伊藤朱里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
4人の女性の視点からストーリーを見る形式の物語。
特に印象的だったのが田邊さんでした。
自分の娘以外はそれこそ どうでもいいと思っていてその子が平穏でいてくれることを望んでいたのに、その子のSOSを見逃してしまったという皮肉があまりにも効いていた。
個人的に田邊さんが自分の娘以外はどうでもいいというスタンスが確立しすぎていて、娘からの「後輩の話なんだけど」という言葉というだけで、娘の心配からどうでも良くいいスタンスに変わったんだろうなと思った。
また、仕事ができない、メンタルの限界に来た人に対して向けられる、「真面目なひとこそつぶれる」のような優しい風潮の皺寄せにくるのは真面目な人ではな -
Posted by ブクログ
バリキャリな小姑と、ゆるふわな嫁のマウントの取り合いというレディコミみたいな設定なのに、中身は全然違う!
世間に「正反対」とカテゴライズされる2人の内面に触れるにつれ、私たちはみんな、望まないまま無自覚に戦わされている、選ばされているということをジワジワと自覚してしまう。
それは、誰かにというよりも、自分自身をがんじがらめにしている、どうしようもなく偏った価値観とかコンプレックスとか罪悪感にそうさせられているような気もして、自分の人生を正解だと信じるために他人を傷つける必要なんかどこにもないのに、どうして私は私のままで生きられないのかと苦しくなる。
母親のしんどさもリアルで辛い。2人の娘がそれ -
Posted by ブクログ
読み終わったあといろんな感情でぐっちゃぐちゃになった。そして余韻がいつまでも続く。
すっっごい。
特に最後の祈りがほんと、どうしようもないやるせなさと絶望感を抱きながらも、祈りという行為が唯一の救いに見えて。明るい光は無くても、ただの陰鬱なお話で終わらせない。
副題の”forget, but never forgive”が、ぴったり過ぎて意味が深すぎてずっと鳥肌立ってた。
人の心の機微をここまで鮮明に写実された小説ってそうあるだろうか。
個人的には課長語りのお話も読みたかったけど、これは語り手が全て女性だから意味があるんだろうなとも思う。
もう一回読み直して色々噛み締めたい。
-
Posted by ブクログ
読み終えた後に、タイトルを見て、なるほど、と思う。
緑の芝生が更に綺麗な緑色になるよりも、見たことのない赤い芝生になろうともがくのは相当大変だろうな。
この物語に登場する二人の女性、志穂子と杏梨。
目指す所は正反対、行動も交わることがない。
そう思っていたけど、根っこの部分は全く一緒なのかもしれない。
私は27歳の二人からしたら、彼女達の母親の方に年齢が近い。
それでもかつて通ってきた道を思うと、志穂子も杏梨も愛しいし、まっすぐぶつかろうとする志穂子の言動を懐かしく感じる。
この物語を男性が読んだら、どんな感想を抱くのだろう。
息子と父親の関係は娘と母親とは異なるのだろうか?
母親は(私が -
Posted by ブクログ
ネタバレ女性が読んだ方が絶対共感湧くのだろうが(という感想自体が、この小説で訴えたい内容と相反しているのだが)、これオモロい!
主人公は価値観や人生観が全く違う27歳の女性2人。嫁と小姑、理系と文系、理性と感情、見た目体裁を気にする派とやりたいことを一直線にやりたい派…。ことごとく価値観の違う2人が、ひょんなことをきっかけに一緒に住むことになり…。
常日頃、生き方、価値観なんて多種多様で、個人個人のやりたいことをやればいいと思っている。自分の生き方に干渉されない限り、人のことをどうのこうのと言うてるのはヒマ人のすることで、そんな暇があったら自分のやりたいことを一生懸命やればいい。そう思っているし、 -
Posted by ブクログ
『万人に嫌われないために好感度で個性を塗りつぶしたような、この手の美人はかなり判別の難易度が高い。
少しでも特徴を捉えようと細部まで目を凝らしてみたけど、清楚なベージュのワンピースといい、丹念に巻いた髪や睫毛といい、ピンクゴールドを基調としたアクセサリーといい、すべてがどこかで見たような感じでお手上げだった。ただ、当たり障りのないそれらひとつひとつがリスクヘッジのように分散され、その女っぷりを巧妙に底上げしていることだけが伝わってきた。』
『そこで、ちょっと間を置いた。
頭を使うのが苦手なわたしは、もちろんチェスや将棋もできない。でも、王手、とか、チェックメイト、とか言いながら駒を動かすとき -
Posted by ブクログ
【名前も呼べない】
「どうしてそうなの、どうしてこうじゃないの、どうしてああなの、どういうことなの。答えられなければ歩くことも許されないのよ」
『私は単なる愛人じゃないと、多少なりとも役には立てているんだと、思いたかった。正しい場所に帰っていくための、潤滑剤として。』
『誰のために笑ってるの、と私に訊いたのは、それこそ誰だっただろう。覚えていない。ただ、答えられなくてやっぱり笑ってしまった自分がいたことだけは思い出せる。』
「いいじゃん。したくなけりゃ、しなければいいのよ。私もそう。手術して女になれとか職場でカミングアウトしろとかやたら言う奴いるけど、余計なお世話だよ。やりたくないことは -
Posted by ブクログ
漢検一級レベルの単語がゴロゴロでてきます。
読めねぇ〜〜わかんねぇ〜〜とスマホで調べまくりでした。
前半は罪悪感に苛まれた結果、もがき続け、似た者だと感じた恋人もただの他人だと気が付き受け入れていくお話。
後半は自身の罪悪感を認識したのちに、複雑なことに何かと理由をつけて語ろうとする他人なんか放っておけと、前に進めるお話。
自他との境界をひいて、罪の所在をお互いに認めることが成熟。
責任の所在に関して、相手が悪いと決めつけてしまうことも、自分を責め続けてしまうことも、どちらもよくないんだね〜ほーんって思いました。
複雑な気持ちを理解しようと、眉間に皺を寄せながら読みました。
面白いな〜と -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
結婚式に参列した千佳は、帰り道でタクシーの運転手に想いを零す(六月 アマリリス 「おしゃべり」)、資格試験に合格した優里は、喧嘩別れした親友のことを思い出す(三月 クリスマスローズ 「追憶」)、推しのスキャンダルにショックを受けたるりは、あることを思いつき――(八月 向日葵 「あなただけを見つめる」)。
女性たちの揺れ動く心情を、花と花言葉にリンクさせながら、温かく描き出していく二十四篇の連作小説集。
【個人的な感想】
登場人物が多く、整理しながら読まなければ、短編同士繋がっていても理解できない。
短編の内容はどれも重ためで好きだった。
『チューリップ』『ホウセンカ』『バンク -
Posted by ブクログ
インパクトのあるタイトルがきっかけ。
読み進むにつれだんだん生き苦しく感じられるけど、先が気になり読まずにはいられない。
曇り空の下を歩いていて最後まで晴れ間が見えなかった感じだった。
心に病を患った須藤深雪は一般的に「仕事のパフォーマンスの低い人」。
須藤深雪を通して同じ職場の4人の女性の視点で描かれた連作短編集。
何度も同じミスをしたり、仕事が遅いとついつい強い口調で注意したりしてしまう。
相手を傷付けないように「目の前の人が自分の大切な人だったら」と思って接するのも良いことだと思うけど、自分の周りの人全員をそんな風に四六時中考えていたら疲れてしまい生きていけない。
心に余裕のある人か -
Posted by ブクログ
ああ〜切れ味が良すぎてグサグサいかれた…特に最後の2篇。1篇ずつ読むしかできなかった、苦しくて。
関さんの強さと小田嶋のいまの世代感。うるせーな、細かいよ、めんどくせーな、って感じにする描写がリアルすぎる…
宇佐美先生にキレる場面、その前に感情と経緯が織り混ざってモヤモヤする場面、痛いほど共感した。知らんのに言うなよ!と。「知らんけど」のくだりがとてもよかった。
p.229 事実を知っても「自分に恥じることがないなら、顔も知らない相手の悪口にどうして傷つく必要があるの?」と一蹴して、心底どうでもいいような、なにも変わらない態度でいてくれたのは先生だけだ。
「相手はあなたの魅力を見ようと