本書は、古事記伝を完成したのを機に、弟子たちにどう国学を勉強したらいいのかということを、初めて山にはいること=うひ山ぶみ、として初学のために書き下ろしたものである。
本をどう読むかをテーマとした本にも、本書の引用があり、とりあえず、口語訳を流してよんでみました。
気になった点は以下になります。
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・むかしから学問といえば漢学のことであった。それを「漢意(からごころ)」と見なせば、日本人の発想を「大和魂(やまとだましい)」という
・学問の根本とは何かという問題から入る。それは、「道」を学ぶということである。道とは、ひとり皇国日本にのみ伝わって、古事記、日本書紀、に二典に帰されているところの神代・上代のさまざまな事跡の上に備わっているのである。
・そうやって大筋が理解できるようになったら、次に古典の注釈を作るように心がけることである。
・学問する人に、「万葉集」をよく学んで、みずからも歌を詠まなければならないと説く。歌を詠まなければ、いにしえびとの心、風雅の趣を知ることはできないからだ。
・古事記、日本書紀をまず読むこと、それも、古事記が特に重要である。日本書紀は漢文に似せようとしており、からごころが多く混じってしまっているためである。
・古学の系譜は、契沖にはじまり、荷田春満、賀茂真淵、本居宣長と続く。いずれ日本学と称し、水戸や、明治以後の、皇国史観、国粋主義につながっていくことになる。
・また、古学は、塙保己一の群書類従の事業につながり、田安宗武の実子、松平定信らが支援をする。古学は近代の国学、国文学の礎となって江戸期に大きく成長した。
<学問の教え>
・学問するものにとって重要であるのは、志を高く持して、ただ年月長く倦まず怠らず、励み努めることである。諦め挫折することがいちばんいけない。
・どういった学問がいいとかは、言いがたく、学び方も、絶対こうしたらいいとは決めがたいものである。また、そのようなことは決めなくてもいいことであって、ただ本人の考えるがままにするればいいのである。
・書籍とは、順序を決めて初めから丁寧に読む必要はなく、何度も繰り返し読むことが大事であって、それによって理解が深まる。
・また、どんな書物を読むにも、初心のうちは、はじめから文義を理解しようとしてはいけない。まず大まかにさらっと見て、ほかの文献にうつり、これやかれやと読んで、さらに前に読んだものにかえればいい。
・それらの書物を何度も読むうちには、そのほかの必読書についても、また学問の方法についても次第に自分の料簡ができるものである。
・すべての学問は、はじめからその志を高く大きくして、奥義を究めつくさずばやまじと、かたく心しなければならない。
・(失われた文献の引用を指し示して)今日には、伝わっていない古文献の引用があって、その中には非常に貴重なものがある。
・古学とは、構成の説によるのではなく、もっぱら、古文献によってそのものを考え、古代のことを詳しく明らかにする学問である。(ようは一次資料を直接あたっていることを称している)
・文章の解し難いところを、はじめからひとつひとつときあかそうとすると、滞って先にすすめないことがある。そんなときは、不明なところは、そのままにしておいて、先にすすめばいい。
難解なことをまず知ろうとするのは、たいへんよくない。平易なところにこそ心をつけて、深く味わうことをしなくてはならない。
・博識とかいって、視野をひろくすることもいいことではあるが、そうすると、とかく、緊要の書を見ることがおろそかになる。そのおなじ力を緊要の書にそそぐことも必要だ。
・語釈とはいろいろの言葉のもとの意味を考えて解釈することである。これには、あまり深入りをせずに、全体の文意を明らかにしていくことの方が大切である。
・他人のこととするとどんなに深くおもっても、自分のことのようには深刻にはならない。なので、歌を自分で詠んでみれば、自分のこととして、深い意味を知ることとなる。
・昔の歌にも、よいものと、わるいものとがある。万葉の歌には、思う心を述べて、それを人に聞かれて、「ああ、いいな」と感じる歌がいい歌である。形式が、昔のものだかた良いわけではない。今の歌でも、昔風になっていなくても、実情をそのまま詠っている良い歌は多いのである。
・本居宣長は、長歌は、万葉を頂点として、和歌は、古今和歌集を頂点とするといっている。
目次
凡例
「うひ山ぶみ」解説
1 「うひ山ぶみ」の成立とその概要
2 古道論としての古学
3 古典研究としての古学
4 文学運動としての古学
5 いま、なぜ「うひ山ぶみ」なのか
「うひ山ぶみ」総論
物まなびのすぢ
みづから思ひよれる方
怠りてつめざれば功はなし
志を高く大きにたてて
道の学問
道をしるべき学び
よく見ではかなはぬ書ども
心にまかせて力の及ばむかぎり
古書の注釈を作らんと早く心がくべし
万葉集をよく学ぶべし
古風・後世風、世々のけぢめ
総論注記
「うひ山ぶみ」各論
物まなびのすぢ、しなじな有りて
しなじなある学び
志を大きにたてて
主としてよるべきすぢ
此道は、古事記・書紀の二典に記されたる
此道は、古事記・書紀の二典に記されたる(その2)
初学のともがら
漢意・儒意
古事記をさきとすべし
古事記をさきとすべし(その2)
書紀をよむには
六国史
御世御世の宣命
釈日本紀
古事記伝
古学の輩
かたはしより文義を
其末の事
広くも見るべく
五十音のとりさばき
語釈は緊要にあらず
からぶみ
古書の注釈
万葉集
万葉集(その2)
古風の歌をまなびてよむべし
古風の歌をまなびてよむべし(その2)
万葉の歌の中にても
長歌もよむべし
後世風をもすてずして
後世風をもすてずして(その2)
後世風をもすてずして(その3)
さまざまよきあしきふり
さまざまよきあしきふり(その2)
さまざまよきあしきふり(その3)
さまざまよきあしきふり(その4)
物語ぶみども
いにしへ人の風雅のおもむき
宣長奥書