を掌握してゆく過程とはいかなるものであったか。 絶頂の義満時代を軸に、鋭い筆致で描き出す! 【本書より】 「当時の人々は相国寺大塔を見上げ、また北山第の意匠に驚かされつつ、新たな天下の到来を実感していたのである。」 【本書の内容】 はじめに 第一章 天龍寺―足利尊氏・義詮の時代 1 軍事政権としての室町幕府 2 荒廃する朝廷社会 第二章 相国寺―足利義満の時代2 1 後円融朝の失政 2 足利義満の朝廷改革 第三章 相国寺大塔と北山第―足利義満の時代2 1 相国寺大塔 2 北山殿足利義満 3 財政史から見た義満の権力 第四章 南北朝期の公武関係―研究史的考察 1 「京都市政権」という罠 2 権限吸収論批判 第五章 復興期の社会―足利義持の時代1 1 復興ビジネス 2 室町時代の首都圏 第六章 守護創建禅院―足利義持の時代2 1 守護による寺院創建 2 足利義持の政治 3 公武統一政権 おわりに―虚空を突く大塔 あとがき 参考文献一覧 索引 *本書の原本は、2010年に講談社選書メチエより刊行されました。 -
名将言行録 現代語訳
幕末の館林藩士・岡谷繁実が、十六年もの歳月をかけて完成させた武将たちの逸話集『名将言行録』。千二百をこえる厖大(ぼうだい)な諸書を渉猟して編纂されたその内容は、戦国時代の武将から江戸時代中期の大名まで、数多の武士たちの言行を詳細に描き、彼らの人物像と叡知を活写する。本書は同書から戦国期の武将二十二人を選び、平易な文章で完全現代語訳する。 戦国武将たちの叡知と人物像を語る逸話集 「人は堀 人は石垣 人は城 情けは味方 怨は大敵」 これはまことのことだ──伊達政宗 幕末の館林藩士・岡谷繁実が、十六年もの歳月をかけて完成させた武将たちの逸話集『名将言行録』。千二百をこえる厖大(ぼうだい)な諸書を渉猟して編纂されたその内容は、戦国時代の武将から江戸時代中期の大名まで、数多の武士たちの言行を詳細に描き、彼らの人物像と叡知を活写する。本書は同書から戦国期の武将二十二人を選び、平易な文章で完全現代語訳する。 ●本書でとりあげる戦国武将● 北条長氏(早雲)/太田資長(道灌)/山中幸盛(鹿之助)/毛利元就/武田晴信(信玄)/上杉輝虎(謙信)/直江兼続/織田信長/柴田勝家/池田輝政/蒲生氏郷/島津義久/伊達政宗/戸次鑑連/高橋鎮種/黒田孝高(如水)/立花宗茂/豊臣秀吉/福島正則/加藤清正/真田幸村/徳川家康 -
明治キワモノ歌舞伎 五代目尾上菊五郎の時代
明治時代を代表する歌舞伎俳優にして、九代目市川團十郎とともに「團菊」と称された五代目菊五郎。『弁天小僧』『髪結新三』『忠臣蔵』『千本桜』『茨木』『土蜘』『戻橋』――数々の名演を残すも、実は彼の本当の魅力は、実際の事件や流行の風俗をいち早く仕組んでつくり、明治の観客を熱狂させた、キワモノ歌舞伎にあった――! 正統派歌舞伎から離れたがゆえに、論評の少ない、明治キワモノ歌舞伎と名優・五代目菊五郎の、濃厚な評伝を圧倒的な資料と共に記述。「読んで楽しい研究書という離れ業を演じて見事と言える」と、演劇評論家の大笹吉雄が絶賛した、2009年サントリー学芸賞受賞作の文庫化。 本書は『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』(2009年刊 白水社)を改題したものですひと言ひと言 目次 はじめに―― 人悦ばせの菊五郎 第一章 散切り頭と神経病 どれが女か男やら『富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま)』 幽霊より人が怖い『木間星箱根鹿笛(このまのほしはこねのしかぶえ)』 第二章 明治の闇には悪女がいる 高橋お伝は妖怪か『綴合於伝仮名書(とじあわせおでんのかなぶみ)』 居場所のない女『月梅薫朧夜(つきとうめかおるおぼろよ)』 第三章 見世物は世界をひらく サーカスがやってきた! 『鳴響茶利音曲馬(なりひびくちゃりねのきょくば)』 見上げる人たち『風船乗評判高閣(ふうせんのりうわさのたかどの)』 第四章 軍服を着た菊五郎 風呂屋の亭主と上野の宮様『皐月晴上野朝風(さつきばれうえののあさかぜ)』 日清戦争で負けたのは誰だったか『海陸連勝日章旗(かいりくれんしょうあさひのみはた)』 結び――たんすのひきだし 参考文献 あとがき 学術文庫版あとがき -
〈名奉行〉の力量 江戸世相史話
時代劇でおなじみの名奉行や悪代官の意外な実像から、驚くほど便利な江戸の暮らしまで、研究者ならではの視点で江戸の風もあざやかに切り取った短編集。 桜吹雪で知られる「遠山の金さん」の父は、とある試験を転機に異例の大出世を遂げた名官吏だった!? 「おれがわるかつた」、「ゆるせゆるせ」とざっくばらんに詫びる「暴れん坊将軍」吉宗の肉声に、文字通り女房を「借金のカタ」に差し出してしまった旗本、年利一二〇〇%の超高金利金融「烏金」利用者の実態に、宛名に記された「殿」と「様」の格付けをめぐるひと悶着……。 読めばもっと江戸が好きになる。第一人者の篋底から取り出された珠玉の掌編の数々! (原本:『大江戸世相夜話』中公新書、2003年) 【本書の内容】 はしがき 遠山金四郎の入墨 遠山金四郎の入墨/遠山金四郎父子/江戸の受験参考書/名奉行の「条件」/官職名の由来/銭形平次と目明/親の歳を間違える金四郎 お代官様――悪の代名詞 将軍吉宗の肉声/遊芸を許す田沼意次/お代官様――悪の代名詞/秘薬「熊胆」の値段/「謙譲の美徳」の裏側 二十二時間・二十三日間・三年間/白いカラスは吉兆か/殿と様はどちらが偉いか 大御所の犯罪 大御所の犯罪/無 尽/談合体質の根深さ/拾った金は誰のものか/象をめぐる暗闘/国民の生命の重み/女房を借金のカタに置いても 女髪結い繁盛記 便利すぎて困る/女髪結い繁盛記/江戸の贈答事情/江戸の高利貸し/証文の怖さ または、江戸の女性はしたたか/地獄の沙汰も金次第 放蕩息子の矯正 読み書き算盤/放蕩息子の矯正/「うろたえる」老人たち/天明七年のポスター/上流女性をどう呼ぶか 初出一覧 あとがき 学術文庫版あとがき -
メルロ=ポンティ 可逆性
本書は、現象学を前人未踏の域に導いたフランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908-61年)の生涯と主要著作をていねいにたどる至高の概説書です。『モードの迷宮』(サントリー学芸賞)や『「聴く」ことの力』(桑原武夫学芸賞)など、多くの支持を得てきた著者が、みずからの出発点にある哲学者と真摯に向き合い、全力で格闘した稀有なドキュメントがここにはあります。 フランス西部のロシュフォールで生まれたメルロ=ポンティは、高等師範学校でサルトルやボーヴォワールと知り合うい、そしてフッサールの現象学と出会いました。初めての著作が『行動の構造』(1942年)と題されたように、メルロ=ポンティは「生活世界」に注目した後期フッサールを引き継ぐとともに、その中心に身体をもつ人間を据えることで独自の道を歩み始めます。その最大の成果が主著『知覚の現象学』(1945年)です。 戦後はリヨン大学で教鞭を執ったあと、1949年にはソルボンヌの教授、そして1952年には異例の若さでコレージュ・ド・フランスの教授となったメルロ=ポンティは、サルトルとの共同編集で『レ・タン・モデルヌ(現代)』誌を発刊し、『ヒューマニズムとテロル』(1947年)などでマルクス主義に関する考察を続けることで現実と向き合いました。さらにサルトルの実存主義、ソシュールの言語学を取り入れたメルロ=ポンティは、1960年代にはさらなる高みに到達し、『シーニュ』(1960年)を発表しましたが、翌年、惜しまれながら急逝します。残された遺稿は『見えるものと見えないもの』(1964年)や『世界の散文』(1969年)として公刊されました。 これら燦然と輝く著作の数々を激動する時代の中で繰り広げられた生涯に位置づけつつ精緻に考察していく本書は、まさに著者の「主著」と呼ぶべきものです。このたび学術文庫版として新たな装いをまとうことで、永遠の生命を得ることでしょう。 [本書の内容] まえがき プロローグ 現象学の地平へ 第一章 構 造――〈行動〉の研究 第二章 運 動――〈身体〉の現象学 第三章 スティル――〈変換〉の現象学 第四章 偏 差――〈隔たり〉の現象学 第五章 可逆性――〈肉〉の存在論 エピローグ 現象学の臨界点 主要著作ダイジェスト キーワード解説 読書案内 あとがき 学術文庫版あとがき メルロ=ポンティ略年譜 -
メルロ=ポンティの思想
20世紀フランスにあらわれた綺羅星のごとき哲学者たちのなかにあって、ひときわ大きな輝きを放ちながら早世したモーリス・メルロ=ポンティ(1908-61年)。エドムント・フッサールの現象学と出会い、身体を中心に据えることで独自の地平を切り開いたその思想は、その後の現代思想の基盤となるとともに、哲学はもちろんのこと看護学や認知科学、芸術の領域にいたるまで今なお幅広く影響を与え続けている。 本書は、日本にメルロ=ポンティを紹介した第一人者たる著者が、『行動の構造』の公刊に先立つ思想にはじまり戦後の後期思想に至るまで、真正面からメルロ=ポンティの全容をとらえようと試みた書物である。 主要著作のひとつひとつが大部であることが、この知の巨人の全貌を捉えがたくしている大きな理由だが、『行動の構造』、『知覚の現象学』、『シーニュ』、『眼と精神』、『見えるものと見えないもの』など主要著作のほとんどの邦訳を手掛けてきた著者ならではの精緻な読解によって、途方もない構想とその可能性があざやかに浮かび上がる。 前人未到の境地に達したメルロ=ポンティの思考は、なぜ、いかにして可能だったのか。比類なき学識をもつ著者だからこそなしえた、思想的文脈、歴史的背景を踏まえた分析で、その思考の形成過程をも解き明かしていく。 知の巨人が知の巨人に肉迫した、無二の概説書。(原本:岩波書店、1984年) 【本書の内容】 まえがき 1 思想の形成 2 『行動の構造』をめぐって 3 『知覚の現象学』をめぐって 4 戦後のメルロ=ポンティ 5 メルロ=ポンティの言語論 6 メルロ=ポンティの社会理論 7 後期思想の検討 注 文献表 あとがき 解 説(加國尚志) 年 譜