Posted by ブクログ
2010年12月31日
まず、「建築探偵」というのがかなり違和感のある単語と思います。「建築」という言葉と探偵がくっつくことが、なんとなくミーハー的な雰囲気がある気がしました。
読後にミーハーかどうか、という点でいけば、ミーハーと思える点は大きなところで2つあります。
1つ目は主人公であるW大の院生である桜井京介は、建...続きを読む築物に付随するヒューマンドラマに興味があるというところで、建物の背景にあった事件の裏側がわかってしまう、という設定らしいのですが、余計なのは類稀な美貌の持ち主、ということ。しかも美貌をうまく使って情報を得たりするところが少々気になりました。
2つ目はアシスタントの「蒼」の存在。「蒼」は人に対して本当の名を名乗らないのです。しかも見たものを映像的に覚えてしまう、というミステリではありがちな特技を持っています。かつ25歳大学院生の京介が後見人となっていて、十代半ばなのに大学で研究室の京介のアシスタントをしているというのです。今後の展開への呼び水なのでしょうが、違和感のある設定だし、普通無い、と思わざるをえません。
良かった点は、ストーリー自体は難易度の高いトリックとかで解くことに主眼が置かれている書かれ方ではなく、やはり最後に気付かなかった人間ドラマがありました、というノリのものなところです。トリックに主眼を置いたミステリと対極的な、でも王道路線ではあるものでした。事件解決とともに故人の想いが明らかになる、というストーリーです。
私は建築はまったくダメですが、ストーリーの中にあるアンダルシア地方の、パティオのある建物は是非一度見てみたいと思いました。知識が増えるとそれに対する興味も生まれるということで、新しい興味を開いた一作でした。本の表紙の画像がそれですね。
私も次作は是非読もうと思いますが、全体的に女性向けな雰囲気が漂っています。ストイックな探偵ものが好きであればイマイチかもしれませんが、なんとなく京介を取り巻く話題に事欠かなそうな状況なので、そういった内容がちりばめられているのが好きであればお勧めという気がします。