あらすじ
人とわかりあうことは、こんなにも難しい。
税金を滞納する「お客様」に支払いを促すことを仕事とする県税事務所の納税担当に、同期が休職したことで急遽異動させられてきた若手職員の中沢環。彼女は空気の読めないアルバイト・須藤深雪を始めとする周囲の人間関係に気を遣いながら、かつての出世コースに戻るべく細心の注意を払って働いている――(第1章「キキララは二十歳まで」)
週に一度の娘との電話を心の支えに、毎日の業務や人間関係を適当に乗り切るベテランパートの田邊陽子。要領の悪い新米アルバイトや娘と同世代の若い正規職員たちのことも、一歩引いて冷めた目で見ていたはずだったが――(第3章「きみはだれかのどうでもいい人」)
業界中から絶賛の声、殺到!ブクログ第1位、啓文堂書店大賞第2位、「ダ・ヴィンチ」の「今月の絶対にはずさない!プラチナ本」にも輝いた超話題作がついに文庫化。
同じ職場に勤める、年齢も立場も異なる女性たち。見ている景色は同じようで、まったく違っている――。職場で傷ついたことのある人、人を傷つけてしまったことのある人、節操のない社会で働くすべての人へ。迫真の新感覚同僚小説!
解説は、単行本時から絶賛の言葉を寄せてくださっていた島本理生さんです。
(底本 2021年9月発行作品)
※この作品は単行本版『きみはだれかのどうでもいい人』として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
4人の女性の視点からストーリーを見る形式の物語。
特に印象的だったのが田邊さんでした。
自分の娘以外はそれこそ どうでもいいと思っていてその子が平穏でいてくれることを望んでいたのに、その子のSOSを見逃してしまったという皮肉があまりにも効いていた。
個人的に田邊さんが自分の娘以外はどうでもいいというスタンスが確立しすぎていて、娘からの「後輩の話なんだけど」という言葉というだけで、娘の心配からどうでも良くいいスタンスに変わったんだろうなと思った。
また、仕事ができない、メンタルの限界に来た人に対して向けられる、「真面目なひとこそつぶれる」のような優しい風潮の皺寄せにくるのは真面目な人ではないなのかとわれるとそんなことはなく、真面目でデキる人でもあるかもしれない。そういう人は一体だれが救ってくれるんだろうと思った。
Posted by ブクログ
職場に流れる、ひりつくほどの皮肉と正論の洪水。そう、これはどこにでも広がっている風景。人は理想や鈍さや敏感さで、他人や自分自身を追い詰めていることがある。無意識に相手に期待して、勝手に期待を背負っていないか?欲しいのは、そんなのどうだっていいと思える強さ。だってあなたは私の、私は誰かの、「どうでもいい人」。
Posted by ブクログ
この登場人物は私だ、と思いながら共感して別の登場人物を羨ましいと感じながら読み進めていたけど、タイミングと環境が違えば誰しもどの登場人物にもなり得ると気付いてぞわっとした。それなら私は私でいいという気持ちになった。
Posted by ブクログ
読み終わったあといろんな感情でぐっちゃぐちゃになった。そして余韻がいつまでも続く。
すっっごい。
特に最後の祈りがほんと、どうしようもないやるせなさと絶望感を抱きながらも、祈りという行為が唯一の救いに見えて。明るい光は無くても、ただの陰鬱なお話で終わらせない。
副題の”forget, but never forgive”が、ぴったり過ぎて意味が深すぎてずっと鳥肌立ってた。
人の心の機微をここまで鮮明に写実された小説ってそうあるだろうか。
個人的には課長語りのお話も読みたかったけど、これは語り手が全て女性だから意味があるんだろうなとも思う。
もう一回読み直して色々噛み締めたい。
Posted by ブクログ
インパクトのあるタイトルがきっかけ。
読み進むにつれだんだん生き苦しく感じられるけど、先が気になり読まずにはいられない。
曇り空の下を歩いていて最後まで晴れ間が見えなかった感じだった。
心に病を患った須藤深雪は一般的に「仕事のパフォーマンスの低い人」。
須藤深雪を通して同じ職場の4人の女性の視点で描かれた連作短編集。
何度も同じミスをしたり、仕事が遅いとついつい強い口調で注意したりしてしまう。
相手を傷付けないように「目の前の人が自分の大切な人だったら」と思って接するのも良いことだと思うけど、自分の周りの人全員をそんな風に四六時中考えていたら疲れてしまい生きていけない。
心に余裕のある人か神様のような人でないと難しい。
気をつけてはいるけど無意識に人を傷つけているかもしれないし傷付けられてもいる。
同じ職場で同じ景色を見ていても見る角度が違えば見える景色はこんなにも変わってくる。
それぞれの女性達の心の奥底の無防備な急所がじわじわと暴かれていく様が痛ましい。
SOSを発信したいけど上手く出来ない人もいる。
バナナココアが信号だったなんて誰も思わない。(須藤深雪らしいけど)
そんな生きずらさがヒリヒリと伝わってくる。
「そんなの知らねぇよ」口には出さないけど言いたくなる気持ち良くわかる。
この本は奥が深くて面白いがメンタル強めの時にしか読めそうにない。
誰一人救われた感がなく、読後疲労感だけがずっしりと残った。
Posted by ブクログ
地方の県税事務所が舞台。職場でのやり取りや人間模様、ストレスのあり方はリアルである。職場では様々な人が、当たり前のように働いているがその内側は様々。だからこそ難しい。
Posted by ブクログ
同じ職場で働く年齢も立場も違う4人の女性たち。
見えない刃でお互い傷つけ、行き場のない怒りが交錯する。どうでもいい人と突き放せたら楽だけど、そうはいかないのが現実。人間関係のややこしさ、この話から漂うヒリつきがリアルで引き込まれました!
Posted by ブクログ
再読!県税事務所に勤める年齢も立場も異なる4人の女性たちが織りなす連作短編集
あまりにリアルすぎてヒリヒリしながら読んだ
どんな人でも何かを絶対抱えていて、私自身も経験したことのある過去の仕事のトラブルや嫌な気持ちをつらつらと思い出した
”県税事務所”という場所柄相手をしなければいけない人たちもまた大きな怒りや辛さを抱えていることが多い
読んでいるだけでヒュッと心臓が縮む場面がいくつも出てくる
けど、それが”働く”ということをより鮮明に、リアルに感じさせてくれた
今、働くことになんだかしんどい思いをしている人ほど読んでほしい
Posted by ブクログ
過去と他人は変えられない。
変えられるのは未来の自分だけ。
という言葉を思い出しました。
あなたのためを思って、を振りかざされても、相手はそれを望んでいないことだって大いにある。
勝手に向けた恩を相手から回収することを生き甲斐にされても困る。与えるなら、最後まで自己責任で。
でも、
他人をどうでもいいと思えないのは、その人に心の底からは失望していないからと思うと、少し希望のようなものを感じます。
本当に諦めているなら徹底的に無関心になるはずだから。
Posted by ブクログ
自分は染川さんや須藤さん側の、誰かに尻拭いをしてもらっている側の人間なので、読んでいて居た堪れなくなった。
分かりやすいパワハラセクハラじゃなくても、
善意でやっていることが
誰かにも負担を強いているかもしれない…
めんどくさ‼️‼️‼️‼️‼️‼️
職務
+
それぞれの立場を考えて
バランスを崩さないように立ち振る舞う
これで安月給、昇給は雀の涙なんだから
やってられないよな世の中と思った
どうせどんな態度を取っても誰かには嫌われて、
悪意はなくても傷つけているかもしれない。
自分の思慮の届く範囲で気をつけながら
どうでもいい人の言葉にいちいち傷つかず
金稼ぎがんばろーと思った。
Posted by ブクログ
この物語の終着点とキーマンに気づいたとき、肌寒く感じた。なかなか最後までたどりつくのが難しいかもしれないけど、ハッとさせられる瞬間がある。作家さん本当すごい。
パワハラやセクハラを受けた人なら、読んだときにつらくなってしまうんじゃないかと思う。私は気持ち悪くなった。ただ単に、電車に揺られて酔ってしまったのかもしれないけど。
「難易度の高いパズル」で思い出したけど、ブラッシュアップライフでテレビ局のプロデューサーが、キャストの順番を決めるのをそのように言っていた。年功順でもなく実力順でもなく。個人的な好き嫌いは、学生時代じゃなくてもずっとついて回るんだろうな。社会人が終わった後も。
「そういう考え方は違う」って私もよく言われます。キリキリしました。「成長してほしい」って上司からよく言われますが、私は成長するために仕事しているんじゃないです。共感。
以下は気になった文の引用です。
「わたしは、人のストレスを受け止めてお金をもらっている。」
「泣きたくなんかないのに、涙腺だけが勝手に震えてしまうあの感じ。」
「すべての地雷を避ける作業はまるで難易度の高いパズルだ。」
「成長。そんなもののために毎日働いているわけじゃない。あたしはあたしだ。たとえ変化があったとしても、それは人に、ましてや堀さんに、認めてもらうためなんかじゃ絶対にない。」
「いつの時代も親というのは、子供にもっとも苦労が少ないとわかっている道を選ばせたいのだ。」
「傷つきやすい人は苦手。自分が傷ついたという事実にばかりこだわって、その原因や周囲の状況にまるで注意を向けようとしないから。」
「自分の人生に「生きやすい」ときがあったかどうか。」
「「違うわね」「ルールは思考停止のためにあるの。時間短縮のため、トラブルを起こさないため。(略)あなたがルールを破るのは『嫌われたくないから』でしょう。」
「家族のためってことにしておけばまあ格好がつくっていうか、人生、たいていのことは言い訳がきくから」
Posted by ブクログ
なるほどね、同じ出来事や言葉でも人によってはこんなにも受け止め方が違うのだと。
自分にとってあまり関わりのないような人の気持ちもこの本を読むとなるほどね、と思える。
でもどこに救いはあるのかな。
自分の気持ちを見つめ直して、その先はどうなるのか全く分からないまま終わってしまった。
Posted by ブクログ
ここ最近、「どんな人にも色んな事情があって大変。だからどんなことも受け入れられる寛容な心を持ちたい。みんなに優しくしたい」という気持ちでいた。(映画や読書、実体験なども含めてそんな思考になっていた)でもそんなスタンスでいたら自分が辛い時もあるなと思い始めていた。
そんな時この本を読んで「そんなの知らねえよ」で済ましていいこともあるってことに気付かされた。
あと「人を試す権利があるってどうして思えるんだろう」ハッとした。
Posted by ブクログ
超リアルでこの人もと公務員かしらと思ったほど。
わたしも県税事務所に勤務したことがあるので、いるいるこんなひと、こんな人間関係と、共感しきりでした。
Posted by ブクログ
腹立つ相手がいても、「この人も誰かの大事な人なんだよな…クッソー…」と
自分を律する話は よく聞く。
そうやって自分を律することがよい と習ったわけではないけれど
この流れをよく聞くから
なんだかそうすることが正解なんだと思っていた。
このタイトルを見てまず、「確かに」と思った。
誰かの大事な人かどうかは そもそも不確かで、
どちらかというと「誰かのどうでもいい人」な場合の方が高いんだよな。
ひとつの職場の、
4人の登場人物の主観に分けて、
4章から成る本書。
ちなみに、
「君はだれかの大切な人」というフレーズは出てくるけれど
「どうでもいい人」というフレーズは、直接的には出てこない。
どの章のどこでそういう風に感じるのか、
はたまた 始終そういった目で本書を読み進めるかは、
読者にゆだねられているように思う。
もしかしたら感じない人もいるかもしれない。
最後まで「でもやっぱり、目の前の相手は 誰かの大切な人だよ」と思う人もいるんだろうな…。
誰の主観にも共感できるという内容ではなかったけれど、
客観視する『他人の様子』は
「こういう人、どんな職場にもいるよなあ」と感じさせられた。
本書に登場する"堀さん"という総務部主任·お局様。
やること、なすこと、言動…
私の職場にもかつて存在したお局様 そのままの人過ぎて吃驚した。
実在するお局には
「こんな人っているんだな~。ここまでこの状態で生きてこれたってことは 皆に大事にされてきたんだな~」
などと思ってやり過ごしていたけれど、
こんな人、どんな職場にも1人は存在するのか?!笑
どこも大変だな…と思った。
堀さんは4章で主観になるんだけれど、
実在するお局も、
もしかしたらこんな風に物事を見ているんだろうか… いや彼女に限ってそれは…
なんて思ったり。
まあ、堀さんのように思っていようが、思っていまいが…
それは彼女に対して 私がとやかく言っていい理由にはならないよな。と
改めて思ったり。
Posted by ブクログ
タイトルからすでに不穏な響き
自分にとって大事な人であっても、他の誰かから見たらどうでもよかったりする
それは、私自身出会っても同じこと
職場なんてどうでもいい人ばっかり、と私が思ってると同時に、私もきっとどうでもいい人と思われている
どうでもいい、と思っていたからといって
人を傷つけていい理由にはならないと思うけれど、無意識にしてしまうことはあるわけです
なんか、その場面場面で
ちょっとわかるなぁと思う
Posted by ブクログ
悩みがない人はひとりもいない。みんなそれぞれ地獄があって、みんな何かを抱えながら一生懸命働いて、一生懸命生きている。みんな必死だ。そんな現実をまざまざと突きつけられた。人間関係って本当に難しい。読んでいてとても疲れる本だった。
Posted by ブクログ
県税事務所で働く4人の女性と特別枠で採用された1人のアルバイトの女性。
4つの章はそれぞれ4人の女性の目線からアルバイト女性への想いなどが描かれています。
それぞれのバッググラウンドがあるわけですが、特にネガティブな部分が主に描かれていて、『まぁ、分からなくもないけど…』とも思いながら…なかなか重い気持ちになりました^^;
でも、例えば『悪口』や『陰口』の類いって、言ってる方は『加害者』だし、言われてる方は『被害者』。
だけど、その『加害者』を糾弾し『加害者』が弱い立場になると『被害者』になる。
(て何を言ってるか分からないですね^^;)
ネット社会の世の中、そんな流れってよくあるよな…て妙に納得。
うまく説明はできないが、なかなか深い作品でした^ ^
Posted by ブクログ
きみはだれかのどうでもいい人
辛いときもそう割り切って考えられるようになれる話と思いきや、救いのないリアルな人間模様。
傷つけられたと思っている側も誰かを傷つけ、それでも関係は続けていかないといけない中で、人に相談したときに限って、きみはだれかにとってどうでもいい人、というタイトルが響いてくる。
Posted by ブクログ
すごく深く、不快な内容だった。世の中のリアルを表現しているが、こんな現実見たくない、という内容。職場により環境により著書のような現実はあると思うが、人間社会の本当にいやなところを垣間見た気がした。子供の職場環境に興味が湧いた。
Posted by ブクログ
リアル過ぎて暗い気持ちになった。
誰かにとっての自分は対して気にされてないとわかっていても周りからの評価は気になるし、よく思われてないなら傷つく。自分だけ傷つけられてるつもりでも、無自覚に誰かを傷つけていることもあるっていう話。
Posted by ブクログ
県税事務者に勤める4人の女性が主人公。
同じ時間帯を1章づつ4人の視点でそれぞれ書かれているので、読み進めると、あーそういう事だったのかぁーとか、いやいやそんな事思ってたのかぁーとかが、次々出てきます。
職場って色々有りますよね。
皆プライベートでも色々有りますよね。
スッキリする話では無いけれど、皆色々有るよねーと思ったら、何時もより人に少し優しくなれるかも。
Posted by ブクログ
県税事務所のお話。
同期が休職したことで急遽異動させられてきた若手職員の中沢環。
空気の読めないメンタル病みアルバイト・須藤深雪。
ベテランパートの田邊陽子。総務の優秀お局・堀セイコ。
などなど同じ職場で働く、年齢も立場も異なる女性たちの目に映る景色を、4人の視点で描かれている。
滞納する人間たちのセリフは現実味があり心が暗くなる。
普段、仕事をしながら感じている言葉にならない思いを、
これでもかと言語化していて、共感性が高い分、心がしんどい。
言葉でここまで表現できるのかと。複雑な比喩が多用されているからかな。
それぞれがそれぞれの立場で苦しんでいて
まさに「きみはだれかのどうでもいい人」。秀逸なタイトル。
4人の心の闇がしみ込んできたけれど、救いや解決できるものでもなく。
現実を突きつけられた感じがして苦しかった。
Posted by ブクログ
自分の職場のあの人だな、私はどのタイプかな、などと考えながら読みました。共感できる部分と、理解できない部分とあり、評価は3にとどまりましたが、読みやすく、読んで良かったと思いました。
Posted by ブクログ
本書のせいではないが……読み始めてすぐ仕事上のトラブルに巻き込まれた。閑話休題。県庁の出先機関である県税事務所に勤める4人の女性目線で綴られた連作短編。県税事務所の滞納者対応場面から物語は幕を開けるが、次第に職場内の人間関係が中心になる。堀>田邊>中沢>染川>須藤というヒエラルキーと受け止めたが、実は社会復帰プログラムで県税事務所に臨時で雇われた須藤深雪が、彼女達の中心に位置するのだ。交流分析で言うところの「キックミー」である彼女に振り回される4人というのは、現代の職場の縮図として共感を得るのだろう。
Posted by ブクログ
辛辣なタイトルに違わず内容もシビアだ。
心の襞をこじ開けて、ぐいぐい抉って来るから油断ならない。
この物語には至る所に毒が散りばめられている。
県税事務所に勤める年齢も立場も異なる女性達。
税金を滞納する客に支払いを促すという仕事内容だけでも相当キツい事は想像出来る。
それに輪を掛けて険悪な人間関係。
家族ですら解り合えない事があるのに、職場が同じと言うだけで他人を完全に理解するなんて不可能だ。
主人公に自分の弱さを投影し、共感し、居た堪れない思いになる。
例えどうでもいい人と思われようが自分の心の背骨だけは折らすまい。
Posted by ブクログ
私もだれかのどうでもいい人なんだな
私も多くの人に対してどうでもいいと思って対応していたことに気づいた。
Forget,but never forgive.
求めるのをやめろ、しかし全てを与えろ。