満鉄調査部

満鉄調査部

ビジネス・実用
1,210円 (税込)

6pt

3.6

ソ連研究の中心地であり、満洲国建国に際して経済計画の策定に注力。日中戦争期には占領地の宣撫工作と調査活動とともに、日中戦争の行方を予測する総合調査までも担った。アジア太平洋戦争開戦後は、ビルマ・マラヤの調査までも手がけたが、関東憲兵隊との摩擦により機能停止に。満鉄調査部の活動は、いまでは「日本初のシンクタンク」と評され、そのエッセンスが戦後の経済発展やアジア研究に大きく寄与した。その全貌を明かす。(講談社学術文庫)

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    Posted by ブクログ

    満鉄調査部
    著:小林 英夫
    講談社学術文庫 2290

    アメリカにはそうそうたるシンクタンクがあるのに、なぜ日本には著名なシンクタンクがないのだろうとの疑問から、手に取ったのが、本書である。

    国策を補佐し、国運を左右する人材を提供するのが、シンクタンクだとおもっていたが、まさに、
    満鉄調査部は、日本初のシンクタンクであった

    日露戦争が終結し、南満州の殖産興業を要とする、南満州鉄道が敷設されていく。
    その第1代総裁に選出されたのが、後藤新平であった。

    後藤新平は、台湾総督府にあって、台湾人との融和を図り、また、満州の植民地経営の要として、満鉄を率いて、さらに、関東大震災にあたっては、その復興のために、東京府の都市計画を立案し、その恩恵は今日にも及ぶ。

    欧米列強、さらに中ソに対抗すべく、その前線に立ったのが、満鉄なのである。

    満鉄調査部については、その誕生から、敗戦による終焉まで、大きく3つ期間に分けることができるとおもう

    1906~1932 満鉄誕生から、満州事変まで
    1932~1937 盧溝橋事件、日中戦争まで
    1937~1945 敗戦まで

    気になったのは、以下である。

    1907 満鉄調査部発足 後藤新平は、満鉄のような大企業が、調査部を要するのは当然であるとした
    ・直後の任務は①経済調査、②旧慣調査、③ロシア調査の三班、全員は100名程度
    ・満蒙の一般産業調査が当初の目的であったが、調査地域がシベリア、ロシアに及び調査対象も広がっていく

    1917 後藤新平が去った後、一部縮小されていた、満鉄調査部は、ロシア革命の結果生まれたソ連の情報収集の
    必要にせまれていく。シベリア出兵の影響、北満研究が調査部に付加されていく
    満鉄調査部はロシア、中央アジアから4000冊以上のロシア文献を入手し、ソ連研究の中枢となっていく

    1919 原敬内閣主導で、満州に、関東軍が誕生する。満州を農業、鉱工業、および移民受け入れの地として整備が開始される。満州北東部から中朝国境への鉄道敷設計画、大連港湾整備計画などが計画されていく

    満鉄の収益をささえてきた、大豆、石炭の輸出振興策、物産振興策などが打ち出されていく

    1931 関東軍は満鉄の線路を爆破し、張学良の軍事拠点である奉天へ奇襲を行う
    蒋介石の無抵抗施策の追い風もあり、戦線は拡大していく。日本政府の戦線不拡大の策も講ぜず、吉林を占領満州の主要都市は、関東軍が制圧する

    1932 関東軍は、満州国建国を宣言、関東軍参謀である石原莞爾と、調査部のスペシャリストでロシア調査の宮崎正義との間柄で、満鉄は関東軍の重要な機関になるとともに、調査部は民生面の協力者としての協力関係が確立していく。

    1933 満州国工業化をめざして5か年計画が開始、宮崎正義の奔走で、東京に、日満財政経済研究会が発足。
    日本の国力調査と日米戦争に備える生産力拡充計画の開始である。
    満鉄調査部はこうして、日本の政策レベルのシンクタンクの地位を築いていく

    日本側の華北分離工作によって南京に首都をおいた蒋介石政権と関係が悪化していく

    1937 北京郊外の盧溝橋にて、日本軍に対して、銃弾が撃ち込まれて小競り合いが発生する。これが日中戦争の勃発である。
    満鉄調査部が、盧溝橋事件の拡大について、寄与したのは間違いはない
    同年満鉄は大再編があり、満鉄改組と、満州重工業開発(満業)の誕生である
    つまり、陸軍及び関東軍は、中国との総力戦に対して、満鉄、満業は不可欠だったのだ
    調査部の大幅な人員増強が行われる

    しかし、この増強時に、思想的前歴者、転向者がふくまれていて、後の憲兵隊の摘発につながる
    満鉄マルクス主義といわれ、講座派と、労農派に分かれる。

    1941 憲兵隊は、満鉄社員を含めた一斉摘発を実施した、その中には、ゾルゲとつながっていた尾崎を含めた共産党員などもいて、満鉄調査部は、この大摘発にて、事実上活動を終焉、敗戦に至る。

    1945.08.09 ソ連軍は、ソ満国境より満州へなだれ込んできた 08.18 満州国皇帝溥儀は退位、、ここに満州国は消滅した。

    考えるに、満鉄調査部の事実上の解体は、ソ連の、ドイツと日本からの挟み撃ちによる侵攻を食い止めるための、謀略であったかもしれない。まさしく、日露戦争の敵を、満州で取ったのである。

    目次
    はじめに──「元祖シンクタンク」としての満鉄調査部
    序 章 満鉄調査部の誕生
    第一章 調査機関とロシア革命
    第二章 国益と社益の間で
    第三章 満鉄調査部と日中戦争
    第四章 満鉄調査部事件の真相
    第五章 それぞれの戦後
    補 論 満鉄調査部と戦後の日本社会

    主要参考文献
    関連年表
    あとがき
    学術文庫版あとがき

    ISBN:9784062922906
    出版社:講談社
    判型:文庫
    ページ数:208ページ
    定価:760円(本体)
    発売日:2015年04月10日第1刷
    発売日:2015年05月22日第2刷

    0
    2024年02月15日

    Posted by ブクログ

    元祖シンクタンクとも呼ばれる満鉄調査部の実態を描いた一冊。単なる満州の情報収集機関にとどまらず、ロシア革命後は反共の最前線としてソ連情勢を分析し、満州事変以後は関東軍と連携して中国の政治・経済情報を収集するなど、その活動は一鉄道会社の枠を超えた国策シンクタンクの性格を帯びていた。
    興味深いのは、反共の砦でありながら内部にマルクス主義者も存在し、ゾルゲ事件の尾崎秀実と関係した人物がいたために憲兵隊の捜査を受けたという皮肉な一面。
    また、満鉄総裁として後藤新平や松岡洋右といった歴史上馴染みのある人物が登場する点も印象深かった。戦後日本の政治や経済には、満州で活動した人々の影響が色濃く残ったとも言われており、今後は満州事変や満州国を扱った他の書籍にも触れてみたいと思った。

    0
    2025年11月09日

    Posted by ブクログ

    満鉄調査部という普通の人はなかなかな見ないけれども、実はとても重要だった組織。何が行われていたか分かるし、読みやすかった。

    ただ欲を言えば、最後の補遺?みたいなところ、満鉄調査部の人や活動が戦後日本にどういう影響を与えたのか、あの部分をもっと膨らませてほしかった。

    0
    2016年09月06日

    Posted by ブクログ

    満州について、あまり知識がなかったので本書を手にした。

    登場人物が多く、史実をしっかり残そうとする著者の熱意を感じたが、個人的にはそこまで求めていなかった。だが最後の章は、私のような人向けに、満鉄調査部の歴史が大まかにまとめられていて有り難かった。

    植民地の統治は、更地に都市を作るゲームのような側面と、すでに存在している民衆や周囲の国際関係とのバランスを保つ側面もあり、難易度が高く、諜報機関がなくては成り立たない世界であったのだろうと想像がついた。

    0
    2025年07月11日

    Posted by ブクログ

    善し悪しはともかく、今これだけの調査、分析力を持つ組織が日本にあるのかと考えたりも。
    あと、思想的背景を問わず優秀な人材が集まったが故に、あの時代の政府との折り合いが悪くなって、終焉を辿ることになってしまったというのも皮肉な話だと感じたり。

    0
    2025年01月14日

    Posted by ブクログ

    南満洲鉄道、通称満鉄の調査部門に脚光を当てた本書。初代満鉄総裁後藤新平の肝煎りで始まり、その規模や調査の対象は変遷があるも、満洲事変や日中戦争を経て活動を拡大していく。自由な雰囲気もあったため、日本から左翼分子が渡ってくることも多く、1942年の関東軍憲兵隊による一斉検挙によって規模が大きく縮小し、ソ連の進行とともに活動を終える。
    関東軍より先に設立されて格式も高かった満鉄調査部門が、関東軍の勢力拡大とともに国家目的に沿った形で活動をするようにらなるのは興味深かった。

    0
    2023年09月15日

    Posted by ブクログ

    自由で、軍部とも結びついていて、レフトウィングだったり、いろんな顔をもつでっかい組織。すべて租借する力不足で???感が残った。

    0
    2016年02月15日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本が戦争に突き進んだ時代に設置された
    日本初のシンクタンク、満鉄調査部。
    その歴史を詳細に記述。
    最近のAIやEVなど、本来国家が旗を振り
    事業を成長させていく分野が
    民間に移行していることがとても気になる。
    国家産業として今は半導体だが、本当に未来の
    メドが立っているのか。
    満鉄調査部のような徹底した情報収集と施策立案が
    求められているのかもしれない。

    0
    2025年07月10日

満鉄調査部 の詳細情報

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