衝撃のシェトランド四重奏終幕を経て、新たなるシーズンの幕開け。
すっかり心ここにあらずのジミー・ペレスは、まぁそうだよねといったところだが、そのエース不在を補おうと奮闘するサンディの頑張りにエールを送りたい。
何かと自信がなかったり、びくびくしてはいるものの何とか一人前になろうともがく姿がいじらし
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事件は、マリーナに浮遊していた船上の死体と、次いで起こる第二の殺人事件の犯人探し。
ある日の夜、地方検察官の自宅から見えるマリーナに一艘の船が浮かんでいるところが見えた。
検察官はボートチームに所属し、自身のボートもマリーナに係留されており、またボートの腕にも覚えがあったため、自ら操舵し浮遊していた船に近づくが、そこに乗っていたのはジェリー・マーカムの死体だった。
ジェリー・マーカムは両親がシェトランドでホテルを営み、かつて「シェトランド・タイムズ」で記者として名を馳せ、本土に渡り成功を収めた決して「いい人」とは評されないボンボンのお坊ちゃまくん。
何故か動揺する地方検察官。
かつてジェリーと男女の問題でいざこざのあったイーヴィーは、今や年上の”聖人”ジョンと結婚式を間近に控えるが、このタイミングでのジェリーの帰還に心穏やかでないが、さらに降りかかる悲運が。。
相変わらず各人の心理描写が秀逸。
結局のところ、いろんな感情が渦巻いて事件そのものとは関係ないところで悶々としていただけというパターンが多いのだが、性急に処理しようと焦る周囲をよそに、もちまえの忍耐強さでじっと受け止め、思いを巡らすペレスのさばきが心地よい。
なんだかんだページが進むについてじわじわと、ペレスが復調してきてくれて良かった。
まだ全快とはいかないものの、何やらちょっとした予感めいたものや、本作の真相がもたらす愛の複雑さも今後の展開を無理なきものに感じさせるようで、奥深い一冊。