ネタバレ
Posted by ブクログ
2020年04月23日
あとがきで、作者が愛する中篇小説は「どこをとっても必要不可欠、いっさいの無駄がない。」と書かれてましたが、正に、これに納められている4つの中篇がそうだと思いました。全てがテイストの異なる、怪奇幻想の要素もあるのですが、人間ドラマとして、考えさせられつつ、楽しく読ませていただきました。
「スナ...続きを読むップショット」は、不思議なカメラの登場でホラーに展開するかと思いきや、主人公とシェリーのやりとりが、悲しく展開されるのが切なかったです。
「こめられた銃弾」。久々に、結末を読者の想像に委ねる小説を読みましたが、この終わりかたが、ものすごく怖い、が、絶品だと思いました。二つの異なる恐怖が同時に迫りくる、これが現実だったらと絶対に思いたくないような終わりかたです。
「雲島」は、スカイダイビング中に雲に着陸してしまった(突き抜けずに雲の上に立てた)若者の、SFっぽいのですが、私は青春物語だと思いました。非現実的な場所で、過去を振り返りつつ(彼には片想いしている女性がいる)、現実を見つめ直す主人公が、吹っ切れて思うままに行動する姿は感動的で爽快でした。爽快さがダイビングと上手く結び付いているのが、また素晴らしいです。
「棘の雨」は、近未来の世界を見ているような舞台で、自分の意思で人生を切り開いていく主人公に、感情移入しました。差別問題のメッセージに考えさせられながら、最後の意外な結末でエンターテイメントとして、すごいと思いました。
どの中篇も、単に不思議で怖いだけでなく、色々な考えさせられる要素が入っているからこそ、味わい深いのだと思います。時間をおいて、また読んでみたいと思いました。