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大奥様陽だまり事件帖
四百五十石の旗本・羽鳥弥左衛門利宣(はとりやざえもんとしのぶ)の母、嬉代(きよ)は六十三になる寡婦で、屋敷の離れに住んでいる。 良家の子女に書を教えたり、句会を催したりして過ごしているが、頭の回転が早く、人の機微にも通じ、洞察にも優れているので、様々な人がなにかと相談事を持ち込んで来る。 当主の弥左衛門は、人は好いが優柔不断で、日頃から嬉代に頭が上がらない。妻女の民江(たみえ)は、嬉代の大胆な行動に戸惑いがちだ。嫡男(孫)の俊之輔(しゅんのすけ)は、おとなしく、学問所に通っている。孫娘の那美(なみ)は、旗本の姫としては、活発で、早とちりもあるが聡明。嬉代と波長が合い、時に持ち込まれる相談事の解決の手伝いをしている。 嬉代主催の俳諧の集いに来ていた町名主、三左衛門(さんざえもん)が、大工の棟梁の耕吉(こうきち)が愛用の道具箱を盗まれ、困惑しているという話をする。耕吉は若くして棟梁になって、評判も良く、道具を大事に使っていた。道具箱がなくなっては、仕事にならない。 腕が良くて仕事が早い耕吉は、手間賃も比較的安いので、他の棟梁連中から妬み嫉みを受けることもあった。そういう連中の誰かの嫌がらせだと考えているらしい。だが盗まれたという証拠もない。役人は取り合ってくれない。興味を覚えた嬉代が乗り出したところ、意外な事実が明らかになった。子供たちの親を思う心と、職人気質の大工同士が引き起こした小さな事件が四方丸く収まって、めでたしめでたし。そして、また、新たな相談が嬉代のもとに……。江戸の町で起こる、小さな事件が老女の機転と洞察力で、丸くおさまり、今日も江戸は平和に暮れてゆく。 -
白村江
●歴史・時代小説ベスト10(週刊朝日/2017年)第1位 ●歴史時代作家クラブ賞作品賞受賞 ●本屋が選ぶ時代小説大賞2位 白村江の戦いの“真の勝者”とは――東アジアを舞台にした歴史大河小説の文庫版を電子書籍化! 六六〇年、唐・新羅連合軍によって百済は滅亡、王とその一族は長安に送られた。遺された王族は倭国へ亡命していた豊璋ただ一人――。新羅の金春秋、高句麗の泉蓋蘇文、倭の蘇我入鹿、葛城皇子(のちの天智天皇)……各国の思惑は入り乱れ、東アジアは激動の時代を迎える。大化の改新、朝鮮半島の動乱、そして白村江の戦いへと連なる歴史の裏でうごめいていた陰謀とは。圧倒的スケールで描かれた感動必至の長編小説。 -
宮本武蔵
山中で棒を振り回していた少年は、十三歳にして試合相手の頭蓋をかち割った! 自身も剣の達人である著者が描く凄絶なる歴史長編 宮本武蔵は幼少より武術に頭角をあらわし、生まれ持っての膂力と父の激しい指南にこたえ、13歳にして真剣の立会に打ち勝った。 血なまぐさい試合にあけくれた青春時代、京都郊外、一乗寺下り松での吉岡一門との死闘、関門・船島での佐々木小次郎との血闘など、いくたの修羅場でつねに勝利をおさめた孤高の剣聖の凄絶なる生涯を描破する。 吉川英治版『宮本武蔵』とそれを原作とした人気コミックの影響もあり、内省的な宮本武蔵像が一般化した現代。 だからこそ津本陽描く、本能で動き、野獣味のある武蔵像は読者にいまも新鮮な驚きを与える。 解説・桶谷秀昭 -
高杉晋作
「おもしろき こともなき世を おもしろく」――幕末長州藩の風雲児・高杉晋作が詠んだというあまりにも有名な辞世である。松下村塾で吉田松陰門下の逸材として久坂玄瑞と併称され、武士だけでない庶民参加の軍隊「奇兵隊」を日本史上初めて組織し、長州藩を「討幕」に向けてまとめ上げた。しかし後年、病に伏した高杉は明治維新を見ることなく29歳で病没している。この若さで、これほど気宇壮大に生きながら、この辞世の意味するところは何か。著者は、高杉の生き方を「面白くもない世の中を、面白く生きられるように仕掛けて行った」ものと喝破する。そして、激動の生涯を追いながら、かれが自分で自分にどう仕掛けて行ったかを、現代的な視座でたどりながら描いていく。歴史小説であるとともに、「面白い生き方は、自分が面白く作っていかなければならない」という著者のメッセージが込められている。2015年大河ドラマ「花燃ゆ」の主要登場人物。 -
破天の剣
群雄割拠の戦国時代、九州は薩摩の戦国大名・島津貴久の四男として生まれた家久は、若年の頃より「軍法戦術に妙を得たり」と評されるほどの戦巧者であった。だが兄弟の中で家久だけが母親の違う出自の為に深い懊悩を抱えていた。家久はその思いを払拭するかのように大友宗麟、龍造寺隆信といった九州の名だたる大名と奮闘を繰り広げ、島津の九州統一の夢に奔命する。しかし、天下人・豊臣秀吉とその弟・秀長が率いる大軍が島津家の前に立ちはだかる――。島津家の知将・島津家久の波乱に満ちた生涯を描く、第十九回中山義秀文学賞受賞作、待望の文庫化!! -
まんまこと
麻之助、ついに後妻をとる――!? 江戸町名主のお気楽者の跡取り息子・高橋麻之助が、幼なじみで町名主を継いでいる色男・八木清十郎、堅物の同心・相馬吉五郎とともに、さまざまな謎ともめ事の解決に挑む、好評連作短篇シリーズ「まんまこと」第8弾。 かつて恋女房を亡くした麻之助。 彼のもとに、縁談が3つもやってきた! しかも、ひとりは江戸一と謳われる美人。そして、どの縁談も妙なところがあるようで……。 麻之助たちは、なぜ不思議な縁談ばかり集まったのか調べることに。 果たして、麻之助の縁談の行方は……。 他にも、相馬家が吟味方与力に昇進したり、高橋家の支配町が増えたりと、今回も麻之助たちは大忙し! 急展開の第8巻。 文庫解説・大矢博子 ※この電子書籍は2021年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
麒麟児
慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。 軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。 江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。 和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。 二人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰る。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。 三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。 幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。 -
筆耕屋だんまり堂
「だんまり堂」に依頼すれば、願いが叶う? 文や遺言書、迷子の掛札、料理帖。 字を書くことなら何でも承ります! 口の利けぬ筆耕師が、筆に祈りをのせて代書する―― 「日本歴史時代作家協会賞」受賞作家による、人情時代シリーズ! 水沢数馬は深川の蜜柑長屋で、姪の春佳と筆耕屋を営んでいる。数馬は訳あって口が利けぬが、文字に触れると書き手の想いや過去が心に浮かぶ――そんな才を持つがゆえ、依頼人に寄り添った仕事をすると評判だ。 今日も“だんまり堂”には、迷子の娘を捜し続ける夫婦、冥土からの文を求める飛脚、大店の娘に料理帖を託したい女中が訪れ……。 温かな人情時代シリーズ開幕! -
P+D BOOKS 山中鹿之助
松本清張、幻の作品が初の電子化! 主君・尼子家の再興を願い、大敵・毛利に果敢に挑み暴れた、山陰の戦国猛将・山中鹿之助の、短くもドラマチックな生涯を生き生きと描く。 没落しつつあった尼子家一筋に全てを捧げ、月山富田城を取り囲む毛利元就の大軍を、その抜群の勇力と才智により何度も跳ね返し、武名を高めた鹿之助だったが、最終的に尼子義久が毛利の軍門に下り、富田城を明け渡すことになった。 その後、牢人をしながらも尼子家再興を使命とし、尼子勝久を擁立し、幾度の苦難を乗り越え、石見国入りし新山城を占拠するも、毛利勢との戦に敗れ富田城へ入城することは叶わなかった。 さらに、10年後、織田信長の毛利攻めに乗じ、再び、尼子軍を再興した鹿之助だが……。 100度打ちのめされ、1000回も挫折を味わう壮絶な鹿之助の人生、しかし、進むことはあっても退くことはなかった、その義勇の名は、天下に鳴り響いた。 弊社雑誌「中学生の友」に1年間連載された、松本清張、幻の作品。著者が代表作「点と線」を執筆した頃に同時に描いた、名作が50余年の時を超えて甦る。 -
兵諫
たった一人の決意が、歴史を変えた。 張学良、そのとき弱冠、35歳。 西安で蒋介石の宿営地が襲撃された。張学良軍によるクーデターなのか。 蒋介石の生命については絶望視されるがーー 「西安事件」の真相を描く、心震える歴史法廷ミステリー 一九三六年。東京で二・二六事件の動揺も収まらないころ、世界に衝撃が走る。 「西安で張学良が蒋介石の身柄を拘束した」。張学良の目的は。蒋介石の安否は。 取材を進める朝日新聞の北村に陸軍大尉の志津は、天命の証、龍玉の話を始めるーー。 壮大なスケールで日中の近現代史を描く「蒼穹の昴」シリーズ第六部。 【解説・保阪正康】 二・二六事件と西安事件。1936年に起きた2つのクーデター事件をつなぐ見えない糸をたぐることによって、歴史の転換点を描いた傑作。命や名誉よりも大切な価値を知る者が真の英雄なのである。 ――佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官) 時代の求めに身を呈した軍人、記者たちが作り上げる重層の歴史ドラマ。国境を越えて連鎖する事件の決行者の役割を照射することで、見えざる大戦前夜の構図が浮き彫りになってくる。日中の若き軍人が訴えた「兵諫」の思想とは。 ――保阪正康氏(作家・評論家) -
大福帳の狩人
「帳合屋」は、大店などの依頼主に新規取引の道筋をつけて斡旋料を受け取る商売。今でいうブローカーだ。彼らに持ち込まれるのは、成功すれば大儲けになる「うまい話」や、犯罪のにおいがするような「ウラの話」も数多い。音羽の音次郎は、元能役者の色男で、腕も立つし、機転もきく。帳合屋宿の津国屋に属し、相棒の笛彦兵衛や手下の松坊主、壺ふりの女・弁天の小万らとともに、津国屋に持ち込まれるさまざまな案件に対処していくのだ。津国屋に大量の大福帳が持ち込まれた。商家の売買の金額が記された大福帳はその店の命綱。高く売れることは間違いないが、なぜこれほどの数が流出したのか!?――表題作「大福帳の狩人」をはじめ、「呂宋の壺」「危ない読売」「落とし文」の4篇を収録。「江戸時代を舞台にビジネス小説を書く」というコンセプトのもと、新境地に挑んだ著者の会心作。 -
柳生黙示録
寛永十四年、異国にて客死したはずの高山右近が突如帰国した。異形のキリシタン忍法を操る神聖ハポン騎士団が右近を襲撃するも、柳生十兵衛の豪剣が辛くもこれを阻む。やがて十兵衛の前に現れた美少年・天草四郎の正体に十兵衛は驚愕する……。「島原の乱」驚愕の事実が明かされる、傑作伝奇剣豪小説。「電子版あとがき」を追加収録。 ●荒山徹(あらやま・とおる) 1961年富山県生まれ。上智大学卒。新聞社、出版社勤務を経て、朝鮮半島の歴史・文化を学ぶため韓国留学。延世大学校延世語学院韓国語学堂卒業。1999年『高麗秘帖』で小説家デビュー。『魔岩伝説』『十兵衛両断』『柳生薔薇剣』で三度、吉川英治文学賞新人賞候補となり、2008年『柳生大戦争』で第2回舟橋聖一文学賞を、2017年『白村江』で第6回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。日韓交流史を主題とする時代伝奇小説を発表して注目を集めた。他の作品に『竹島御免状』『長州シックス 夢をかなえた白熊』『シャクチ』『キャプテン・コリア』など多数。 -
池波正太郎と七人の作家 蘇える鬼平犯科帳
永遠のヒーロー「鬼平」再来! 人気作家7名が、伝説の男に新たなる命を吹き込みます。 池波正太郎が長谷川平蔵を主人にした短篇小説「浅草・御厨河岸」を書いたのは、昭和42(1967)年のこと。 オール讀物12月号に掲載されたその短篇は大きな反響を呼び、「鬼平犯科帳」としての連載が始まりました。 「鬼平」誕生50周年を迎えた2017年。この記念すべき年に、7人の作家が「鬼平」へ新たな命を吹き込みます。 逢坂剛は「逢坂・平蔵シリーズ」の特別版、上田秀人は武家という官僚社会で生きる平蔵の立場を、諸田玲子は妖盗・葵小僧と鬼平の再対決、風野真知雄は人気シリーズ「耳袋秘帖」鬼平版。 門井慶喜が木村忠吾の食欲の夏を描けば、土橋章宏は平蔵と料理人の味対決、梶よう子は史実の長谷川平蔵に迫ります。これらの短篇に加え、池波正太郎が自らベスト5に選んだ鬼平作品の中から「瓶割り小僧」を特別収録。 各作品に池波正太郎のカット画を使用した、豪華な競作短編集をお楽しみください。 -
信長の原理
「垣根涼介の時代小説こそ 真に『独創的』という言葉がふさわしい。」 ――恩田陸氏 何故おれは、裏切られ続けて死にゆくのか――。 斯界の絶賛を受けた歴史長編、ついに文庫化! 織田信長は、幼少時から孤独と、満たされぬ怒りを抱えていた。 家督を継ぎ、戦に明け暮れていた信長はある日、奇妙な法則に気づく。 どんなに鍛え上げた兵団でも、働きが鈍る者が必ず出る。その比率は、幼い頃に見た蟻と同じだ。人間も、蟻と同じなのか……と。 信長は周囲の愚かさに苛立ちながらも、軍事・経済の両面で戦国の常識を次々と打破。怒濤の血戦を制してゆく。 不変の“法則”と史実が融合した革新的エンタテインメント! -
真田武士心得
井原戦国三部作、新シリーズ連続刊行! 【2カ月連続刊行!】【「井原戦国三部作」新シリーズ、堂々の開幕!】 真田昌幸の家臣だった鈴木主水は、名胡桃城事件の責任を取って立ったまま切腹して果てた。その正妻・志野も夫の後を追って殉死。遺児である鈴木小太郎には、真田家家臣団から厳しい目が向けられていた。 真田信幸に仕えることとなった主人公・鈴木小太郎(のちの鈴木右近)は、父母の無念を晴らすべく、怨敵・中山九兵衛を追う。恩義ある真田信幸夫妻への忠誠と両親の仇討ち、二つの本懐を全うしようとした右近が貫いた「純情」とは――。 「三河雑兵心得」「北近江合戦心得」シリーズに続く「井原忠政戦国三部作」となる「真田武士心得」シリーズが堂々の開幕! 叔父の裏切りで全てを失った鈴木右近。心に誓ったのはただ一つ、両親の無念を晴らすための復讐だった。孤児となった彼を拾い、その成長を温かく見守る主君・真田信幸夫妻。主への忠義と仇討の狭間で、ひとりの若者が己の信義を貫くため、野太刀を振るう。激動の戦国時代を駆け抜ける男の、熱き魂の成長物語が今、幕を開ける! 鈴木右近、主君のためなら命も惜しくはない。 ただ、親の仇を討つまでは――。 -
仕立屋お竜
表の顔は腕の良い仕立職人、裏の顔は達人に仕込まれた剣術で悪を成敗する「地獄への案内人」。仕立屋お竜の活躍を描く痛快時代小説開幕! 第一話は、いたいけな少女・おしんがお竜と名を変えて「地獄への案内人」の道を歩むまでが描かれます。幼い頃に父からDVを受けてきたおしんは、母と家を逃げ出すが、その母も過労で亡くなり天涯孤独の身に。母親の薬代のためにつくった借金を抱えたおしんだが、親切顔で近づいてきたやくざの林助に騙され、盗品の運び屋や、美人局の片棒を担がされるなど、悪の道にひきづりこまれてしまいます。 とあることがきっかけで、武芸の達人・北条佐兵衛に助けられて自由の身となったおしんは、天賦の才があったのか、達人から教えてもらった武術を乾いた砂が水を吸うようにわがものにしてゆきます。「お前の才能は、お前のように困っている女性のために使うのだ」という師匠の言葉を胸に、師匠の紹介で仕立屋「鶴屋」から仕事をもらうようになります。そしてお竜と名を変えて、女をいたぶる悪人を退治することを決意。そんなある日、因縁の男と再会することになって……。 お竜の庇護者となる仕立屋の主・鶴屋孫兵衛、鶴屋の碁敵で謎のご隠居・文左衛門、そして鶴屋の用心棒で、ちょっととぼけた吉岡流剣術の使い手・井出勝之助など、お竜の脇を固める登場人物たちも魅力たっぷり。そして何よりの読みどころは、お竜の艶やかさと痛快アクションシーンです! -
黎明に起つ<文庫版>
新しい時代の黎明を呼んだ男、北条早雲―― 時は室町末期。 誰もが己と子孫の繁栄だけを願い、権力を得ようとしたために起こった応仁の乱。 戦乱に巻き込まれた伊勢新九郎盛時(のちの早雲)は、大切な家族や仲間たちを失ってしまう。 「世の中を刷新し、『民のための世』を築きたい。」 そう願った早雲は、故郷を捨て都を離れ、早雲庵宗瑞と名を変え生まれ変わった。 新天地・関東から変革の波を起こし、未だ蔓延る旧勢力と戦い続ける。 果たして彼の望む平穏な世は訪れるのか・・・ 最新の研究成果を踏まえ、実像に近い北条早雲像を描いた伊東潤の長編歴史小説。 -
縄文人の死生観
土器に納められた生後間もない赤ちゃんの遺体。妊娠線が刻まれた臨月の女性土偶。抱きあって合葬された親子の墓。顔にイヌを乗せて埋葬された女性――。縄文の墓や遺物は、精一杯の生を送り、ときに病魔や死の恐怖と闘った何千年も昔の人びとの姿を雄弁に物語る。そしてその背後に広がる、自然や母胎への回帰、再生をめぐる死生観とは? スピリチュアルブームや散骨葬など、現代日本人の死のあり方をも照らし返す、墓の考古学。 *『生と死の考古学 縄文時代の死生観』を改題し文庫化したものです。 【目次】 まえがき──墓を研究するということ プロローグ──発掘調査の現場から 第一章 縄文時代の墓とその分析 第二章 土中から現れた人生──ある女性の一生 第三章 病魔との戦い──縄文時代の医療 第四章 縄文時代の子供たち──死から生を考える 第五章 縄文の思想──原始の死生観 エピローグ 文庫版あとがき -
秘剣の名医
吉原の裏長屋に住み、表舞台には現れぬ若き医師・沢村伊織。日夜あやしげな薬を調合し、小銭を稼ぎつつも、ひとたび患者の前に立てば、長崎仕込みの外科医術を駆使する凄腕の名医だ。代々、幕府の奥医師を輩出する名門武家に生まれた伊織は、家族の反対を押しきり、長崎留学へと旅立つ。師・シーボルトのもと、最新医学と西洋剣の妙技を学んだ伊織は、江戸への帰還とともに、数奇な運命に巻きこまれることとなるのだが…。吉原の陰に身をひそめながらも、伊織の天賦の才はさまざまな人を惹きつけ、やがて裏の名医として名を成していく。若き医師が医術と剣術で尊い命を救う、新シリーズの開幕! -
源義経と静御前
幼くして母・常盤御前と別れて鞍馬に入った遮那王(義経)は、やがて平家打倒を志して鞍馬を脱出、奥州平泉の藤原秀衡のもとへ身を寄せる。幾年を経て凛々しい若武者となった義経は、挙兵した兄・源頼朝と黄瀬川で対面。その後は先に上洛した木曽義仲勢を宇治川に破り、一ノ谷の合戦では鵯越えの奇襲で平家を屋島に追い落とした。颯爽たる英雄となった義経が絶世の舞姫・静御前と出会ったのは、一ノ谷の後、京の警備を任されていたときである。静の舞に母の面影を見た義経は、急速に彼女に魅かれていった。だが、兄・頼朝との関係が悪化するなかで、屋島・壇ノ浦と戦勝を重ねながら勘気を蒙り、義経は静を伴っての逃避行を余儀なくされるのだった……。歌舞伎や講談などで広く日本人に知られ、伝説化されてきた二人の悲劇の物語を、生身の男女のドラマとして血肉を通わせて描ききった力作小説。2005年のNHK大河ドラマ「義経」の世界が楽しくわかる本。 -
怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛
悪は必ずしも悪ならず。 思いがけない事件の結末が胸を打つ! 消息を絶っていた盗賊「桐山の藤兵衛一味」。 再び動き始めたのはなぜか。 時代に翻弄される人々への、十兵衛の深い眼差しが胸を打つ。 ドラマ化もされたヒットシリーズ『八州廻り桑山十兵衛』。 松戸近辺に住む強欲な百姓一家殺害事件で、 十兵衛は、一時期世間を騒がした盗賊たちが再び動き始めたのではないかと疑い始める。 十兵衛の前に現れては捜査を攪乱する謎の美女、 さらに事件の背景には盗賊たちの人生を変えたある悲劇。 時代に翻弄される女と男に対する十兵衛の深い目線が胸にささる、 人気シリーズ第10弾にして最後の作品! ※この電子書籍は2017年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
縮尻鏡三郎
町会所から千両箱が消えた! 前代未聞の事件は幕閣の醜聞に発展する。 捕縛したものを取り調べる仮牢兼調所「大番屋」の元締を勤める鏡三郎が今回遭遇する事件は、町会所の押し込み強盗。 町会所とは幕府が貧困や災害時の救恤のため民間に設けさせた機関で、そこから二万両が奪われたという。 鏡三郎らは犯人の行方を追うが、事件は幕閣が震撼するスキャンダルへと意外な展開を見せて……。 殺される証人、予測不能な展開。狡猾な事件の黒幕に迫れるか。 冷酷非道な悪に立ち向かう同心の決死の闘い。 ※この電子書籍は2016年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
光圀伝 角川文庫合本版
なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか。老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。血気盛んな「傾奇者」として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き「虎」は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す――。生き切る、とはこういうことだ。誰も見たこともない「水戸黄門」伝、開幕。第3回山田風太郎賞受賞。【解説:筒井康隆】 ※本書は、角川文庫版『光圀伝』上下巻を一冊にまとめた合本版です。 ※本書には電子特典「冲方3作品お試し版」が収録されています。『はなとゆめ』『オイレンシュピーゲル 壱』、コミック版『光圀伝(一)』の三作品の冒頭部分がお読み頂けます。 -
関所破り定次郎目籠のお練り 八州廻り桑山十兵衛
相州と上州、それぞれの関所破りの意外な始末。 上州玉村で道案内が殺され、道案内を殺した定次郎は子分を連れてそのまま姿を消した。 同じころ、保土ヶ谷の道案内角太郎を殺した河童の六こと六蔵を追って、 八州廻りの桑山十兵衛は河童の六の出身、相州の松田まで足を延ばす道すがら、 鐘撞き講で金を集める破れ坊主を懲らしめる。 だが、肝心の保土ヶ谷の一件は、わからずじまいとなり江戸へと戻ってきた。 すると、日光例幣使街道の上州玉村宿のそばにある竹田村で、 朝早くに川向こうの穂波村から、鉄砲の玉が飛んできたという訴えが。 玉村では、侠客の定次郎一味が、玉村の道案内を殺し、大戸の関所を破ったとの知らせが。 玉村の道案内の後任を決める必要もあり、十兵衛はそのまま上州へと向かう。 十兵衛は、鉄砲をきっかけに、定次郎一味の足跡を見つけられると考えるのだが……。 破れかぶれになり、関所破りで、せめて名を上げようとする侠客たち。 そして、姿を消した河童の六はいずこへ流れたのか。 人の欲を見つめて関八州を経巡る十兵衛が、侠客の最後にみせる粋なはからい。 そして、二つの殺しは、意外な展開に……。 十兵衛は、首尾よく彼らを捕えることができるのか。 ご存じ、人気時代小説・八州廻り桑山十兵衛シリーズ待望の第9巻。 -
読んで旅する鎌倉時代
蛭が島:若き源頼朝が流された伊豆の地。当時の支配者は北条氏。 真珠院:頼朝との悲恋の末に八重が命を落とした地。 伊豆山神社:頼朝と北条政子が結ばれた地。 石橋山:頼朝が源氏復興ののろしを上げるも、大庭景親、伊東祐親らの平家軍に大敗した地。 黄瀬川:奥州から駆けつけた義経が頼朝と再会した地。 願成就院:北条時政が頼朝の奥州平泉討伐戦勝祈願のため建立した。 銭洗弁財天:頼朝への宇賀福神の夢のお告げを元に、宇賀福神を祀り神仏の供養を行なったのが創建の由来。 三島大社:頼朝が源氏復興を祈願して旗揚げをした神社。 梶原山公園:頼朝の信任厚かったが、その死後に滅ぼされた梶原景時終焉の地。 鶴岡八幡宮:鎌倉幕府とともにあった彼の地のランドマーク。 伊豆修善寺:頼朝の嫡男・頼家が暗殺された地。 など、鎌倉殿(鎌倉幕府)をめぐる13の地を舞台に、歴史時代小説の手練れ13人が切れ味鋭い筆をふるう。 13の掌編を自宅でじっくり味わうも良し、地図と写真を手がかりに今に残る歴史の現場を訪ねるも良し。 -
義経と静御前・二人の「その後」
稀代の英雄・源義経と絶世の佳人・静御前の吉野山での悲劇のわかれ――能や歌舞伎にもなり、日本人に広く親しまれてきたこの物語には、後日談ともいうべき伝説が日本各地にある。奥州藤原氏を頼って落ちのびながら、藤原泰衡に居館を急襲されて自刃した義経は、じつは北への逃避行に旅立っていたという。一方の静御前は、吉野山で捕らわれ、鎌倉で尋問を受けた後は、京へ向かったまま消息不明とされていた。しかし彼女にも、義経を追って旅に出たという伝説が各地に存在している。本書は、全国に残る伝説・伝承を検証しながら、二人のその後を大胆に推理した歴史読み物。著者は、数多くの静御前伝説が残る福島県郡山市在住。近畿から北海道まで、義経を追った静御前は、再びめぐり逢うことができたのか。日本史を代表する美男美女の悲恋物語には、いかなるエピローグが描かれるのか。歴史ロマンを堪能できる一冊、増補。 -
旅立ち寿ぎ申し候<新装版>
絶体絶命の紙問屋、大逆転の妙手は!? 時は、大老井伊直弼が惨殺され、動乱の気配が漂う幕末。 紙問屋永岡屋で誠意一筋、長年精勤してきた勘七は、主人善五郎の強い望みで跡を継ぎ、若旦那となった。 その勘七に小諸藩の上屋敷奉行高崎から大きな初仕事が舞い込む。藩札作りだ。 小諸藩は明君の呼び声高い藩主がおり、政は安定、財も潤沢らしい。藩札作りには二千両も支度してあるという。 幸先のよい出だしを切った、勘七がそう思ったのも束の間、商売仲間である醤油問屋広屋の浜口儀兵衛から、藩主が亡くなったと耳にする。 胸に不安が膨らむ中、ある夜、永岡屋が盗賊に襲われてしまう。盗賊はなんと高崎の配下だった。 配下は藩札と版木を入れた行李を盗んで姿を消したのだ。 襲われた際の傷がもとで、命を落とした善五郎を悲しむ暇もなく、主人として小諸藩に赴き、商いを質す勘七。 だが、新任の上屋敷奉行は「賂を受けていた前任の空の商い」として、二千両を踏み倒しにきた。 絶体絶命の危機に瀕した勘七に大逆転はあるのか? 幕末の三舟こと勝麟太郎や豪商高島屋嘉右衛門らの協力を得ながら、命を懸けて再建を図る勘七の懊悩と奮闘を、直木賞作家が瑞々しく描く。 商人道小説の傑作! ※この作品は過去に単行本として配信されていた『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』 の文庫版となります。 -
壬生狼 新選組風雲録
風雲急を告げる幕末の京都。旅芸人の一座とはぐれ、京の街をさまよっていた役者くずれの坂本朝太と前座の咄家・桂珍平は、ひょんなことから新選組に入隊することになってしまった。 わけもわからず隊士となったものの、持ち前のひょうきんさで組の人気者になった二人。 人前では決して笑顔を見せない副長・土方歳三を笑わせ、「壬生狼」と呼ばれ畏れられる新選組を変えてやると奮闘するのだが…!? 近藤勇、沖田総司らを巻き込んだ、壬生義士たちの騒動をおもしろおかしく描いた「鬼が笑う日」をはじめ、柔道の達人・西郷四郎や明治の文豪・夏目漱石と迷コンビの交流を絶妙の筆致で織りなす、笑いあり、涙ありの痛快時代小説。