【感想・ネタバレ】※個人の感想ですのレビュー

あらすじ

無責任な言葉とわかっていても、振り回されずにいられないのが私たち。切れ味抜群、なのに愉快でクセになる全4編。
―――
not for me(is myself)
フィットネス系YouTubeチャンネル「かなめジム」を運営するインフルエンサー・かなめは、読者モデル時代の同期の穂乃花から、信者のような熱量のおかしい人がコメント欄にいるから気をつけた方がいい、と忠告を受ける。いつでも正直に、ただ、伝え方に気を配って、優しく明るく発信をしてきたのに……。

純粋に疑問なんだけど
大好きな小説の編集部から「ノンフィクション部門 ネットメディア班」に異動し、インフルエンサーの書籍を担当するようになった若手編集者の野村。異動後はじめて出版のオファーをしたYouTuber・はしゆりは破天荒で、彼女のやることなすことすべて、野村にはわけがわからない。

「なんで怒らないんですか?」
「世間ずれしていない関さんの新鮮な感覚が必要」。衛星放送の番組制作も手がけるNPOで契約職員として働く関は、いまの職場環境に満足している。四十にもなって専門技術もない「平凡な主婦」を重宝して、新たな仕事まで任せてくれるのだ。ところがインターンに来ている大学生の小田嶋さんは、まったく異なる思いを抱いているらしい。

人の整形にとやかく言う奴ら
アイドルオーディション番組に参加して、ファイナル一歩手前で落ち、韓国の事務所を辞めて日本に戻ってきて五年。「ダンスクイーン」由良すみれは今、地元の学習塾で事務職をしている。普通の生活を取り戻せて本当に良かったし、同時に応援してくれたファンの人たち全員を今も愛している。愛と感謝を伝えるために残しているSNSアカウントに、この頃不穏な空気が漂い始めた。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ああ〜切れ味が良すぎてグサグサいかれた…特に最後の2篇。1篇ずつ読むしかできなかった、苦しくて。

関さんの強さと小田嶋のいまの世代感。うるせーな、細かいよ、めんどくせーな、って感じにする描写がリアルすぎる…

宇佐美先生にキレる場面、その前に感情と経緯が織り混ざってモヤモヤする場面、痛いほど共感した。知らんのに言うなよ!と。「知らんけど」のくだりがとてもよかった。

p.229 事実を知っても「自分に恥じることがないなら、顔も知らない相手の悪口にどうして傷つく必要があるの?」と一蹴して、心底どうでもいいような、なにも変わらない態度でいてくれたのは先生だけだ。
「相手はあなたの魅力を見ようともしていないし、あなたが彼らに従ったところで、今度は別の難癖をつけるだけ。そんな輩に、あなたの大事な心を差し出してしまうのはもったいない。それに、悪い声は際立って聞こえるものですよ。意識して良い声の聞こえるほうに心を傾けて、バランスをとるようにしなさい。あなたを愛して、応援してくれる人のほうが、世界にはずっと多いんだから。私も含めてね」
古式ゆかしい意見に、全面的に同意するわけじゃない。先生はもともとインターネットに疎いから、事態の深刻さがわかっていなかっただけというのも大きいと思う。それでも「炎上してサンダーボルトになれなかった元練習生」のレッテルから逃れて、ただの自分でいられるこの空間はありがたかった。周囲に不穏な気配が漂いはじめた、いまとなってはなおさら。

p.255 ・…・・・・その場で直せないものを指摘して他人の努力を否定して、自分がされたらどんな気持ちになるか想像できないかな」
でも、自分の言葉をそのまま先生にぶつけて傷つける勇気はなかった。自分が先生を傷つけられないことを、知る頭気はもっとなかった。だから代わりに、どこかで聞いた言葉をとっさに掴み取って、ゴミの不法投棄みたいに投げ出した。
「その程度で人の個性がわからなくなるのは、単純にあんたの目が節穴なだけでしょ」先生は答えなかった。少なくともすぐには。その沈黙から降参と肯定の意味を無理やり奪い取り、私は先生の顔を見ないようにしながら立ち上がって相談室を出ると、人気のない夜の廊下を走った。

p.261 え?怒らんよ、間違ってないもん。炙り杏仁に田丸いらんとか、思うのは自由やし。
それこそ個人の感想やろ。ちなみにヨッシー女はこの言葉嫌いやねん。子供のころから、テレビのCMとかで隅っこにちっちゃく「個人の感想です」って書いてあるとムカついたんやって。なら言うなって。好き勝手に言うだけ言って、真面目に聞いてほしいけど間違っても関係ないなんてズルやんって。昔からひねくれてるよな。
私は、あれって関西の「知らんけど」やと思ってる。関東の人は勘違いしがちゃけど、この言葉って責任取りたくないって意味とはちょっとちゃうねん。自分はこうであってほしいしガチでこうやろって思ってるけど、嘘つけへんから言じるかどうかは任せるで、が近いかも。全部帳消しにする魔法やないんよ。スカされても向こうさんの勝手、たとえス力されたところで自分が一度でも言ったらなかったことにはならん。そういう、お約束の言葉として私は使ってる。受け取るかは相手の自由、受け取ってほしいときはほしいなりにがんばる。それさえわかっとけば、なにをどう思おうがええんちゃう?

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2025年05月25日

Posted by ブクログ

章を追うごとに、文学的なヘビーさを増していった。SNS世代や画面越しの芸能人然とした人たちの内面を、文学のフィルターで見ると、かくも剥き出しの心理描写になるのだと。
主語の拡大、マンスプレイニングという過去に自分がどこかでしてしまった器の小さい所業の非を、作中の登場人物を通して糾弾されるような重みがあった。※個人の感想です

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2025年05月24日

Posted by ブクログ

誹謗中傷はじめ様々な言論が飛び交い日夜誰かが炎上しているSNSもとい昨今のインターネット空間。いやはや読んでて背筋が凍る…w令和ロマンくるまが言う「ベタ・メタ・シュールの三すくみ」で自分だけは俯瞰で的確に物事を見られていると思ってる人や最近もはやテンプレ化した「思ってたことを言語化してくれた!」といいね押しがちな読者をガンガンに刺してくる。殺伐としたSNSが苦手な人(そもそもそういう人がこの私の個人の感想まで辿り着くのかは若干疑問の余地があるがw)は閲覧(?)注意な一冊かも。その中で第2話の『純粋に疑問なんだけど』は(このタイトルからしてもう最高!)ラストに少しだけ救いが垣間見えた気がした。

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2025年03月09日

Posted by ブクログ

還暦のおっさんです。
アイドルや推しのことには疎いのですが、色々と学ばせてもらいました。

多層的なので読むのに頭を使いました。
3つ目の「なんで怒らないんですか?」が、一番ツボに嵌りました。

講談社のバタやんのポッドキャストから来ました。

たくさん笑わせてもらいました。

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2025年02月16日

Posted by ブクログ

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それって「あなたの」
感想ですか?

借り物の言葉で、
安全な場所から投げつけられる悪意になんか、
負けない。

推して、推されて、無責任な「感想」に振り回されて、抗って。
氾濫する言葉と格闘する女性たちを描いた全4篇。

切れ味抜群、なのに愉快でクセになる‼︎
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インフルエンサー、
インフルエンサーの本を出版する編集担当、
インターンの大学生と契約職員のおばさん、
アイドルオーディションで最終選考で落ちた候補生

もう読みながら、痛くなりました。
スマホがなかった時代、
個々の言葉は拾いにいかないと収集できなかった時代、
いまはSNSが日常で、
スマホをタップすれば世界中の「個人の言葉」が溢れていて。

通勤電車でも、
一つの車両の乗客全員がスマホを見ていて、
なんか怖くなったことがありました。苦笑

最近、芸能ニュースとかも
たくさんの人たちが自分の言葉をつぶやいていて、
強すぎる共感と、論破的な風潮と、分断。

スマホから離れられる読書で、
スマホやSNSのことを考えて想像して、
ぞわぞわするし、ちょっと怖いし。

だけど本だってある意味、個人の言葉が溢れてて、
なんなら私が書いてるこのレビューに盛大なブーメランです。苦笑

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2025年02月12日

Posted by ブクログ

今っぽい、「あるある」とか思いながら軽く読める話かと思ったら、想像以上にヘビーで、薄さのわりに読み切るにもかなり時間がかかった。現代を生きていく中で心にささくれ立つ瞬間を、これでもかというほど繊細に鋭く切り取っているのは本当にすごいと思った。が、なんとなくこの作品のよさをきちんと感じられる前に読み切ってしまった感があり、周りではよかったと言う人がたくさんいた中で、自分の読解力が全然足りないなとちょっと落ち込んだ。

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2025年07月30日

Posted by ブクログ

SNSなどネット関連の話が中心の短編集。
全4編で、登場人物が少しずつ重なっていたり、『サンダーボルト』という4人組韓国アイドルが全編通して関係していたりと群像劇っぽさもあります。

ネットにはあまり明るくないですが、それでも、あ~こういうコメント、YouTubeで見るな〜など、現実を切り取っている感じがありました。

妊活や炎上、整形のような難しいテーマが散りばめられているのと、強めな言葉も続出するので、読み終わって疲労している感じは…ありました。
でも、こんなに誰かの心の中や気持ちの変化を見て取れる小説もなかなかないので面白く読みました。

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2025年07月23日

Posted by ブクログ

連作短編集4篇
SNSの世界で繰り広げられるトーク。サンダーボルトという4人組のアイドルグループを核にアイドルになれなかった人や応援する人やアンチなどの言葉の応酬。個人の感想が声高に叫ばれる怖さが伝わってくる。

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2025年06月05日

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