小説作品一覧
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-著書曰く、本書はありとあらゆる怪異を「雑煮のごとく放り込んだ」救いなき一冊である。目次には、それこそ市のように、極彩色の恐怖が尋常ならざるオーラを放ちながら犇いている。誰かに読まれることを希求し、熱く揺らめきながら並んでいる。そのどれもがおぞましく、ひとたび頁を繰ったならば、ただでは済まされぬ毒気を孕んでいる。それだのに、我々の指は止まらずに禁断の扉を押し開けてしまうのだ……。それが人間の業であり、すべての怪異の大本でもあるように思う。恋も恨みも一線を越えれば鬼となる。理性と良心はいともたやすく侵蝕され、暗い欲望に身を任せる悪鬼となってしまうのだ。実話怪談を読むこと――それは体験者の生涯に素手で触れるようなものだ。その業に、鬼に、触れる……どうか覚悟を持って読んでいただきたい。
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-九段下の裏通りにひっそりと佇むレトロな喫茶店「摩楼館」。珈琲から菓子に至るまでこだわりの逸品が味わえるが、あいにく客はほとんどいない。店を切り盛りするのは謎の雇われ店主・如月翔太郎。彼の客を客とも思わぬ態度が流行らぬ原因であることはまず間違いない。唯一の常連客はフリーライターの一条明。主な仕事である実話怪談の取材に、人の少ないこの店を用いているのだ。厳つい傭兵のような容姿ながら心優しい一条と、シニカルなクールビューティー如月、正反対の二人に共通するのは「怪に魅入られてしまう性質」。今日も摩楼館では終わらぬ悪夢を抱えた体験者が、恐怖からの解放を願って告白にやってくる……。一見小説のような実話、怪を呼ぶカフェを舞台にした新感覚の実録怪奇譚、誕生!
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4.0過去の怪奇体験がトラウマとなり、その時の恐怖から逃れられないでいる者。血と地の因果、祟りともいうべき影に付き纏われ続ける者。はたまた己の内から這いずる恨み、憎しみの念に縛られ、自らが異形と化してしまう者。彼らはすべて、怪という名の牢獄に心を囚われてしまった犠牲者だ。怪と出会ってしまったその日から――時間は止まり、魂は無間の闇へと落ちていく。どこまでも深く、どこまでも遠く……。だが、落ちゆく魂を蝕むのは恐怖ばかりでない。時に恍惚とした何か甘いヴェールとなって恐怖を包んでいる。それこそが、最も恐ろしい怪の罠なのかもしれない。数々の戦慄譚を発掘してきた久田樹生が満を持しておくる最凶実話怪談23話!
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4.0
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3.3「雨はれて、月おぼろにかすむ夜――」三島由紀夫、谷崎潤一郎も愛した怪談『雨月物語』を大胆・鮮やかに再現。 【祟り神】天皇家が700年間も恐れた怨霊『白峯』 【元祖ボーイズラブ!?】試される義兄弟の絆『菊花の契り』 【映画で有名】帰らぬ夫と待つ妻『浅茅が宿』 【不思議体験】魚に変身した画僧の物語『夢応の鯉魚』 【異形のモノ】うかつな親子が遭遇・高野山の怪『仏法僧』 【驚愕のラスト】お告げに背いた夫婦『吉備津の釜』 【ずっと一緒に…】追う女・追われる男『蛇性の婬』 【人喰い】美童に溺れた僧の猟奇的事件『青頭巾』 【予知】お金好きの武士と黄金の精霊との問答『貧富論』 ……全9話美しい言葉で綴られた中世日本の残酷な物語。心の奥にじわりじわりと染みこむ――!
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3.3宗介とは半年前、街で偶然再会した。学生時代の友人で、ひとから見下されるような仕事をしている僕とは違い、将来を嘱望された秀才だ。その彼が勤めていた大手コンサルタントを辞めて、行くあてもないと言う。仕方なく一晩だけ泊めるつもりが、その後も居着いて、今ではうちの居候。普段は暢気にヨガの修行をして過ごしている。そんな彼は、僕が仕事で遭遇した事件を持ち帰ると、瞬く間に解決していく探偵へと姿を変えるのだ。だけど、僕は知っている。宗介自身が誰より深い悩みを抱えていることを……。暗い過去を持つふたりの青年が、五つの事件を通して経験していく出会いと別れ。爽やかな余韻を残す連作短編集。/解説=千街晶之
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4.0北欧で消息を絶った日本人女性の精神的彷徨。 織物工芸に打ち込んでいた支倉冬子は、一枚のタピスリに吸い寄せられ、魅惑されてしまう。ついにはヨーロッパに留学する決意までした冬子。だが、冬子は、ある夏の日、その地方の名家ギュルンデンクローネ男爵の末娘エルスと孤島にヨットで出かけたまま消息を絶ってしまう。 冬子が残した手記をベースに、生と死、または愛の不安を深く掘り下げた小説となっている。絶対的な孤独の中、日本と西欧、過去と現在を彷徨しながら、冬子はどのように再生していくのか……。 辻邦生が自著『生きて愛するために』で語った「死というくらい虚無のなかに、<地上の生>は、明るく舞台のように、ぽっかり浮かんでいる」という彼の死生観とともに、西欧的骨法によって本格小説を日本に結実させんとした、辻文学初期傑作の一つである。巻末に「創作ノート抄」を併録。
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3.0その夜、ナイスヴィルの町で一家四人惨殺事件が起きた!犯罪捜査部のニック刑事たちは、容疑者の少年の行方を追う。だが、その少年は廃棄された地下の水道トンネルで奇怪な姿で発見された。同じ夜、ベテラン警官がいきなり町のチンピラを射殺する。今まで銃を抜くことすらなかった男がなぜ?そして、その遺体を遺棄する手助けをしたのは、半年前に死んだはずの、あの男だった……注目のホラー大作、いよいよ最終章へ。
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4.0ヨーロッパじゅうを遊び歩くマイロとの結婚をすこしだけ後悔しているエイモリー。マイロが久しぶりに帰宅したその日、エイモリーのもとを元婚約者が訪れた。どうしても頼みたいことがあるので海辺のホテルへ一緒に来てほしいという。夫が好きに旅行するならわたしがおなじことをしてもいいでしょう? しかしホテルでは殺人事件が待ち受けていて――上流階級の奥方が謎と夫にふりまわされるキュートなコージー・ミステリ。
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4.0パナマ文書の流出により注目を集めるタックスヘイヴン(租税回避地)。 このタックスヘイヴンをテーマにした金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン Tax Haven』が、電子書籍限定の合本版で登場! ■『マネーロンダリング』 香港在住で、もぐりのコンサルタント・工藤をある日、美しい女・麗子が訪ねる。 「5億円を日本から海外に送金し、損金として処理してほしい」彼女の要求は、脱税の指南だった。 4ヶ月後、麗子は消えた。 5億ではなく50億の金とともに。 すぐに工藤は東京へ。 麗子と50億の金はどこへ? マネーを知り尽くした著者による驚天動地の金融情報小説! ■『タックスヘイヴン Tax Haven』 東南アジアでもっとも成功した金融マネージャー北川が、シンガポールのホテルで転落死した。 自殺か他殺か。 同時に名門スイス銀行の山之辺が失踪、1000億円が消えた。 金融洗浄(マネーロンダリング)、ODA、原発輸出、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ……。 名門銀行が絶対に知られたくない秘密、そしてすべてを操る男の存在とは? 国際金融情報小説の傑作! ※本作品は『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン Tax Haven』を1冊にまとめたものです。 ※姉妹作品である『永遠の旅行者』もあわせてお読みください。
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4.5ジャズが目を覚ますと、あいかわらずトランクルームのユニットに閉じこめられたまま。そばにはふたつの死体が……。これではジャズが殺したと疑われることは必至だ。一方、コニーは、脱獄してニューヨークに潜伏しているビリーの手に落ちてしまう……。ジャズの、コニーの運命は? ハット・ドッグ・キラーの黒幕は? みにくいJとは? 祖父の墓に納められていたビリーの本に書かれている謎の言葉〈カラスの王〉とは? ジャズはシリアルキラーであるビリーの跡継ぎとなってしまうのか? そして驚愕の……。驚異の青春ミステリついに完結。
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4.0【英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞】1919年のニュー・オーリンズで、斧を使って殺人を繰り返す、アックスマンと呼ばれる犯人。「ジャズを聴いていないものは殺す」と予告までする殺人鬼を懸命に追う男女がいた。人種差別の強い街で、黒人の妻がいることを隠して困難な捜査を続けるタルボット警部補。ある事情から犯人を捕まえるようマフィアに依頼された元刑事のルカ。ジャズマンと共に事件の解明に挑む探偵志願の若い女性アイダ。彼らの執念で明かされる衝撃の真実とは? 実際に起きた未解決事件をもとに大胆な設定で描く、英国推理作家協会賞最優秀新人賞作。
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4.1今年いちばん泣ける映画、もうひとつの物語。 余命わずかと宣告されたご主人さまは、自分と同じ姿をした悪魔と取引をした。「この世界からモノを一つ消す。そのかわりに、キミの命を一日ぶんだけ延ばす」と。電話、映画、時計……。モノが消えていくたびに、ご主人さまと結びついていた人の記憶までが失われていくようだ。そして悪魔は、世界から猫を消すと提案する。ボクのことなんて消してしまっていいんだよ、ご主人さま……。最後に、飼い主が選択した決断とは!? 感涙のベストセラー原作の映画『世界から猫が消えたなら』を、主人公の飼い猫であるキャベツの視点で描いた、感動の物語。
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-【概略】: あたまのコリをほぐします。 ショートショート73話。 1話10秒から3分ほどで読めます。 総文字数:約5万3千。 【目次】: 【純文学】風変わりなひと/スイート・ハニー/カッチョイイ話/スーパークールビズ/探偵・如月丈一郎/いやし/新語・ことわざ/ライン/海辺の恋/マスオさんの憂うつ/詐欺師/トッピング/ババビバブ国王/人生相談/一文話/ある村で/合併ラーメン/珍棒流毛筆塾/庭/ジョンからのメール/駅まで十分 【小休止の歌1】農業スパイクの歌 【SF・ホラー】イドぼこ星の生態/夢から/ビーズあたま/地理/ひゅるるるぅ~/前衛芸術/一心同体/遠い殺人/不安全食品/終電二本前/朝の出来事/ドアのむこう/ほとけのごらく/スーパーボール/押入れ/へんだ像 【小休止の歌2】玉音ラップ 【ことわざ・格言】無知/先人に学ぶ/自助努力/修行/よそおい/七転び八起き/情熱/道/幸・不幸/満足/信心/横取り/自分の始末 【小休止の歌3】いん きん きん(歌・大沢悠里) 【ファンタジー】分子ちゃん/せまいかにぃ~せまい1/禁断の恋/ゆめ太郎1/ふきさらし~せまい2/赤い女/じいちゃんとタバコ/一畳宅~せまい3/ゆめ太郎2/夢で/散歩~せまい4/キリンとカメ~ヤンデルセン童話/ゆめ太郎3/バトル~せまい5/試験/トースター/ゆめ太郎4/雪の日に/花/坂道自転車
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-【あらすじ】 春たけなわのある日、亀戸天神へ参拝した帰りに、水のぬるんだ、川沿いの通りを陽炎に纏いつかれながら来ると、どこからともなく、遠くで鳴物の音が聞こえ始めた。 「狸囃子というんだよ、昔から本所の名物さ。」「あら、嘘ばっかり。」 ちょうどそこに、美しい女と、若い紳士が居合わせて、こう言葉を交わしたのを松崎は聞き取った。 気をそそって人を寄せる、その囃子に誘われて来ると、ここにも、そこにも、ふらふらと、春の陽を中へ取り込んで、白く点したような行燈を軒に掛けた、木賃宿の並ぶ場所。 周囲とは場違いな、大きく立派な空家が一つあって、それを囲む、二間ほどの高さの古い船板塀の前に、お玉杓子が群がって押し競饅頭しているように、子どもが大勢集っていた。 そこに敷かれた、じめじめした筵の舞台で、飛んだり、跳ねたり、ばたばたばたと演じられていた子ども芝居を何気なく観始めると、先ほどの二人連れが、やはり囃子に導かれて来たらしく姿を現した。 その奇妙な芝居の中で、近頃亡くなった近所の評判娘、忘れ得ぬその娘の名を松崎は耳にする。 そして、美しい女もまた、その名に、帰りかけた足を止めたのであった。
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-【あらすじ】 北陸に旅行して、何かのついでに金沢をお通りになる時、もしあなたが珍しいものを好む心をお持ちならば、「化銀杏の旅館」にお泊まりになるといい。 寝床に入って、夜半の鐘声が森と聞こえ、凄まじい風がざッと吹いて身に沁みる時、長い廊下の最端に、ひたひたと足音が起こり、夜の寂寞を破って近づき来たり、障子の外に黒い影がさッと映って、諸君の寝息を窺うことだろう。 その時、静かにしていなされば、影はすッと障子を開けて、後ろ向きに銀杏返しの髪を見せたまま、諸君の枕辺に近づくはずだ。 諸君が真っ白な細い顔立ちを一目見て、思わずぞッとなさると同時に、影は行燈の火を吹っ消して、闇の中を走り去る… 本作はこの幽霊の謂われを物語る。 【あとがき より】 本書は、明治後期から昭和の初めにかけて活躍した作家、泉鏡花(1873-1939)の作品の現代語訳である。 鏡花の作品世界に満ち溢れる、美妙幽玄な魅力を音に聞き、それを味わってみようと足を踏み入れたものの、特異な文体によって描き出される風景の綺羅のような輝きに目を眩まされ、道半ばで現の世に戻らざるを得なかった人はけっして少なくないだろう。 訳者が目指したのは、現代の一般的読者が、大きな困難を感じることなく、内容を把握しながら読み通すことのできる文章に仕上げることであった… 【訳者略歴】 白水 銀雪(しろみ ぎんせつ) 慶應義塾大学大学院博士課程中退(専攻:数学) システムエンジニア・プロジェクトマネージャー・コンサルタントとして、宇宙分野を中心とする科学技術系システム開発に従事 現在、蓼科にて山暮らし
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3.7「小説家になろう」『お仕事小説コン』優秀賞受賞! 手助けしてやるよ、あんたのためじゃなくメガネのために―。 OL・志乃は仕事のストレス解消にと出かける途中、路地裏でおしゃれな店『Granz』を発見する。看板には「わがままな眼鏡店」とあり、首を傾げつつ店に入ると無愛想すぎる店員・天王寺がいた。第一印象は最悪だったが、メガネを見て悩みを言い当てたり解決する不思議な彼は、どんなことよりもメガネを愛する究極のメガネ男子で…? 客に冷たくメガネに優しいお店へようこそ―。
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3.3妖しい質屋に持ち込まれる物はいわく付き?金目の物よりも欲しいのは…。不穏な事件が幕を開ける――。 妖しい質屋に持ち込まれる物はいわく付!? ダーク系ライトミステリー! 新卒で入った会社を理不尽な理由でクビになった千里は、家賃を払うため両親の形見の結婚指輪を換金しようと「質屋からす」を訪れる。しかし店主・烏島に全く相手にされず意気消沈して店を出ようとすると、ある取引を持ちかけられた。それは千里の『ある能力』を金で買いたいというもので――。烏島が引き取るのは金・銀・宝石ではなく、金の差し歯が入った小瓶、客の歴代の恋人の合鍵の束、そして焼け焦げたペンダント。金目の物より客の大切なものが欲しいという妖しい店主の秘密とは……。
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-泉鏡花の小説「日本橋」の現代語訳。 【あらすじ】 雛の節句の明くる晩、宵に少し降った雨上がり、月は潜んで朧―と言いたいところだが、実際は黒雲が滲んで暗い、一石橋の欄干際。 そこに立つのは、遺憾ながら野暮な野郎の影二つ、しかもその一つは警官である。 もう一人の男が、先ほどから流れに臨んで辺りを見回し、新聞紙に包んだかなり重量のあるものを川へ放り込んだのを見て、警官が、今のは何か―と問うと、男は、姉の志としてあるものを流した―と答える。 その説明に警官が納得せず、尋問の続いているところへ、稲葉家の看板芸妓、錦絵のお孝が微酔い加減で姿を現し、わたしも同じことをしに来たんですよ―。 男は大学の生理学教室に籍を置く葛木晋三。お孝と並び称される滝の家の清葉に姉の面影を見て、長年恋い慕ってきたその思いを、今晩打ち明けたが振られたと言う。 その話が心に沁みたお孝は、清葉への対抗心もあり、葛木の手を引いて抱き込んだのであったが… 激しく、悲しく、そして美しい、人の情念の綾を見事に織り上げた傑作。 【訳者略歴】 白水 銀雪(しろみ ぎんせつ) 慶應義塾大学大学院博士課程中退(専攻:数学) システムエンジニア・プロジェクトマネージャー・コンサルタントとして、宇宙分野を中心とする科学技術系システム開発に従事 現在、蓼科にて山暮らし
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-堕ちてこそ、人生! ゲス街道まっしぐら男の、究極の苦悩を一瞬にしてギャグに転換したのは、欲望の掃き溜めで働く、美しい風俗嬢のひと言だった―― 黄昏迫る大都会・東京。大女優の妖しげな唇から発せられた驚くべき真実。蘇るニューヨーク、パリ、アリゾナの記憶。裏切りと救済、憎悪と恩義。マイルス・デイビスの奏でるアランフェス協奏曲の旋律が、ろくでなし男の胸を掻き乱す。愛なき男の魂の彷徨を描く、ある夏の日の数時間の狂乱の物語。男は果たして恩人の祭壇に辿りつけるのか?! 迸るイメージの奔流。荒々しく、大胆な文体。予測不能の展開。 第121回文学界新人賞3次予選で散った、限りなくエンタメに近い哀しくも「笑える」純文学小説が、オリジナル電子書籍でゾンビのごとく復活
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-全世界中の人々に愛された伝説のバンド、The Beatles。 そんなビートルズの衝撃フィクションが登場! 【序文より】 このフィクションであり、歴史関連書である本書を通して、作者のスティーヴン・レイディスは、読者に「1965年に起こった交通事故でポール・マッカートニーは本当に死んだのか?」という疑問を問いかけ、答えを提示した。 60年代半ばから後半にかけて、奇妙な噂が流れた。それは、伝説的ロックバンド、ザ・ビートルズのメンバーであるポール・マッカートニーが実は交通事故に遭い、死んでいたというものだ。その真実を知る手掛かりが、曲の中やアルバムジャケットに隠されているという噂がファンの間で流れ、ビートルズのアルバムは何百万枚と売れ、アルバムセールスは急上昇した。 噂は次第に、ポールが誰かに殺害されたという陰謀説にまで発展し、人々はますます混乱していった。信じがたい噂は真実なのか? ポール・マッカートニーは本当に死んだのか? だとしたら、今も生きて、みんなの前にいるポールは一体誰なのか? …etc。 続きは本編で御覧ください。 【著者】 スティーヴン・レイディス
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3.0実話怪談としては長編と言ってもいい50ページを超える大作「撃墜王」「背中」、30ページを超える中編「恋の見立て」「ヒューム」を含む全8作を収録。どれもこの長さでしか収められない途方もない怪奇事件である。長きにわたる真摯な取材によってしかなしえない究極の実話怪談と言っていいだろう。恐怖はふいにやってくる。首筋を撫でる北風のように、荒々しく巻き上げるハリケーンのように、あなたを突然襲い翻弄する。それは見えないし、避けることもできない。生きている限り、あなたの呼吸する空気にもはや「それ」はいるのだから……。じっくりと呼吸するようにこの濃密なる恐怖を堪能していただきたい。謎に包まれた因果をひも解く昂揚感、妖しくも馨しい昭和の匂い、すべてが実話であるという衝撃を噛みしめながら――。
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4.7実話怪談は作家の頭の中で創り出された恐怖ではない。怪事の生き証人たる体験者に取材し、彼らの記憶から引きずり出してきた本物である。ゆえに一人の作家が短期間に大量生産することは難しい。よほどの人脈と運、労を惜しまぬ行動力がなければ不可能である。だが不思議と「来る時期」があるという。怪談の方から寄ってくる、気味が悪いほどに集まってくる魔の時期が……。今回、その魔が3人同時にやってきたらしい。集まった草稿はのべ850ページ。どれもこれも本物だけが持つ厭なオーラを醸していたが、その中でも特に強烈な異臭を放つ、アクの強い逸話だけを集め200ページに絞り込んだ。収録された話はまさに恐怖の精鋭たちといっていい。己が持つ毒で読者諸君を痺れさせ、不安の闇に引き摺り込む真夏のヒットマン。打たれてみるのも一興、恐怖の毒ほど馨しく甘いものはないのだから――。
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3.5霊だの怪奇現象だのにはとんと縁がない――。大部分の人間はそう思って生きているし、それゆえに見てみたい、聞いてみたいというおかしな願望を抱くものだ。だが、果たして本当にそうだろうか。幼い頃の記憶に「あれは一体何だったのだろう」と首を傾げるようなことがありはしなかったか。多くはおやつを食べれば忘れてしまうような些細な引っかかりだったかもしれない。けれどもそうした違和感という名の不思議を感じたことのある人は意外と多いはずだ。怪はけして遠い世界のものではない。我々のすぐそばで呼吸し、そ知らぬ顔で紛れている。縁がないのではなく、それに気づくか気づかないかの違いだけだとしたら?本書には気づいてしまった57人の体験談が収められている。紙面から伝わってくるのは溢れんばかりの恐怖と嫌悪。悲しみ。懐かしさ。小さな怪の一粒はそれに気づいた途端膨れ上がり、圧倒的な彼岸の魔力で我々を包み、翻弄する。あなたも本書を読めば、記憶の片隅に埋もれていた「何か」を思い出すかもしれない……。 怪と不思議に魅せられて――神沼三平太、ついに単著デビュー!書き下ろし実話怪談57話!
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-アヤカシ、物の怪は実在するか、否か。その答えはいまだ証明されていないが、幽霊、心霊の類よりさらに疑われてきたことは否定しようのない事実である。また、「妖怪は怪談の墓場」とも言われる。怪異が妖怪の仕業だというレッテルが貼られた時点でその怪談は死ぬ…つまり、怪談の命である恐怖が消えてしまうということらしい。だが、本当にそうだろうか? 平安の世からその存在が囁かれている物の怪、アヤカシの類は時代の中で繰り返し誰かに目撃され、同じ恐怖を体験されてきたからこそ、現代まで語り継がれているのではあるまいか。単なる見間違えや勘違いではあり得ない強烈な存在感がそこにある……だからこそ胸底から恐怖が沸き起こるのだ。かつてマイクロマガジン社から出版された幻の傑作「妖弄記」に、今回書き下ろしで新たな目撃譚・体験談を収録して復刻。知る人ぞ知るアヤカシの名著がいま甦る!
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-彼岸への旅立ち――帰り道なきその船出に際し、心の旅支度が完全に出来て逝く者がどれほどあろうか。死を予期していても恐怖と未練を洗い流し、心の整理をつけることは難しい。ましてや突然の事故・災害で否応なく旅立った者たちの無念さは計り知れない。残していった者への情愛、そして恨み……此岸を離れてもきつく小指に巻き付いた執着の糸はどこまで行っても切れることはない。この糸が切れるまでは、死んでも死にきれない。けして浮かばれないのだ。無念の炎に抱かれた死者の魂はこの世に舞い戻り、生者に強烈なメッセージを送ってくる。恨みをはらそうとする恐怖の怪現象、愛するものへの吉作用の不思議現象。そして時には、彼らが果たせなかった何かがを遂行してほしいという「依頼」が届くこともある。これはそんな死者からの戦慄の頼み事である……。 数人の怪談ライターの下を渡り歩いた超曰くつきの怪談がついに加藤一の手で成仏する。衝撃戦慄の長編実話怪談『位牌の遺言』収録!
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4.0土と石に纏わる怪「哭塊」、風や空気に纏わる怪「風怨」、水や液体に纏わる怪「水呪」と続いてきた四大元素シリーズの最終巻がついに完成した。火と炎に纏わる禍々しき怪の数々を蒐集した戦慄の異形譚の登場である。「炎・焔」は辞書によると、「妬み・怒り・怨みなど心中に燃え立つ激情をたとえて言う語」とある。まさに怪そのもの、最終巻に相応しいテーマとなった。蝋燭のように小さく揺らめく火から、世界を焼き尽くす劫火まで、炎は命そのもののように燃えている。ものは言わねど狂おしく、その情念で我々を飲み尽くそうと狙っている。間違いなく、シリーズ中もっとも危険な1冊となった。ページを繰る指先が熱くなってきたらご用心、ご用心……。
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-実話怪談における神沼三平太のイメージは、おそらく「軽妙」ではなかろうか。すなわち、怖すぎないが不思議で奇異な話を集めてくるのが得意、といったイメージである。が、今回そのイメージは鮮やかなまでに裏切られ、突き崩された。著者自ら「深刻な本」と称する本作は、最初から最後まで重苦しく、陰惨酷悪なガチ怪談で埋め尽くされている。前書きに「読んでいい話だなと思うような話は一つもない」「健康を損なうおそれがあるので読みすぎに注意」とあるが、まったくもって冗談ではない。本気の忠告である。しかしながら、それだからこそ本書は怪談ジャンキー諸君においては垂涎の作となっていること請け合いだ。この際、心優しい忠告など無視して、恐怖を求める本能のまま貪るように味わっていただければ幸いである。きっと、貴方の世界が、変わる――。
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-人死にがあったところに霊が出るのはわかりやすい話だが、「店」というのもまた怪とは密接な間柄にあるということをご存知だろうか。人と金が集うところ、怪あり…と言っても過言ではない。食欲、性欲、金銭欲、そこにはありとあらゆる欲が渦巻き、負の念が逆巻いては躍りくねり、訪れる者を飲み込もうと待ち構えている。楽しげに食事や買い物をする我々のすぐ横で、闇はぱっくりと口を開けているのだ……。飲食店から水商売、コンビニからクリーニング店まで、恐怖箱の人気怪談作家陣が「店と客、商売に纏わる怖い話」をテーマに今年も絶品恐怖を集めてきた。真の怖さを競う年に一度の実話怪談アンソロジー!
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5.0死は終わりではない。むしろそこから何かが始まる場合がある――。肉体を離れ、より自由な存在となって、生前なし得なかった復讐や暗い欲望を叶えんと暴走する魂もある。生者も死者も、魂のある限り人は憎しみの感情から逃れられず、呪い合う運命なのかもしれない。3人の個性豊かな怪談ハンターたちがそれぞれの嗅覚で恐怖を掘り起こし、その怖さを競う恐怖箱トリニティ。シリーズ10作目となる今作は、かつてないほどにヘヴィーでディープな怪談が集まった。体験者、取材者、読者――このもうひとつのトリニティすべてに、深い傷の如き何かを確実に残すであろう凄みのある実話ばかりである。恐怖とは痛み――そんな想いが確信となって胸に迫る一冊をぜひご一読いただきたい。
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3.0果てのない海をたゆたう海月。掴みどころのない半透明の姿は、不気味だけれども幻想的。だが、不用意に近寄ればたちまち鋭い毒にやられ、その傷はいつまでも消えずにじくじくと痛む……。思えば、この生き物は霊なるものによく似ている。無性に心惹かれるが危険極まりない存在……。今回も3人の怪談ハンターが仕入れてきた生々しい実話を33話、水槽ならぬ箱に閉じ込めた。心臓に悪い話、懐かしい話、気味の悪い話、しんみりとした話、硬軟織り混ぜて収録してある。我々の身近に、この発達しきった現代に、こんな不思議で恐ろしいことがあるのだと、純粋な驚きをもって覗いていただければ幸いである。ただし、くれぐれも“お手に触れぬ”ようお願いする。海月と怪談はガラスの外より眺めるのがいちばんである……。
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