小学館 - 小学館文庫作品一覧

  • 八丁堀強妻物語
    3.6
    育ちがいいお嬢様には、秘密があったのです。 日本橋にある将軍家御用達の扇店・善喜堂の娘である千秋は、方々の大店から「是非うちの嫁に……」と声がかかるほどの人気者。 ただ、どんな良縁が持ち込まれても、どこか物足りなさを感じ首を縦には振らなかった。 そんなある日、千秋は常磐津の師匠の家に向かう道中で、八丁堀同心である芦川柳之助と出会い、その凛々しさに一目惚れをしてしまう。 こうして心の底から恋うる相手にようやく出会えたのだったが、千秋には柳之助に絶対に言えない、ある秘密があり――。 「取次屋栄三」「居酒屋お夏」の大人気作家が描く、涙あり笑いありの新たな夫婦捕物帳、開幕!
  • ほどなく、お別れです
    3.8
    1~2巻726~792円 (税込)
    この葬儀場では、奇蹟が起きる。  夫の五年にわたる闘病生活を支え、死別から二年の歳月をかけて書き上げた「3+1回泣ける」お葬式小説。 大学生の清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしている。坂東会館には、僧侶の里見と組んで、訳ありの葬儀ばかり担当する漆原という男性スタッフがいた。漆原は、美空に里見と同様の“ある能力”があることに目を付け、自分の担当する葬儀を手伝うよう命じる。漆原は美空をはじめとするスタッフには毒舌だが、亡くなった人と、遺族の思いを繋ごうと心を尽くす葬祭ディレクターだった。   「決して希望のない仕事ではないのです。大切なご家族を失くし、大変な状況に置かれたご遺族が、初めに接するのが我々です。一緒になってそのお気持ちを受け止め、区切りとなる儀式を行って、一歩先へと進むお手伝いをする、やりがいのある仕事でもあるのです」--本文より ※この作品は単行本版『ほどなく、お別れです』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • かぎ縄おりん
    3.7
    この親子愛は私の理想――瀧本美織(女優)。 日本橋堀留の「駕籠清」の娘おりんは、番頭の祖母・お粂に早く婿を取り商売を継ぐようせっつかれている。しかし目明かしに憧れるおりんにそのつもりはなく、いざこざには真っ先に駆けつける始末だ。 ある日、「高砂屋」に元奉公人・平吉が人質をとって立て籠もった。目明かしの父・嘉平治や同心・磯部金三郎の目をかいくぐり、平吉が隠れる蔵に迫ったおりんは、隙をつき、得意のかぎ縄で罪人を捕らえたのだった。 その活躍に磯部はおりんを目明かしに勧めようとするが、嘉平治は娘の勝手な行動に激怒し、許さない。思わずおりんは本心を白状する。二年半前、嘉平治は神田明神の祭礼で何者かに足を刺され、今も左足を引きずるようにしている。目明しの親分として活躍していた嘉平治が悔しさを噛みしめる姿を見たおりんは、自分も捕物に携わり、いつか父の敵を見つけると決意したのだ。 娘の言葉を聞いた嘉平治は、翌朝、おりんを伴い磯部宅を訪れた。そして、まずは下っ引きとして務めさせ、目明かしにふさわしいか見極めたいと申し出る。おりんは父のあとを継いで、十手持ちになれるのか。時代劇の名手が贈る、痛快捕物帳、ここに開幕!
  • いつでも母と 自宅でママを看取るまで
    4.0
    最愛の母を自宅で看取った、泣き笑い回想録。  直木賞作家・桜木紫乃さんが大絶賛! <一緒にお母様を看取らせてもらったような錯覚は、わたしがこれから行く道を照らしてくれるだろう。本書は、親をなくすという大切な儀式のテキストだ。>(文庫解説より)  元「食堂のおばちゃん」山口恵以子さんが松本清張賞を受賞して実質的な作家デビューを果たしたのは55歳の時。お見合いは43連敗、ずっと実家住まいの山口さんをいつも傍らで見守り、励ましたのが母・絢子さんでした。  そんな最愛の母が認知症になってから、自宅での介護、看取り、そして葬儀のことまでを温かな筆致で克明に綴った『いつでも母と』は、単行本発売時に大反響を呼びました。  文庫化にあたり、絢子さんの主治医でしろひげ在宅診療所院長の山中光茂先生との対談や山口さんの書き下ろしエッセイ、桜木紫乃さんの解説を新たに加えています。  山口さんは「はじめに」でこう綴っています。 <介護を体験した方や、現在介護中の方、大切な人との別れを経験した方にとって、この作品が少しでもお役に立てれば、あるいは何の役にも立たなかったけど「あまりのアホさ加減に思わず笑ってしまった」なら、大変幸せに思います。> ※この作品は単行本版として配信されていた『いつでも母と』の文庫本版です。
  • △が降る街
    3.5
    5分で読めて、あっと驚き、わっと泣ける。 「俺と麻里奈、付き合うことになったから」三人の関係を表したような△が降る街で、“選ばれなかった”少女が抱く切ない想いとは――?(「△が降る街」)。 「このボタンを押した瞬間、地球が滅亡します」自宅に正体不明のボタンを送り付けられた男に待ち受ける、まさかの結末とは――?(「絶対に押さないでください」)。 「三十代前半の公務員。浮気確率82%。不合格」目の前にいる男の“浮気をする確率”がわかる能力に目覚めた女が結婚相手に選んだ、驚きの相手とは――?(「浮気確率63%」) 大ベストセラーショート・ショート集『余命3000文字』の著者が贈る、待望のシリーズ第二弾。涙と笑い、そしてやってくる、どんでん返し。 朝読・通勤・就寝前のすきま時間で、どこから読んでも楽しめる。 書き下ろしを含む全二十五編を収録!
  • 鬼嵐
    3.0
    新型コロナ騒動を予見したと話題の衝撃作! 「突然発症して、身体の中を嵐のように暴れまわる」――致死率100パーセントの殺人ウイルス《鬼嵐》が発生した! 感染症医の及川夏未は東京の大学病院での研究者生活に挫折し、離婚を経て、実家のクリニックを手伝うために北関東の町に戻ってきていた。外国人労働者の姿が目立つものの過疎化が進む地元では、町おこしの一環として、地元産の食肉をブランド化しようと若者たちが動き始めていた。そんな中、一人の老人の死を皮切りに、謎の感染死が連続して発生する。夏未は独自に調査を進めるが、それを妨げるような出来事が次々と起こり、真相に辿り着くのは困難を極めた。感染源は一体何なのか。そして、その裏側にあった戦慄の事実とは……。デビュー作『感染』以来、数々のベストセラーを生み出してきた医療ミステリーの第一人者が贈る、新型コロナ騒動を予見したと話題の衝撃作! ※この作品は単行本版『鬼嵐』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 食と酒 吉村昭の流儀
    4.5
    人気作家・吉村昭に迫る書き下ろし文庫。 没後15年を経て、 いまだに広く愛読されている国民的作家、吉村昭。 膨大な史料の博捜と綿密な取材で、 日本人の知られざる歴史と 庶民の生活を描いた作家の唯一の楽しみは、 「食べること、呑むこと」だった。 吉村昭と、夫人で芥川賞作家の津村節子の生活の細部を、 二人が書いた随筆、小説、対談などから紐解いて、 吉村昭が愛した日本の食と酒、 そして取材旅行で訪れたさまざまな町の味を紹介する。 吉村文学の原点である戦争体験と療養生活、 夫婦で北海道をさすらった不遇時代の記憶などが、 吉村昭の「食と酒」への執着とどう関わっていたのか。 下町に生まれ、 人との関わりを何よりも大切にした吉村昭にとっての 「いい旅、いい味」とは何だったのか。 夫婦ともに多忙な作家だった吉村家の毎日の献立は?  吉村昭の食と酒、そして旅を通じて浮かび上がる夫婦の絆と愛情を、 作家・谷口桂子があますところなく記す、完全書き下ろし文庫。 巻末解説は吉村昭と交友があった直木賞作家、出久根達郎氏。
  • さよなら、ムッシュ
    4.6
    20年間しゃべり続けるコアラのぬいぐるみ。  小さな出版社で校正の仕事をしている森星太朗は、幼いころ他界した作家で母の文子が残してくれたコアラのぬいぐるみを大事にしていた。  ムッシュ、と名付けられたそのぬいぐるみは、母が亡くなったその日、なんと突然しゃべりだし、以来、無二の親友になっていた(もちろん、世間には内緒のままにして)。  そんなある日、しゃっくりがとまらなくなった星太朗は、自分が母と同じ死に至る病に罹っていることを知ってしまう。ムッシュは、星太朗に思いがけないある提案をした。  温かで、名付けようのない思いに満たされる感動作。
  • 消された信仰 「最後のかくれキリシタン」--長崎・生月島の人々
    -
    世界遺産から黙殺された島の「祈りの記録」。 250年以上も続いたキリスト教弾圧のなかで信仰を守り続けた「かくれキリシタン」たち。その歴史に光を当てようとしたのが、2018年に日本で22番目の世界遺産となった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」だ。 ところが、PRのために長崎県が作ったパンフレットからは、「最後のかくれキリシタンが暮らす島」の存在がこっそり消されていた。 その島の名は「生月島(いきつきしま)」。 今も島に残る信仰の姿は、独特だ。音だけを頼りに伝承されてきた「オラショ」という祈り、西洋画と全く違う筆致の「ちょんまげ姿のヨハネ」の聖画……取材を進める中で、著者はこの信仰がカトリックの主流派からタブー視されてきたことを知る。一体、なぜ――。 第24回小学館ノンフィクション大賞受賞作。 文庫版解説・島田裕巳氏(宗教学者) ※この作品は単行本版として配信されていた作品の文庫本版です。
  • さんばん侍 利と仁
    4.2
    江戸の企業再建エンターテインメント! 二十四歳の鈴木颯馬は、元は町人の子。幼くして父を亡くし、母とふたりの貧乏暮らしが長かった。 縁あって、手習い所で働くうち、大器の片鱗を見せはじめた颯馬だが、十五歳の時に母も病で亡くし、天涯孤独の身となってしまう。 しかし、捨てる神あれば拾う神あり。町道場で下働きしている際、ひょんなことから、田中藩江戸屋敷に勤める「さんばん殿」鈴木武治郎に才を買われ、めでたく養子に。 だが、勘定方に出仕したのも束の間、田中藩領を我が物にせんとする老中格の田沼意次と戦うことになってしまい……。 恩義ある藩を救うべく、わけありで、酒問屋麒麟屋の番頭となった颯馬に立ち塞がる壁、また壁! 江戸の剣客商い娯楽小説第一弾!
  • 殻割る音
    4.3
    涙も愛も包み込む、奇蹟のオムレツ! 室本さくらは中学受験生の女の子。ある日、家庭科の調理実習で作ったスクランブルエッグが友人たちに絶賛されたことがきっかけで、料理の楽しさに目覚める。そんなさくらの母・泉は料理が苦手。「家でも料理をしたい」と訴える娘に、受験勉強と両立させることを条件に、母はしぶしぶキッチンを使うことを許してくれた。さくらの願いは「お母さんと一緒に料理をすること」。そのために、家族の思い出に残るオムレツを作ろうと決意する。プロが作るトロトロふわふわのオムレツを目指して孤軍奮闘するが、なかなかイメージ通りに作ることができない。両親へ料理を振る舞う日は、すでにさくらの中で決まっていた。その日に向け焦りが募るあまり、母とのある約束を破ってしまう。母の逆鱗に触れ料理禁止を言い渡されたさくらは意気消沈するが、祖母が作ってくれた温かな料理に心を揺り動かされ、もう一度挑戦してみようという気持ちを取り戻す。 さくらは受験勉強とオムレツ作りの両方をクリアすることができるのか。そして、母と一緒にキッチンに立つという夢はかなえられるのか。引っ込み思案な少女がその殻を打ち破っていく姿に、心が熱くなる成長物語。
  • つめ
    4.0
    やられたらやり返せ!?涙腺決壊の結末が!  真野朱音は、2年ちょっと前に中学校の同級生だった勝裕と結婚した。勝裕の連れ子、小学五年生になる裕也との3人家族である。  朱音は、子ども会の担当として南郷不二美を訪ねた。近所の尾花公園に面した南郷宅の金網フェンスを覆ったイバラの棘で、子どもが怪我をしており、剪定をお願いするためだった。南郷は50代後半の一人暮らしの女性で、愛犬はドーベルマン。気むずかしいという評判だった。イバラの剪定については、「子どもの怪我なんか知るか。親の責任じゃ。あほっ」と吐き捨てられた。市役所が、公園にロープを張って注意喚起のプレートをかけてくれたが、その夜、寿司屋から特上にぎり8人前が届く。翌日には、ケーブルテレビが契約の確認をしたいと訪ねてきた。どちらも注文したのは自分ではない。やったのは、南郷だ。  同じ頃、裕也がまたいじめに会っていることがわかった。裕也は、「いじめられても平気な強い人間になる」という。  朱音は決心した。裕也に身をもって教えてやるべきだ。やられたら、やり返すべきだということを。いや、やらないとやられてしまうということを、だ。ご近所のモンスターとの壮絶なバトルが今、始まる――。 ※この作品は単行本版『つめ』として配信されていた作品の文庫版です。
  • 僕は人を殺したかもしれないが、それでも君のために描く
    5.0
    「4マリ」の奇跡、再び。 昨日、僕は人を殺してしまったかもしれない―― 「強迫性障害」を抱える島津圭司は、毎晩恐怖に襲われ目を覚ます。今日も気づかないうちに、自分が誰かの「死」の原因を作ってしまったのではないか……。日常生活も人付き合いも苦手な圭司にできることはただ一つ、絵を描くこと。だから、生きている限り、今日も漫画を描くしかない。  あるとき、事故に巻き込まれ搬送された病院の裏庭で、圭司は透き通るような肌の青年・藤堂星矢に出会う。社会や人との接触を忌み嫌ってきた圭司だったが、「僕がファン第1号になる」という星矢の言葉に背中を押され、漫画家としてのキャリアと向き合うようになる。初めての連載、自宅で雇う初めてのアシスタント、助けてくれた救急救命士の女性への、初めての恋。自身の障害のせいで、圭司は行く先々で壁にぶつかってしまう。一つずつ挑んでいった先に、圭司を待ち受けていたものとは。そして、十歳で死んでしまった弟・龍二に最後にかけた言葉を悔やむ圭司が、十五年経った今、見つけた真実とは……。 生きづらさを抱えて生きるすべての人へ。大切なものを喪っても、生きている限り春はやって来る。涙なしには読めない、感動の人生讃歌!
  • 海を抱いたビー玉~甦ったボンネットバスと少年たちの物語~
    4.2
    「心」を持ったボンネットバスの奇跡の旅。 運転手の親子に愛されたことで「心」を持った瀬戸内海の小さな島のボンネットバスと、手にした者に勇気を与える不思議な青いビー玉が、時代を超え、運命に導かれながら旅をしていくファンタジー。 旅は、懐かしい昭和40年代の瀬戸内海の島から、大震災に見舞われた山古志村へ……。 少年と、バスと、少年の心を持った魅力的な大人たちが、「生きることの美しさ」を優しく語りかけてくれる、事実をもとに描いた奇跡と感動の物語。驚きのラストに、あなたもまちがいなく「幸せのため息」をつくことでしょう。 「幻の青春小説」と呼ばれた名作の、待望の文庫版を電子化。
  • 愛しのジュエラー
    3.0
    1~2巻726~737円 (税込)
    宝石への熱い思いを描いた注目の学園小説!  花岡ジュエリー・スクールの学生喜多川北斗は、宝石業界最大手のオーナーの御曹司。しかも、東大中退という異色の経歴だった。北斗は石留めの達人として、世界技能競技大会で入賞を果たしていたが、学内のデザインコンテストではデザイン画を提出することができず、自己嫌悪に陥っていた。学内の学習の華といえるのが、独創的なデザイン力だったのである。  ある夜、酔っ払った北斗は誰かに助けられ、その家で朝を迎えた。北斗を助けたのが、同じ学校に通う皆見みな美だった。そこで、みな美の手になるという優しい表情をしたスターローズクオーツを見た北斗は、みな美が研磨の卓越した技術を持っていることを知るとともに、彼女に興味を抱く。  折しも、学校が財政的に危機に瀕しており、このままでは借入先の銀行の手に渡ってしまうことが明らかにされた。そのため、資金集めとして学生たちによるオリジナル商品のジュエリーを作って売ることが宣言される。果たして、どんなジュエリーができるのか。  みな美と北斗、日賀翔太と仁科真由那の恋愛感情も入りくんできて……。  宝石の魅力と、宝石をこよなく愛する人たちの思いを伝える、注目の学園小説! ※【ご注意】この作品にはカラー写真が含まれております。
  • 尾根のかなたに 父と息子の日航機墜落事故
    4.1
    遺族が辿った不屈の物語 1985年8月12日。航空史上未曽有の悲劇。遺族の悲しみと苦しみは想像を絶した。なんの予兆もなく突然、愛する者を奪われた家族たちは、うろたえ、動揺し、泣き叫び、茫然となった。 父を失った「息子」たちは、やがて「父親」となった。ノンフィクション作家・門田隆将は思った。「あの、寡黙な男たちこそ、何かを後世に伝える義務があるのではないか」――。 <私は、今は「父親」となった当時の「息子たち」を訪ねる作業を始めた。それは決して愉快なものではなかった。訪ねていっても、胸の内を吐露してくれる男たちはむしろ少なかった。今なお、自らの内面を「語る」ことに納得ができていない男たちの方が多かったのだ>(「はじめに」より) しかし、何人かが取材に応じてくれた。彼らは四半世紀という長い年月を経て、苦悩と悲しみを克服していった。 哀しみの「時」は、いつまでその針を刻み続けるのだろうか。最愛の人を事件や事故で奪われた家族は、どうやって絶望を克服できるのか。 本書で取り上げる5つの「父と息子の物語」に、そのヒントがある。 『風にそよぐ墓標』、待望の電子化。2012年10月、WOWOWにてドラマ化!

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  • みえない雲
    4.1
    原発事故が起こったあと、人はいかに生きるか? 世界の原発史上最悪の事態となったチェルノブイリ爆発事故から20年以上の時が経った2006年12月、1本の映画が公開された。(シネカノン有楽町にて'07年正月第一弾ロードショー)。あるドイツの原発で爆発事故が起き、町はパニックに陥り何の罪もない市民が巻き込まれるというドラマだ。本作品はその原作である。被爆した14歳の少女が見た社会の混乱と肉体的な疾患のリアルな描写は、ドイツの約3倍の原発を持つ我が国にとってあまりに衝撃的な近未来小説である。

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  • 湘南生まれ、おとぎ話育ち
    3.0
    5分で読めて、あっと驚き、わっと泣ける。 「生まれはここ湘南なのですが、父の仕事の都合で三歳からおとぎ話の世界に住んでいました」おとぎ話の世界からやってきたと語る転校生、その正体とは?(「湘南生まれ、おとぎ話育ち」) 「彼氏の高校時代の初恋を摘出して欲しいんですが、保険ってききます?」結婚を前にし、初恋の思い出を忘れるため病院にやってきたカップルに待ち受ける、まさかの結末とは?(「初恋摘出手術」) 大人気ショートショート集『余命3000文字』の著者が贈る、涙と笑いと、あっと驚くどんでん返し。通勤・朝読・就寝前、すきま読書を彩る作品集。待望のシリーズ第4弾。書き下ろしを含む全24編を収録!
  • 土下座奉行
    3.0
    土下座は屈辱にあらず、悪を斬る正義の剣だ! 廻り方同心・小野寺重吾は、ただならぬものを見てしまった。 昼下がりの北町奉行所で土下座をする、牧野駿河守成綱の姿だった。 土下座相手は三十代半ばの侍で、身なりからしてどこぞの用人あたりであろう。 歳といい、武士としての格といい、奉行よりうんと下のはず。 しかし、重吾は、 (……なんと、きれいな土下座であろうか) 風で桜の舞い散る中、奉行の姿に見惚れていた。 まるで茶道の名人か、あるいは剣の達人のする謝罪ではないか、と――。 小悪を剣で斬る同心、大悪を土下座で斬る奉行の二人組が、江戸城内の派閥争いがからむ難事件「かんのん盗事件」「竹五郎河童事件」に挑む! そして、いま土下座の奥義が明かされる!! 小野寺重吾……北町奉行所の廻り方同心。あだ名は「しゅうとめ重吾」。 牧野駿河守成綱……北町奉行。江戸城内で「どげざ駿河」と呼ばれる。 八重……重吾の妹。「黙っていれば小町」と囁かれるほどの美形。 遠山左衛門尉景元……南町奉行。人呼んで「いれずみ金四郎」。 財前孝三郎……南町奉行所の廻り方同心。周りは「花がら孝三郎」と呼ぶ。 夜目鴉の菊……関八州を股にかけた大盗賊。
  • めおと旅籠繁盛記
    4.0
    無宿者と寂れた旅籠。奮闘の再出立物語!  やくざ者の下働きをして暮らす無宿者の直次は、ある日、賭場検めに現れた捕り方を誤って傷つけてしまう。もう、江戸にすら居場所はない……自らも重傷を負い朦朧としながら逃げてきた中仙道で、直次は追剥に襲われていた娘の危機を救う。  気を失った直次が目覚めると、そこは助けた娘・お路の両親が営む板橋宿の旅籠松丸屋だった。主人のお人好しが災いし、借金も抱える今にも潰れそうな松丸屋だが、その上、近頃は徒党を組んだ追剥が出没し、板橋宿全体が寂れ始めていると言う。  怪我の完治までせいぜい利用してやろうと決めた直次だが、穿鑿もせず受け入れてくれる松丸屋の居心地を、悪くないと感じ始める。提灯屋の若旦那・定之助をはじめ、余所者の直次を警戒する者も多いが、その働きぶりに少しずつ直次を認める住人も出て来た。  そんな折、いよいよ追剥被害が頻発。なぜ、板橋宿近辺ばかりが狙われるのか。直次は「最後の恩返し」として、道中奉行の命を受けた江戸四宿見廻り役・恩間満之助と共に解決に乗り出す。 全てを失った無宿者が旅籠を盛り立て、帰る場所を作ってゆく、奮闘の再生物語。 (解説・理流)
  • 引越し侍 門出の凶刃
    3.0
    からっけつの旗本が陰謀を暴き、巨悪を両断! 血筋はよくて二枚目で、剣も冴えわたるが、美しい娘子にはつい浮かれてしまう内藤三左衛門、二十三歳。 一見すると極楽とんぼだが、役に就かない旗本の当主だけに、懐はいつもからっけつ。 屋敷の庭に建てた道場を賭場にして、密かに寺銭を稼いではいるが、金に厳しい祖父の次郎右衛門に取り上げられて、今日も飲まず食わず。 しかも、内藤家の小者なのに、みずから用人を任じてはばからない嘉平にさえ、侮られる始末だ。 仕方なく喧嘩の仲裁で日銭を稼ぎ、なんとか食いつないではいるものの、腹が減っては目を回す「平穏な」日々を送っている。 ところがある晩、次郎右衛門にこき使われている博徒の親分・伝蔵の警固中、「妙な」辻斬りに出くわした。 大川橋の上で四人に囲まれたのだ。 得意の剣で切り抜けたはいいが、それがどうやら運の尽きだったらしい。 下は南町奉行所の定町廻り同心・大塚右門、上は白河藩主で老中首座の松平越中守定信を巻き込んでの、公儀を揺るがす大きな謀略に挑む羽目になり……。 温かくて胸のすく、痛快長編時代小説!
  • レストア家族
    -
    壊れた家族と潰れかけている工場の再生物語。 ある日、ヤハギ自動車商会の社長・矢作雄造のもとに女性と男の子が現れた。交通事故で亡くなったひとり息子・秀一の元嫁・裕子と孫の悟だ。悟を連れて実家に戻ってから八年もの間、ずっと顔を合わせていなかったのに、今さらなぜ? 話を聞けば、雄造と一緒に働きたいという。元夫がなぜあれほど車好きだったのか、どうしても知りたくて、専門学校に通ってまで、自動車整備士の資格を取ったらしい。裕子と悟を受け入れた雄造だったが、実は工場の経営は危機的状況にあって……。 雄造の弟でライバル会社を経営する敬司の妨害、友達のできない悟の小学校生活など、次々と困難が降りかかる雄造と裕子。 力を合わせるふたりを見て、工員の鈑金名人・荒井鉄也とミュージシャン・弘中恵、そして、元工業高校教師の芝田紀文が奮闘する。 家族と工場再生の感動物語。文庫書き下ろし。
  • 小栗上野介抹殺と消された「徳川近代」 ~幕臣官僚がデザインしたもう一つの維新~
    -
    徳川が構想した「近代」があった。 元号が明治に改元される5か月前、幕臣小栗上野介忠順が新政府軍に取り調べを受けることなく斬首されるという事件が起こった。後に大隈重信によって「明治政府の近代化政策は、小栗忠順の模倣にすぎない」とまで称された逸材である。 万延元年(1860)、小栗は、日米修好友好条約の批准書交換のために派遣された徳川幕府遣米使節の目付としてアメリカを訪れた。そこで目にしたのは工業化、近代化が高度に発展した大国の姿だった。小栗は、工場で手にした一本のネジとともに帰国。日本の近代化に着手する。横須賀に製鉄所、築地に日本で最初の本格的なホテルを建造し、さらには近代的な陸軍の創設にもかかわった小栗の歩みを照射することで、幕臣らによって進められていた「徳川による近代化」の全貌をひもといていく。 さらに、咸臨丸でアメリカに渡った遣米使節の一員だった秀才・小野友五郎など、ニッポン近代化の礎として活躍した幕府のテクノクラートの足跡を辿り、なぜ彼らの功績が埋没したかを検証。抹殺された歴史の真実を解き明かす。 ※この作品は単行本版『消された「徳川近代」明治日本の欺瞞』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 姉川忠義 北近江合戦心得〈一〉
    4.0
    第六天魔王・信長の首、頂戴つかまつる!  元亀元年(一五七〇)六月二十八日(新暦七月三十日)、浅井・朝倉勢と織田・徳川勢が激突した姉川の合戦が、弓の名人・与一郎の初陣だった。父・遠藤喜右衛門が壮絶な戦死をしてから三年、家督を継いだ与一郎と、郎党の大男・武原弁造は、主君・浅井長政率いる四百の兵とともに巨大な山城・小谷城の小丸に籠っていた。まさに風前の灯だった。長政には、信長の妹で正室の於市との間に、五歳の長女・茶々以下三人の女子があり、於市ら四人を織田方に投降させるという。だが、十歳の万福丸と乳飲み子の万寿丸は、信長とは血の繋がりがない。信長は決して男児を許すまい。万福丸を連れて落ち延びよ。主命とはいえ、浅井家が果てようという時に、自分一人生き残るなど、与一郎には、及びもつかない。だが、死にゆく主人から嫡男を託されて、古風も美意識も矜持も吹き飛んだ。浅井家再興がなるまで守り抜く。与五郎と改名させた万福丸を弟に仕立てて、小谷城脱出を決行する与一郎。供は、元山賊の頭目・武原弁造ただ一人。天正元年(一五七三)旧暦八月二十八日未明、三人は敦賀を目指して出立した。
  • 緑の花と赤い芝生
    4.0
    だれかにはなれない、永遠に。 大学院を修士課程まで修了し、大手飲料メーカーに勤めて独身のままキャリア街道をひた走る今村志穂子。本音を隠してでも夫や姑と「理想の家族」を築いていきたい桜木杏梨。まったく異なる27年間を生きてきた二人が、とあることをきっかけに一つ屋根の下で暮らすことになる。微塵もわかり合えない二人は、うまくいかないことがあるたびに苛立ちを募らせる。自分にとって本当に居心地の良い場所は、自分が素でいられる場所は、いったいどこにあるのだろう。家、職場、友達、恋人……それとも実家? 思い悩むたびにお互いの姿を思い浮かべるようになった彼女たちは、誰のためでもなく自分のための答えに辿り着く。解説は、作家の寺地はるなさんです。
  • うらさだ
    4.0
    デビュー50周年を彩る豪華面々のさだ論! さだまさしの「うらの顔」を知る知識人たちによる「さだ論」が待望の文庫化! デビュー50周年特別企画として、グレープの吉田政美が結成と解散にまつわる裏話や再結成をめぐる悲喜こもごもを初披露! コンサート回数は日本一の4600回超。作った曲は600曲以上。著書はベストセラー。かつて背負った借金は35億円。 何より「さだまさし」によって人生が変わったという著名人は多い。 彼らの証言から「さだまさしの秘密」を探る。 案内人は寺岡呼人。 主な内容は以下の通り。 ●笑福亭鶴瓶×立川談春 「談志も嫉妬したトークの腕」 ●高見沢俊彦 「しゃべりにギターをつけさせられた」 ●鎌田實 「『病』を世間に伝播させている」 ●小林幸子 「『小銭ならある』と楽しませる人」 ●ナオト・インティライミ 「アラファト議長との共通点」 ●カズレーザー 「焼きたてのトーストみたいな存在」 ●泉谷しげる 「個人的な『ため息』を表現」 ●レキシ 「破天荒な生き方は初期衝動のため」 ●若旦那 「さだまさし=親父」 ●堀江貴文 「『1兆人に1人』のレアな価値」 NHK『生さだ』の「テレビじゃ言えないうら話」も収録! ※この作品は単行本版『うらさだ』として配信されていた作品の文庫本版です。 (底本 2023年7月発売作品)
  • ラーメン らーめん ラーメンだあ!
    3.5
    あなたの心を潤すラーメン小説、召し上がれ。 うだつのあがらない営業マン、青木義昭は38歳にして独身である。最低限の生活を維持するためだけに会社に通い、リストラもちらつかされている。生き甲斐は一つ、ラーメン食べ歩きだ。 ある日、人目を避けるように佇むお店「おおきた」で、運命の一杯に出会う。スープは限りなく澄み、数切れのメンマと厚みのある炙ったチャーシュ、さらには4種の葱が浮かぶ。純手打ちの中細の麺はしなやかな弾力と、豊かな小麦粉の風味と甘みを感じさせた。 旨い!!! この日を境に恋も仕事も、人生が一変する。青木は、「おおきた」で生まれた縁から、居酒屋チェーンの新ラーメン開発に携わることになったが――。 これまでに9800杯以上のラーメンを食したという「ラヲタ」(ラーメンオタク)の著者が書き上げた本作は、ラーメン小説でありながら、サラリーマン小説でもある。 〈住民票は会社に置くけれど、本籍はラーメンにある。これは相当の覚悟がないとできないことだが、そんなことは億尾にも出さず、淡々と趣味を真っ当する。(略)青木の言動を見ているとそれがサラリーマンの新しいスタイルだと思ってしまうのだ〉――dancyu編集長・植野広生氏(解説)
  • ウシジマくんvs.ホリエモン カネに洗脳されるな!
    3.4
    最強タッグによる「ヤバすぎ」人生指南本! 裏社会の最恐経営者ウシジマくんと、希代の実業家ホリエモンによる「異色のコラボ作」が待望の文庫化! 「奪(と)るか、奪られるか」――弱肉強食の色合いが日に日に濃くなる現代社会。人生の岐路に立つ人々が「奪られる側」ではなく、「奪る側」になるために必要なこととは!? ベストセラーのダークヒーローマンガ『闇金ウシジマくん』の個性豊かな登場人物たちが、作中でふと漏らす言葉の数々から、ホリエモンがこの世の「絶対の真理」を読み解き、人生をより良い方向へと導くための具体的な方策を過激に提言!! ●小利口になるな、バカになれ! ●先生や上司の教えを疑え! ●デキない仲間は切り捨てろ! ●働くな、遊べ! …etc. ホリエモン的「最強の生き方」と、ウシジマくん的「最恐の稼ぎ方」に、意外な共通点があった!? さらに、文庫オリジナルとして、『闇金ウシジマくん』作者・真鍋昌平氏とホリエモンの対談を特別収録! 大人気コミックの製作秘話や新時代の稼ぎ方など、ここでしか読めないウラ話が満載!! ※この作品は単行本版『ウシジマくんvs.ホリエモン 人生はカネじゃない!』の文庫版となります。
  • 十津川警部 南紀オーシャンアロー号の謎
    4.0
    トレインジャックした主犯の男の正体は!? 京都を出発した特急オーシャンアロー17号。その列車には、次期駐日大使のウィリアム・コテッティ、その夫人と娘、それに白浜に向かう十津川警部の妻直子と叔母の美津子も乗車していた。異変に気づいたのは、美津子だった。停車予定の天王寺を通過したのだ。直子は、十津川警部からの電話でそれを告げた。  そして、犯人と称する男が外務省に電話をしてきた。神木昌幸とそのグループと名乗り、トレインジャックしたとしてコテッティ一家の身代金として日米両国で合わせて10億円、ほかの100人を超す乗客乗員の身代金として、JP西日本に対して10億円を要求してきた。  そのうち、その列車には生け花の小暮流家元、小暮龍園が乗車していること、主犯格がフランスの外人部隊にいて、ギニアで政府軍に雇われて反政府ゲリラと戦っていた高木健介という男であることがわかった。そして、アメリカ政府は、ギニアのアメリカ大使射殺は高木の仕業と見ておりアメリカ軍も動き出してきた。さまざまな思惑が錯綜する中、十津川は犯人逮捕と乗客の安全確保の双方ができるのか――。  クライマックスまで一気読みの、スリリングな長編ミステリー!
  • 六条御息所 源氏がたり 上
    3.5
    林真理子、衝撃の『源氏物語』新解釈!  帝の子として生を受けた主人公、光は、生まれたときから“みたこともない美しい若君”と呼ばれ、宮中の女性たちの脂粉に囲まれて成長する。幼くして母と死に別れた後、臣籍に降下され源氏の性を与えられた光。やがて左大臣の娘、葵の上と結婚するが、その頃から様々な身分の、様々なタイプの女性たちとの関係に明け暮れる。そしてついには、母に生き写しといわれる、父=帝の妻、藤壺とも関係を持つに至った光。その藤壺が産んだ子は・・・幼い頃の光に、うりふたつであった。  平安時代中期の京都を舞台に描かれた、紫式部による、世界最古にして最高の恋愛大長編小説を、恋愛小説の神様=林真理子が再構築し、現代的アレンジを加えることによって誕生した“小説版源氏物語”の前編。原書での第一帖「桐壺」から第十三帖「明石」までを中心に構成。  これまで、日本文学史上の数多の文豪が手がけてきた“源氏物語の訳”ではなく、大胆な章立ての変更。さらには、本来登場人物のひとりにすぎなかった六条御息所の“ひとり語り”という革新的手法を用いることによって、世界的古典文学の名作が、現代人にとってリアルに楽しめる、光源氏を巡る性愛の一大活劇となった!
  • 赤道 星降る夜
    4.2
    真実から生まれた、命の重さを問う人間賛歌。  ブラック企業に追い詰められ多額の借金を背負った達希(27歳)は発作的に飛び降り自殺を図り、15年前に死んだ祖父の霊に助けられる。祖父は生前心残りの「人探し」を一緒にすることを条件に隠し財産で借金の肩代わりを提案。  そこから祖父の霊とのボルネオへの旅が始まる。そこで出会ったのは、個性豊かな人々と悲惨な戦争の記憶。将校でも戦闘機乗りでもない大多数を占めた一般兵士の彼らの戦死とは、飢えや伝染病で命を落とす悲惨なものだった。  やがて一行は赤道の街に到着。そこには、この旅に祖父が託した本当の目的が隠されていた。今まで決して口にすることのなかった、「知られざる謀略事件」とは・・・・。そして、そこに隠された,祖父の過去にまつわる真実とは・・・・・。
  • 運命のひと
    4.5
    忘れ得ぬ人と映画の思い出を叙情豊かに描く。  岩瀬修は63歳。今は文具会社の経営陣に収まっている。彼には、昔夢中になった任侠映画にまつわる忘れられない思い出があった。初めて観たのは中二のとき。すぐに高倉健のファンになった。映画を観たいがために稼業の飲み屋を手伝うようになり、周囲からはヤクザと煙たがられている中間のおっちゃんと仲良くなる。そして、心臓が悪い従姉妹の弥生が、近くの県立病院に入院してきた。学校に通えない弥生のために、修はプリントなどを届けに行くようになった。弥生は優秀で本好き、しかも絵を描くのが抜群に上手い。ケンカもしながら、親しくなっていく。任侠映画と二人との出会いを経て、修は大学進学のため東京へ――。人生の荒波に漕ぎ出し始めた。  任侠映画に、そして主人公達に夢中になった青春時代。たかが娯楽映画、でもそうではなかった。あの頃の出会いがあって、今の自分がいることを、切ないエピソードとともに感じるのだった。  ノスタルジックでハートウォーミングな、小説版『ニュー・シネマ・パラダイス』! ※この作品は過去に単行本として配信されていた『銀幕の神々』 の文庫版となります。
  • 小森谷くんが決めたこと
    3.0
    余命2か月と言われて生き残っちゃいました。  波瀾万丈な人生を送ってきたドラマの主人公のような人物ではなく、どこにでもいる普通の男子の物語を書いてみよう――。  作家との話し合いの末、編集者が連れてきたのは三十代前半の会社員。しかし、話を聞いてみると、彼の半生はちょっと普通とはいいがたいものだった。  愉快だった小学生時代。暗黒面に落ちた中学生時代。悪友とのおバカな高校時代。美容師の女性と初めてきちんとした交際をした大学時代を経て、紆余曲折の後、憧れの映画会社に就職が決まる。  しかし、そんなある日、彼は余命2か月、末期がんであることを告げられてしまう。
  • 未完の贈り物 「娘には目も鼻もありません」
    4.8
    衝撃の話題作、ついに文庫化! 〈誕生〉 2003年、ニューヨークの産院で生まれた長女・千璃(せり)ちゃんは、いくつもの障害を持っていた。 〈葛藤〉 目、鼻、脳、心臓の相次ぐ検査。先の見えない中、両親は周囲の人々の反応に深く傷つくこともしばしばだった。 〈試練〉 生後10ヶ月で、目の中に義眼を入れるスペースを作る器具を入れる手術を受けて以来、千璃ちゃんは小さな体で8年間に26回の手術を繰り返すことになる。見えない、歩けない、話せない娘を育てながら前向きであり続ける母の、胸を打つ闘いの記録。
  • 千の命
    4.0
    江戸時代多くの命を救った男を描く傑作小説。  元禄十三年、二百石取りの彦根藩士の家に生まれた玄悦は母に厳しくされ、自分が実の子ではないと感じていた。下働きの八重が突然いなくなり、やがてその後呼ばれて八重を訪ねていくと、八重はおなかの子が出てこられずに苦しんでいた。八重が生みの親とわかった玄悦だったが、八重は亡くなってしまう。医者を志したが許されず、玄悦は独力で鍼や按摩の技術を習得し京都に出る。  そして同じ長屋の女性が八重と同じくお産で苦しんでいるのを見て、自らの技術で女性の命を救った。玄悦の技術は評判となり、自ら回生術と名付けた。また夜鷹など行き場のない女性が滞在するための家を借りた。一方、亡くなった胎児を時に傷つけ引きずり出すことを批判され、子供は苛められた。  ある日、商家の妾が難産でひどい扱いをされているのに激怒した玄悦は、その女性・お糸を引き取った。玄悦は、お糸にこれまでの女たちにはない感情を抱くようになる…。  上手くいかない三人の子供との関わりや妻のお信やお糸とのことに悩みながらも、多くの命を救った。山脇東洋を始めとする一流の医者たちからも、その技術を認められるようになった男の熱き生涯を描いた傑作小説。
  • 二度めの夏、二度と会えない君
    4.0
    2017年9月1日公開映画原作本! 突如転校してきた森山燐は不治の病を患っていた。 俺は彼女と共に、ライブを演り、最高の時間を共に過ごし…そして、俺は燐を失った。 俺に残されたのは、取り返しのつかない、たったひとつの後悔―決して伝えてはいけなかった言葉。 俺があんなことを言いさえしなければ、きっと燐は最後まで笑顔でいられたのに…。 二度めの夏。タイムリープ。 俺はもう一度燐と出会う。 ひと夏がくれたこの奇跡のなかで、俺は自分に嘘をつこう。 彼女の短い一生が、ずっと笑顔でありますように…。 映画化記念・書き下ろし短編「はじめての夏、一度めの花火」収録!! 本作の主役には数多くの作品に引っ張りだこの若手実力派・村上虹郎。 ヒロイン役にはパワフルなライブパフォーマンスで唯一無二の存在感を放つ吉田円佳(「たんこぶちん」Vo&Gt)。 その他、AKB48の次期エース候補の呼び声も高い加藤玲奈。 モデル・女優と幅広く活躍する金城茉奈。 映画・テレビドラマに出演作が目白押しの山田裕貴。 と、フレッシュなキャストが集結! 彼らの教師役に本上まなみ、そしてメンバーが通う楽器店の店主役として菊池亜希子がスクリーンを彩る。 二度と来ないひと夏を彩る、青春ストーリーの決定版(2017年8月発表作品)!
  • おれたちを笑え! わしらは怪しい雑魚釣り隊
    3.5
    ザコを求めて南へ北へ。 爆笑人気シリーズ!! 若狭だ奄美だ四万十だ!  結成から10年。隊長・椎名誠率いる雑魚釣り隊はテントかついで南へ北へ、ザコを求めて今日も行く。 今回狙うはカンパチ、アマダイ、マグロにヒメマス・・・・・・。おいおい、雑魚はどこいった。あげくの果てにはバリ島のフィッシングトーナメントにまで出場してしまう。 掟破り、身の程知らずの男たちを待ち受ける運命やいかに。 バカさ全開! 大人気爆笑釣行記シリーズ!! 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。
  • 絶望に効くブックカフェ
    4.4
    心が救われる、最強のブックガイド。 1900年前のローマ皇帝が綴った孤独から、ドストエフスキーの描いた嘘、カフカの渇望、そして村上春樹の自画像、角田光代の家族、吉田修一の恐怖まで、最近出版された本と、古典と呼ばれるものを2冊併せ読む書評エッセイ。『セックスボランティア』で鮮烈なデビューを飾り、『ウスケボーイズ――日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞を受賞した著者の、人間の深部を見つめる鋭い視点で、100冊の名著の魅力が語られる。 「古代から書かれ、読まれ、受け継がれてきた本。いつもそこには同じ絶望を持った人がいる。人が生まれ、絶望し、希望を持ち、死んでいく。幾億回繰り返されてきたその営みに、私たちは支えられている。間違いなく、絶望に効く何よりの特効薬は本である。ようこそ、絶望に効くブックカフェへ」(「はじめに」より)
  • ビートルズを呼んだ男
    4.0
    ビートルズを日本に呼んだ伝説の男とは。 「彼みたいな男が本当の日本人だ」とポール・マッカートニーが評価した伝説のプロモーター、永島達司。1966年に武道館で熱狂のコンサートを行ったビートルズを日本に呼んだ男が彼だった。米軍回りのバンドのマネージメントから始め、ナット・キングコール、ルイ・アームストロング、ボブディラン、カーペンターズ、イーグルス、マドンナ、マイケル・ジャクソンまで。世界の最高峰のミュージシャンの来日を成功させた男の人生を追って、ノンフィクション作家野地秩嘉が国内外を徹底取材。ポール・マッカートニーの独占取材も収録。ビートルズ来日50周年記念刊行の傑作ノンフィクション。(2017年4月発売作品)
  • ポケットに物語を入れて
    3.5
    〈本〉が〈物語〉が、私たちを呼んでいる。 《新刊書店で、あるいは古本屋で、作者も作品名も聞いたことがないのに、興味を引かれる本に出合ったとする。その本は確実に私を呼んでいる。手にとってしまう。レジに持っていってしまう。帰りの電車のなかで読み出して、びっくり仰天する。著者もタイトルも知らなかったことが不思議に思えるほど、自分にぴったんこの本なのだ。》 ネットよりもリアル書店を愛する著者が、心に残る本の数々を紹介する見事な読書案内。 宮沢賢治・太宰治から開高健・池澤夏樹に始まり、佐野洋子・山田太一、そして江國香織・井上荒野まで、「思わず読みたくなる」名エッセイ50篇を収録。
  • スープの国のお姫様
    4.0
    謎解き×薀蓄が美味しい6皿のスープの物語。 元料理人の僕は、別れた恋人から奇妙な仕事を紹介される。それは、湘南に建つ古い屋敷で、一人暮らしの高齢のマダムのために、毎晩一杯のスープを作ること。報酬は破格だった。 屋敷で、僕はマダムの孫娘である風変わりな美少女・千和に出会う。両親を事故で失くした千和は心を閉ざしていたが、母の遺した料理本を愛読し、古今東西の料理について膨大な知識を持っていた。幼い頃に母と離れ離れになった僕は、千和に自分と似たなにかを感じ、二人は少しずつ心を通わせていく。 終戦後に食べた想い出のポタージュ・ボンファム、ビールのスープ、画家ロートレックが愛したスープ、偽ウミガメのスープ、せかい1おいしいスープ……。僕と千和は力を合わせて、無理難題のようなリクエストのなかに隠された“謎”を解いていく。 そしてついに僕は、ずっと探し続けてきた「母と最後に食べた想い出のスープ」の手がかりを見つけるが――。 哀しみから再生し、明日を向いて歩む力をくれる6皿のスープの物語。
  • 大脱走
    3.9
    「オケ老人!」作者が描く新しいお仕事小説。 中堅よりやや落ちるレベルの女子大を卒業した片桐いずみは、就活で大苦戦し、ようやく住宅リフォーム会社に内定した。しかし、入社早々、理不尽に怒鳴りまくる部長・大木田の姿を目にして生ぬるい空気が一変する。 それから、3年。なんとか社内でのポジションをキープしながら鬼の飛び込み営業を続けていたある日、片桐に新人の部下が付く。だが、これが、前代未聞のとんでもないやる気のない男だったのだ。連日連夜、超絶無気力新人・俵の教育に骨を折るものの、一向に改善の余地は見られない。業を煮やした大木田はある策に出るのだが――。
  • いつの日も泉は湧いている
    -
    1969年高校生も政治の季節を生きていた。 6年ぶりに連絡をとった冨士真生子は、ニューヨークでの生活を引き払い、3週間前に帰国したばかりだった。中南米を舞台に報道写真を撮り続けてきた彼女だったが、折から東日本大震災が起きると、旧交を暖める間も無く、現地に飛んだ。9か月にわたる取材成果を披露する会場に現れた彼女はすっかり痩せて、人生の重大な局面に立たされていることを感じさせるのだった。 真生子とは、いまから40年以上も前、高校生の時に出会った。当時学生運動の波は高校にまで押し寄せてきており、彼女は市内の女子高に通う1学年上の活動家だった。そして、15歳のぼくは、彼女に淡い恋心を抱いていた。 ぼくは綴る、彼女の命を見つめながら、悲しみと痛みにみちた青春の日々を、そして輝ける人生の瞬間を。
  • 黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」
    3.5
    情報フィクサー“兜町の石原”とは何者か。 借金の取り立てで住吉会に囲まれ、検察の予定調和捜査に噛みつき、リクルート江副浩正に意見し、内調と警視庁になぜか頼られ、中川秀直愛人醜聞では右翼と共闘し、『噂の眞相』に助け船を出し、銀座のクラブに巨費を落とす。 ――こんな男が実在した! 情報誌『現代産業情報』発行人・石原俊介は、メディアには絶対に出てこなかった「陰の情報フィクサー」。腕と度胸で成り上がっていった男の封印された半生を、気鋭のジャーナリストが初めて明らかにする!  日本の裏面史をあぶり出す傑作ノンフィクション、ついに電子化!
  • ルドヴィカがいる
    3.0
    言葉の迷宮と異境を体感する超感覚ミステリ。  だめだ。ダサい。この文体は美学的に許せない――。  小説家の伊豆浜亮平は文体や言葉づかいに独自のこだわりを持っている。ただ、この5年間はヒット作にめぐまれず新作刊行の見通しも微妙で、3年前から始めた女性誌のライター業でなんとか食いつないでいた。世界的な天才ピアニスト荻須晶へのインタビュー取材をきっかけに、そんな小説家が出会ったのは、独特の話法で言葉を操る不思議な女だった。  初めて遭遇した場所は、軽井沢にある荻須晶の別荘近く。純白のワンピース姿で森の中を一人でさまよう彼女は、薄い唇を開いて確かにこう言った。 「社宅にヒきに行っている人とその恋人の方ですね。ラクゴはミています」  社宅にヒく? 引く? 牽く? だめだ、まるで意味がわからない――。  彼女の話す言葉にどんな意味があるのか、そもそも彼女はどうしてそんな話法を駆使しているのか。混乱する小説家をよそに、彼女の言葉はつづく。 「私はその中心を走っていたところです。将来、社宅で打ち合わせしますね」  言葉の迷宮をさまよう小説家は、やがて執筆中の小説の内容にも通底した“もうひとつの世界”に導かれてゆく。――著者真骨頂! 異境を体感する超感覚ミステリ長編!
  • 極卵
    3.8
    食の安全を問い糾す、衝撃ミステリー作品! 天使の卵か悪魔の卵か……。 吉祥寺にある有名自然食品店で売られている卵は、極上の味、『極卵(ごくらん)』と呼ばれて大人気の商品だった。しかし、この極卵を原因とする、食中毒事件が発生。時間がたつうちに幼児の感染者が次々に死亡していく。餌、衛生管理は完璧だったはずなのになぜ汚染されたのか。 疑惑を追い始めた元新聞記者の瀬島桐子。桐子の同級生だった野々市純子の長男も中毒患者のひとりに。純子はカリスママダムといわれブログ上では著名な存在だった。被害が拡大していくなか、過激なまでに業者を糾弾していくモンスター消費者の広告塔に祭り上げられる純子。話題性抜群と、事件を煽る新聞、テレビメディア各社。そして事件の裏には遺伝子組み換え食品を手がける大企業の影が……。 偽装食品、遺伝子組み換え食品など時代を揺るがす事件が多発する現在、食品の安全とは何かを鋭くえぐる社会派ミステリーの登場。「これは、私の最高傑作」著者仙川環が言い切る傑作ミステリー作品。
  • 大江戸恐龍伝 一
    4.0
    龍に導かれた平賀源内の時空を超えた冒険譚。  物語の発端は、明和八年(1771)。平賀源内がゑれきてるを世に送り出す5年前のことである。時に源内44歳。高松藩を脱藩し自由の身となっていた源内は、大嵐のなか、肥後で巨大な龍骨化石に遭遇。その存在を暴こうと野心に燃える。  同じ頃、遠州沖で一隻の船が遭難した。船頭たちは、漂流してやっとたどりついた島で、見たこともない巨大な爬虫類に襲われてしまう――。  その後、大坂で円山応挙とともに龍の掌を見に行った源内は、それを祭る寺の法主から、その昔、龍の掌を龍宮から持ち帰ったという男の話を聴くことになる。  京で若き日の鬼平・長谷川平蔵や上田秋成にで会い、この頃から、源内は龍に導かれるように、不思議な事件に巻き込まれていくのであった。  構想から完結まで20年の超大作。全六巻の一、二を同時刊行。
  • 闇を叩く
    3.0
    人気アーティストの知られざる下積み時代! ドラムを叩きながら歌うという独自のスタイルで世の中の度肝を抜き、いまも変わらぬハイトーンボイスで人気を誇るアーティスト、稲垣潤一。小学校時代、初めて聴いたビートルズに衝撃を受けて音楽に目覚め、以来、中学、高校とバンド活動に明け暮れたといいます。 そんな稲垣少年は高校卒業後、就職先を1日で辞めて地元・仙台で「ハコバン」――キャバレーやディスコなどで生演奏するバンド――の世界に飛び込みました。 ハコバンは、プロではありますが、あくまでローカルでマイナーな存在。いくら実力があっても、必ずしもメジャー・デビューできるとは限りません。挫折し、傷つき、それでも前を見据えて一歩一歩歩んでいく姿を、懐かしの洋楽ナンバーとともに描いていきます。
  • 「仕掛人・梅安」のキーワード(小学館文庫)
    -
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 たかがミーハーとあなどるなかれ! 無類の梅安びいきである筆者が、池波文学のヒーロー「藤枝梅安」の足音をてがかりに、切絵図と名所図会で潜入する大江戸の旅。梅安が最初に見た江戸は?、どこに住んだか?、仕掛料はいくら?…梅安のすべてがわかる「追っかけ辞典」。百万都市江戸のざわめきと、梅安・彦次郎の心意気がよみがえる。
  • 華の人
    -
    明治大正に生きた名門窯元夫人の鮮烈人生。 有田焼が誕生してから2016年で400年目。その節目を前に、名門窯元に嫁いだ女性の鮮烈な生き方を描く。 東京の女学校に通うモダンガールが大恋愛の末に嫁いだ先は皇室御用達の名門窯元だった……。 大正13年に佐賀県有田町の駅に降り立った一人のモダンガール。手にはバイオリンを携え真っ赤な薔薇のコサージュをつけた幅広の帽子をかぶっていた。 「それはまるで天使が降り立ったようだった」 と町の人は噂した。 旭川の実業家の家に生まれ、東京の女学校で学ぶ敏子。恋に落ちた相手はパリ万博で金賞の栄誉に輝いた名門窯・深川製磁の2代目だった。女学生の身で妊娠。そして21歳で有田の深川家に。自由奔放な生き方を愛する彼女と激動の時代ゆえの試練。薔薇のように華麗に生きた彼女の31年の生涯を感動的に綴った小説。 人気エッセイスト伊藤緋紗子氏が執筆した初の小説作品。
  • おれたちを笑うな! わしらは怪しい雑魚釣り隊
    3.5
    抱腹絶倒釣行記、大人気シリーズ! たとえ小さな雑魚でも百匹釣れれば雑魚鍋だ!  椎名隊長率いる雑魚釣り隊は、今日も釣り竿かついで東へ西へと飛び回る。 狙うはゴマサバ、アイナメ、イカにタコ。もちろん雑魚は大本命。 堤防カラアゲに絶叫し、死に辛ソバでアヒアヒ化しながらも、男たちは釣り雑誌からのリストラ通達や、韓国・済州島のサバイバル釣り、真冬の海浜強化合宿といった試練に立ち向かっていく。 焚き火とビールの黄金時間に響き渡るのは、大漁を祝う歓喜の歌か、はたまた、ボウズを嘆く泣き声か――。 抱腹絶倒の釣り紀行。 【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。
  • がんフーフー日記
    3.4
    佐々木蔵之介×永作博美出演の映画原作! 長年の友人関係にあったふたりは、09年3月に入籍。川崎に新居を構えた。そして1か月後の4月に妊娠が発覚。どこにでもあるような新婚生活を過ごしていた。  ところが、体調不良を訴え続ける妻が検査を受けた同9月、腸に悪性の腫瘍があると、告げられる。リンパ節の転移もあり、第3期だった。そして妊娠9月目で、帝王切開で長男を1481グラムで出産。その後、妻の病状は、徐々に悪化し、抗がん剤治療などの副作用に苦しみ、実家の福島県いわき市に戻る。  友人たちのサプライズパーティーなどもあったが、10年7月に38年の生を閉じた。  「こんな闘病記があったのか」という読後感を思わず覚えてしまう、妻の最期を夫が描き取った「10か月の生の記録」。
  • 天上の花の雨(小学館文庫)
    -
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 鎖国状態のヤパン(日本)において、二十数年もの間キリスト教布教に務めたイエズス会の名宣教師フェレイラが、転んだ。そして彼は、こともあろうに隠れキリシタンを摘発する目明しになる。転宗ははたして本物か!? 神を棄てた者の心に平穏はあるのか? 人が生きるために神は必要なのか?  たがいに殺し合い、奪い合う現代の世に、神の救済と信仰のあり方を問う感動の問題作。
  • 満天の星と青い空
    4.0
    人気漫画家が描く「あれ」がない世界! 巨大な隕石が地球を襲う--。科学者は滅亡以外の選択肢を予見できなかったが、地球は奇跡的に、難を逃れた、かにみえた。  しかし、それは、かつてないレベルで金属を分解してしまう極小のバクテリアを地球上にもたらしてしまった。  修学旅行で京都を訪れていた沼田高校の生徒たちも、大パニックに巻き込まれる。そんななかで、ひとり、浮いている男がいた。真吾は、何を考えているのかわからない、喧嘩がメチャ強い男だが、一度も自分の心が「ドキドキしない」ことに不思議な気持ちでいた。  それは、未曽有の危機的状況においても、変りはなかったのだ。しかし、同じクラスの小動物のような女子、鈴音になぜか心を動かされてしまう。  みんなで自宅へ帰るべく、生徒たちは東へと進路をとるが、思わぬ出来事が彼らを待ち受けていた。
  • 当選請負人 千堂タマキ
    3.3
    本邦初!?の選挙エンタテインメント小説。  就職が決まらず落ち込んでいる阿部まりあは、千堂タマキから誘われて市長選のボランティアをすることになった。タマキは選挙プランナーで、今回無所属で二度目の挑戦になる鈴木眞寿候補からの依頼を受けていた。対立候補は、親子二代で市長を務める現職の辛島一郎。  選挙戦は、投票日までわずか10日間。  タマキは、まこと候補の演説の手の使い方から、演説で何を争点にするか、どこを訴えるのかなど、事細かに指導していく。  そのうちに、経理担当の女性が突然事務所に出てこなくなる。すぐに、彼女の名前で事務所に宅配便が届く。中身はいったい?  また、応援している鈴木まこと候補と同姓同名とほとんど同じ、「鈴木マコト」という第3の候補者が立候補してきた。彼女は、キャバクラ嬢でまこと候補との交際疑惑が!?  さらには、人気の前総理が辛島市長の応援演説にくるという情報が。  次から次へと訪れるピンチの連続に、タマキは巧みな対応で、プラスの方向に持って行く。  選挙の面白さ、難しさ、楽しさを全編を通して描いた、本邦初!?の選挙エンタテインメント小説。
  • チャイナリスク ある邦銀の挑戦(小学館文庫)
    3.3
    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 40年前ロンドンから一人の銀行マンが香港に降り立った。「香港支店を開設せよ!」。ここから中国進出の足がかりを得た三和銀行(のちの東京三菱UFJ銀行)は、その後10年にわたり、香港、深セン、広州、北京、上海へ現地取材を繰り返し、200人近い関係者へのインタビューを敢行した著者渾身のビジネス・ノンフィクション。中国ビジネス成功への鍵がここにある。 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字サイズだけを拡大・縮小することはできませんので、予めご了承ください。 試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
  • あやかしの小瓶
    -
    水底に沈んだ少女の名に始まるミステリー。 大ヒットした『偏差値70の野球部』の著者のデビュー小説集。 大正14年のある夜、「私」の祖父が住む秩父郡峰伊那村でダムが決壊、「波多野岬」という名の少女が犠牲になる。事故の翌年、祖父の家の納屋から、彼女が生前に祖父へ送った手紙を私は見つける。そこには、未来・過去・現在を定義する「クラウス曲線理論」なる小文が綴られていた。波多野の死にこだわる私は、波多野と同じ名を持つ少女「間中岬」とともにダムへと向かう。――ダムに沈んだ少女は、何を見ていたのか? 現実(うつつ)と幻想(あやかし)、「語り」と「騙り」の間を往還するミステリー「あやかしの小瓶」。 帝大を卒業したものの、不景気のあおりで定職に就けず、高等遊民(=フリーター)として毎日を無為に過ごす「ぼく」。酔い潰れた深夜、ぼくは中年男に拾われ、神田花町の居酒屋で丁稚になるが、恋人の「チヒロ」に打ち明けることができずにいた。やがて、居酒屋の入ったビルの取り壊しがニュースとなり、ぼくは得体の知れない波風に翻弄されはじめる。近代文学の香り漂う青春小説「簡単な生活」。以上2作を収録。
  • オウム裁判傍笑記
    3.8
    この裁判、あまりに面白すぎて、酷すぎる! オウム真理教が引き起こした一連の事件は日本中を震撼させ、前代未聞の犯罪を裁く「世紀の法廷」は、1996年4月、全国民注視のなかで開廷した。しかし、そこで繰り広げられたのは、あまりにも不可解で、あまりにも喜劇的な光景だった。そのとき、教祖はいかに振る舞い、弟子たちは何を語り、弁護人はどこにいて、裁判官は何を裁いたのか? そして、遺族が訴えたこととは? 8年間にわたり裁判を傍聴しつづけた著者が真実の法廷ドラマをつぶさに綴る!
  • 金脈 The OILSHOCK!
    3.0
    あの『下妻物語』の感動を再び!  西海岸のようにノーテンキな晴れ空。GRATEFUL DEADの『BOX OF RAIN』が流れている。空の下には開拓地を思わせるだだっぴろい荒野があり、畑があり、大草原の小さな家みたいな家がある。荒野には井戸のようなボーリング施設があるが、それらは全てツギハギの粗大ゴミを集めて作られた代物である。  その井戸の袂に、煙草をふかす老人。髪は長く、髭をはやし、サイケなチュニック姿の老人のその姿は明らかにヒッピー・スタイルだ。老人の横を首輪もない犬が何匹も走り、吠え、往来しているが老人はまるで頓着していない。老人が井戸を覗き込み「何をちんたらしている!」と怒鳴ると、井戸から泥まみれの少女がスコップと大量の土砂と共に出て来る。少女は採掘をしていたのだが、それに不適切なロリータ全開の身なり。少女は老人を思い切り蹴る。「ジジイ! 何で一人だけ怠けてるんだよ!」  少女の独白――「私は世界中で一番、このジジイが嫌いだ」
  • 俺の心臓は彼女にしか撃ち抜けない
    4.0
    「今日から俺は!!」人気漫画家最強の一作。 見た目どこにでもいる普通の高校生(妹属性のアニオタ)・杵屋孝志は、ある日、ふと下校途中に立ち寄った神社で超絶美少女の巫女・霞に出会う。聞けば、自分は神に選ばれたのだという。  なにかの悪戯か? 当然のごとく訝しむ孝志だったが、霞があまりに気になってしまい、どんどんと見えざる相手の思惑に巻き込まれていってしまう。  一方で、ふがいない生活を続けている中年サラリーマンにも、同じような出来事が出来していた――。
  • これで英語で旅行・留学できる
    -
    多くの人が英語を実際に使うことになるのが、海外旅行や留学です。「これで英語が使える!」シリーズの4冊目は、まさにこの2つがテーマ。旅行の準備、飛行機の搭乗から宿泊、そして美術館など各種のお出かけの旅行編。幼稚園から大学までの、勉強と試験から学校生活やクラブ活動などを網羅した留学編。さらには、旅先でのトラブルや、ドライブと病気・入院といった項目も加えました。簡単に覚えられる短文を多数収録。 目次 1.旅行 1:準備編、2:いざ出発、3:観光編/4.旅行先でのトラブル/5.ドライブ/6.運転・事故/7.幼稚園・小学校/8.勉強・科目/9.試験・受験/10.頭の良し悪し・評価/11.学校生活・行事/12.大学/13.クラブ活動/14.肌荒れ・アレルギー・日焼け/15.風邪・病院へ行く/16.病気・入院する

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  • これで英語で生活できる
    -
    「これで英語が使える!」シリーズ第3弾は、日常生活全般がテーマです。  朝起きてから、支度をして出かけて、帰宅してからくつろいで眠りにつくまで。トイレ・買い物・銀行・家事・子育てなどが、英語でできるようになりましょう。あいさつや天気の話、顔の表情やしぐさ、健康状態などのフレーズも多数収録しました。できるだけ会話を入れ楽しく読み進められるようにし、覚えやすいように短文を中心にしてあります。 目次 1.あいさつ・お礼・電話/2.天気/3.起きてから出かけるまで/4.通学・通勤/5.帰宅・家でくつろぐ/6.住宅事情・周辺の環境/7.銀行・借金/8.買い物に行く/9.家事/10.料理/11.家族・誕生日/12.子育て/13.子供の性格・しつけ/14.友達になる・喧嘩する/15.子供の遊び・ケガ/16.体型・体格・表情・しぐさ/17.健康状態/18.歯医者に行く/19.眼医者に行く

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  • 太陽の村
    3.5
    漂着したのは、理解不能の村だった。 「この村の秘密をしゃべってはいけない」 父親の定年を祝うハワイ旅行の帰りに飛行機事故に遭った坂木龍馬。 目が覚めると、家族とは離れ、ド田舎の村に漂着していた。電気・ガス・水道なし! 車すら走っていない。そこで暮らすのは、金太郎に、桃太郎。おまけに弥勒菩薩像の仮面をかぶった男まで現れる始末。田おこしや年貢、人身御供に仇討ち? なんて言葉まで聞こえてきた。どうやら日本語は通じるが、一体ここは、どこなんだ。ひょっとして、タイムスリップしてしまったのだろうか。本当にどうする俺。 やがて、主人公を待ち受ける究極の問いとは? 「文明と未開」の間に揺れる青年を直木賞作家が描く。 著者新境地のノンストップ・エンタテインメント!!

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  • 鳥かごの詩
    5.0
    特別付録、北重人エッセイを収録! 「人間生きていれば、消化しきれず心の奥に残してきたことの一つや二つはある」。 働くことも、生きることも、こんなに真っ直ぐだった。 時代小説に新たな地平を開いてきた北重人が描く、あの頃の風景、そこかしこにあった人情、そして青春。 昭和41年。東京は下町に、奇妙な新聞販売店があった。段ボールで仕切られた「鳥かご」と呼ばれる個室に住み込みで働くのは、風変わりな面々。配達先も癖のある住人ばかり。山形からやってきた受験浪人の康男は、初めての東京、仕事に悪戦苦闘し、恋や事件に巻き込まれていく。 “人生が動き出した時”を描いた、急逝した作家、渾身の青春譜。

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  • メイド・イン・オキュパイド・ジャパン
    -
    占領下の日本、音楽に魅せられた青春の記録。 敗戦後の「占領下の日本」で民間貿易が再開された1947年からサンフランシスコ講和条約が発効した52年まで、日本からの輸出品には「MADE IN OCCUPIDE JAPAN」の刻印を打たなければならなかった。そんな時代に青春の日々を生きた著者は〈メイド・イン・オキュパイド・ジャパンの申し子の一人なのだ〉。そしてこの本は〈アメリカびいきの、アメリカコンプレックスという悲しい性を払拭しきれない私の「センチメンタルで客観性を欠いた、自己確認のための回想」なのである。〉      * サツマイモ好きのアメリカ兵(1945)/ジェームス・カーンにもらったサンドウィッチ(1945)/「ベイスボール、ベイスボール」(1946)/シアーズ・ローバック(1948-50)/イッツ・マジック(1948-50)/歌うラグビー部員(1950)/進駐軍専用キャバレー福生<ローズ・マーダー>(1950-51)/ジョン・ウェインじゃあるまいし(1951)/ワゴン・マスターズ入団記念日(1952)/陸軍中野刑務所(1952)/アーニー・パイル劇場大行進(1953)/神々の住む家(1953-54)/定期入れのガールフレンド(1953)/ジャズ喫茶<銀座テネシー>(1954)/さて、それからというものは(1955~)     * 高校在学中から進駐軍まわりのバンドに入り演奏、1952年にワゴン・マスターズに入りリードボーカルとして活躍、レコードデビュー。歌手としてヒットを連発、その後俳優としても数多くの作品に出演。本書は一時代を築いたスターの唯一の自伝である。 本文中に和田誠の挿画16点を収録。装丁も和田誠。
  • 私たちは25歳で死んでしまう
    -
    この異常が、私たちの日常。 未知の細菌がもたらした毒素が猛威をふるい続け数百年。世界の人口は激減し、人類の平均寿命は25歳にまで低下した。人口減を食い止め都市機能を維持するため、就労と結婚の自由は政府により大きく制限されるようになった。そうして国民は政府が決めた相手と結婚し、一人でも多く子供を作ることを求められるようになり――。 結婚が強制される社会で離婚した夫婦のその後を描く「別れても嫌な人」。子供を産むことが全ての世の中で“子供を作らない”選択をした夫婦の葛藤を描く「カナンの初恋」など、異常が日常となった世界に生きる6人の女性たちの物語。
  • サラバ! 上
    4.0
    1~3巻748~792円 (税込)
    ベストセラー!第152回直木賞受賞作!  僕はこの世界に左足から登場した――。  圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。  そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
  • 城下町奉行日記 熊本城の罠
    -
    加藤清正が仕掛けた熊本城最大の謎に挑む! 「諸国の城を見聞してまいるのだ!」 江戸城の天守を再建すると言い出した八代将軍・徳川吉宗の鶴の一声で突然、御城奉行に任じられた旗本の一色駿之介。 許嫁・結実との祝言を挙げる暇もなく、中間の金作を供として、涙ながらに肥後熊本へ出立する羽目に……。 着いたら着いたで、公儀隠密に間違われるわ、人さらいに巻き込まれるわ、ついには藩主・細川家の御家騒動にまで足を突っ込むことになるわで……。 『城下町事件記者』で活躍する遊軍新聞記者・一色駿作のご先祖様が難事件の謎を叩っ斬る! 奉行から読むか、記者から読むか? 「城下町・一色家シリーズ」の江戸時代版!
  • 殺した夫が帰ってきました
    3.7
    やっと手にした理想の生活だったのに……。 都内のアパレルメーカーに勤務する鈴倉茉菜。茉菜は取引先に勤める穂高にしつこく言い寄られ悩んでいた。ある日、茉菜が帰宅しようとすると家の前で穂高に待ち伏せをされていた。茉菜の静止する声も聞かず、家の中に入ってこようとする穂高。 その時、二人の前にある男が現れる。男は茉菜の夫を名乗り、穂高を追い返す。男は茉菜の夫・和希に間違いなかった。しかし、茉菜が安堵することはなかった。なぜなら、和希はかつて茉菜が崖から突き落とし、殺したはずだったからだ。 戸惑う茉菜をよそに、和希は茉菜の家に上がり込む。改めて話を聞いてみると、和希は過去の記憶を一部なくしており、茉菜と一緒に暮らしたいという。茉菜は渋々それを受け入れる。 かつての和希はとても暴力的な人間だったが、いざ暮らしはじめると、暴力的な影は一切見られず、平穏な日々が過ぎていった。 しかしそんな矢先、茉菜のもとに一通の手紙が届く。手紙には一言だけ「鈴倉茉菜の過去を知っている」と書かれていて…… 記憶をなくし帰ってきた、殺したはずの暴力夫。謎めいた正体と過去の愛と罪を追う、著者新境地のサスペンスミステリー。
  • 無事に返してほしければ
    3.0
    連続誘拐! 翻弄される警察。  かつて川でおこった事故で行方不明になっていた長男を誘拐したという一本の電話が、平穏だったはずの一家に波紋を投げかける。あの日、川に行かなければ……。妻は不倫していたのか? あの子は自分の子なのか? 俺が殺してしまったのだろうか? 疑惑と後悔が渦巻く中、警察が待機している自宅から、長女までもが連れ去られてしまった。ヒステリックになる妻。立ち尽くす夫。無力な警察官たち。  やがて事件は思ってもみなかった展開を次々と迎えていく。まさに予測不能!一気読み必至。反転しながら連鎖していく誘拐が誘拐を誘う、連作ミステリー。 ※この作品は単行本版として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 小説 心が叫びたがってるんだ。
    3.9
    『あの花』チームが贈る、青春アニメ小説版。 言葉は人を傷つける――幼いころ、何気なく口にした言葉がきっかけで家族がバラバラになってしまった成瀬順は、突如現れた“玉子の妖精”にお喋りを封印する呪いをかけられてしまう。それ以来、トラウマを抱え目立たないように生きてきたのだが、クラスメイトの拓実、菜月、大樹と共に「地域ふれあい交流会」の実行委員に選ばれてしまった。さらには出し物に決まったミュージカルの主役にまで抜擢されて……。優しさゆえに本音を口にしない拓実、不器用だった過去の恋愛に悩み続ける菜月、甲子園を期待されながら肘を壊した大樹、それぞれが葛藤と苦悩を抱えながら成長への一歩を踏み出す、感動の青春群像劇。大ヒット映画「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」を生み出したスタッフが再び集結し、秩父を舞台に感動のドラマを繰り広げる劇場作品「心が叫びたがってるんだ。」を完全小説化。原画&劇中カットを収録したスペシャルカラー16ページ付き。
  • 彼女の存在、その破片
    -
    兄を殺した女? 彼女のことを聞きたいの? 〈僕〉は、失踪した恋人を探して彼女の生涯にかかわった男女を訪ね歩く。 「ルリは少女娼婦みたいだった。幼気(いたいけ)な、大胆な、ちょっと痛ましい」 「ルリを見ていると、心を鷲づかみにされる。うっかり油断すると、彼女の存在感に巻きこまれそうな感じなんだよ」 「るりは、本質的にこわいもの知らずな女なのよ」 「るりに触られると、どんなに疲れているときも、からだの隅々まで欲望で満たされた。どこまでも貪欲になれそうだった」 「るりはサーカスの綱渡りの少女、みたいな感じ? 安全ネットなしの」 彼らが語る、これが、あなたなの? それは彼らの心の、割れた鏡に映し出された、無数の破片のようだ。    * 何かの予兆のように、〈あなた〉の複雑な過去と、天才少年ピアニストだった〈僕〉の挫折と後悔に満ちた半生が響き合う。それから〈僕〉は、少しずつ〈あなた〉のもとに近づいていく。〈あなた〉の後ろ姿を見ながら少しずつ。そこには、僕のピアノ、少年時代の調べが響きつづける。
  • スパムリコール
    3.0
    『ゲノムハザード』と対をなす記憶ミステリ。  その日のことは忘れない――誕生日を迎える娘・真希が事故に遭って、病院に運びこまれたという知らせが。そのことを境にすべてが一変した。吉祥寺にある病院に娘は入院していなかった。妻・伊都子には連絡さえつかない。もちろん自宅にも妻娘は不在で、飼い犬までも姿を消していた。妻の謎めいた書置き以外は、保管しておいた預金通帳も実印も家の権利書も会社名義の貴重品も見当たらず、さらには二年前に起業した南新宿のオフィスもスタッフも、すべてが消え去っていた。突如として四十二年間の人生と自らの存在が奪われてしまったその日から、麻宮達彦の孤独な闘いが幕を開ける。  娘が通う絵画教室の画家、闇金融の取り立て、高校の制服姿の女、弁護士事務所の旧友、美術商の女、バーテンダーの男……誰ひとりとして信じられず、不鮮明な記憶と知覚崩壊に翻弄されるなか、やがて麻宮達彦本人に妻殺しの容疑がかけられる――。  ノンストップでたたみかけられる謎の果てに、主人公は“日常”を取り戻すことができるのか? 西島秀俊主演で映画化された著作『ゲノムハザード』と対をなす、記憶が崩れた男の闘いをサスペンスフルに描いた、司城志朗氏の傑作ミステリ!
  • 怨霊になった天皇
    3.9
    天皇は神にもなるが、怨霊にもなる! 125代に亘る世界最古の王室・天皇家。御簾(みす)の奥で平穏に続いてきたかに思える皇室だが、実は権力闘争や謀略など、壮絶なドラマが絶えなかった。暗殺、呪殺、憤死などで「怨霊」になったと信じられた天皇が何人もいる。歴代天皇はこれら「怨霊になった天皇」が日本国に祟らぬよう祀り、荒魂を鎮めて「神」にし、その絶大な霊力を現世に活かそうと考えてきた。ここには、天皇は民の安寧を祈り、民は皇室の弥栄を願うという他国には見られない王室と国民の近しい関係、つまり日本の国柄が見てとれる。 明治天皇の玄孫である著者が、崇徳天皇を中心に独特の視点から「天皇家の怨霊史」をひもとく。 あなたはご存じだろうか、崇徳天皇の800年式祭に昭和天皇が勅使を送られていたことを。そう、これは現在にまで続く天皇と怨霊の裏の歴史である。 発刊時、話題を呼んだ同書、待望の文庫版を電子化! 天皇は神にもなるが、怨霊にもなる!

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  • 星になれない君の歌
    -
    この涙を、私は一生忘れない。 「このまま死にたくなかったら、俺に協力して。お願い!」 夭折した幼馴染み・拓朗の幽霊に体を乗っ取られた都萌実は、あの世とこの世の境目に連れて来られてしまう。 生前ソングライターを目指していた拓朗は、片思いしていた人へ贈る歌を作っている最中に亡くなってしまい、どうしてもそれを完成させたいらしい。 幽霊という存在に恐怖が拭えない都萌実だったが、姉弟同然に育った拓朗に“お願い”と言われたら断れない。 こうして都萌実は拓朗とひとつ屋根の下、一緒に歌を作ることになり――。 幽霊となった幼馴染みと過ごす最期の日々。ラストは涙、感動の物語!
  • 処方箋のないクリニック
    3.6
    メスを入れるのは病気じゃなくて人間関係! 『感染』で第1回小学館文庫小説賞を受賞。医療ミステリーの第一人者仙川環が贈る新境地。 「こんな先生に診てもらいたい!」書店員さん絶賛の医療小説。 東京郊外にある古びた洋館。そこには先端科学では治せない患者と家族の「人生」を治療する名医がいる。凄腕、イケメンだけど、ちょっと変わり者の医師青島倫太郎。 目が悪くなったのに車の運転をやめない父。怪しげなサプリにはまる母。民間治療に心酔した妻……。そんな患者を持つ家族たちはどうしたらいいのか。スイーツと紅茶の香る古い洋館の診察室を訪れた患者と家族は、青島と話をするうちに、隠していた心の内を打ち明けてしまう……。 現代の赤ひげ先生が、鮮やかに患者と家族のトラブルを解決するハートウォーミングお医者さん小説。 ※この作品は単行本版『処方箋のないクリニック』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 落語小説集 子別れ
    3.5
    直木賞作家による、落語「人情小説」集! ●子別れ 腕の良い大工だが呑兵衛の熊五郎。呑み過ぎないよう妻のおとくに釘を刺されていたが、棟梁に前借りした50万円を、遊郭ですべて溶かしてしまった。愛想をつかしたおとくは、一粒種の亀吉を連れて出て行ってしまう。 ●景清 腕のいい鏨彫り物師だった定次郎は、目の病を患い、わずか半年で失明してしまった。かつての仕事への未練を捨てられず、目の病に御利益があるという赤坂の圓通寺の日朝さまに、願掛け参りを始める。 ●後家殺し 刃物研ぎ宿「研ぎ常」の親方である常吉の強みは、声の良さにある。義太夫の師匠中堀十元に、熱心に稽古をつけてもらっていた。天保三年六月、常吉は運命の女に出会う。 ●火事息子 蔵前天王町の大身札差・伊勢屋四郎左衛門は、従弟で質屋を営む伊勢屋藤右衛門の息子・藤三郎を溺愛していた。火消しに憧れる藤三郎のために、四郎左衛門は火の見やぐらを建設し、半鐘番に就けるよう根回しをした。 ●柳田格之進 彦根藩納戸役を免職となった柳田格之進は、浅草馬道の碁会所で質屋、万屋源兵衛と対局し意気投合する。対局はその後、万屋の離れにて行われることになり、二人の関係は、八月の十五夜まで盤石だった。 ※この作品は単行本版『後家殺し』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • お願いおむらいす
    3.0
    疲れた心に沁みる、美味しい連作短編小説。 ★「お願いおむらいす」  音楽への夢を捨てきれないまま、追い詰められて就職した太一。音楽雑誌の出版社に就職したはずが、全然違う仕事に就くハメに。それでも頑張ってしまうマジメな太一が気づく大切なこととは。 ★「キャロライナ・リーパー」  久しぶりに会う大好きな姉と疎ましい父親。突然聞かされた姉の悲しいニュースに、心は乱れる。対照的に歩んだ女性の生き方、悩みをホロ苦く描く。 ★「老若麺」  ラーメンの名店「紅葉」ぐるフェス店を任された天翔と崇。だが、どうしてもあの味を出せず客は集まらない。そんなとき事件が起こり、ある秘密が解き明かされることに。 ★「ミュータントおじや」  美優は自他共に認める崖っぷちアイドル。大ファンだという女子中学生と出会い、行きがかり上その子の面倒をみることに。自分を押し殺して生きてきた美優の思いとは。 ★「フチモチの唄」 50代後半にしてまさかのリストラになってしまった浩。大切な家族を守り切れない自分に苛立つ。最愛の母の命が長くないことを知り、彼が下した決断とは……。 秋のある日、「ぐるフェス」に集う人々の人生模様を生き生きと描く。心がほわっと温まる全5編。 ※この作品は単行本版『お願いおむらいす』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 後悔病棟
    3.7
    1~3巻759~803円 (税込)
    「過去に戻れる聴診器」を使ってみたら…。  33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルを貼られ、悩んでいる。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の心の“後悔”が聞こえてくるのだ。 「過去に戻って、もう一度、人生をやり直したい」  聴診器の力を借りて、“もうひとつの人生”の扉を開けた患者たちが見たものは――!? ●dream――千木良小都子(33歳) 母は大女優。「芸能界デビュー」の夢を諦めきれなくて… ●family――日向慶一(37歳) 俺はもうすぐ死ぬというのに、なぜ妻は金の話ばかりするのか。 ●marriage――雪村千登勢(76歳) 娘の幸せを奪ったのは私だ。結婚に反対したから、46歳の今も独り身で… ●friend――八重樫光司(45歳) 中三の時の、爽子をめぐるあの“事件”。俺が罪をかぶるべきだった。 この世の中の誰もが、「長生き」することを前提に生きている。 もしも、この歳で死ぬことを知っていたら… 家族、結婚、夢、友情。 女性から圧倒的な支持を受ける著者が描くヒューマン・ドラマ!!
  • 70歳のたしなみ
    5.0
    大ベストセラーが文字大きめで文庫化! “人生100年時代”の現代では、70代こそ人生の黄金時代です!「今さら」「どうせ」と自分をおとしめるのはもうやめて、若いうちから“黄金の70歳代”を迎える準備をしましょう。超人気ベストセラー『女性の品格』の著者が、《上機嫌にふるまう》《人は人、自分は自分》《若い人をほめる》など、人生の後半生をポジティブに生きる32の具体的なヒントを伝授。30代~90代まで男女さなざまな読者から「元気をもらった」「親にプレゼントしたい」「前向きに生きられるようになった」とたくさんのハガキやお手紙が届き、大反響です。  また著名人から次のような推薦の言葉も届いています。 ◎上野千鶴子さん(東京大学名誉教授)「『上機嫌』がいいですね。私も『明るい』『楽しい』老後より『機嫌よく』過ごす老後が目標です」 ◎あさのあつこさん(作家)「70歳になっても80歳になっても人としてのたしなみを生き方によって新しく得ることができることを教えてもらえました」 ◎三砂ちづるさん(津田塾大学学芸学部教授)「70代のための本かもしれないけれど、心安らかにその時を迎えられるよう、ぜひ70代より若い人にこそ読んでいただきたい」 ※この作品は単行本版『70歳のたしなみ』として配信されていた作品の文庫本版です。
  • 跳べ、栄光のクワド
    4.3
    伝説のフィギュアスケーターの真の姿とは?  日本のフィギュアスケーターなら誰もが目指す憧れの舞台、全日本フィギュア選手権。さらに、今回の大会はオリンピックの出場権がかかる、とても重要な試合。  そんな大切な試合の直前、男子ショートプログラムの2日前に、男子レジェンドスケーターが忽然と消えた。「ショートの試合の前には必ず戻りますから、探さないでください」という書き置きを残して……・。  レジェンドスケーターが全日本フィギュアを前に失踪!?  そこから物語はスタートする。試合のジャッジ、フィギュアを報道するアナウンサー、選手の身体をケアするトレーナー、選手にとって一番近い存在の母親、そして振付師。それぞれの目線から、彼について、そして今回の事件についての考察が始まる。次々とその波紋は広がっていき、それぞれの心に彼の姿、彼への想い、そして、新たな絆といえる感情が生まれていく。立場は違えど、共通するのは彼への熱い気持ち。また、「推し」をもつファンの心情も描かれる。  そして、渦中の彼の行方は……。  主役を支える人々のお仕事小説でもあり、人間ドラマでもあり、成長物語でもある。読後爽快な、スポーツエンタテイメント小説です。
  • からころも 万葉集歌解き譚
    3.7
    万葉集の歌の数々が味わえる!新シリーズ。  日本橋の伊勢屋で奉公する助松には、父親の大五郎がいた。しかし、一年半前に伊勢屋の仕事で富山に出かけたまま、行方不明になっていた。父は、助松に日記を残していた。このことは決して他人に話さないように言われた。日記には和歌らしきものがいくつも書かれている。  伊勢屋の一人娘しづ子は助松より六歳上で、和歌が好きで賀茂真淵に学んでいた。そして、店の大切な客人である占い師の葛木多陽人も和歌に造詣が深かった。多陽人は京都生まれの京都育ちで、回りがぽかんと見惚れてしまう程の美男子だった。 助松は、二人に事情を知らせずに日記に記された歌の意味を少しずつ、教わっていた。  ある日、体調を崩した大友主税という若い侍を助けたことがきっかけで、しづ子に和歌を学びに主税が訪れるようになった。しかし、主税がしづ子に近づいたのは別の理由があったのだった。  その後、しづ子は密かに姿をくらましてしまう。  大五郎としづ子の失踪には、関連があったのだ。  日記に記された和歌の数々には、どんな意味があったのか。  一連の謎は解き明かされるのか――。  万葉集の和歌が面白さが判る、新シリーズ!
  • 小倉昌男 祈りと経営~ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの~
    4.7
    ヤマト「宅急便の父」が胸に秘めていた思い。 2005年6月に亡くなったヤマト運輸元社長・小倉昌男。 「宅急便」の生みの親であり、ビジネス界不朽のロングセラー『小倉昌男 経営学』の著者として知られる名経営者は、現役引退後、私財46億円を投じて「ヤマト福祉財団」を創設、障害者福祉に晩年を捧げた。しかし、なぜ多額の私財を投じたのか、その理由は何も語られていなかった。取材を進めると、小倉は現役時代から「ある問題」で葛藤を抱え、それが福祉事業に乗り出した背景にあったことがわかってきた――。 著者は丹念な取材で、これまで全く描かれてこなかった伝説の経営者の人物像に迫った。驚きのラストまで、息をつかせない展開。 ※本書は過去に単行本版として配信された『小倉昌男 祈りと経営~ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの~』の文庫版です。
  • おれたちをまたぐな! わしらは怪しい雑魚釣り隊
    3.0
    進化も成長もしないまま遂にシリーズ第6弾。 おれたちが必死で釣った魚は、猫もまずいといって跨いでいく―― 米子の海岸で手作りテントを建設し、富山湾ではホタルイカ掬いに精を出す。 八丈島の堤防ではムロアジ大漁に歓喜の雄叫びをあげたのだが、秘島・青ヶ島ではなんと監禁状態に!  進化も成長もしないまま、遂にシリーズ第6弾! ※この作品は『おれたちを跨ぐな!~わしらは怪しい雑魚釣り隊~』(単行本版)の文庫版となります。
  • 永遠に解けないパズル
    4.0
    大ベストセラー作家の青春小説! いつの間に、ぼくらの目は曇っていくのだろう? 会えなくなるとわかっていても、ぼくは君を守りたかった‥‥。 その日、映画の脚本家になることを夢見ていたぼく(佐々時郎/ジロ)は、駅前通りの本屋さんで『ハリウッドで脚本家になるための近道マップ』という名前の翻訳本を立ち読みしていた。 600ページもある高価な本だったから、夏休みに入った最初の日から毎日店に通って、少しずつ全ページを読破する計画だった。 その日も本に没頭していると、急に肩を叩かれ、ぼくは飛び上がった。 (本屋の親父さんについに見つかった!) 恐る恐る振り返ると、そこに彼女がいた。 南川桃(モモ)。 同じクラスにいたけど、一度も口をきいたことがない女の子。 女子のヒエラルキーでも頂点にいるのが当たり前のようなその子が、そのあとぼくに頼んできたのは、伝記を書くことだった。 「伝記? 誰の?」 「わたしの」と、彼女は言った。 『いま、会いにゆきます』『恋愛寫眞 もうひとつの物語』『そのときは彼によろしく』『こんなにも優しい、世界の終わりかた』―― 市川拓司×小学館の大ベストセラー小説群に加わった傑作です! ※この作品は『MM』(単行本版)の文庫版となります。
  • 脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち
    3.7
    高齢化社会の将来を占う渾身ルポルタージュ。 一年中温暖、物価は日本の3~5分の1、やさしく明るい国民性、原発ゼロ、年の差婚当たり前。日本で寂しく貧しく苦しい老後を過ごすなら、いっそのことフィリピンで幸せな老後を送りたいと、日本脱出の道を選んだ高齢者たちは少なくない。はたして、老後の楽園はフィリピンにあるのだろうか。 果たして、現実は……。 恋人候補200人のナンパおじさん、19歳の妻と1歳の息子と、スラムで芋の葉を食べて暮らす元大手企業サラリーマン、東日本大震災を機に、東北から原発ゼロのフィリピンに移住した夫婦。ゴミ屋敷暮らしだった母親をセブ島に住まわせる娘、24歳年下妻とゴルフ三昧の元警察官。90歳の認知症の母親をフィリピン人メイドと介護する夫婦、「美しい島」で孤独死を選んだ元高校英語女性教師……。さまざまな「脱出老人」のジェットコースター人生を、開高健ノンフィクション賞受賞作家が、フィリピン&日本で3年間にわたり徹底取材した衝撃のノンフィクション。 「老後の幸せ」「人間の幸福感」とは何かを浮き彫りにする、話題作。 解説は、映画監督の崔洋一。 ※この作品は過去に単行本として配信されていた『脱出老人』の文庫版となります。
  • 小説王
    4.1
    小説をめぐる熱きドラマ、ついに文庫化。  大手出版社の文芸編集者・俊太郎と、華々しいデビューを飾ったものの鳴かず飛ばずの作家・豊隆は幼馴染みだった。いつか仕事を。そう約束していたが、編集長の交代で、企画すら具体的にならないまま時間だけが過ぎていく。やがて、俊太郎の所属する文芸誌は、社の経営状態から存続を危ぶまれ、豊隆は生活すら危うい状況に追い込まれる。そんな逆境の最中、三流編集者と売れない作家が、出版界にしかけた壮大なケンカの行方は!?  小説の役割は終わったのか? 物語に生かされたことはあるか? 単行本刊行時、作家・編集者・書店員の方々など業界の内外をざわつかせた問題作が、ついに文庫化。 『イノセント・デイズ』で大注目の作家が放つ、小説をめぐる、男たちの熱きドラマ!!
  • 緑と赤
    4.7
    ふたつの国の狭間で揺れる、迷う、恋をする。 二〇一三年の夏、在日韓国人の大学生・知英はパスポートを取得した。表紙の色を見て、改めて自分の国籍を意識する。町ではヘイトスピーチのデモに遭遇し、戸惑う。「なにじん」なのか、居場所はどこにあるのか、友人と分かり合えないのはなぜか。自分に問い続ける知英は少しずつバランスを失っていく。K‐POPファンの梓、新大久保のカフェで働く韓国人留学生のジュンミン、ヘイトスピーチへの抗議活動に目覚める良美、日本に帰化したのち韓国で学ぶことを選んだ龍平、そして知英。ふたつの国で揺れる五人の男女の葛藤と再生を描く。
  • 遙かなる城沼
    -
    人の絆の大切さを描いた時代小説。  館林藩の武士である村瀬家の長男惣一郎は、弟の芳之助や妹千佳、友人の梅次と塾や道場通いを続けていたが、成績優秀な芳之助が藩校に行くことになった。それを妬んだ幼馴染みの寿太郎たちが乱暴し、寿太郎は塾や道場を変え離れていった。父源吾は、罪人を逃したことで家禄を減らされていた。やがて、病に倒れた父に代わって、藩の仕事を行うことになった。  そんなある日、筆頭家老の岸田が殺された。表向きは病死とされた。背景には藩を二分する派閥争いがあり、源吾は牢破りの件もその内紛が関わりがあると、真相を告げたのだった。  やがて、浜田藩への国替えが決まる。子どもの頃から一緒だった綾を嫁に迎え、子どもも生まれた惣一郎は、主君の松平斉厚に従い、家族と浜田へ移った。そこに、生田万の元にはせ参じたまま音信不通となっていた寿太郎からの手紙が届く。そこには、故郷に帰りたいと書かれていた――。  家族や友情の絆の大切さを歌いあげた、長編時代小説。
  • 野村の遺言
    4.5
    野村野球の真髄、最初で最後の本格捕手論。 「キャッチャーは試合の脚本家。脚本がだめではいい作品は生まれない」と、名捕手不在のいまのプロ野球を憂う著者が、「これだけは言いのこしておきたい」ことは何なのか。 真のプロフェッショナルを知る著者が、これこそ捕手の醍醐味と言われる「配球」と「駆け引き」について、知られざるエピソードと勝負の法則、名捕手の条件を語り尽くす。 文庫版スペシャル「野村克也×山崎武司のぼやき&言いたい放題対談」を特別収録! ※本書は過去に単行本版として配信された『野村の遺言』の文庫版です。
  • ロンドン・デイズ
    4.7
    演劇人生の核となった、泣き笑い留学日記。  イギリスでの俳優教育の何百年にもわたる蓄積をもらってこようと、ロンドンのギルドホール音楽・演劇学校に留学することにした鴻上尚史氏。英語で行われる授業に備えてみっちり勉強し、準備は万全――のはずだった。が……、そこは、想像をはるかに超える“英語の戦場”だった!  日本ではすでに名の知れた演出家にして作家である著者が一念発起、39歳で挑んだ1年間のロンドン留学。聞き取れない英語に苦戦しながら、イギリスはじめ世界各国から集まった20歳前後の俳優志望者たちとともに、ぴちぴち黒タイツを身につけ、学校生活に邁進していく。真剣に“鬼ごっこ”をし、歌い、踊る。週末ごとに動物園に行き、そこで観察してきた動物の真似を大真面目に披露する。さらには布になったり、火になったり、新聞紙と一体になったり――。たまに演出家としての視点が顔を出すものも、あくまでも生徒に徹し、悩み、考え、イギリス流ワークショップに取り組んでいく著者の、素直で涙ぐましい姿が、独特のユーモラスな文体で綴られる。一方で、時折浮き彫りになるイギリスの階級制度や差別意識。そして、著者が思う、俳優という職業の厳しさと残酷さ、素敵さ。その後も演出家として日本の演劇界をリードする著者の心の原点となった泣き笑い奮闘記。若いクラスメイトたちとともに汗を流した、愛しい日々の記録である。  文庫化にあたり、文庫の装画も担当した、ラーメンズ・片桐仁との特別対談も収録。
  • 風の向こうへ駆け抜けろ
    4.0
    爽涙!スポーツ小説の大傑作、待望の文庫版を電子化!  芦原瑞穂(18歳)は地方競馬界にデビューした、数少ない女性騎手。敬愛する亡き父親への思慕から競馬界に身を投じた。だが、彼女の受け皿となったのは今にもつぶれそうな「藻屑の漂流先」と揶揄される寂れた弱小厩舎。そこにいる調教師、厩務員たちは皆それぞれが心に傷を抱え、人生をあきらめきったポンコツ集団だった。  弱小厩舎のため強い競走馬も持てず、さらなる嫌がらせを受け、困っていた矢先に出合った一頭の馬。虐待により心身共にボロボロだったこの馬も懸命な介護と歩み寄りにより、生まれ変わったかのような素晴らしい競走馬に変貌を遂げる。当初は廃業寸前だった厩舎も、瑞穂の真摯な努力と純粋な心、情熱から、徐々に皆の心は一つとなり、ついには夢のまた夢である狭き門、中央競馬の桜花賞を目指すまでになる。が、その行く手には様々な試練が待ち受ける。温かな絆でつながった彼らの運命は…?  偏見、セクハラ、虐待、裏切り、老い…。様々な理由から心に傷を抱え、人生をあきらめかけている人間達の起死回生ストーリー。人は何歳からでも成長できる、そして人生はやり直せる。すべての方々に読んでいただきたい、人生への応援歌となる1冊です。
  • 猿蟹 saru・kani
    4.3
    騙した奴から奪い取れ! コンゲーム小説。  蟹江静子は、老人ホームに入るために貯めた1千万円を、遠藤を首領とする詐欺グループに騙し取られてしまった。それを知った八原みちるは、蟹江に金を取り返そうと提案する。みちるは、以前悪人をターゲットにして金を奪っていた詐欺師だった。  昔の仲間を集めて動き出したみちるが、遠藤に持ちかけるのは投資事業。バイオ発電に金を出させて、遠藤の分も奪おうと言うのだ。そこに、みちるを昔から追う警視庁の染田刑事が身辺を嗅ぎ回ってきた。さらに、謎の女性“河原崎聖子”が登場! 一体勝つのは誰なのか。  ミステリー界の奇才による、書き下ろしコンゲーム小説!
  • エストロゲン
    3.7
    “女の賞味期限”はいつまでか。 女はいくつまで女でいられるのか、いくつからが中年なのか。やり残したことを探し始めた時? できなくなったことを嘆く時?   主婦になり不妊治療をあきらめてカフェのパートに励む千乃、バツイチとなっても義母と同居し2児を託して証券会社に勤務する泉、起業家と結婚し専業主婦として2児を育てる真子。 大学時代の友人だった彼女たちが47歳の夏に再会した。更年期や子供との関係に悩む一方で、新たな恋や先の見えない恋に陥りながら、女としての残りの人生を考える姿を描く。
  • かみがかり
    3.8
    髪型を変えれば、人生は前向きになる!  学校職員の須川沙紀は、気が弱くて後輩にも強いことがいえない性格で、仕事はできるのだが回りからなめられていた。しかも、ワンマン経営を行っている理事長の命令で、架空の議事録作成もさせられていた。これは、理事長の横領や背任を正当化することになっていた。思い切って髪形を変えようとした沙紀は、初めての理容店に行ってみる。睡魔に襲われて起きた沙紀の眉毛は、これまでと違ってきりっと細く吊り上がっていた。すると、周囲の人間の反応が変わってきた……(「眉の巻」)。  ひとり暮らしの岩瀬かえでは、帰宅したマンションで泥棒と鉢合わせしてしまう。恐怖の中で犯人は撃退したが、その日は会社の同僚の家に泊まった。翌日、自宅の錠を変えベランダに防犯対策を施したかえでは、髪形を変えることにした。雨に降られて雨宿りしたのが理容店だったため、そこで髪を切ったのだが、気持ちよく寝ているうちにオドロキの髪になっていた ……(「守の巻」)。  仕事で追い込まれている人も、私生活が冴えない人も、髪形を変えれば人生は前向きになる!ある町の女性理容師の店で始まる、胸のすくような6つの物語。『わらの人』を改題しました。
  • 共震
    3.9
    『震える牛』『ガラパゴス』著者の原点!  大和新聞東京本社の遊軍記者である宮沢賢一郎は、東日本大震災後、志願して仙台総局に異動する。沿岸被災地の現状を全国の読者に届けるため、「ここで生きる」というコラムを立ち上げた。そんななか、宮沢とも面識のある県職員が、東松島の仮設住宅で殺害された。被害者の早坂順也は、県職員という枠を越えて、復興のために力を尽くしてきた人物だった。早坂は亡くなる直前まで、被災地の避難所の名簿を調べていたという。  舞台は、石巻、釜石、陸前高田--。著者渾身の鎮魂と慟哭のミステリー。
  • わたし、型屋の社長になります
    4.0
    会社再建に奮闘する女性社長のお仕事小説!  広告代理店のOLだった花丘明希子は、脳出血で復帰できなくなった父親に替わって、花丘製作所の社長になった。しかし、会社は大幅な売り上げ減で、銀行からは借入金の返済を求められ、融資に駆け回ることに。また、同業者からの引き抜きで、5人の社員が去って行った。  そんなときに、大手の山洋自動車から連絡が入った。いったんは、ライバル企業に発注されていたラジエターキャップに不備があり、仕事が回ってきたのだ。 しかし、技術的にクリアしなければいけない大きな課題が立ちはだかっていた。 駄目なら、さらに手を掛ける。不可能を可能にするまで。  社員の総力を結集しての努力は実るのか。  ひたむきに取り組む女性社長の奮闘と、製造業の心意気を描いた、中小企業応援小説!
  • 日本国憲法 検証 1945-2000 資料と論点 第3巻 国会と政治改革 (小学館文庫)
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    【ご注意】※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 国民こそ政治の主人公である。この「国民主権」の理念が、どこまで実際に機能しているかが、日本国憲法の運用上における最大テーマであったといっても過言ではない。立法府の優位性は守られているか? 果たして国会は生きているか? 現今の焦眉の課題=政治改革を見据えて、憲法の根本原理を検証する。
  • アンダーリポート/ブルー
    3.8
    衝撃の結末が加わった傑作長編小説の完全版。  15年前、ある地方都市のマンションで男が撲殺される事件が起こった。凶器は金属バット。死体の第一発見者は被害者の隣人で、いまも地方検察庁に検察事務官として勤める古堀徹だった。事件は未解決のまま月日は流れるが、被害者の一人娘・村里ちあきとの思わぬ再会によって、古堀徹の古い記憶のページがめくれはじめる――。  古堀は事件当時、隣室に暮らすちあきの母親・村里悦子と親しい間柄だった。幼いちあきを預かることも多く、悦子が夫の暴力にさらされていた事実や「もし戒める力がどこにも見つからなければ、いまあなたがやろうとしていることは、あやまちではない」という彼女の人生観に触れる機会もあった。その頃の記憶にはさらにもう一人の女性の存在もあった。女性はある計画について村里悦子を説得したはずだ。「一晩、たった一度だけ、それですべてが終わる」と。  よみがえる記憶を頼りに組み立てたひとつの仮説――交換殺人という荒唐無稽な物語が、まぎれもない現実として目の前に現れる! サスペンスフルな展開に満ちた長編小説『アンダーリポート』に加えて、新たに衝撃的なエンディングが描かれた短編小説『ブルー』を初収録した完全版。
  • 裏切り
    4.1
    壊れかけた夫婦が憎悪に染まるサイコノベル。 壊れてしまった夫婦関係を修復しようとする妻が、夫の不倫に気づく。許せない。夫も、相手の女も。そして、憎悪に燃える妻に、一方的な愛を傾ける男が現れた。夜のカウンターバーで二人が出会った瞬間、運命の歯車は大きく動いた。ゆがんだ愛情が破局に向かって突き進む……。『喪失』でベスト北欧推理小説賞を受賞した実力派女性作家が、男女の心の奥底を緻密に描いて新境地を開いたサイコサスペンスの秀作!

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