タイトルに惹かれて手に取ったが、各章の女性の何処かしらには共感してしまい、後ろめたいのにページを捲る手が止まらなかった。
物語の終盤において、須藤さんは働かなくても庇護される立場だから、聖人のように赦すことができたのでは、と最初少し思ってしまった。(そんな自分を嫌悪してしまう…。)
だが、作中で
...続きを読むははっきり須藤さんの過去については語られておらず、周りに迷惑ばかりかける自分に自信が無く、「家で泣くことができない」という、家庭が安心できる場所ではないことも描写されている。彼女にも悩みはあり、人に八つ当たりしたくなるような瞬間が無い訳ではないだろう。なのに、決して自分以外の人にその感情をぶつけて、傷付けなかった。それは、誰もが出来ることではないと思う。
所々、時系列の切り替えが分かりづらい部分があったが、覗いてはいけないのでは、と感じる程の圧倒的な心理描写に飲み込まれてしまった。爽快な読後感とは言い難いが、読んで良かった。