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【内容紹介・目次・著者略歴】
ケーベル博士は西洋文化の理解のために神学の基礎知識が不可欠であると力説したが、いまだ神学は学問として認知されていない。本書はトマス・アクィナスが厳密な意味で「学」である神学を構築した事実を言語学的側面から論証、特に彼の神学が聖書と結びつくことにおいて「学」として確立することを明らかにし、学問領域の拡張を試みた問題作。
本書はトマス・アクィナスが厳密な意味での「学」としての神学をいかに構築したかを、“神”と呼ばれる神秘に関わる認識的・学問的言語としての神学的言語であるアナロギア、神の像、悪などに注目しつつ『神学大全』の分析をとおして論証する。とくに聖書的神学と対立するとされたトマスの神学が、むしろ徹底して「聖書的」であり、聖書と結びついてはじめて「学」として確立したことを明らかにした。さらに近代の人間中心主義的な理性観の限界を越えて、学としての神学が既存の学問だけではなく、われわれ自身にも知られていない認識能力の可能性を拓き、理性の自己超越性を洞察するうえでいかに有効であるかを、信仰告白や神秘経験の表現である宗教言語とは区別された神学的言語を考察することにより解明している。
【目次より】
まえがき
序論
第一章 「学」としての神学
I 「学」としての神学の可能性 II 「学」としての神学をめぐる問い など
第二章 トマス・アクィナスと神学的言語
I 神学と聖書 II 神学的言語について など
本論
第三章 神学的言語としてのアナロギア
I トマス神学とアナロギア II トマスの「アナロギア」理解 など
第四章 神学的言語としての「神の像」(1) 「神の像」再考
I 問題 II 「人間の尊厳」をめぐる問題 I など
第五章 神学的言語としての「神の像」(2) トマス・アクィナスにおける神学的言語としての「神の像」
I 問題 II 「神の像」の概念 III 「神の像」としての人間 IV 結び
第六章 トマスにおける神学的言語としての「悪」(1)
I 問題 二つの「悪」言語 II 欠如(privatio)としての悪 Iなど
第七章 トマスにおける神学的言語としての「悪」(2)
I 問題 II キリストにおける悪 III キリストの罪 など
第八章 キリスト論と神学的言語
I 問題 「学」としての神学 II アンセルムスにおける「学」としての神学 III 神学的言語としての「適わしさ」 など
第九章 受肉と神化
I 序論 問題 II 見神と神化(1) III 見神と神化(2) など
付論
一 トマス・アクィナス『神学大全』の基本的構想
二 神学的言語について
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稲垣 良典
1928年生まれ。東京大学文学部卒業。アメリカ・カトリック大学大学院哲学研究科にてPh.D.を取得。文学博士(東京大学)。九州大学名誉教授。専門は中世スコラ哲学。『神学大全』翻訳で第67回毎日出版文化賞、『トマス・アクィナスの神学』および『トマス・アクィナス 「存在」の形而上学』で第27回和辻哲郎文化賞をそれぞれ受賞。
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【内容紹介・目次・著者略歴】
かつて波多野精一やバートランド・ラッセルによって、哲学に非ずと断定されたトマス・アクィナス。果たして、トマスの神学とは、どのような「学」であり、哲学はそれをどのように探究できるのだろうか。本書は、『神学大全』という一冊の書物と現代のわれわれとの間に立ちはだかる見えざる壁を打ち砕き、「人となった神」という受肉の神秘を中心に据えた探究の書として読みとく。トマス以後、中世末期から、神学と哲学、信仰と理性とが次第に分離、また「学」としての神学から神秘思想・霊性神学が徐々に分かれていくのに対し、トマスの神学はそうした相反する側面を統合しうるものであり、信仰から独立した知ではなく、信仰に基づいて成立する学であって、スコラ神学でありながら修道院神学の性格をも備えていたことを論証。その上で、『神学大全』における、存在そのものである神に至るまで徹底的に進められる存在(エッセ)の探究、自由意思と恩寵、創造と悪、人間の幸福と至福直観、そしてトマスの宗教(レリギオ)観、キリスト論、秘跡論へと考察を重ねて、彼の神学的探究の根本性格を解明する。長年にわたり『神学大全』の訳業に従事した著者の筆致を通し、“万人に共通の博士Doctor Communis”トマスが、善く生きるための知的探究を徹底的に行なうことを問いかける。存在論や認識論など哲学の課題のみならず、自由と悪、正義など政治や倫理の諸問題にも大きく関与し、現代の閉塞する思想状況に、豊かな示唆を与える画期的業績。
【目次より』
まえがき
序論 トマスの「神学」について
I トマス「神学」の再発見 II トマスの「神学理解」 神学・信仰・霊性 III 新しい統合の可能性
第一章 「一」なる神と「三・一」なる神
I はじめに トマス神学における神 II 「一」なる神につして III 三・一なる神について
第二章 創造とは何か
I 創造と救い II トマスの創造論 III 創造と悪の問題
第三章 人間の幸福について
I 人間論・幸福・神 II 幸福の願望と幸福の実現 III 至福直観
第四章 トマスの「宗教」観
I トマスのレリギオ概念 敬神・修道生活・祈り II キリスト教的敬神 信仰・希望・愛徳
第五章 トマスの神学的キリスト論
I 「受肉の神秘」の神学的探究 II 幼児イエスをめぐる神学的問題 III キリストの生涯 神学的考察 IV キリストの受難と死の神秘 V キリストの高挙(復活・昇天)について
第六章 トマスの秘跡論
I トマスの秘跡神学 II キリスト・教会・洗礼 トマスの洗礼 III トマスの聖体神学(1)IV トマスの聖体神学(2) V トマスの「悔悛」神学
結語
あとがき
用語解説
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稲垣 良典
1928年生まれ。東京大学文学部卒業。アメリカ・カトリック大学大学院哲学研究科にてPh.D.を取得。文学博士(東京大学)。九州大学名誉教授。専門は中世スコラ哲学。『神学大全』翻訳で第67回毎日出版文化賞、『トマス・アクィナスの神学』および『トマス・アクィナス 「存在」の形而上学』で第27回和辻哲郎文化賞をそれぞれ受賞。その他、著書は多数ある。