あらすじ
シェトランド諸島の地方検察官ローナは、鎧張りの船にのせられ外海へ出ようとしていた他殺死体の第一発見者となる。被害者は地元出身の若い新聞記者で、島にある石油ターミナルがらみの取材を兼ねて帰省したらしい。新任の女性警部リーヴズがサンディ刑事たちとはじめた捜査に、病気休暇中のペレス警部もくわわるものの、本調子にはほど遠い。複雑な人間関係とエネルギー産業問題がかかわる難事件の解決には、ペレスの観察眼と推理力が不可欠なのだが――。〈シェトランド四重奏〉を経て、クリーヴスが到達した現代英国本格ミステリの新たな高み。CWA最優秀長篇賞受賞シリーズ。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
衝撃のシェトランド四重奏終幕を経て、新たなるシーズンの幕開け。
すっかり心ここにあらずのジミー・ペレスは、まぁそうだよねといったところだが、そのエース不在を補おうと奮闘するサンディの頑張りにエールを送りたい。
何かと自信がなかったり、びくびくしてはいるものの何とか一人前になろうともがく姿がいじらしい。
事件は、マリーナに浮遊していた船上の死体と、次いで起こる第二の殺人事件の犯人探し。
ある日の夜、地方検察官の自宅から見えるマリーナに一艘の船が浮かんでいるところが見えた。
検察官はボートチームに所属し、自身のボートもマリーナに係留されており、またボートの腕にも覚えがあったため、自ら操舵し浮遊していた船に近づくが、そこに乗っていたのはジェリー・マーカムの死体だった。
ジェリー・マーカムは両親がシェトランドでホテルを営み、かつて「シェトランド・タイムズ」で記者として名を馳せ、本土に渡り成功を収めた決して「いい人」とは評されないボンボンのお坊ちゃまくん。
何故か動揺する地方検察官。
かつてジェリーと男女の問題でいざこざのあったイーヴィーは、今や年上の”聖人”ジョンとの結婚式を間近に控えるが、このタイミングでのジェリーの帰還に心穏やかでないが、さらに降りかかる悲運が。。
相変わらず各人の心理描写が秀逸。
結局のところ、いろんな感情が渦巻いて事件そのものとは関係ないところで悶々としていただけというパターンが多いのだが、性急に処理しようと焦る周囲をよそに、もちまえの忍耐強さでじっと受け止め、思いを巡らすペレスのさばきが心地よい。
なんだかんだページが進むについてじわじわと、ペレスが復調してきてくれて良かった。
まだ全快とはいかないものの、何やらちょっとした予感めいたものや、本作の真相がもたらす愛の複雑さも今後の展開を無理なきものに感じさせるようで、奥深い一冊。
Posted by ブクログ
シェトランド四重奏の最後、あの終わり方がどうにも腑に落ちなかったのでその続編!
ペレス警部が帰ってきたという嬉しさと共に、まだまだ知らなかったシェトランド諸島の別な魅力や問題にもふれることが出来て大満足。
新しい登場人物もあり、これまでのあの人のあんな横顔や過去も…
サンディ、大人になって見直してしまったよ。
Posted by ブクログ
コニー・ウィリスの『航路』で大切な人を突然失った人に、周囲の人が善意故にいかに無神経になれるかを描いていたが、ペレスの姿にそれを思い出した。ひょっとしてウィローと進展があるのかな。
Posted by ブクログ
イギリスの作家「アン・クリーヴス」の長篇ミステリ作品『水の葬送(原題:Dead Water )』を読みました。
『大鴉の啼く冬』に続き、「アン・クリーヴス」作品です。
-----story-------------
シェトランド島の地方検察官「ローナ」は、小船にのせられ外海へ出ようとしていた死体の発見者となる。
被害者は地元出身の若い新聞記者だった。
本土から派遣された女性警部が「サンディ刑事」たちと進める捜査に、病気休暇中の「ペレス警部」も参加し、島特有の人間関係とエネルギー産業問題が絡む難事件に挑む。
〈シェトランド四重奏(カルテット)〉を経て著者が到達した、現代英国ミステリの新たな高み。
解説=「若林踏」
*第9位『2016本格ミステリ・ベスト10』海外篇
-----------------------
ロンドンから北へ960キロメートル、イギリス最北の北緯60度に位置する大小100以上の島からなるシェットランド諸島を舞台とした「ジミー・ペレス警部」シリーズの第5作目… 2014年(平成26年)に発表された作品で、四季をテーマ(冬→夏→春→秋の順)にした<シェットランド四重奏(カルテット)>四部作の続篇として刊行された作品です、、、
2作目~4作目を読んでいないので、「フラン・ハンター」が「ジミー・ペレス警部」と婚約後、亡くなってしまっていて、「ペレス警部」は「フラン」の娘「キャシー」と生活しているものの、「フラン」の死から立ち直れず病気休暇中との状況で物語が始まったので、やや戸惑いましたね… やっぱり、シリーズ物は順番に読んでいくのが望ましいですね。
読んでいない前作『青雷の光る秋』から、およそ半年後、春が訪れたシェトランド諸島の湾… 地方検察官の「ローナ・レイン」は、仕事を終えた後のひとときを自宅で外の景色を眺めながら過ごしていたところ、湾に鎧張りの船(ヨール:伝統的な工法で作られた競漕用の小船)が漂っているのを発見する、、、
本来なら土手の上にあるはずの競漕用の船が、なぜ海に浮かんでいるのか… 船を戻そうとした「ローナ」は自分のボートを漕いで、潮に流される鎧張り船に追いつきます。
船内を覘くと、そこには男の死体があった… しかも、外傷の状態からして明らかに他殺とわかる死体だった、、、
「ペレス警部」は病気療養中で、捜査に参加できる状態ではなかったことから、本土のインヴァネス署から派遣された「ウィロー・リーヴズ警部」が捜査指揮をとることになる… やがて捜査員の一人「サンディ・ウィルソン巡査」により被害者の身元が判明する。
名前は「ジェリー・マーカム」、シェトランドの地方新聞社に勤めた後、本土に渡りロンドンの大手新聞社の記者となり成功を収めた地本出身の若者だった… ホテルを経営する両親「ピーター」と「マリア」の話によれば、どうやら「ジェリー」は島の石油ターミナルに関する取材を行おうとしていたようだった、、、
折しもシェトランドでは石油代替エネルギーの開発を巡る議論が活発化し、住民運動も起こっていた… 「ジェリー」の死は、それらに関係があるのか!? 次第に「ペレス警部」も捜査に参加し始め、「ジェリー」殺しの犯人を追うことに。
殺害現場等が徐々に明らかになるものの、動機や犯人の特定は困難を極め、捜査は難航する… そんな中、第二の被害者が、、、
殺されたのは水先案内人の「ジョン・ヘンダーソン」、彼は病気で妻を喪い独身生活を送っていたが、「イーヴィー・ワット」と婚約し、近々に結婚を予定していた… 婚約者の「イーヴィー」は、以前、第一の被害者である「ジェリー」と付き合っており、その際、妊娠・流産という辛い経験をしていた。
しかも、「ジェリー」は殺害される前に「イーヴィー」に連絡して会おうとしていたことが判明する… 動機は恋愛に絡む愛憎なのか!? そして、今度は「ジェリー」を発見した「ローナ」が行方不明となる、、、
「ペレス警部」は、殺された「ジェリー」や「ジョン」、そして「イーヴィー」や「ローナ」の過去の人間関係等を調べ、徐々に真相に近付いて行く… 意外な人物たちが犯人でしたね、娘の幸せを思うあまり、常軌を逸した判断をしてしまったんでしょうね。
「ペレス警部」とは相性が良くない感じの「リーヴズ警部」でしたが、対照的な存在だけに、きっかけがあれば一気に関係が近付きそうな感じです… 次作以降も、二人のコンビが登場すると面白そうですね、、、
本作品でも、「ペレス警部」と「リーヴズ警部」に加え、お馴染みの脇役「サンディ巡査」、検察官「ローナ」といった登場人物たちの視点を巧みに切り替えて、被害者を巡る人物相関・人間模様が重層的に描かれていましたね… 面白かったです。
以下、主な登場人物です。
「ジミー・ペレス」
シェトランド署の警部
「ジェリー・マーカム」
ロンドンの新聞記者
「ピーター・マーカム」
ジェリーの父。ホテル経営者
「マリア・マーカム」
ジェリーの母
「アンディ・ベルショー」
石油ターミナルの広報担当者
「ジェニファー(ジェン)・ベルショー」
アンディの妻
「ジョー・シンクレア」
サロム湾の港長
「イーヴィー・ワット」
ジェリーの元恋人
「フランシス・ワット」
イーヴィーの父
「ジェシー・ワット」
イーヴィーの母
「ジョン・ヘンダーソン」
イーヴィーの婚約者。水先案内人
「マーク・ウォルシュ」
ジョンの隣人。B&B経営者
「スー・ウォルシュ」
マークの妻
「アナベル・グレイ」
ジェリーの恋人
「リチャード・グレイ」
アナベルの父。法廷弁護士
「ウィロー・リーヴズ」
インヴァネス署の警部
「サンディ・ウィルソン」
シェトランド署の巡査
「モラグ」
シェトランド署の巡査
「デイヴィ・クーパー」
シェトランド署の巡査
「ヴィッキー・ヒューイット」
北スコットランド警察の犯行現場検査官
「ローナ・レイン」
地方検察官
「フラン・ハンター」
ペレスの婚約者。故人
「キャシー・ハンター」
フランの娘
Posted by ブクログ
シェトランド島シリーズの五作目。
その後のお話。
忘れ形見のキャシーの世話をしながら、
病気休暇中のぺレス警部は、
ゆるやかに事件捜査に巻き込まれていく。
誰もがファーストネームで呼び合うシェトランド島で、
孤高を保っている地方検察官が殺害された死体を発見する。
被害者は地元出身の新聞記者で、むかし、妊娠させた恋人を捨てて島をでていたが、
里帰りをしていたところだった。
また別の島出身の女性警部が捜査にやってくる。
ペレス警部は悲しみの淵から戻ってくることができるのだろうか、
事件を解決することができるのだろうが。
最初はいらいらさせられたサンディが。
なんだか愛らしく感じられてくるのは、
少しずつ成長しているからだろうか。
ペレス警部への敬愛を失っていないからだろうか。
少しづつ立ち直りつつあるペレス警部と女性警部の仲が
どうなっていくのか、かなり気になる。
Posted by ブクログ
4部作で終わった「シェトランド四重奏(カルテット)」に続く新シリーズ。
ジミー・ペレス警部シリーズということのようです。
スコットランド最北端のシェトランド諸島。
地方検察官のローナは、家の近くで不審な小船を発見します。
被害者は地元出身の若い新聞記者で、何かの取材に戻っていたらしい。
ジミー・ペレスはいまだ病気休職中。幼い娘と暮らしています。
ペレスの部下でいささか頼りないサンディ刑事が迎えたのは、本土から派遣された女性警部ウィロー・リーヴズ。
慣れない土地で型通りの捜査をきちんと進めるといった感じで、失意のペレスもしだいに参加することに。
この島には珍しい都会的なキャリアウーマンのローナと真面目でナチュラルなウィローで新しい雰囲気に。
前作の衝撃的な結末、あのままではあんまりですよねえ‥
気が優しく人の話を聞き出すのがうまいペレスの個性と、島の自然や暮らしがありありと目に見えるような描写はそのまま。
この繊細で丁寧な感触がなんとも心地よくて、嬉しい。
ペレスの人生の変化に加え、島のエネルギー問題なども時代とともに増えているのか、少し雰囲気を変えてきているのも感じます。
だんだんと、ペレスも再生に向かうのでしょう。
期待してます☆
Posted by ブクログ
「シェトランド四重奏」の四作でシリーズが完結したものだと思っていたので、続編が出たのは嬉しい。ただ主人公の境遇が境遇なので、どのように話を進めるのか気になっていたが、そこは新たな人物が登場することでカバーされた。
この新たな登場人物の造形はまだしっかり定まっていない気がするけれど、今後もシリーズに絡んできてくれることを期待しています。
Posted by ブクログ
1話目ではなんだこいつ、使えねえ、と思っていたサンディ刑事の成長ぶりときたら!親戚のおばちゃんのような気分で見守りました。
ペレス刑事もちょっとずつ、ね。
読んでいろいろとほっと出来た1冊。
続きも楽しみ。
Posted by ブクログ
ショッキングな幕切れだった〈シェトランド四重奏〉シリーズの続篇。てっきりあれで終わりだと思っていたので、これは嬉しい。期待通り楽しめた。
このシリーズは、小さな島の錯綜する人間関係が事件の背景になっているところが独特で、そこにひきつけられる。静かな語り口も好みだ。エキゾチシズムあふれる佳作。
Posted by ブクログ
シェトランド四重奏を経ての
ペレス警部、新章の始まり。
愛する人を失い、なかなか立ち直れないペレスに新たな殺人事件が。
相変わらず頼りなげなサンディと、本土から派遣された女性警部と3人での捜査が始まる。
サンディに対しては、過去四作の彼を見てきたせいで
親か祖母目線で見る癖がついてしまい、何をしてもかわいく、応援したくなる。
外見が超ラフなウィローは天然なのか計算か?美しいのかだらしないのか?男性を翻弄させる小悪魔的女子。
傷心なはずのペレスが早々にコロッとその魅力に吸い寄せられてるのがなんだかなぁ。。(まだ早いよ〜)
本筋の事件の方は
登場人物が多くて最後まで名前が一致せず、
最初の人物紹介のページを何度も行ったり来たり。
終盤明かされる犯人にも特にひねりはなし。
今回じんと来たのは
血の繋がりのない娘、キャシーとの親子関係。
母を失い、そのママと結婚するはずだった男と生活することになったんだけど、まだ幼いキャシーを必死に守ろうとするペレスも良いし、小さいながらもそんなペレスを思いやるキャシーも愛しい。
この関係、変わらず続いて行くと良いな。
Posted by ブクログ
ペレス警部物は5作めだが、最初に読んでしまった。事情は説明されており、物語には、十分入り込める。スコットランド北部の島、シェトランド諸島での複雑な殺人事件。北欧ミステリーを彷彿とさせる落ち着きと、濃密な人間関係、そして自然の厳しさと美しさが描かれ、静かな展開ではあるが飽きさせない。じっくりと楽しみたい一冊。