帯には「戦国時代の常識をひっくり返す!」とあるが、そのうたい文句通り、普通一般に考えられている織豊政権のとらえ方が大きく覆される。しかし、著者の仮説は非常に説得的であるように思われた。たとえば、信玄上洛戦の目的や、足利義昭が京都を追われてからの二重政権構造、本能寺の変からの秀吉の政治的ポジション、そ
...続きを読むして小田原攻撃以後の奥羽平定戦争などなど、まさに目から鱗と言えよう。
「天下統一戦を通じて、秀吉は麾下の大名・領主に対して本領を収公し他所への知行替を強行して鉢植化し、民衆からは武装蜂起すなわち一揆の自由と居留の自由を刀狩令と土地緊縛策によって奪った。秀吉は天下統一によって、中世における領主と民衆の根本的な権利を剥奪したといえよう。(中略)東アジアでも傑出した「軍事大国化」こそ、「秀吉の平和」の正体だったといえる。」(266ページ)
そして、そこに成立した「官僚制的封建国家」(主従制と官僚制のマッチング)は単純な西洋史観では説明できないとされ、清朝の八旗体制との類似点などが指摘されており、興味深い。