水谷竹秀の作品一覧
「水谷竹秀」の「だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人」「脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「水谷竹秀」の「だから、居場所が欲しかった。バンコク、コールセンターで働く日本人」「脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
小説・文芸
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Posted by ブクログ
リアル本にて。
大多数の人と同じく、「なんで騙されるんだろう?」と思ってきた。ただ、この本を読み終わって、入り口さえ整えば、自分も引っ掛かってもおかしくないことを認識した。というか、この可能性を念頭に置いて生活をしようとすると、まともに知り合いを作れない。。。
前半は被害者側のインタビュー、後半は国際ロマンス詐欺の温床となっているナイジェリアの首都ラゴスでのヤフーボーイ(国際ロマンス詐欺犯)へのインタビューという構成。
大まかに国際ロマンス詐欺の流れは以下のとおり。
入り口は気軽なコミュニケーション相手として(英語でのコミュニケーション相手としてやり取りしていた、というのがとてもわかりみが深い)、そのうち孤独を埋める相手として、だんだん洗脳されていき、最後は騙されたことを認めたくない一心で引き返せないところまで突っ込んでしまう。。。
さぞかし組織として綿密な計画と共に一つ一つの詐欺に対して周到に取り組んでいる、という印象を前半では受けとる。
ただ後半に紹介される実行犯たちは、一応教育組織的なものはあるようだが、どちらかというと悪友に唆されて簡単に手解きを受け、その道に入る、単独犯の印象を受ける。もちろん、前半の被害者と後半の加害者は同じ詐欺事件ではないので、単に犯人が違うだけが理由かもしれない。ただとにかく、ナイジェリアにおける国際ロマンス詐欺のハードルの低さに驚いた。本文でも書かれているが、そのハードルたるや、日本における未成年者の飲酒・喫煙に近い(もちろんそれもダメだが)。そして、ハードルが低いため、詐欺を試みる人数がとにかく多く、かつその一人一人もとにかく絨毯爆撃のように友達申請をせっせと送っているので、一つ一つの試みの成功率は知れていても、全体でみると大きな金額の詐欺に成功するケースがある、ということのようだ。さらに、これもハードルの低さからか、その成功例をSNS等でサクセスストーリーとして吹聴しているらしく、それを閉塞感に支配された若者が見て、また詐欺に流れる、という悪循環が発生している。
なんにせよ、想像以上に身近な犯罪であることを認識し、どんどん変わる手段も押さえていかなければ、と改めて身につまされた。
Posted by ブクログ
タイのバンコクに日本企業のコールセンターがあるそうです。オフショアってやつですね。
そこで働くオペレーターたちは服装も自由、当日欠勤なども厳しく言われることもない、日本語しかできなくてOK。刺激もない楽で退屈な仕事だけど、ある程度の金額がもらえるので応募してくる日本人は多いそう。
「なんか良さそう」と思うけど、コールセンターで働く人たちの地位は現地採用者の中でも低く、賃金も最低ラインより低め。タイの物価を考えると十分暮らしていける金額であり、日本での居場所を見つけられなかった人たちは退屈な仕事を我慢しコールセンターで働くのだといいます。
OBを含むオペレーターたちへのインタビューを通じて見えてくるのは、日本社会の閉塞感です。元気で未来への希望に満ちたタイの雰囲気から眺めた日本は、ギスギスした雰囲気や、40代以降の再就職の難しさ、将来への不安がより強く感じられます。そうした現状から逃れるように、少しの収入で暮らせるコールセンターにしがみついても、タイに残りたいと願う気持ちは、私にも共感できるものでした。
自分自身も、毎日定時まで働いて出世も見込めず「老後の資金が不安だ」「このままでいいのかな」と漠然とした不安を抱えながら生活をしていますが、そんなあくせくした働き方や生活に疑問を持つというきっかけをくれる本だと思いました。
タイで生きる彼らの姿は、単なる“逃避”ではなく、息苦しい日本社会から一歩外に出てみることで見えてくる、新たな生き方や価値観のヒントなのかもしれません
Posted by ブクログ
本書はフィリピンはマニラを拠点に在住、取材執筆し、『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫)』によって開高健ノンフィクション賞を受賞した筆者による「日本を脱出した」人々のルポ。
本書はフィリピンはマニラを拠点に在住、取材執筆活動を行い、著書『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫)』(集英社)を上梓し、それが開高健ノンフィクション賞受賞した水谷竹秀氏が、フィリピンと日本の間を往復しながら3年間にわたり徹底取材した日本を脱出し、フィリピンへと移り住んだ高齢者達の「悲喜こもごも」を描いたルポルタージュです。
以前、水谷氏の前著である『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」(現在は集英社文庫)』を読んだときは
「あぁ、これは村上龍の小説『希望の国のエクソダス (文春文庫) 』(文藝春秋)の老人版なのかなぁ。」
などと思っていたものですが、実際、現地へ移住するとなると必ずしも一筋縄ではいかぬものだな、ということがよくわかりました。
僕は10代のころから海外で暮らし、そこでできれば所帯を持って…。という今にして思えば何とも甘い考えを持っていたのですが、本書の舞台であるフィリピン―一年中温暖、物価は日本の3~5分の1、やさしく明るい国民性、原発ゼロ、年の差婚当たり前。これだけ聞けば「パラダイス」に思えるかもしれませんが、本書に記されている身もふたもない「現実」に打ちのめされてしまいました。
本書に登場する「脱出老人」たちは誰もが
「日本で寂しく貧しく苦しい老後を過ごすなら、いっそのことフィリピンで幸せな老後を送りたいー。」
と現地に来るわけですが、恋人候補200人のナンパおじさん、19歳の妻と1歳の息子と、スラムで芋の葉を食べて暮らす元大手企業サラリーマン、東日本大震災を機に、東北から原発ゼロのフィリピンに移住した夫婦。
ゴミ屋敷暮らしだった母親をセブ島に住まわせる娘、24歳年下妻とゴルフ三昧の元警察官。90歳の認知症の母親をフィリピン人メイドと介護する夫婦、「美しい島」で孤立死を選んだ元高校英語女性教師……。と本当に「多士済々」でありまして、僕はかつて何度か
「有坂君。海外でやっていくっていうのはねぇ。大変なものなんだよ。」
と言われたことがあったのですが、本書を読んでその理由がよくわかりました。
その中でも特に感じたのは社会保障制度や医療制度の問題。フィリピンでは(ここに限らずアメリカなどでもそうですが)いい医療を受けたいなら
「地獄の沙汰も金次第」
のようなところがあるみたいで、医療保険や年金などをしっかりとかけておかなければ現地での治療費(時には日本円にして数10万円から100万円単位となる)が全額自己負担となることもあるのだそうで、自分や子供の治療費の工面に苦労する姿を見ていると、やりきれない気持ちになったことを覚えております。
今のところ僕はフィリピンへの移住は全く考えておりませんが、彼らのような人たちもいる(あるいはいた)ことを、しっかりと記憶にとどめておこうと思っております。
※追記
本書は2019年5月16日、小学館より『脱出老人: フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち (小学館文庫 み 17-1)』として文庫化されました。