伊藤朱里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
4人の女性の視点からストーリーを見る形式の物語。
特に印象的だったのが田邊さんでした。
自分の娘以外はそれこそ どうでもいいと思っていてその子が平穏でいてくれることを望んでいたのに、その子のSOSを見逃してしまったという皮肉があまりにも効いていた。
個人的に田邊さんが自分の娘以外はどうでもいいというスタンスが確立しすぎていて、娘からの「後輩の話なんだけど」という言葉というだけで、娘の心配からどうでも良くいいスタンスに変わったんだろうなと思った。
また、仕事ができない、メンタルの限界に来た人に対して向けられる、「真面目なひとこそつぶれる」のような優しい風潮の皺寄せにくるのは真面目な人ではないなのかとわれるとそんなことはなく、真面目でデキる人でもあるかもしれない。そういう人は一体だれが救ってくれるんだろうと思った。 -
Posted by ブクログ
バリキャリな小姑と、ゆるふわな嫁のマウントの取り合いというレディコミみたいな設定なのに、中身は全然違う!
世間に「正反対」とカテゴライズされる2人の内面に触れるにつれ、私たちはみんな、望まないまま無自覚に戦わされている、選ばされているということをジワジワと自覚してしまう。
それは、誰かにというよりも、自分自身をがんじがらめにしている、どうしようもなく偏った価値観とかコンプレックスとか罪悪感にそうさせられているような気もして、自分の人生を正解だと信じるために他人を傷つける必要なんかどこにもないのに、どうして私は私のままで生きられないのかと苦しくなる。
母親のしんどさもリアルで辛い。2人の娘がそれぞれの母を呼ぶ時、志穂子が「ママ」で、杏梨が「お母さん」なとことか、キャラクターイメージとは逆で、母親がそう呼ばせてきたんだろうな…ってジワ怖なの辛い。
現代女性の生きづらさの答えが全部書いてある気がするけど、上手く言語化はできません。悲しい。 -
Posted by ブクログ
読み終えた後に、タイトルを見て、なるほど、と思う。
緑の芝生が更に綺麗な緑色になるよりも、見たことのない赤い芝生になろうともがくのは相当大変だろうな。
この物語に登場する二人の女性、志穂子と杏梨。
目指す所は正反対、行動も交わることがない。
そう思っていたけど、根っこの部分は全く一緒なのかもしれない。
私は27歳の二人からしたら、彼女達の母親の方に年齢が近い。
それでもかつて通ってきた道を思うと、志穂子も杏梨も愛しいし、まっすぐぶつかろうとする志穂子の言動を懐かしく感じる。
この物語を男性が読んだら、どんな感想を抱くのだろう。
息子と父親の関係は娘と母親とは異なるのだろうか?
母親は(私が知っている、もしくは私が想像する母親)、自分が苦しんだ道を娘に味わわせたくなくて、良かれと思って娘に意見する。
けれど娘は自分が目指す先は母親の思い描く先とは異なるから、その言葉の意味を理解できない。
そうやってずっと母と娘が絡まって、次の世代へ、また次へ、と時が流れていくのかもしれない。
初めて読んだ作家さんだったけど、次も何か読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ女性が読んだ方が絶対共感湧くのだろうが(という感想自体が、この小説で訴えたい内容と相反しているのだが)、これオモロい!
主人公は価値観や人生観が全く違う27歳の女性2人。嫁と小姑、理系と文系、理性と感情、見た目体裁を気にする派とやりたいことを一直線にやりたい派…。ことごとく価値観の違う2人が、ひょんなことをきっかけに一緒に住むことになり…。
常日頃、生き方、価値観なんて多種多様で、個人個人のやりたいことをやればいいと思っている。自分の生き方に干渉されない限り、人のことをどうのこうのと言うてるのはヒマ人のすることで、そんな暇があったら自分のやりたいことを一生懸命やればいい。そう思っているし、だからこそ、ワイドショーだの週刊誌だの、それらを話題にする連中がキラいなのである。
が、この物語では、したいことをすることで、いたくない場所からなんとか逃げ出したことで、他人の(とはいえ家族親族なのだから余計始末に負えない)生き方価値観に干渉する事になってしまったら…という状況を描いている。
なんとか二人に、そして二人の母親にも自分の納得がいく、少なくとも自分で選んだ道を生きていってほしい。できれば、干渉を極力減らしてやってほしい。そんなことを願いながらページを繰っていた。
後半、二人の境界線があやふやになっていく。そこが嬉しいような残念なような…。境界線があやふやになるってことは・・・自分の人生を生きていくためには、人の事に干渉しないことだけでなく、歩い程度、干渉に対して強く(というか鈍感に)なる必要がある…ってことを、表しているのかなぁ。
主人公の一人、杏梨がブチ切れた時の関西弁が見事。なるほど、津村記久子が絶賛する小説やなぁ~ -
Posted by ブクログ
『万人に嫌われないために好感度で個性を塗りつぶしたような、この手の美人はかなり判別の難易度が高い。
少しでも特徴を捉えようと細部まで目を凝らしてみたけど、清楚なベージュのワンピースといい、丹念に巻いた髪や睫毛といい、ピンクゴールドを基調としたアクセサリーといい、すべてがどこかで見たような感じでお手上げだった。ただ、当たり障りのないそれらひとつひとつがリスクヘッジのように分散され、その女っぷりを巧妙に底上げしていることだけが伝わってきた。』
『そこで、ちょっと間を置いた。
頭を使うのが苦手なわたしは、もちろんチェスや将棋もできない。でも、王手、とか、チェックメイト、とか言いながら駒を動かすとき、人はきっとこんな気分に違いない。
『東京に出てきたおかげで、晴彦さんに巡り会うことができました』
これでもう、わたしをだれも責められないだろう。』
『この日を灯台にしよう、と決めた。過去は真っ白になり、未来でなにがあってもここに戻れば迷わない。きっと大丈夫、これからなにもかもうまくいく。そう、自分に言い聞かせた。』
『ちょうどそこで、注文していた半熟卵のオムライスが運ばれてきた。
カロリーはゆうに八百越え、コレステロール値も血糖値も中性脂肪値も軒並み上昇しそうな一品だけど、裏を返せばそれこそが外食の醍醐味でもある。』
『賢ぶって人の言葉を深読みしたって、なんにもいいことなんかない。わたしはそれを、よく知っている。』
『やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいい、と最初に言ったのがだれだか知らないけど、その人はたぶんよっぽどさわやかな生き方をしていたんだろう。実現しなかったことはいくらでも美化できる。わたしに言わせれば、やっちまった、という後悔ほどたちが悪く、苦い後味を引きずる感情はない。』
『わかってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか。笑ってみようとしたけどうまくいかない。まさか昭和歌謡に共感する日が来るとは思わなかった。たしかにいまのわたしは、ナイフみたいにとがっては触るものみな傷つけている。中途半端な自分自身が原因で。』
『ただそこにあるだけのものを捨て、自分が心から望むものだけを集めて、そうやって少しずつ生まれ変わるための第一歩として。こんな素敵なものを持っているわたしが素敵じゃない場所に行き着くわけがない、心からそう信じるために。』
『母は傷ついたように言った。実際に傷ついているんだろう。この人はいつもそうだ。いつだって心痛めるのは自分だけで、こちらの権利を根こそぎ奪ってしまう。まるで早いもの勝ちみたいに、あなたはわたしより強いんだからそれぐらい当然でしょう、という顔で。』
『どれだけ論理的に説明してもまるで聞く耳を持たず、あげく対話を放棄して泣き出しさえした母の姿は当時のわたしには理解不能だった。お母さんを困らせるな、と父に叱られてもまるで納得できなくて、正しいことを言っただけで勝手に悲しまれて泣かれるなら、そして自分までその同類みたいに扱われるなら、この人と話し合うことなんか二度とごめんだと思った。』
『ああ、駄目だ。こんな言い方をしてはいけない。夫婦だからってなんでもぶつけていいわけじゃないのだ。家族ならなにを言っても構わないだなんて、傷つけたってしかたないだなんそんなの、
お母さんにそっくりだ。
ぎゅっ、と喉の奥が鳴った。』
『まだだ。まだまだ鳴りつづける。どこまでも追ってくる。こちらが負けるまでいつまでも帰らない。ピンポーン。ピンポーン。ああ、呼び鈴ってどうしてこんな音なんだろう? クイズに正解したときの音。ピンポーン。急にやってきておいて、自分が正しいと言わんばかりに。ピンポーン。これが正解です。ピンポン。拒むあなたが悪い。ピンポーン。うるさいうるさい、ほっといてよ、押しつけがましいんだよ。ピンポーン。』
『マンションやアパートのドアに覗き穴をつけることを、最初に決めたのはたぶん男性だと思う。厳密に言うと「そのままドアを開けるのは不安だという女性からの意見がありますが」「はあ、じゃあ覗き穴でもつけとくか」みたいな感じで、企画会議かなにかで適当に決めたんじゃないだろうか。この穴に目玉を触れさせ、ドア一枚しか隔たりのない距離にいる見知らぬ人間の顔を確認する。そんな一瞬を味わうくらいであれば、わたしなら無視することを選ぶ。』
『いい意味で。便利な言葉だ。自分にとって都合のいい意味で、と言う本音を、さも一般論のごとく置き換えられる。』
『そういう意味じゃない、そんなつもりじゃない、指示代名詞の示す先が永遠にすれ違うことに、きっと彼は気づかない。そして私はたぶん、わかっていて利用しつづける。』
「…それは、わかりません ー 経験ないですから。だけどもしそうなったって、そんなふうに先取りして責められるいわれはありせん。」
『ちゃんと伝えないといけない。たとえ、わかりあえないことがわかるだけだとしても。
この人ではなく、自分のためだ。』
「わかってはいるけど考えることはやめられなくて、そんな自分をかっこ悪いと思ってて、でもその自覚がないのはよりかっこ悪いってこともわかってるから、人に言われるより先に言っておこうってそういう心理だと思います」
「仕事に限らず葛藤とはそういうものでしょう」
「あと一番大きいのが、やっぱりこう、自分でも自分のことが嫌で、客観的にも言ってやりたい気持ちがあるんです。自分で選んだ結果なのになにをいまさら悩んでいるんだ、それだけ恵まれてるくせに、なんにも失ったことなんかないくせに甘えるなって」
「それを客観的と呼べるかは疑問です」
「…はい」
「そもそも『自分で選ぶ』などというのが傲慢ですよ。自己責任論に帰着しかねない危険な発想でもあります。眼前の事物におのずと突き動かされた結果だけが、現在です」
『この世にだれもいないとしても、好きだと言えるものなんてあるんだろうか。
志穂子はそれを持っていて、持っていれば、幸せなんだろうか。』
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Posted by ブクログ
【名前も呼べない】
「どうしてそうなの、どうしてこうじゃないの、どうしてああなの、どういうことなの。答えられなければ歩くことも許されないのよ」
『私は単なる愛人じゃないと、多少なりとも役には立てているんだと、思いたかった。正しい場所に帰っていくための、潤滑剤として。』
『誰のために笑ってるの、と私に訊いたのは、それこそ誰だっただろう。覚えていない。ただ、答えられなくてやっぱり笑ってしまった自分がいたことだけは思い出せる。』
「いいじゃん。したくなけりゃ、しなければいいのよ。私もそう。手術して女になれとか職場でカミングアウトしろとかやたら言う奴いるけど、余計なお世話だよ。やりたくないことはしたくない。自分として生きてくだけで沢山だもの」
『ここに泣いている私がいて、泣き終わったら見える景色があって、それは泣き始める前と何一つ変わらなくて』
「みんなが当たり前みたいに、男と女は結婚して子どもを作るのが当然で、結婚してる男と女が近付いたら不倫で、父親の死に目にも遭わない結婚しない娘は親不孝で何かがあって、そんな目でしか物事を見ないで、見るだけならまだしも当たり前みたいに押しつけてきて、そんな中で生きなきゃいけないのが最悪って言ってるの」
【お気に召すまま】
『次に目が覚めた時、自分がどこにいるのかは考えたくなかった。ここでなければ、どこでもよかった。』
「嘘だあ。先生、何か隠してるでしょ」
「中島さん、彼氏が何か隠してるかもって思ったら、携帯電話とか見るほう?」
「えー、何ですかそれ…んー。いないから分かんないけど、たぶん見ません」
「それはどうして?」
「いいことがなさそうだから」
「正解。そういうこと。探ったってろくなことないなら、放置が一番」
「言わせておきなさいよ ー 見えるもの全部にもっともらしく理由をつけないと安心できない人なんか、放っておきなさい。そういうこともあるってだけよ」 -
Posted by ブクログ
ネタバレどんな小説か、前知識なく読んだ。伊吹有喜さんや古内一絵さんなど、すきな作家さんがいたから。いろんな作家さんの食べることにまつわる短編小説、と思ったし、途中中弛みして、最後まで読まなくてもいいか?と思ったが大間違いで、一番最後の窪美澄さんの作品が大号泣…お母さん、娘、定食屋の聡美さん、だれの立場も、優しく、切なく大号泣…読んでよかった。娘の巣立ちという、ある意味子育てでは成功だけど、空の巣症候群…なるよね、シングルマザーで頑張ってきたら特に。でも自分を変えなきゃ!と思って新しいことに挑戦するのとでよかった。ひいては娘の萌香さんが聡美さんも救った。なんていい話。
一つ前の古内一絵さんもさすが!ザおじさんが主人公だったのには驚いた。
時代遅れな昭和セクハラも、とても素直に自分を振り返り、妻の苦労を分かるおじさん。また、そのお母さん(もっともっとしょうわなのにさすが!)
素直な主人公たちは幸せになれる。