【感想・ネタバレ】緑の花と赤い芝生のレビュー

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Posted by ブクログ 2019年06月23日

読み終えた後に、タイトルを見て、なるほど、と思う。
緑の芝生が更に綺麗な緑色になるよりも、見たことのない赤い芝生になろうともがくのは相当大変だろうな。

この物語に登場する二人の女性、志穂子と杏梨。
目指す所は正反対、行動も交わることがない。
そう思っていたけど、根っこの部分は全く一緒なのかもしれな...続きを読むい。
私は27歳の二人からしたら、彼女達の母親の方に年齢が近い。
それでもかつて通ってきた道を思うと、志穂子も杏梨も愛しいし、まっすぐぶつかろうとする志穂子の言動を懐かしく感じる。

この物語を男性が読んだら、どんな感想を抱くのだろう。
息子と父親の関係は娘と母親とは異なるのだろうか?
母親は(私が知っている、もしくは私が想像する母親)、自分が苦しんだ道を娘に味わわせたくなくて、良かれと思って娘に意見する。
けれど娘は自分が目指す先は母親の思い描く先とは異なるから、その言葉の意味を理解できない。
そうやってずっと母と娘が絡まって、次の世代へ、また次へ、と時が流れていくのかもしれない。

初めて読んだ作家さんだったけど、次も何か読んでみようと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年06月01日

女性が読んだ方が絶対共感湧くのだろうが(という感想自体が、この小説で訴えたい内容と相反しているのだが)、これオモロい!

主人公は価値観や人生観が全く違う27歳の女性2人。嫁と小姑、理系と文系、理性と感情、見た目体裁を気にする派とやりたいことを一直線にやりたい派…。ことごとく価値観の違う2人が、ひょ...続きを読むんなことをきっかけに一緒に住むことになり…。

常日頃、生き方、価値観なんて多種多様で、個人個人のやりたいことをやればいいと思っている。自分の生き方に干渉されない限り、人のことをどうのこうのと言うてるのはヒマ人のすることで、そんな暇があったら自分のやりたいことを一生懸命やればいい。そう思っているし、だからこそ、ワイドショーだの週刊誌だの、それらを話題にする連中がキラいなのである。

が、この物語では、したいことをすることで、いたくない場所からなんとか逃げ出したことで、他人の(とはいえ家族親族なのだから余計始末に負えない)生き方価値観に干渉する事になってしまったら…という状況を描いている。

なんとか二人に、そして二人の母親にも自分の納得がいく、少なくとも自分で選んだ道を生きていってほしい。できれば、干渉を極力減らしてやってほしい。そんなことを願いながらページを繰っていた。

後半、二人の境界線があやふやになっていく。そこが嬉しいような残念なような…。境界線があやふやになるってことは・・・自分の人生を生きていくためには、人の事に干渉しないことだけでなく、歩い程度、干渉に対して強く(というか鈍感に)なる必要がある…ってことを、表しているのかなぁ。

主人公の一人、杏梨がブチ切れた時の関西弁が見事。なるほど、津村記久子が絶賛する小説やなぁ~

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Posted by ブクログ 2018年10月27日

『万人に嫌われないために好感度で個性を塗りつぶしたような、この手の美人はかなり判別の難易度が高い。
少しでも特徴を捉えようと細部まで目を凝らしてみたけど、清楚なベージュのワンピースといい、丹念に巻いた髪や睫毛といい、ピンクゴールドを基調としたアクセサリーといい、すべてがどこかで見たような感じでお手上...続きを読むげだった。ただ、当たり障りのないそれらひとつひとつがリスクヘッジのように分散され、その女っぷりを巧妙に底上げしていることだけが伝わってきた。』

『そこで、ちょっと間を置いた。
頭を使うのが苦手なわたしは、もちろんチェスや将棋もできない。でも、王手、とか、チェックメイト、とか言いながら駒を動かすとき、人はきっとこんな気分に違いない。
『東京に出てきたおかげで、晴彦さんに巡り会うことができました』
これでもう、わたしをだれも責められないだろう。』

『この日を灯台にしよう、と決めた。過去は真っ白になり、未来でなにがあってもここに戻れば迷わない。きっと大丈夫、これからなにもかもうまくいく。そう、自分に言い聞かせた。』

『ちょうどそこで、注文していた半熟卵のオムライスが運ばれてきた。
カロリーはゆうに八百越え、コレステロール値も血糖値も中性脂肪値も軒並み上昇しそうな一品だけど、裏を返せばそれこそが外食の醍醐味でもある。』

『賢ぶって人の言葉を深読みしたって、なんにもいいことなんかない。わたしはそれを、よく知っている。』

『やらずに後悔するよりやって後悔したほうがいい、と最初に言ったのがだれだか知らないけど、その人はたぶんよっぽどさわやかな生き方をしていたんだろう。実現しなかったことはいくらでも美化できる。わたしに言わせれば、やっちまった、という後悔ほどたちが悪く、苦い後味を引きずる感情はない。』

『わかってくれとは言わないが、そんなに俺が悪いのか。笑ってみようとしたけどうまくいかない。まさか昭和歌謡に共感する日が来るとは思わなかった。たしかにいまのわたしは、ナイフみたいにとがっては触るものみな傷つけている。中途半端な自分自身が原因で。』

『ただそこにあるだけのものを捨て、自分が心から望むものだけを集めて、そうやって少しずつ生まれ変わるための第一歩として。こんな素敵なものを持っているわたしが素敵じゃない場所に行き着くわけがない、心からそう信じるために。』

『母は傷ついたように言った。実際に傷ついているんだろう。この人はいつもそうだ。いつだって心痛めるのは自分だけで、こちらの権利を根こそぎ奪ってしまう。まるで早いもの勝ちみたいに、あなたはわたしより強いんだからそれぐらい当然でしょう、という顔で。』

『どれだけ論理的に説明してもまるで聞く耳を持たず、あげく対話を放棄して泣き出しさえした母の姿は当時のわたしには理解不能だった。お母さんを困らせるな、と父に叱られてもまるで納得できなくて、正しいことを言っただけで勝手に悲しまれて泣かれるなら、そして自分までその同類みたいに扱われるなら、この人と話し合うことなんか二度とごめんだと思った。』

『ああ、駄目だ。こんな言い方をしてはいけない。夫婦だからってなんでもぶつけていいわけじゃないのだ。家族ならなにを言っても構わないだなんて、傷つけたってしかたないだなんそんなの、
お母さんにそっくりだ。
ぎゅっ、と喉の奥が鳴った。』

『まだだ。まだまだ鳴りつづける。どこまでも追ってくる。こちらが負けるまでいつまでも帰らない。ピンポーン。ピンポーン。ああ、呼び鈴ってどうしてこんな音なんだろう? クイズに正解したときの音。ピンポーン。急にやってきておいて、自分が正しいと言わんばかりに。ピンポーン。これが正解です。ピンポン。拒むあなたが悪い。ピンポーン。うるさいうるさい、ほっといてよ、押しつけがましいんだよ。ピンポーン。』

『マンションやアパートのドアに覗き穴をつけることを、最初に決めたのはたぶん男性だと思う。厳密に言うと「そのままドアを開けるのは不安だという女性からの意見がありますが」「はあ、じゃあ覗き穴でもつけとくか」みたいな感じで、企画会議かなにかで適当に決めたんじゃないだろうか。この穴に目玉を触れさせ、ドア一枚しか隔たりのない距離にいる見知らぬ人間の顔を確認する。そんな一瞬を味わうくらいであれば、わたしなら無視することを選ぶ。』

『いい意味で。便利な言葉だ。自分にとって都合のいい意味で、と言う本音を、さも一般論のごとく置き換えられる。』

『そういう意味じゃない、そんなつもりじゃない、指示代名詞の示す先が永遠にすれ違うことに、きっと彼は気づかない。そして私はたぶん、わかっていて利用しつづける。』

「…それは、わかりません ー 経験ないですから。だけどもしそうなったって、そんなふうに先取りして責められるいわれはありせん。」

『ちゃんと伝えないといけない。たとえ、わかりあえないことがわかるだけだとしても。
この人ではなく、自分のためだ。』

「わかってはいるけど考えることはやめられなくて、そんな自分をかっこ悪いと思ってて、でもその自覚がないのはよりかっこ悪いってこともわかってるから、人に言われるより先に言っておこうってそういう心理だと思います」
「仕事に限らず葛藤とはそういうものでしょう」
「あと一番大きいのが、やっぱりこう、自分でも自分のことが嫌で、客観的にも言ってやりたい気持ちがあるんです。自分で選んだ結果なのになにをいまさら悩んでいるんだ、それだけ恵まれてるくせに、なんにも失ったことなんかないくせに甘えるなって」
「それを客観的と呼べるかは疑問です」
「…はい」
「そもそも『自分で選ぶ』などというのが傲慢ですよ。自己責任論に帰着しかねない危険な発想でもあります。眼前の事物におのずと突き動かされた結果だけが、現在です」

『この世にだれもいないとしても、好きだと言えるものなんてあるんだろうか。
志穂子はそれを持っていて、持っていれば、幸せなんだろうか。』

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Posted by ブクログ 2023年02月12日

専業主婦の母に育てられたリケジョでバリキャリの志穂子と
厳しい教師の母に育てられ家庭に重点を置く典型的女子の杏梨

正反対な二人だったが、志穂子の兄と杏梨が結婚した事で密接に関わる事になってしまう。

自分で選んだ道を信じて進んでいても
選ばなかった方の道を思い悶々とする事は誰でもあるだろう。

...続きを読む著では志穂子VS杏梨だけではなく、それぞれの母親との軋轢も加わり
終始ヒリヒリした描写が続きます。

実の母親との激しい応酬は、その情景が浮かび胸が苦しくなる。

27歳の女性二人のリアルな姿を微細に描いた、考えさせられる家族小説。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年03月20日

2人の対照的な女性の物語。皮肉を言う場面が多いが、皮肉の質が良いというか、読んでいて痛いところをつかれた..!という感じがして、笑ってしまう。例えば以下のような文が痛快だった。
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兄と連れ立って現れた彼女を見たとき最初に抱いたのは好き嫌いよりも先に、「顔を覚えられないかもしれない」...続きを読むという危機感だった。一度写真を目にしていたにもかかわらず、だ。万人に嫌われないために好感度で個性を塗りつぶしたような、この手の美人はかなり判別の難易度が高い。
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実生活でこんなことを言ったら大変なことになる。

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Posted by ブクログ 2019年12月01日

主人公は2人とも27歳。いわゆるアラサー女子を取り巻くあるあるを真逆のキャラクターで描いているんだけれど、アラサー辺りだけで終わる話ではなく、家族、人生の選択に関して永遠に悩む所が浮彫りになった一点を炙り出している痛いヒリヒリする話。

そんなんだから貰い手がないそんなんだから結婚できないそんなんだ...続きを読むからって、いつになったら認めてくれるのよ。なんで嫌な事、嫌って言ったら『もう大人なんだから落ち着け』になるのよ、なんで私は私なのに他の誰かを見習わなきゃいけないのよ、なんでなんでなんでっ!
荒れ狂えば狂うほど母が冷めていくのが伝わってきた、分かっているのに止められなかった。アリ地獄みたいだった。

そもそも「自分で選ぶ」などと言うのが傲慢です。自己責任論に帰着しかねない危険な発想でもある。眼前の事物におのずとつき動かされた結果だけが現在です。あなたは誰かのコピーではない。何者にもなれない。

自分で選んだんだし誰も傷つかない選択なんかないんだしと、振り切って前進して、気がつくと真っ暗な海に1人ポツンと浮かんでいた。悠長に止まったらどちらが前かさえ分からなくなりそうで、振り返ることもできなくなっていた。いつになったらあきらめがつくんだろう。どうせわかってもらえないなら、せめていちいち傷つかない人間になりたかった。北極星を目指して歩く旅人のように、どんなに無謀で孤独な道でも一点だけを見て進みたかった。

同じ様な気持ちに誰しもなるんだろうな…
まぁ同じ立場側に感情移入してどうしても読むんだが…

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Posted by ブクログ 2023年12月16日

正反対だけど家族との軋轢があるのは似ている2人。
本音を曝け出した時すこし近づいたなという感じがした。

肉親だからこそ根本的に考え方が合わないことってよくあると思う。(実際自分がそうだからそう思うのだけど)

毒親という言葉で括られてしまうけど
一生分かり合えない物悲しさ。でもこのまま適度な距離進...続きを読むむしかない感じがわかるなあと。

『お母さん心配してるよ』などのまわりが諭す言葉は大嫌いだから読んでてうあああってなりました。

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Posted by ブクログ 2020年12月02日

立場も環境も価値観も違う2人の女性。お互い疎ましく思い、でも少しだけ憧れもあり。。ほんの少しだけ心が繋がる部分もあるけど、街で肩がぶつかり合う程度の繋がりに感じた。こういう2人が仲良くなるって現実難しいよねー。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年11月12日

学歴も職業もハイスペックな志穂子。
新婚で家庭のことを中心に生活する杏梨。

兄嫁と義妹という関係になった、ともに27歳の生い立ちも自分で選んだ人生の立場も正反対の2人が
すれ違いながらも、互いの思う苦悩を感じ取って、もがきながらも生きる様子。

専業主婦のおっとりした母に女の子の価値観を押し付けら...続きを読むれてきた志穂子。
ひとり親として働きながら自分を育ててくれた母の存在を恐れる杏梨。

勉強も仕事も、人一倍に努力してきたのに、結婚もしないでと言われ続けること。
結婚して、仕事や家庭のことを一生懸命しているのに、義母にとって大切なのは、嫁ではなく娘で、子供のことを聞かれること。

女、つらー。
題名が緑の花と赤い芝生じゃなくて、志穂子がやってるみかん系の名前のほうが良かったのでは。。。?

杏梨の母の病気とか、杏梨の仕事がいまいち必要かのか的なとか、ところどころに不明点?があって
もう少し、何かがほしかった(誰目線

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Posted by ブクログ 2019年10月05日

文章が好き、というよりは、「女」としての思考、思想、価値観が好きと思える作家。劇的にハマった、というよりはじわじわ好きになったなあ。本作もよかった。

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Posted by ブクログ 2019年07月07日

あらすじより義姉妹の対立抑え気味で良かった。
本音じゃなしでわかり合うのは絶対無理。どうせケンカするなら、本音でしたいなあ。女たちは腹のウチ出してるけど、男たちがなんだかヌルヌルしててやだわ。言わなくてもわかるだろう?みたいのは、もう通用しないのになあ。

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Posted by ブクログ 2019年06月20日

緑の花と赤い芝生。
伊藤朱理さん。

結婚したばかりの27歳。主婦。
義理の妹は、27歳独身。
同い年の2人。

2人の立場。生い立ち。考え。
女性の生き方。

言葉の一つ一つが、重く、胸に響いた。

おもしろかった。


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Posted by ブクログ 2019年05月08日

もがいている27歳の正反対の女性。片方は既婚、片方は独身だけど、それぞれの親との関わり方が興味深かった。

読んでて、ときたま、しんど…ってなる時もあるくらい、良い意味で生々しい。

2人の話が交互に書かれているから、途中でついていくのがしんどくなるくらい、生々しかったなー。

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Posted by ブクログ 2019年02月13日

全くタイプの違う27歳女子二人,兄嫁と義妹という難しい関係と嫁姑問題があって,しかも二人がそれぞれ母親との相性が悪い.女同士の微妙な空気感を上手くすくい取って面白い.ただ,夫であり兄である男の存在感のなさを筆頭に,出てくる男がからっきし魅力がなかった.

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Posted by ブクログ 2019年01月26日

今の若い女性の感性で二種類の角度から描かれている少し問題含みの日常。
でも昔のおじさんの立場から言わせてもらうと、これってわざわざ人生を難しくしてる感じ、もっとストレートに生きたほうが楽じゃないって、余計なことを思うけど。

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