商業主義的な切り抜き動画の体裁を取りながらも、それがショーペンハウアーのものならば、断片的に触れられる事すら至高。ショーペンハウアーのアフォリズムを全身で味わう。
早朝、本を開く。箴言を読む。
ゆっくりと、単語の連なりを噛み締め、それが血液のように全身に行き届く感覚に浸る。
厭世的な世界観さえ乗り越え、静謐な孤独の境地で世俗に取り込まれぬ思想生活を送りながら、穏やかな処世術にも触れる。人生を芸術作品の域に到達させ、自らを色彩の一部としてメタ認知する。
ーすべての欲望の根底にあるのは、動物や人間にもともとその本性からつきまとう不足、欠乏そして苦痛である。その一方で欲しいものがいとも簡単に得られ欲望が減退すると、そしてついに欲望の対象がなくなってしまうと、人は今度は恐るべき虚しさと退屈に襲われる。すべての苦しみと悩みを地獄の中に追放した後では、天国にはただ退屈しか残らないのだ。
ー天才は過度に知性を備えており、その知性は存在の一般的なものに適用されるときにのみ利用価値がある。凡人の知性が個々の人に奉仕する責任があるのに反し、天才の知性は人類全体で奉仕する責任がある。
ー孤独の境地の中で人が己自身とのみ向き合う場合には、その人自身が備えているものの本質がハッキリする。優れた素質を持つものは、孤独な貧しい環境にあっても自分の思想を生かした充実した生活を送ることができる。
ー己の中に多くの富を蓄え、己の本質保持のために外部からごく少量の財貨の流入しか必要としないもの、あるいは何の力も必要としないものは最も幸福である。なぜなら外部から何物かを受け入れる事は費用もたくさんかかるし、束縛され嫌な気持ちになる危険もあるからだ。
ー卓越した人が取り組むのはまず知的生活である。知的生活は次第に完成してゆく芸術作品のように絶えず認識と洞察を深めていくことによって、しっかりした事物の結びつきとたえざる向上、それに日に日に仕上がっていく光輝ある完全に向かっていく。
ー物事の本当の価値は何かをよく考え正しく評価すると、良い気持ちになることも逆に嫌な気持ちになることもあろう。だが他人の意見に対する激しい感受性をできるだけ抑制し、それに振り回されないようにするのが望ましい。他人の意見や思惑の奴隷にとどまるな。
ー私たちが健やかに生きていくために最も大切なのは健康であり、次いで私たちの生活を支える手段つまり安心して使える収入があることである。
ー街中の時計台の時計が全て狂っている都市の中で、ただ1つ正しく動く時計のようなもの。彼の時計だけが正しい時刻を示しているとしてそれが何の役に立つ。結局は時計台に従って行動せざるをえない。