伊藤朱里のレビュー一覧

  • 名前も呼べない

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    ネタバレ

    第31回太宰治賞受賞作品。

    表題作『名前も呼べない』ほか、書下ろし短編『お気に召すまま』も収録されている。
    どちらも子ども時代に負った傷を身の内に宿したまま大人になった女性が、自らの罪と対峙するというモチーフが織り込まれている物語だった。傷を負った場面の状況は詳細に描写されていない。ただその時や現在の主人公の感情が、日常生活の合間にふと現れ痛切に語られる。だから読んでいる途中相当心抉られたのだが、でも最終的には癒しの物語だと思う。
    次回作も楽しみ。これは波長が合う人にはとことん合う系統の小説だと思う。孤独な女性の、生臭くない透明なリアリティがある。


    以下重要な部分のネタバレ含みます。
    『名前も呼べない』の方で、
    「宝田主任がどうこうじゃない。みんなが当たり前みたいに、男と女は結婚して子ども作るのが当然で、結婚してる男と女が近づいたら不倫で、父親の死に目にも遭わない結婚しない娘は親不孝で何かがあって、そんな目でしか物事をみないで、見るだけならまだしも当たり前みたいに圧しつけてきて、そんな中で生きなきゃいけないのが最悪って言ってるの」(p138)
    主人公のこの台詞、自分に投げつけられたような気がしてはっとした。だって、主人公の「恋人」は明示されるまでずっと宝田主任の方だと思っていたから。自分より背が小さいとか、回想での「恋人」の口調とか、あからさますぎる程本当の「恋人」は宝田主任の「妻」の方だと示されていたのに。当たり前のように「男と女が近づいたら不倫」だと思い込んで、些細な違和感を流していた。これはけっこう、かなり読者に対する強烈なパンチだと思う。衝撃を受けた。
    こんなんじゃ確かに生きにくいよね、ごめんなさい。

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    2016年11月17日
  • 名前も呼べない

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    太宰治賞の表題作も書き下ろしの併録作も非常に上手い。むしろ上手すぎるほど、描写にも構成にも隙がない。それだけにしんどい。こんなものばかり読んでいたら女性として生きることがとてつもない苦行に思えてきそうで困惑する。

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    2016年01月09日
  • 名前も呼べない

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    第31回太宰治賞受賞作。

    表題作は、所謂、不倫小説なのだが、読み進めていくうちに最初に戻って読み返したくなる著者のトリックにまんまと引っかかった。
    読み返してみると、著者は何も「嘘」をついていないことがわかり、ズブズブと物語にのめりこんでいってしまう。

    書き下ろしの2作目も、著者特有の女性主人公があまり明るくない過去の体験をベースに、「いま」を見つめていくお話なのだが、どこか品があって、どこか救いがあるところがいいな、とおもった。

    たまたまかもしれないが、『名前も呼べない』『お気に召すまま』両作品とも、どこか欠落した部分を抱え、「わたしなんて…」思考の強い主人公なのだ。わたしはこういう受け身の人間があまり好きではない。だが、その主人公に喝を入れる脇役がちゃんといるので、作品としてのモヤモヤ、苛立のようなものが、ちゃんと回収される。
    『名前も呼べない』ではメリッサという親友が本当に素敵なキャラクターだった。主人公と仲良くなるエピソードは、メリッサが「それ」とわかっていても惚れてしまう。
    『お気に召すまま』では、主人公自らが怒りを表現するシーンがよかった。
    それも、女子高生の文乃が居たからこそ。

    お風呂やベットがすこしの光をくれる。
    これらのアイテムを使って、行動にうつしていく主人公の気持ちがなんとなく嬉しいというか、踏ん切りがつく。
    どこかで経験のある感情たちなのだとおもう。

    この小説は、映画のようにあまり予告編を吟味しないで、物語に飛び込んで味わってもらいたい。

    それにしても、『こちらあみ子(今村夏子)』、『君は永遠にそいつらより若い(津村記久子)』といい、太宰治賞は骨のある女流作家を輩出するなあ。

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    2015年12月23日
  • 食べて、寝て、しあわせ?

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    予想したものでは無く、全体的に暗くて可もなく不可もなしって感じ。しあわせ?の疑問符を読み取らなかった自分のミス。
    最後の窪美澄さんの作品は特別。とても良かった。熱々のアジフライが食べたくなった。生きるということは、少しずつ前に進むしかないから。ジワジワ涙ぐんでしまった。

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    2026年09月29日
  • 食べて、寝て、しあわせ?

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    「二代目のミンチョさん」
    嫌い、は好き、より強いのではない。ひとりで飼っておくにはあまりに寂しすぎる感情。好きと嫌いって表裏一体のようでそうではないのかも。私の感情は私だけのもの。

    「四十代の栄養」
    栄養とらなくちゃ。働くにも生活するにもエネルギーが必要。

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    2026年08月04日
  • ※個人の感想です

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    小気味よくバッサバッサと何かを薙ぎ倒しながら突き進む感がすごかった。
    これはなかなか他の作品では得難い感覚かもしれない。
    言葉の使い方はもちろんだが、事情も知らないのに勝手な想像や憶測で個人の感想を述べる、ということは、これまでになかっただろうかと振り返ってみる。
    気を付けたい。

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    2026年07月09日
  • 食べて、寝て、しあわせ?

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    特におすすめするほどではない。

    何名か好きな作家さんがいたので読んだが、
    普段の本の方がだいぶよく、
    テーマ縛りのリレーでこの短さだと
    まとめるのが難しいのかなと思った。

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    2026年06月28日
  • 食べて、寝て、しあわせ?

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    日々のルーティーンの中少しのしあわせ。気に入ったカレー屋さん、大学で知り合った裕福な友人の話がよかった。かなちゃんと友だちになれて本当によかった、と言う桃華。経済格差があると難しいけどふたりが仲良くいられますように。

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    2026年06月14日
  • 食べて、寝て、しあわせ?

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    ネタバレ

    伊吹さん目当てで読んだが、藤野さんがおもしろかった。
    伊藤さんはよく分かりませんでした。
    「食べて」はよく出てきましたが「寝て」がピンときませんでした。

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    2026年06月10日
  • きみはだれかのどうでもいい人

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    ネタバレ

    3.3
    p90
    ただ、こちらの努力に応えてほしい。誠意を尽くしたら、ありがたいと思ってほしい。応える力がないのなら、せめて負い目くらいは感じてほしい。あなたの苦労に報いなくて申し訳ないと、十字架を背負いつづけてほしい。

    p206
    傷つきやすい人は苦手。自分が傷ついたという事実にばかりこだわって、その原因や周囲の状況にまるで注意を向けようとしないから。

    p374
    誠実さとは、なにか、と考えた。
    自分は、かならず誰かを傷つけている、という自覚ではないだろうか。

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    2026年05月27日
  • あなたが気づかなかった花

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    花のように名も違えば生き方も違う彼女たち。その美しさに優劣をつけられることもしばしば。自分を守る棘も時には必要だけど、使い所を間違えて人間関係をややこしくしたり。綺麗事だけでは生きられない、人生って難しいよね色々と。

    花言葉に添った話が進み、登場人物も繋がる連作短編集。ただ、登場人物が多くて繋がりが頭の中に残りにくかったな...

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    2025年11月23日
  • 名前も呼べない

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    「名前も呼べない」は、終盤に意味がわかると、思わず最初に戻ってしまいたくなるお話だった。
    一つ一つの描写が綺麗に書かれていて、すごく色んな比喩表現が丁寧だなと思った。
    「お気に召すまま」は、自分の中と重なる部分もあって色々考えさせられた。きっと、誰の人生にも後悔はあって、みんなそれに責任を背負って生きているのだと思う。
    どちらの話も、ズブズブと沼に落ちていくような終始暗い雰囲気が続くけれど、その重い雰囲気にまた魅了されていたと思う。
    今までにない読書体験だった。

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    2025年11月19日
  • きみはだれかのどうでもいい人

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    ネタバレ

    腹立つ相手がいても、「この人も誰かの大事な人なんだよな…クッソー…」と
    自分を律する話は よく聞く。

    そうやって自分を律することがよい と習ったわけではないけれど
    この流れをよく聞くから
    なんだかそうすることが正解なんだと思っていた。

    このタイトルを見てまず、「確かに」と思った。

    誰かの大事な人かどうかは そもそも不確かで、
    どちらかというと「誰かのどうでもいい人」な場合の方が高いんだよな。

    ひとつの職場の、
    4人の登場人物の主観に分けて、
    4章から成る本書。

    ちなみに、
    「君はだれかの大切な人」というフレーズは出てくるけれど
    「どうでもいい人」というフレーズは、直接的には出てこない。

    どの章のどこでそういう風に感じるのか、
    はたまた 始終そういった目で本書を読み進めるかは、
    読者にゆだねられているように思う。

    もしかしたら感じない人もいるかもしれない。
    最後まで「でもやっぱり、目の前の相手は 誰かの大切な人だよ」と思う人もいるんだろうな…。

    誰の主観にも共感できるという内容ではなかったけれど、
    客観視する『他人の様子』は
    「こういう人、どんな職場にもいるよなあ」と感じさせられた。

    本書に登場する"堀さん"という総務部主任·お局様。
    やること、なすこと、言動…
    私の職場にもかつて存在したお局様 そのままの人過ぎて吃驚した。

    実在するお局には
    「こんな人っているんだな~。ここまでこの状態で生きてこれたってことは 皆に大事にされてきたんだな~」
    などと思ってやり過ごしていたけれど、
    こんな人、どんな職場にも1人は存在するのか?!笑

    どこも大変だな…と思った。

    堀さんは4章で主観になるんだけれど、
    実在するお局も、
    もしかしたらこんな風に物事を見ているんだろうか… いや彼女に限ってそれは…
    なんて思ったり。

    まあ、堀さんのように思っていようが、思っていまいが…
    それは彼女に対して 私がとやかく言っていい理由にはならないよな。と
    改めて思ったり。

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    2025年10月01日
  • あなたが気づかなかった花

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    題名と表紙に惹かれて読んだ本♪
    各章に花の名前と花言葉がついており、花を検索してイメージを持ちながら読み進めていくのが楽しかった。
    各章に関係する登場人物が散らばってでてくるが、個人的には読み進めるうちに忘れてしまっている部分もあり、繋がりを見逃している部分もありそうで勿体無いなと思った。

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    2025年08月28日
  • ※個人の感想です

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    今っぽい、「あるある」とか思いながら軽く読める話かと思ったら、想像以上にヘビーで、薄さのわりに読み切るにもかなり時間がかかった。現代を生きていく中で心にささくれ立つ瞬間を、これでもかというほど繊細に鋭く切り取っているのは本当にすごいと思った。が、なんとなくこの作品のよさをきちんと感じられる前に読み切ってしまった感があり、周りではよかったと言う人がたくさんいた中で、自分の読解力が全然足りないなとちょっと落ち込んだ。

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    2025年07月30日
  • ※個人の感想です

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    SNSなどネット関連の話が中心の短編集。
    全4編で、登場人物が少しずつ重なっていたり、『サンダーボルト』という4人組韓国アイドルが全編通して関係していたりと群像劇っぽさもあります。

    ネットにはあまり明るくないですが、それでも、あ~こういうコメント、YouTubeで見るな〜など、現実を切り取っている感じがありました。

    妊活や炎上、整形のような難しいテーマが散りばめられているのと、強めな言葉も続出するので、読み終わって疲労している感じは…ありました。
    でも、こんなに誰かの心の中や気持ちの変化を見て取れる小説もなかなかないので面白く読みました。

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    2025年07月23日
  • ※個人の感想です

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    連作短編集4篇
    SNSの世界で繰り広げられるトーク。サンダーボルトという4人組のアイドルグループを核にアイドルになれなかった人や応援する人やアンチなどの言葉の応酬。個人の感想が声高に叫ばれる怖さが伝わってくる。

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    2025年06月05日
  • きみはだれかのどうでもいい人

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    タイトルからすでに不穏な響き
    自分にとって大事な人であっても、他の誰かから見たらどうでもよかったりする

    それは、私自身出会っても同じこと

    職場なんてどうでもいい人ばっかり、と私が思ってると同時に、私もきっとどうでもいい人と思われている

    どうでもいい、と思っていたからといって
    人を傷つけていい理由にはならないと思うけれど、無意識にしてしまうことはあるわけです

    なんか、その場面場面で
    ちょっとわかるなぁと思う

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    2025年04月28日
  • あなたが気づかなかった花

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    短編にそれぞれ花が登場し、その花言葉にちなんだ物語が展開するという構成。
    どんな花なのかな?と毎回調べて、頭の中でイメージしながら読みすすめた。全部はとてと覚えられないけど、一つでも自分の知識として残ればいいな。
    物語としては、水瀬さんのお話が好きだった。

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    2025年04月27日
  • きみはだれかのどうでもいい人

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    ネタバレ

    悩みがない人はひとりもいない。みんなそれぞれ地獄があって、みんな何かを抱えながら一生懸命働いて、一生懸命生きている。みんな必死だ。そんな現実をまざまざと突きつけられた。人間関係って本当に難しい。読んでいてとても疲れる本だった。

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    2025年04月17日