藤田達生のレビュー一覧
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帯には「戦国時代の常識をひっくり返す!」とあるが、そのうたい文句通り、普通一般に考えられている織豊政権のとらえ方が大きく覆される。しかし、著者の仮説は非常に説得的であるように思われた。たとえば、信玄上洛戦の目的や、足利義昭が京都を追われてからの二重政権構造、本能寺の変からの秀吉の政治的ポジション、そして小田原攻撃以後の奥羽平定戦争などなど、まさに目から鱗と言えよう。
「天下統一戦を通じて、秀吉は麾下の大名・領主に対して本領を収公し他所への知行替を強行して鉢植化し、民衆からは武装蜂起すなわち一揆の自由と居留の自由を刀狩令と土地緊縛策によって奪った。秀吉は天下統一によって、中世における領主と民衆 -
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読み終わる。特に面白かった点は二点。
本能寺の変に関係する秀吉ー光秀関係と四国・中国の取次の関係。
「豊臣惣無事令」パラダイムの否定と、朝鮮戦役~関ヶ原をかけた「戦争を通じた中世~近世の転換という世界史的パラダイムへの地域史の接続
この二点がこの本の最も要点にして価値を高からしめていると考える。
室町幕府の天正期における実態や河野氏の評価は西日本の中世史の先生が良く言う「後期室町幕府」の実効性次第で読み方を変えないといけないと思うが、それでも東国政権が西日本の秩序を変えていく、という語り口で地域史を再定義している事は非常に興味深い。日本を東西に分けて理解することの重要性を改めて教えられた -
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<目次>
はじめに 鉄炮がもたらしたもの
第1章 ヨーロッパから日本へ
第2章 戦場の変貌
第3章 統一戦争を実現した「織田検地」
第4章 軍事革命が日本にもたらしたもの
むすび 近世国家とはなにか
<内容>
最近読んだ本郷和人氏の『「合戦」の日本史』の冒頭で、日本は戦争の研究がされていない、と述べていたが、この本はそれに対する答えが一部載っているような気がする。第3章以降は、著者の本職の「近世国家」の成立の謎へとつながるのだが、その根本が「鉄炮」にあると見ているため、この部分をかなり細かく分析しているからだ。鉄炮は技術の必要な武器で火薬が高価⇒農民の教育、つまり歩兵( -
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ネタバレ藩とは何か
著者:藤田達生(三重大学教授)
発行:2019年7月25日
中公新書
「藩」というものが長年、理解できていなかった(たぶん今もできていない)。藩は都道府県みたいな、自治体的な単位だと思っていた。だから、○○藩というのは江戸幕府が定めた固有名詞だと思っていた。ところが、小説は別として、歴史の本を読んでいると藩という言葉があまり出てこない。○○氏、のような言い方が多い。教科書にも、長州藩や薩摩藩、会津藩は出てくるが、加賀藩とかは記憶にない。なんでだろうと思い、調べてはみたがよく分からなかった。
島津藩、薩摩藩、鹿児島藩
これはどれが正しいのか?あるいは、同じものなのか?という疑問 -
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たまたま書店で見つけ、話題性のあるテーマでもあるので買って読んでみた。
著者は日本近世史の研究者で、特に近世国家の成立を専門としているようだ。
著者は本能寺の変について、足利義昭が黒幕であるという立場を取っている。だがそう単純なものではなく、義昭復権に長宗我部元親が絡み、さらには朝廷(すなわち正親町天皇、「麒麟がくる」では玉三郎丈が演じていますね)も関係している。すなわち複数の有力者が関係し、しかもそれぞれの思惑が絡み合うという、複合的な要因により、本能寺の変が起こったと筆者は考えているようである。
もちろん、これは一つの説で、本能寺の変の原因にはいろいろな説があり、はっきりしていないが -
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以前買った雑誌サライに「半島に行く」の連載を見付けた。二度行ったことのある丹後半島だったので、興味を持った。
さて、その連載が一冊の本となって上梓されたのを新聞広告で知り、購入、
気楽な歴史紀行と思ってたら、どうしてどうして、面白くて、久しぶりにページを捲る手が止まらない読書となった。
歴史作家と歴史学者と画家の三人が、司馬遼太郎氏の「街道を行く」のようなことをと考え、街道が整備されたのは江戸時代、むしろ昔は海こそが遠方との交通手段で、半島はその結節点と見込んで始まる企画。
六つの半島に旅して、語られる事物の豊かなこと。
奥能登の大屋敷。若しやと思ったら、網野義彦氏「日本の歴史を読みなおす」