岩崎弥太郎
国家の有事に際して、私利を顧みず
著:立石 優
PHP文庫 た 37 7
土佐の郷士であった、岩崎弥太郎が、幕末から、明治にかけて「三菱」を創り上げていく物語である
不詳ながら、三菱と、土佐、坂本龍馬とはどうも結びつかないでいた。
そして、岩崎弥太郎とは、後始末のひとであるということだ。坂本龍馬や、土佐山内家、後藤象二郎らが残した借金を後始末したのは、岩崎弥太郎である
大言壮語をくり返す武士の中で、愚直に約束を守り、そして信念を貫く、組織の三菱を築き上げた、岩崎弥太郎は、まさに、「国家の有事に際して、私利を顧みず」であった。
気になったのは、以下です
敵とみなした相手には、自分の実力以上の強敵であってもがむしゃらに立ち向かうが、弱い者には優しい一面があった
岩崎弥太郎は、後藤象二郎の推薦で、入門できなかった、吉田東洋の門下生になったこと、これが弥太郎の運命の転機となる、東洋はあいまいな言い方をしない。鉈で断ち割るように、明快な断定をする。それが弥太郎の性分にぴったり合った
長崎丸山で遊んでも、若い頃のように見境なく耽溺してしまうことはなかった
どんな気難しい客も上手にもてなし、気分をほぐしてくれる妓たちの手練手管を商売に活用すべきだと気がついた
岩崎弥太郎が相次いで出会った、坂本龍馬にしろ、五代才助にしろ、機を見るに敏で、広い視野を具えている、これほどの人物に巡り合えた幸運に、感動した。
グラバーは、弥太郎に、パークスとの談判に際しては、恫喝に屈して、怯む態度を見せてはならないと、友人として忠告した。もとより、悪太郎の弥太郎は、そんなヤワな男ではない
相手が奉行所だろうとどこであろうと、約束を破った以上は詫びるのが物事の筋道であろう
契約を重視するのは、外国人との商取引では当然の義務であった
後藤象二郎の大雑把な金銭感覚には、岩崎弥太郎も長崎土佐商会の借金の後始末で、苦労させられたものだ
岩崎弥太郎が、全く価値観の異なる五代才助と親交を深めたのは、打算を超越したものだった。海援隊の経営について意見を異にしながら坂本龍馬との友情が最後まで続いたように、弥太郎は気心の合う男同士の友情を理屈抜きで大事にするところがあった
人に頭を下げると思うな。金に頭を下げると思え
三菱は日本海運業の玉座につく、社名を、郵便汽船三菱会社と改めた。現在の日本郵船である
弥太郎は、三カ条の社訓を作って、社員に布告した
・政治に関与し、一党一派の利益に左右されてはいけない
・投機的利益の獲得に走ってはならない。実業の正道を歩め
・中小業者を圧迫してはならない。国益に沿う事業を選定せよ
大隈重信は岩崎弥太郎を厚く信頼し、生涯の親交を結んだ。
「国家有事の際、私利を顧みず公用を弁ずる」と誓約書に明記した。
接待の席で、弥太郎は絶対に商売の話をしない。相手を楽しませることに専心するのである。
彼には敵も多かったが、理解者は徹底して味方につき、友人たちは長く親交を保った。人間的な魅力があったのだろう。
目次
第1章 苦節の青少年時代
第2章 激浪に揉まれる
第3章 坂本龍馬と岩崎弥太郎
第4章 才能開花の大阪時代
第5章 士魂商才
第6章 大いなる飛翔
「岩崎弥太郎」関係年表
あとがき
主な参考・引用文献
ISBN:9784569673578
出版社:PHP研究所
判型:文庫
ページ数:312ページ
定価:629円(本体)
2009年11月18日第1版第1刷