あらすじ
16世紀中頃、戦国日本に伝来した鉄炮。砲術師・鉄炮鍛冶・武器商人により国内に広まると、長槍や騎馬隊が主力だった戦場の光景を一変させた。さらに織田信長は検地によって巨大兵站システムを整え、鉄炮の大量保有を実現。鉄炮や大砲を活用する新たな戦術を野戦・攻城戦・海戦に導入し、天下統一へと邁進した。軍隊や統治のあり方をも変えたこの「革命」が豊臣秀吉、徳川家康と引き継がれ、近世を到来させるまでを描く。
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Posted by ブクログ
鉄炮の普及を起点とする軍事革命が近世社会到来を加速させたとする視点から、鉄炮の導入・普及の展開、それによる戦術・戦略の変質、さらには統治体制の転換にいたる過程をたどる内容。軍事的要請から社会変革にいたる道程が興味深い。
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<目次>
はじめに 鉄炮がもたらしたもの
第1章 ヨーロッパから日本へ
第2章 戦場の変貌
第3章 統一戦争を実現した「織田検地」
第4章 軍事革命が日本にもたらしたもの
むすび 近世国家とはなにか
<内容>
最近読んだ本郷和人氏の『「合戦」の日本史』の冒頭で、日本は戦争の研究がされていない、と述べていたが、この本はそれに対する答えが一部載っているような気がする。第3章以降は、著者の本職の「近世国家」の成立の謎へとつながるのだが、その根本が「鉄炮」にあると見ているため、この部分をかなり細かく分析しているからだ。鉄炮は技術の必要な武器で火薬が高価⇒農民の教育、つまり歩兵(足軽)の誕生⇒大規模に鉄炮を使いこなすには、収入を増やす必要がある⇒「検地」により、米を基準にする必要がある⇒それを成し遂げた信長、それを後継した秀吉がこれを実行した、という論理だ。一方で、貨幣を用いなかったのは、貨幣が日本に不足していて、鐚銭(私鋳銭)が多く出回り、その管理や分類が大変だったから、ということも納得した。