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ハンス・カロッサ全集 第1巻 カロッサ全詩集
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 第1次世界大戦に取材した文学のうち、『ルーマニア日記』をはじめ、その真摯な生き方の記録ともいえる文章で、人々に勇気と希望を与えてきたカロッサの作品を、初邦訳作も含め全篇新訳でおくる決定版全集。各作品には原則として、原注・訳注をあわせた後注を付し、さらに翻訳担当者による解説を付した。第1巻には、カロッサの文学の凝縮された精髄が、密度の高い言語のうちに集約された詩集『1940年までの詩』(田口義弘訳)、『森の空き地に輝く星』『1945年-1956年の詩』『老いた魔術師』(金子英雄訳)を収録。 -
クレムリンの魔術師
「プーチンの演出家」が語るリアルポリティーク小説 「クレムリンの魔術師」として知られたヴァディム・バラノフは、ロシアの皇帝の黒幕になる前はTVのリアリティ番組のプロデューサーだったという。 〈私〉はある夜、SNSで知り合った人物からモスクワ郊外の邸宅に招かれ、その祖父の代からの「ロシアの権力の歴史」を知る。ヴァディム・バラノフには舞台芸術アカデミーで演劇を学んだ青春時代、ヒッピーの両親をもつクセニアという名の美しい恋人がいたという。 ロシアのプロパガンダ戦略やウクライナとの戦争において、彼はどんな役割を担ってきたのか? 「プーチンの演出家」の告白を元に伏魔殿クレムリンの舞台裏が明かされてゆく──。 主人公バラノフのモデルは、ロシア副首相、大統領府副長官、補佐官を歴任した、ウラジスラフ・スルコフ。エリツィン、クリントン、メルケル……実在の政治家たちも実名で登場し、ソチ冬季オリンピック開会式で赤軍合唱団にダフト・パンクを歌わせた史実なども挿話され、プーチンの権力掌握術や、ロシアの国民感情が語られてゆく。愛と権力をめぐる迫真のリアルポリティーク小説。 小泉悠さん推薦! アカデミー・フランセーズ賞受賞作品。 -
移民たち:四つの長い物語
異郷に暮らし、過去の記憶に苛まれる4人の男たちの生と死。みずから故郷を去ったにせよ、歴史の暴力によって故郷を奪われたにせよ、移住の地に一見とけ込んで生活しているかに見える移民たちは、30年、40年、あるいは70年の長い期間をおいて、突然のようにみずから破滅の道をたどる……。語り手の〈私〉は、遺されたわずかの品々をよすがに、それら流謫の身となった人々の生涯をたどりなおす。〈私〉もまた、異郷に身をおいて久しい人だ。個人の名前を冠し、手記を引用し、写真を配した各篇はドキュメンタリーといった体裁をなしているが、どこまでが実で、どこまでが虚なのか、判然としない。 本書は、ゼーバルトが生涯に4つだけ書いた散文作品の2作目にあたる。英語版がスーザン・ソンタグの称讃を得て、各国語に翻訳され、ドイツではベルリン文学賞とボブロフスキー・メダル、ノルト文学賞を受賞した。 堀江敏幸氏による巻末の解説「蝶のように舞うぺシミスム」から引用する。「作家の極端なぺシミスムが読者にかけがえのない幸福をもたらすとは、いったいどういうことなのか? ゼーバルトの小説を読むたびに、私はそう自問せざるをえなくなる」。 -
良寛歌集
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 「雪の夜にねざめて聞けば雁がねも天つみ空をなづみつつゆく」良寛の歌は、人間即歌である。その人その心即ち歌である―。歌人・吉野秀雄が、敬愛する良寛の歌境を鮮やかに説き明かしつつ、細心かつ懇切な校註を加えて編んだ「良寛歌集」決定版の復刊。1267首を収める。(「BOOK」データベースより) 目次 解説 良寛調について 良寛の歌の発足・個性・推敲について 発足 個性 推敲 良寛と万葉集との関係について 本集の成立ちについて 諸本の校合 古歌との対比 配列の順序 語句歌意の解釈 内容の多化と鈍化 余言 参考文献 凡例 本文 短歌 春 夏 秋 冬 雑 旋頭歌 雑体歌 長歌 (※本書は1992/10/1に発売し、2021/12/30に電子化をいたしました) -
田舎のモーツァルト 詩集
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 詩人、随筆家、翻訳家、また、クラシック音楽への造詣も深い著者は、山や自然を描いた詩や散文の秀品を多く残した。 本書は、詩集である。 田舎のモーツァルト 中学の音楽室でピアノが鳴っている。 生徒たちは、男も女も 両手を膝に、目をすえて、 きらめくような、流れるような、 音の造形に聴き入っている そとは秋晴れの安曇平、 青い常念と黄ばんだアカシア。 自然にも形成と傾聴のあるこの田舎で、 新任の若い女の先生が孜々として、 モーツァルトのみごとなロンドを弾いている。 【目次より】 冬の雅歌 不在 妻に ハインリッヒ・シュッツ 秋 霧と風の高原で 岩を研ぐ 春の葡萄山 モーツァルトの午後 出合い 歳月 田舎のモーツァルト ひとりの山 七月の地誌 回顧 車窓のフーガ 高処の春 あかがり 復活祭の高原 山中取材 野の仏 蝉 或る石に刻むとて 湖畔の朝 鴨 和田峠 馬籠峠 上越線にて 受胎告知 春興 桃咲く春 高地牧場 故園の歌 十年後 朝の門前で 草津白根 予感 飼育場風景 後記 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
その空の下で 尾崎喜八詩集
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 詩人、随筆家、翻訳家、また、クラシック音楽への造詣も深い著者は、山や自然を描いた詩や散文の秀品を多く残した。 本書は、詩集である。 その空の下で (妻に代わりて) 安達太良山もここから先は足で登るか、 ガラガラ廻っている味気あじきないあのリフトで 吊り上げられて行くかするよりほかはない。 山麓をいろどる落葉松からまつの新緑、遠い郭公、 峰の高みに真白な残雪の帯、 そして頭の上は、見よ、この空だ。 おばさまが言ったという「智恵子のほんとの空」、 東京ならぬみちのくの空が、 「あどけない話」どころか真底女人の 思い入ったまじめさで、少し悲しく、 深く青々とひろがっている。 私はこの空を今は亡い人のその昔の郷愁と 同じ思いでしみじみと見上げる。 足もとには猩々袴か燕オモトか つやつや光る強い緑の芽がぎっしり。 これもあのかたの故郷の山の草だと思えば、 踏むどころか、記念に一株掘るどころか、 気をつけて、丁寧に、 跨いで、 行く。 【目次より】 されど同じ安息日の夕暮れに アイヒェンドルフ再読 よみがえる春の歌 音楽会で シューマンと草取り 一つのイメージ ほほえましいたより 復活祭 晩年のベルリオーズ 上高地にて 森林限界 詩人と笛 その一、その二 夏行 恢復期の朝 鎌倉初秋 明月谷 岩雲雀の歌 古い山の地図を前にして 雲表の十月 霧ガ峯の春 カエデの勉強 続けかしの歌 鈴 ヴィヴァルディ 『諸国の人々』 勉学篇 バッハの『復活祭オラトリオ』から 二つの現実 讃称 エリュアール 浄土平 その空の下で 春愁 命あって 黄道光 トンボの谷 詩「無常」の作者に 過去と現在 安らぎと広がりの中で 沈みゆく星に寄せて 後記 ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
「孤狼の血」シリーズ【全4冊合本版】
昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが……。正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく――。日本推理作家協会賞受賞、映画化され大ヒットした著者代表作にして不滅の警察小説! ※本作品は『孤狼の血』シリーズ全4巻を収録しています。 ※本商品は1冊に全巻を収録した合本形式での配信となります。あらかじめご了承ください。 -
迷探偵・黒彦シリーズ【4冊 合本版】 『魔神館事件 夏と少女とサツリク風景』~『幻双城事件 仮面の王子と移動密室』
男子高校生・白鷹黒彦は、ひょんなことから妖しげな洋館の殺人事件に巻き込まれることに。そこで出逢ったのは、世界最高の知性・犬神清秀とその妹でロボットを自称する不思議な少女・果奈だった――。その後も黒彦は、兄妹2人によって様々な事件に巻き込まれていくことに……!? 新本格への愛と、個性豊かで魅力的な人物たちで贈る、傑作キャラクターミステリ! ※本電子書籍は『魔神館事件 夏と少女とサツリク風景』『天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖』『露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜』『幻双城事件 仮面の王子と移動密室』を1冊にまとめ、【合本版特別掌編「嘘吐会事件」】を収録した電子オリジナル版です。 -
夢遊の大地
現代アフリカ文学の最前線を紹介する、新海外文学シリーズ《アフリカ文学の愉楽》第2回配本! 現代アフリカ文学最重要作家、モザンビーク出身のミア・コウトの長篇デビュー作にして映画化もされた代表作がついに登場! 長引く内戦に荒廃した東アフリカ、モザンビーク。 ひとりの老人と、記憶を失った少年が、戦火を逃れ、どこまでも続く道路を歩いている。 焼け焦げたバスの傍らで、彼らは血まみれの死体と殴り書きされた何冊ものノートを見つける。頁に残された男の名はキンヅ。文字の読める少年は老人にノートを読み聞かせはじめ、やがて物語はキンヅの遍歴とパラレルに進んでゆく。 現実とおぼしき老人と少年の世界、夢とも事実ともつかないキンヅの旅と人生。過去と現在が溶け合い、記憶と語りが幻想へと変容する。 果たして夢遊の大地に翻弄されるふたりの行き着く先は……。 その業績に対して、2007年にはアフリカ人としてはじめてラテン連合文学賞を、2013年にはポルトガル語圏でもっとも重要な文学賞のカモンイス賞を、そして2014年にはノーベル文学賞に次ぐ権威があるとされるノイシュタット国際文学賞を受賞。さらに2025年には、ポルトガル語圏の作家としてはじめてPEN/ナボコフ賞国際文学賞を受賞するなど、現在に至るまで精力的に詩・短篇・長篇・評論とさまざまな作品を発表し続けているミア・コウト。 ポルトガル語圏を超えて世界中で読み継がれている長篇デビュー作にして代表作がついに登場! ◉《アフリカ文学の愉楽》全6巻◉ 【編集委員】 粟飯原文子、桑田光平、中尾沙季子、中村隆之、福島亮 ◆アラン・マバンク(コンゴ共和国) 【第1回配本】 『割れたグラス』桑田光平 訳 バー"ツケ払いお断り"を舞台に繰り広げられる、酔いどれたちのめくるめく狂想曲! コンゴ共和国出身、現代アフリカ文学随一のヒップスターによる代表作。 『ヤマアラシの回想』桑田光平・福島亮 訳 その国には分身遣いがいるという―― 人間の〈分身〉として生き、殺人を定めとされた一匹の雄ヤマアラシが語る人間界の悲喜劇。 人間の内奥を抉り出す、マバンクのルノドー賞受賞作。 ◆ミア・コウト(モザンビーク) 【第2回配本】 『夢遊の大地』伊藤秋仁 訳 長引く内戦で荒廃したモザンビーク。 記憶喪失の少年とひとりの老人の幻想的な彷徨を、言葉遊びや詩的な描写を自由自在に駆使して、アフリカ的な幻想と現実が入り混じったイメージを浮かび上がらせる、カモンイス賞受賞作家のデビュー作にして世界中で読み継がれている代表作。 ◆サミ・チャック(トーゴ) 『エルミナ』福島亮 訳 キューバやメキシコなどのさまざまな場所を舞台に、魔性の美少女とそれに魅せられた青年の淫靡な実践の数々。 「アフリカのサド」の異名をほしいままにするサミ・チャックが、プラトンから山田詠美、さらには作中小説『エルミナ』まで、めくるめく引用を重ねながら綴る、悦楽と残酷に満ちた代表作。 ◆レオノラ・ミアノ(カメルーン) 『影の季節』粟飯原文子 訳 カメルーンのドゥアラを舞台のモデルに、口承によって受け継がれてきた大西洋横断奴隷貿易の起源に迫るフェミナ賞、メティス小説大賞受賞作。 ◆アクウェケ・エメズィ(ナイジェリア) 『フレッシュウォーター』粟飯原文子 訳 ナイジェリア南部に暮らすアダは気性の激しい扱いにくい子どもだった。イボの言い伝えによれば、精霊オバンジェとして生まれた子はたいてい幼いときに死ぬが、オバンジェのアダは生き延びて16歳で大学進学のために渡米する。やがてアダの中の精霊/自己たちが力を増していき、痛ましい事件の後、名前を持つ存在が前面に現れ、身体を支配するようになるが……。 「複数のわたし」と対話し、折り合いをつけることとはどういう経験なのか。 いま世界でもっとも注目される作家のひとり、エメズィの鮮烈なデビュー作にして自伝的小説。 PEN/ヘミングウェイ賞最終候補作。 -
カーペンターズ・ゴシック
超高密度文体で紡がれる黙示録的ゴシック・サスペンス! 全米図書賞&日本翻訳大賞受賞作『JR』の作家ギャディスによる、一軒の古いゴシック式洋館を舞台に繰り広げられる、世界的陰謀と底無しの悪意が渦巻く狂騒劇―― * 今は亡き大鉱山主の娘エリザベス・ブースは、ハドソン河畔にある古いカーペンター・ゴシック様式の屋敷に、夫ポールと暮らしていた。 山師気質で粗暴なポールは、メディアコンサルタントとしての成功を目論見、いくつもの胡散臭い事業の立ち上げを画策し動き回っている。 ひっきりなしに屋敷にかかってくるいくつもの電話、そして訪ねてくる怪しい男たち。 彼らが交わす錯綜した会話の断片からは、CIA、FBI、放送局、種子販売会社、鉱山開発会社などの影が垣間見え、やがて巨大利権をめぐる遠大な世界的陰謀へと話は広がり、エリザベス自身もそこで起こる事件へと巻き込まれていく…… 全米図書賞受賞『JR』の作家ギャディスによる、一軒の屋敷を舞台に繰り広げられる、超絶技巧×超高密度文体のゴシック・サスペンス&黙示録的狂騒会話劇。 (1985年作) -
暗い庭
爛熟の世紀末文学 マリオ・プラーツが『肉体と死と悪魔』において言及した数少ないスペイン作家バリェ=インクラン。W・B・イェイツやガルシア=ロルカを想起させる作品など、この世ならぬ場所へと誘う、17の短篇小説。頽廃の園へ。 神秘主義的なキリスト教と土俗的な民間信仰、背徳的な罪咎の宴―― 高貴な輝きと隠遁の雰囲気を湛えた昏い廃園は、夢うつつに微睡みながら訪れる客人を待ちわびる。 「放しません。貴女は僕のもの、貴女の魂は僕のものです……肉体は欲しません、いずれ死がそれを奪いに来るでしょうから。」 ――「我が姉アントニア」より 装丁:岡本洋平(岡本デザイン室) -
親切な福姫さん
私は虫一匹殺せない優しい女だ――。誇り高き怒れる獣のような文体で市井の人々を描いた、韓国文学最大の遺産。戦後韓国の巨匠たちの作品を、斎藤真理子が精選・全訳するシリーズ、ついに創刊! ・ ・ 斎藤真理子=個人編訳 韓国文学クラシックス 全5巻 刊行開始! ======= ハン・ガンは一夜にして生まれたわけではなく、 この土壌から花開いたのです。 ――斎藤真理子 ======= ・ ・ 〈韓国文学クラシックス 1.〉 パク・ワンソ『親切な福姫(ポッキ)さん』 ======= 時代を生き延びてきた女たちの、 血のような言葉が、撃ち、つかみ、ゆさぶってくる。 すごいものを読んでしまった。 ――岸本佐知子 ======= スパイ疑惑、アンチ・シンデレラストーリー、 天衣無縫の〈ゴムひもおばさん〉、究極のケアと復讐…… 「命がまるで獣みたいに暴れ回って、止められないのさ。」 誇り高き怒れる獣のような文体で戦後韓国の市井を描いた 〈韓国文学最大の遺産〉の最初期から遺作まで 名訳者によるベストセレクション! ******************** 【目次】 仏様の近所 盗まれた貧しさ 冬の外出 空港で出会った人 お産のふくべ 復元されえぬものたちのために 私が最後に手にしたものは 恋しさのために その人の家 親切な福姫(ポッキ)さん 夕陽を背にして影を踏む ★圧巻の訳者解説17ページを収録 -
銃ノ島
〈この奇妙な旅が始まる奇妙なきっかけは、ある単語だった。それも、特段きらびやかというわけでもなく、カイロからカルカッタまで、どこでも当たり前のように使われているなんの変哲もない言葉。Bundook。〉 ベンガルとヴェネツィア 17世紀と現在、 伝説と現実が交錯する インド神話×SF×ポストコロニアル 現代インドを代表する作家の衝撃作! ブルックリンに住む古書商のディーンは、故郷のコルカタで「銃商人」の説話と出会い、世界最大級のマングローブ群生地シュンドルボンの寺院を訪れる。そこで語り継がれていたのは、17世紀に生きたひとりの男が、蛇の女神から逃れ「銃ノ島」へと辿り着く苦難の旅を描いたものだった。奇妙な運命にいざなわれながら、ディーンは銃商人の謎めいた足跡を辿り始める。過去と現在、伝説と現実が重なり合う中で、ディーンたちは世界を一変させる大きなうねりに巻き込まれていく――。 メディシス賞(フランス)、エラスムス賞(オランダ)、朴景利文学賞(韓国)などを受賞し、現代インド文学を代表する世界文学作家が、激動の世界を背景に描き出す、あまりに哀切な〈出会い〉と〈喪失〉の物語。 【目次】 第一部 銃商人/カルカッタ/チンタ/ティプ/寺院/幻覚/ラニ/ブルックリン/山火事/ロサンゼルス/銃の島 第二部 ヴェネツィア/ゲットー/ラフィ/破局/友だち/夢/警告/高潮/渡り/風/ルカニア号/出会い/あらし -
小説 ヒトラー
ヒトラーとは、何者だったのか。 完全なる独裁者はなぜ誕生したのか。 歴史小説の泰斗が描き出す、戦争の本質。 1918年11月19日。一人の上等兵が、陸軍病院から退院した。その名はアドルフ・ヒトラー。行くあてのないオーストリア人のこの男は、第一次世界大戦敗戦後も軍隊に残る道を選んだ。そして、自分の思いもよらなかった才能に気付いたヒトラーは、ある政党の集会に潜入することを命じられる。それをきっかけに政治家を志し、ついには政権奪取にまで至る――。 全3巻刊行開始。 第II巻「戦前篇」2026年9月28日配信予定。 第III巻「大戦篇」2026年10月26日配信予定。 【著者略歴】 佐藤賢一(さとう・けんいち) 1968年山形県鶴岡市生まれ。93年『ジャガーになった男』で第6回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。99年『王妃の離婚』で第121回直木賞受賞。2014年『小説フランス革命』で第68回毎日出版文化賞特別賞を受賞。他、小説に『ハンニバル戦争』『遺訓』『ナポレオン』(第24回司馬遼太郎賞受賞)『最終飛行』『チャンバラ』『釣り侍』等、ノンフィクション・随筆に『英仏百年戦争』『テンプル騎士団』『フランス王朝史』(全3巻)、『よくわかる一神教』『王の綽名』等、著書多数。 -
現代ユウモア全集 23巻 『戀を吹く喇叭』 佐々木味津三
『右門捕物帖』や『旗本退屈男』で、日本の時代小説・捕物帖の基礎を築き、昭和初期に活躍した人気大衆作家の貴重な24篇を収録。 佐々木味津三は、大正中期から作家活動をはじめ、菊池寛に認められて雑誌「文芸春秋」の創刊に関わり、横光利一や川端康成らと雑誌「文芸時代」も立ち上げ、純文学方面の新進作家として嘱望された。しかし、実家が抱える多額の負債と、弟妹三人と長兄の遺児五人の養育義務を負ったことから、金にならない純文学から、大きな収入の見込める大衆文学方面に舵を切る決断をする。 本巻には、そんな彼が純文学から大衆小説路線に移る前後の1923年~1929年の間に、文芸誌から大衆娯楽雑誌まで様々な媒体に発表された24篇を収録。一番新しい「大江山仙介の見合」が巻頭で、一番古い作品「新東京繁昌記」が巻末という構成は意図的なものを感じる。同時代のスポーツネタを入口に、読者を次第に作品世界へと呼び込み、最後にすでに過去となりつつある関東大震災直後の戯作的ルポルタージュで余韻を残す形となっている。作品傾向も社会風俗や時事的話題を取り入れた話が多い。人気絶頂の大学野球をネタにした「大江山仙介の見合」、新興映画の発信地として勢いのあった蒲田撮影所を舞台にした「忘笑症患者」、大家さんとの小競り合いを「階級闘争」という流行語で呼ぶ「お犬様」、 田山花袋「蒲団」をパロディ化した「女性軽蔑家」などなど。特に巻末の「新東京繁昌記」は、大震災の数ヶ月後に発表された作品で、混乱の中で強かに生きる東京人の姿を活写した一つの風俗史料ともなっている。なお、佐々木味津三は本巻刊行から約4年後の1934年、急性肺炎を起こして僅か37歳で亡くなった。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究者で追手門学院大学准教授・佐藤貴之。付録には、表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年9月25日配信開始) -
楽園の子どもたち
ようやく得た職場は、前任が5日で精神を病んだという、古い映画館〈パラダイス〉。ある日私は、閉館後の館内で夜毎起きていることを知り──。英語圏で最も注目を集める作家の鮮烈長編作。 この国に越してきたばかりのサリーが働き始めたのは、前任者が5日で精神を病んだという映画館──。GRANTA「若手作家ベスト20」選出、英語圏最注目作家による傑作長編。王谷晶、朝宮運河推薦。 ここは人間の臓器のように 暗闇に捨て置かれた映画館〈パラダイス〉 ほとんど何も持たずに、この国に引っ越してきたばかりのサリーが働きはじめたのは、前任者が5日で精神を病んだという映画館。同僚の誰からも話しかけられない日々を過ごしていたが、ある日閉館後の館内を覗くとそこには──。 ******** 暗闇の中で倦み腐り歓喜することが唯一赦される場所。美しく悍ましい映画館に魂を食われる痛みと悦びが、読み終えた後もいつまでも疼く。 ──王谷晶(『ババヤガの夜』) グルドーヴァが描く青春の姿はこんなにも歪で、薄汚れていて、美しい。この場所では、幻想が現実を呑みこみ、虚構が本当になる。 ──朝宮運河(『現代ホラー小説を知るための100冊』) ******** 〈映画×労働×グロテスク〉 『人形のアルファベット』のカミラ・グルドーヴァによる傑作長編! 2016年「ワクシー」(『人形のアルファベット』収録、2025年河出書房新社刊)でシャーリイ・ジャクスン賞受賞 2023年GRANTA「若⼿作家ベスト20」選出 2026年『人形のアルファベット』で「このホラーがすごい!」海外編第6位 そして本書『楽園の子どもたち』で、英語圏で最も権威ある文学賞の一つである女性文学賞ノミネート 英語圏最注目作家の傑作長編がついに邦訳! ======== 『楽園の子どもたち』目次 真夜中のカーボーイ 七人の侍 何がジェーンに起ったか? ミツバチのささやき タクシードライバー テオレマ 月光石 獣人 天国への階段 カビリアの夜 オズ ファニーとアレクサンデル 天使の復讐 ポップコーン おもちゃの王国 赤い影 ファントム・オブ・パラダイス ヘザース/ベロニカの熱い日 ローズマリーの赤ちゃん ラスト・ショー 赤い靴 ベニスに死す 謝辞 訳者あとがき -
現代ユウモア全集 22巻 『ヴェランダの椅子』 牧逸馬
多筆名作家で、[文壇のモンスター]と呼ばれた破格の作家の第2弾。〈めりけん・じやつぷ〉物を中心に全18篇を収録。 牧逸馬(長谷川海太郎)は複数の筆名を使い、海外ルポ、翻訳、探偵・怪奇・恋愛・歴史・捕物小説など多彩なジャンルで人気を博し、「文壇のモンスター」と呼ばれた作家。 今巻は、そんな彼の第12巻に続いて2巻めで、「こん・げいむ」「感傷の靴」「喧嘩師ジミイ」「サム・カゴシマ」「國のない人々の國」など1925-27年に雑誌掲載された18作品を収録。今巻の初出は、巻頭「紋十と牛之介」と巻末「海へ歸る女」の林不忘名義以外は、すべて谷譲次名義作品。しかもアメリカ在住の日本人や日系人を主人公とした[めりけん・じやつぷ]物が中心。さらに[めりけん・じやつぷ]物の中でも、彼らの生活描写を端緒として、多民族国家アメリカの都市風俗を皮肉交じりに紹介する作品が多い。具体的には、奇想天外な手管を駆使した詐欺師やマイノリティの生き様、アイデンティティの揺らぎをテーマに、資本主義社会の欺瞞や、自己欺瞞を描いている。多民族国家アメリカを単身放浪した牧自身が、目に見えない線で人間を区切ることの無意味を噛みしめながら、同時に現実の人種差別の圧倒的強度を思い知った実体験が作品の根底にあるのだろう。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究者で追手門学院大学准教授・佐藤貴之。付録には、表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年8月28日配信開始) -
わたしの手をとって
全米が感動したブラック・フェミニズム小説。 1973年春、看護師のわたしは あの愛しい姉妹に出会ってしまった。 ふたりの未来を奪う組織の者として―― 2023年NAACPイメージ・アワード優秀文学作品賞(フィクション部門)受賞、 Audible 2022年ベストブック選出。 公民権運動の熱冷めやらぬ米国南部、実在の裁判をベースに 熱いシスターフッドを描く傑作ブラック・フェミニズム小説! 1973年、アラバマ州。モントゴメリー家族計画クリニックの新米看護師シヴィルは、アフリカ系アメリカ人の女性たちが自分の人生と身体について自分で選択できるための力になりたいと、使命感に燃えていた。ある日、指導看護師から避妊薬投与の指示を受けて訪れた貧しい父子家庭にいたのは、わずか13歳と11歳の恋も知らない姉妹だった。自分の仕事に苦悩しながら、姉妹とその家族に心を寄せ、彼らを今の生活から救い出そうとするシヴィル。しかし、姉妹の身に想像もしていなかった恐ろしいことが起こる――。 -
現代ユウモア全集 21巻 『ユーモア突進』 東健而
43歳で亡くなった早すぎた作家・東健而、生前唯一の作品集。ハイカラで洗練された都会的ユーモア作品全14篇を収録。 僅か43歳で亡くなり、今巻が唯一の作品集である東健而は、映画史では、無声映画からトーキー映画への過渡期の重要な人物として、また、翻訳史や児童文学史でもジョン・ウェブスターの「足ながおじさん」の初訳者として、それぞれ名前が残っているが、作家としては完全に埋もれている。企業の広告部や出版社勤務、松竹キネマ合名会社の外国部長を経験し、「東健而」以外にも「森田みね子」、「愚教師」のペンネームを使い、一人で三人の作家として活動した。 本巻は生前唯一の作品集で翻訳、小説、随筆、放送原稿が、バランスよく収められている。 前半は、「チビ監督の復讐」「和製アドルフ・マンジュー」の翻案ユーモア小説中心で、欧米ユーモアの日本化がテーマ。中盤は、「笑つたり怒つたりの生活」など療養のために転居した逗子生活の随筆で、東健而の人柄が最もよく出ている。後半は、「世界一の法螺吹き国」「独り行くチャップリン」など放送原稿と映画漫談で、ラジオ文化と映画文化の先駆性が光る。これらは当時の外国文化に通じるハイカラで洗練された都会的ユーモアが感じられる貴重な作品ばかり。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年7月31日配信開始) -
現代ユウモア全集 20巻 『哄笑極樂』 吉岡鳥平
僅か39歳で亡くなった異才の漫画家・吉岡鳥平、唯一の「漫文集」。旺盛な観察力と軽妙な語り口が光る全18篇を収録。 明治・大正・昭和初期を駆け抜け、僅か39歳で亡くなった異才の漫画家・吉岡鳥平、唯一の「漫文集」。東京美術学校(現・東京芸術大学)で西洋画を学びながら、在学中から「東京パック」「講談倶楽部」などに漫画を描き、卒業後は東京と大阪を舞台に新聞漫画家として活躍。「関西漫画会」の結成に関与したり、正岡容や大泉黒石、江戸川乱歩ら文化人との交流も深く、酒と騒ぎを愛する“お祭り博士”としても知られた人物。 本巻には、自叙伝から漫画、漫文、落語、笑話、探訪記事まで、旺盛な観察力と軽妙な語り口が光る、全18篇が並ぶ。「漫画家の自叙伝」では、仙台での青春時代の騒動をユーモラスに描き、「戀の雪達磨」「牽牛織女」などの短篇では、恋愛や結婚生活を風刺的に切り取る。 特に「同行二人大阪見物」「大大阪市民読本」「大阪妖怪探訪」の大阪時代を背景にした一連の作品群では、昭和初期の大阪の街並み、芸能、庶民の暮らしが生き生きと描かれ、極めて貴重な資料。さらに「萬歳四景」は、漫才成立前夜の「高級萬歳」を描き、大阪において[萬歳]が[漫才]になる過程での重要な作品ともなっている。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年6月26日配信開始) -
現代ユウモア全集 19巻 『凸凹放送局』 池部鈞
ラジオ放送の初期から視覚の聴覚化にいち早く取り組み、新聞漫画家と油絵画家の二刀流で活躍した画家の貴重な作品集、全22篇。 池部鈞は、油絵の洋画家と新聞漫画家の二刀流で活躍したが、まとまった画集や作品集はなく、伝説の画家となっている。画家としては昭和三年の第九回帝展で「少女球戯図」が特選に選ばれて注目を集め、新聞漫画家としては、「国民新聞」、「東京日日新聞」などで活躍し、 東京漫画会結成にも参加するなど、日本漫画界の礎を築くのにも貢献した。 本巻には、「閣下のユウモア」、「ノミキン論文作成の事」、「自伝漫談 小判から漫画家が生まれる迄」、「漫画落語 職工代議士」、「ラヂオ風景」など、政治家の似顔絵付きで人柄を語るエッセイ、自伝、ドタバタの落語風物語、ラジオの放送台本まで、貴重でユニークな22作品が並ぶ。 彼が当時の漫画家たちと最も異なる点は、視覚の聴覚化にも早くから取り組んだことにある。テレビさえなかった時代に、漫画的作品をラジオ放送化して聴覚に訴える、本作「凸凹放送局」に取り組んだ功績は、今後きちんと顕彰すべきだろう。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年5月29日配信開始) -
現代ユウモア全集 18巻 『漫談レヴィウ』 徳川夢聲 岡田時彦 古川緑波
映画界のスター、徳川夢聲、岡田時彦、古川緑波によるエッセイ、回想記など昭和初頭当時の大衆芸能の空気を封じ込めた全34篇。 大正末から昭和初頭の映画界のスター、徳川夢聲、岡田時彦、古川緑波の3名によるエッセイや回想記、小説など全34篇を収録。「現代ユウモア全集」では初の複数の著者で構成した1巻。 徳川夢聲は活動弁士として名を馳せ、後に漫談家・俳優・放送司会者などマルチタレントとして活躍した。収録作品は「見習諸勇列傳の巻」、「ヂンタ」、「ドブで眠る」、「通夜」など、単なる映画四方山話ではなく、夢聲の語りの実験が種々に凝らされた意欲的な14篇。 岡田時彦は美貌の青年俳優として活躍し30歳で急死した伝説の映画スター。芸名は谷崎潤一郎、佐藤春夫の両名による命名。本巻刊行時の彼は全盛期で俳優業のかたわら、モダンなエッセイや小説を発表し、多方面に活躍する天才モダンボーイという話題性から本全集に採用されたが、現在では、岡田時彦名義の文章の多くは代作だったことが明らかになっている。「僞眼のマドンナ」、「時彦戀懺悔」など5篇を収録。 古川緑波は昭和戦前を代表する喜劇役者、映画俳優、劇団座長などで活躍。特に映画や演芸の舞台で、エノケンこと榎本健一と競い合い、喜劇といえば「エノケン・ロッパ」と呼ばれる一時代を築いた。ただし、本巻刊行時はまだ素人演芸を披露しているだけの雑誌編集者に過ぎない。「映畫説明今昔物語」、「當世流行もの總まくり」など15篇を収録。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は追手門学院大学准教授・佐藤貴之。付録には、付録には、創刊当時に同梱されていた月報や外箱、表紙&裏表紙など、当時の貴重な資料も収録する。 (電子版 2026年4月24日配信開始) -
文学は割に合う!
★作品社公式noteで「訳者あとがき」全文公開中→「文学は割に合う! 試し読み」で検索! 世界にはびこる文系不要論に抗し、人間的な豊かさをはぐくむための文学の有用性を説くのみならず、その市場価値にまであえて踏み込み、「長期的投資」「遅れてくる利子」としての意義を強調する。フランス文学界の碩学による、抒情的な思索とアイロニカルな語り口に満ちた唯一無二の書。 本を読み、考えるという営みの肯定。 ■ 文学・哲学だけでなく、美術、映画、画面上のたくさんのコンテンツも含めた教養は、仕事における目先の作業から距離をとり、自らを客観視し、外部と内部とに同時に存在しながら自らを見つめ、人生を変えるための手助けをしてくれます。もともとのキャリアを超え出るため、方向を変えるため、関連分野へと分化していくため、新しいチャンスをとらえるためには、教養が不可欠なのです。一般教養がもたらすものとは、洞察力とか直感力という別種の知性です。これは優れた犬や狐にみられる勘に近いものなのです。鋭い勘は生まれつきではなく、読書によって養われるものであり、読書は他の経験への入り口となります。読書は勘を養ってくれるのです。困難を切り抜け、立て直すのにこれほど必要なものはないのです。(本書「第14章」より) ■ さてその夜、ジュリアン・ソレルの冒険に大興奮してしまったので、なかなか寝つけませんでした。(…)母が階下にいて、ダイニングの椅子に座っていました。(…)「寝ないの?」「本を読んでて眠れないんだ」――こんなとりとめない言葉を母と交わしました。そのときようやくわたしは理解したのです――母は死ぬのだと。(…)その夜、文学と生とが、恋と権力とが、そして二階で読む小説のなかにあらわれる野心と一階の母につきまとう苦しみと死とが、対立すると同時にたがいに浸透し、受け入れあっていました。文学が人生すべてだというつもりはありませんが、『赤と黒』がもたらした高揚感がなければ、この小説から得た人生への洞察がなければ、亡くなるまでの三ヶ月間、平常心と鋭敏さを失わずに母のそばに寄り添い続けることはできなかったでしょう。(本書「第15章」より) ■ 訳者として、本書が日本の読者、とりわけ「文学を学ぶ意味はあるのか?」と自問自答する者に、本を読み、考えるという一連の営みを肯定する一助となることを切に願う。文学は、つねに挑まれ傷つき衰えていくものの歴史ではあるが、決して過去の遺物ではない。その歴史を更新し続けることは、現在進行形のものとして文学の生を証しだてすることになる。(「訳者あとがき」より) 【内容目次】 第1章 詩こそはもっとも見返りの多い芸術のひとつ 第2章 教養と美容 第3章 通りを渡る 第4章 文学の欲求 第5章 「本当の人生、それは文学である」 第6章 オルニカールはどこ? 第7章 高等教育ビジネス 第8章 「ピアノを習いなさい、キーボードを叩く練習になるから!」 第9章 忙しいひとびとはまちがっている 第10章 気配りと卓越性(ディスタンクシオン) 第11章 ひとには自分の価値に値する価値があるのか? 第12章 階級に復讐する 第13章 野心とは、有象無象の悪徳ではない 第14章 すべてのひとのための文学 第15章 リホボス・ビーチ 第16章 魔法の直方体 第17章 耳も読む 第18章 読むことは健康のためになる 第19章 自分の人生の作者になるということ 第20章 文学はどこにでも 第21章 詩人たちの恩恵 第22章 マタイ効果 第23章 文学と統計学 第24章 失われた機会 第25章 落ち着いて、またいつでも会えるから! 原註 訳者あとがき 【著者プロフィール】 アントワーヌ・コンパニョン(Antoine Compagnon) (著) 1950年、ベルギー、ブリュッセル生まれ。理工科大学校、国立土木学校という理系のエリート校を卒業したが、その後、25歳で文学研究に転じた。パリ・ソルボンヌ大学教授を経て、2006年よりコレ─ジュ・ド・フランス教授。コロンビア大学教授を兼任。2022年に、アカデミー・フランセーズの会員に選出される。プルースト、モンテーニュ、ボードレール、文学史、文学理論に関する著書が多数ある。 本田 貴久 (ほんだ・たかひさ)(訳) 1975年生まれ。中央大学経済学部准教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。訳書に、ウィリアム・マルクス『文人伝──孔子からバルトまで』(水声社)、ジャン=ピエール・デュピュイ『ありえないことが現実になるとき──賢明な破局論にむけて』(共訳、ちくま学芸文庫)、ジャン=クロード・ベルフィオール『ラルース ギリシア・ローマ神話大事典』(共訳、大修館書店)など。 -
現代ユウモア全集 17巻 『嫁を探しに』 麻生豊
【ご注意】※この電子書籍は紙の本のイメージで作成されており、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 新聞連載漫画の草分けとして、現在の4コマ漫画の基礎を築いた漫画家。代表作「ノンキナトーサン」を含め全9作品を収録。 麻生 豊は大正~昭和期に活躍し、新聞連載漫画の草分けとして、現在の4コマ漫画の基礎を築いた、日本の漫画史において重要な位置を占める漫画家。本巻には代表作「ノンキナトーサン」、をはじめ、「嫁を探して」、「ジャヅ狂時代」、「外遊漫談」、「子供をめぐつて」、「拾遺忠臣蔵 九郎兵衛忠義」など、全9作品を収録している。 「ノンキナトーサン」(初出以後は「ノンキナトウサン」)は1929年2月の『サンデー毎日』の連載から始まった漫画で、報知新聞、読売新聞で連載が続く。のんきで世間にうまく適応できない父親の姿をユーモラスに描き、全国的な人気を博し、キャラクターグッズやアニメ化、舞台化もされるなど、日本漫画のIPビジネスの先駆けとなった。「嫁を探しに」は「ノンキナトーサン」を終了させ、その印税で欧州旅行をした紀行文。実は麻生が「ノンキナトーサン」の仕事に追われ、ノイローゼ状態になり、仕事からの逃避と慰安が本当の目的だった。「ジャヅ狂時代」はモボ(当時の流行語でモダンボーイの略)に憧れるが、うまく時代に乗れない自称不良少年の二人の行動を通して、昭和初期の世相を諷刺する漫画。「外遊漫談」は芸術研究の目的で渡欧した人たちが回想を寄せるエッセイ。特に麻生がローマでムッソリーニに面会した際の記述は今では貴重な記録なっている。 発刊当時の書籍を新たに全ページスキャニングしているので、本巻はリフローではなく、FIX形式。本文の旧字体総ルビはもちろん、ユニークなデザインもそのまま忠実に再現している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2026年3月27日配信開始) ※この作品はカラーが含まれます。 -
私たちが刈り取った男たち
全米批評家協会賞最終候補作! 最愛の弟をはじめとする、五人の親しい男たちの相次ぐ早世。自身と家族たち、仲間たちの苦悩と苦闘。そして、アメリカ南部で黒人として生きていくことの困難。全米図書賞を二度受賞した、現代アメリカ文学最重要の作家による、痛切なメモワール。 私はターシャとブランドンの言葉を思い出し、ログを殺したのは何者なのか、私たちを間引いていくのは何者なのか、考えた。ログの死は自らの行為、彼自身の心臓がもたらした結果だ。ならば私たちを殺す〈何者か〉とは、私たち自身なのだろうか? それともこうして死が累々と重なっていくそばで、愛する者たちが死んでいくそばで、私はなにか、もっと大きな物語を見落としているのだろうか? そもそも相手は人間なのか? ヘッドライトの明かりが闇のなかに銀色の筋となって浮かびあがり、ふいに、その〈何者か〉が闇のようにとほうもなく広大で、底なしで、すぐそこに迫っているような気がしてきた。私は音楽を止め、歌の語りを消して、甲高い虫の鳴き声と窓のそばをひゅうと過ぎていく熱風だけに耳を傾け、家路をたどった。それらのなかに物語を聞き取り、私たちの筋書きを書いている〈何者か〉の正体を突き止めてやろうと試みた。(本書より) 【内容目次】 プロローグ ここは狼の町 遠い過去~一九七七年 ロジャー・エリック・ダニエルズ三世 一九八一年三月五日生まれ 二〇〇四年六月三日没 私たちが生まれる 一九七七年~一九八四年 デモンド・クック 一九七二年五月十五日生まれ 二〇〇四年二月二十六日没 私たちは傷つく 一九八四年~一九八七年 チャールズ・ジョセフ・マーティン 一九八三年五月五日生まれ 二〇〇四年一月五日没 私たちは見ている 一九八七年~一九九一年 ロナルド・ウェイン・リザナ 一九八三年九月二十日生まれ 二〇〇二年十二月十六日没 私たちは学んでいる 一九九一年~一九九五年 ジョシュア・アダム・デドー 一九八〇年十月二十七日生まれ 二〇〇〇年十月二日没 私たちはここにいる 謝辞 訳者あとがき 【著・訳者プロフィール】 ジェスミン・ウォード (Jesmyn Ward)(著) ミシガン大学ファインアーツ修士課程修了。マッカーサー天才賞、ステグナー・フェローシップ、ジョン・アンド・レネイ・グリシャム・ライターズ・レジデンシー、ストラウス・リヴィング・プライズ、の各奨学金を獲得、および2022年米国議会図書館アメリカ・フィクション賞を受賞。『骨を引き上げろ(Salvage the Bones)』(2011年)と『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え(Sing, Unburied, Sing)』(2017年)の全米図書賞受賞により、同賞を2度にわたり受賞した初の女性作家となる。そのほかの著書に小説『線が血を流すところ(Where the Line Bleeds)』、『降りていこう(Let Us Descend)』およびメモワール『わたしたちが刈り取った男たち(Men We Reaped)』(本書)などが、編書にアンソロジー『今度は火だ(The Fire This Time)』がある。『わたしたちが刈り取った男たち』は全米批評家協会賞の最終候補に選ばれたほか、シカゴ・トリビューン・ハートランド賞および公正な社会のためのメディア賞を受賞。現在はルイジアナ州テュレーン大学創作科にて教鞭を執る。ミシシッピ州在住。 石川 由美子(いしかわ・ゆみこ)(訳) 琉球大学文学科英文学専攻課程修了。通信会社に入社後、フェロー・アカデミーにて翻訳を学び、フリーランス翻訳者として独立。ロマンス小説をはじめ、「ヴォーグニッポン」、「ナショナルジオグラフィック」、学術論文、実務文書など、多方面の翻訳を手掛ける。訳書に、『歌え、葬られぬ者たちよ、歌え』、『骨を引き上げろ』、『線が血を流すところ』、『降りていこう』(以上作品社)など。 -
現代ユウモア全集 16巻 『笑ひの天地』 佐々木 邦
日本のユーモア小説の先駆けにして第一人者の貴重な作品集第2弾。「ぐうたら道中記」をはじめ、全3篇を収録。 本全集第6巻に続き、佐々木邦の2作目作品集。日本のユーモア小説の先駆けにして第一人者の3作品を収録。 「ぐうたら道中記」は、40歳にもなっても寝て本ばかり読んで定職を持たない、愚迂多羅兵衛こと村岡清一郎と奇想瓢逸な團仙吉、三輪哲彦の大学の同窓生三人が、二人の子供まで連れた大勢で、東海道を江戸から振り出しに、名古屋から伊勢参宮、大阪、さらに九州は鹿児島まで、ぐうたらな旅をするお話。しかも、道中記の語り手は、愚迂多羅兵衛の息子、中学生の村岡謙一となっている。「箱根の彼方から始めて二週間に行けるところまで行く」など、計画性はなく、どこでまでもぐうたらな旅が続いていく。 「豪い人の話」は、『面白倶楽部』(講談社)大正十四年十月号に「諧謔小説 豪い人の話」として掲載された。銀行の頭取、陸軍大将、前大臣が、倶楽部で国家の問題を語りあった後で、「頗る際どい話」をする。国家の重鎮三人が密かに会談するので張り込んだ記者に、前大臣は「君達に話すやうなことぢやないよ。」と答える。一種の下ネタ話も、最後の「実に意味ありげである。」が、物語のおもしろさを増す仕掛け。 「或る良人の惨敗」も『面白倶楽部』に「諧謔小説 或良人の惨敗」として大正十五年二月号に掲載された。妻をたしなめるつもりの良人(おっと)が逆にやり込められる夫婦の物語。 一見亭主関白そうだが妻に弱いという男性が、邦の作品にはよく登場する。邦自身がそうだったようだ。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙、「ぐうたら道中記」の雑誌「主婦の友」(初出)連載時と弘学館版の別バージョンのイラストなど、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2026年2月27日配信開始) ※この作品はカラーが含まれます。 -
現代ユウモア全集 15巻 『見物左衞門』 水島爾保布
日本SF界の先駆者とも呼ばれ、画家、漫画家、随筆家など多彩な顔を持つ作家、唯一の作品集。全18篇を収録。 水島爾保布は日本SF界の先駆者とも呼ばれ、画家、漫画家、随筆家など多彩な顔も持つ作家。特に本巻収録の『人造人間時代』は古典SFファンには有名で、SF作家・今日泊亜蘭の父としても知られている。東京美術学校(現東京芸術大学)を卒業しているが、『日露戦争実記第八号』(育英社 明治37年4月)には、「水島爾」名義で新体詩「火鳥の賦」が掲載されるなど、在学中から絵より文芸活動が目立っていた。 本巻には「人造人間時代」をはじめ、表題作「見物左衞門」「漫画小説 結婚と馬鈴薯」「まがひ黄表紙 臥薪瓢箪」「葉巻とチョコレート」「服飾愚談」「女優と犬」など、SF小説から随筆、欧米ジョークの翻案まで、新聞・雑誌に連載された作品を中心に全18篇が収録されている。 彼の作品の多くは未来予想を描きながら、当代の世相を諷刺するエッセイのようなスタイル。例えば、醜い幼虫から華麗な成虫への成長を描く場合も、さりげなくモガ・モボ批判、政界批判を含んでいる。また、「服飾愚談」では、ありし日の出身地、東京・根岸界隈を詳細に記述して、写真のない時代の貴重な記録ともなっている。さらに画家として、本巻の挿絵はほぼすべて連載時から描き直しも行っている。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2026年1月30日配信開始) ※この作品はカラーが含まれます。 -
消失
セロニアス・エリスン(通称モンク)はアフリカ系アメリカ人で、大学で教鞭をとりながら小説家として文学的な作品を書いている。彼の目からみると黒人を売りにしたレベルの低い作品が世間ではベストセラーとなっていた。モンクは三年ぶりにロサンゼルスから実家のワシントンに帰り、医師の姉や高齢の母に会う。姉からは母は物忘れが目立つようになり、金銭的にも困りそうだと告げられる。ロサンゼルスに戻ったモンクは教授昇進が決まったことを知るが、小説は十七社から出版を断られていた。エージェントからは「黒人らしさが足りない」などと言われる。 その後、姉が事件に巻き込まれて再度ワシントンに飛んだモンクは、兄が離婚して多額の借金を抱えていることを知った。モンクは母と家政婦が住む家に引っ越して休職する。エージェントに電話をすると、小説はさらに三人の編集者から断られていた。 モンクは亡き父の書斎に入り、父が使っていた古いタイプライターで小説を書き始める。一気に書き上げたその中編小説は、モンクにとって到底発表できないような低俗極まりない作品だった。しかし、別名スタッグ・リーで書いたその原稿をエージェントが大手出版社に送ったところ絶賛され、多額の契約金で出版されることに。モンクは、やりとりは基本的にエージェント経由とし、決してばれないようにスタッグ・R・リーを演じようと考えるが、作品は非常に大きな注目を集めていき・・・・・・。 2024年アカデミー賞脚色賞を受賞した映画『アメリカン・フィクション』原作小説。 (ERASURE by Percival Everett) 【著者略歴】 パーシヴァル・エヴェレット Percival Everett 1956年米国ジョージア州生まれ。アフリカ系アメリカ人作家。南カリフォルニア大学卓越教授。『ジェイムズ』(木原善彦訳、河出書房新社)で2024年全米図書賞、2025年ピューリッツァー賞などを受賞。著書にブッカー賞最終候補作『赤く染まる木々』(上野元美訳、早川書房)、ピューリッツァー賞最終候補作『Telephone』ほか。本書を原作とした映画『アメリカン・フィクション』が2023年に公開され、アカデミー賞脚色賞を受賞。 【訳者略歴】 雨海弘美(あまがい・ひろみ) 翻訳者。訳書にミシェル・ザウナー『Hマートで泣きながら』(集英社クリエイティブ)、クレア・ノース『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)などがある。 -
現代ユウモア全集 14巻 『晴れ後曇り』 細木原青起
明治~大正~昭和に活躍した人気漫画家&挿絵画家で俳人、唯一の作品集。その貴重な作品16篇を収録。 細木原靑起は明治時代にデビューし、大正~昭和にかけて人気を博した漫画家、挿絵画家、俳人。現代では、「日本の漫画家の嚆矢は彼の(鳥獣戯画の)鳥羽僧正」と論じた、『日本漫画史』(1924年)で知られる。高浜虚子、伊藤左千夫、伊藤晴雨などの小説の挿絵を描き、新傾向自由律俳句の俳人としても活躍。1928年には日本挿画家協会の創立に協力し、長らく委員も務めた。 作品集の存在しない靑起にとって本巻の収録作品は貴重。巻頭の「女房を拾ふまで」から、明治期の浄瑠璃作品のパロディ「再生のお里澤市」、漫画脚本形式の「エレキの威力」、酒乱の[夫]が禁酒に成功するまでの酒飲みの苦労を笑う「禁酒」など、シャープで艶のある独特な挿絵とともに楽しめる16篇を収録。 本巻が発行された昭和4年は世界恐慌が起こり、日本でも昭和恐慌が始まる。当時の暗く厳しい状況では、靑起の作品のような庶民が軽く読めて気軽に笑える作品が根強い人気を得ていたようだ。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2025年12月26日配信開始) ※この作品はカラーが含まれます。 -
幽霊 新装版
アメリカを代表する女性作家イーディス・ウォートンによる、 すべての「幽霊を感じる人(ゴースト・フィーラー)」のための、珠玉の幽霊物語集。 静謐で優美な、そして恐怖を湛えた極上の世界。 生霊(いきりょう)や幽霊がこの世にいなくなると、何を失うことになるのか、つい考えてみたくもなります。しかし本書での私の目的は、むしろ幽霊を眼に見えるようにしてくれた人びとを称えることなのです。というのは、幽霊が生き残れる唯一のチャンスは、現実にせよ、想像にせよ、──おそらくは想像のほうが好ましいのですが──幽霊に出会ったひとたちの話のなかに存在すること、それを幽霊に忘れさせてはいけません。幽霊にとっては、ぼんやりと「体験される」よりは、いきいきと想像されるほうがありがたいのです。幽霊が影のようにぼんやりしていても、ちゃんと透けて見えるように表現することが、いかに困難なことか、幽霊だけが分かっています。――「付『ゴースト』序文」より 【目次】 カーフォル 祈りの公爵夫人 ジョーンズ氏 小間使いを呼ぶベル 柘榴の種 ホルバインにならって 万霊節 付『ゴースト』序文 訳者解説 【著・訳者プロフィール】 イーディス・ウォートン(Edith Wharton)(著) 1862~1937。ニューヨークの富豪の家に生まれる。1905年、ニューヨークの上流社会を批判的に描いた『歓楽の家』がベストセラーとなる。21年『無垢の時代』でピュリッツァー賞受賞。本作はマーティン・スコセッシ監督で93年に『エイジ・オブ・イノセンス』として映画化された。他の作品に『イーサン・フロム』、『夏』など。 薗田 美和子(そのだ・みわこ)(訳) 元女子栄養大学教授。津田塾大学大学院博士課程単位取得退学。共訳書にS・ギルバート、S・グーバー『屋根裏の狂女──ブロンテと共に』、E・ショーウォーター『心を病む女たち──狂気と英国文化』(以上朝日出版社)、P・リーフ『フロイト──モラリストの精神』(誠信書房)など。 山田 晴子(やまだ・はるこ)(訳) 元玉川大学教授。津田塾大学大学院単位取得退学。共訳書に『屋根裏の狂女』、『心を病む女たち』など。監修書に錢寧著、謝崇怡訳『現代中国青年たちの夢そして現実』(上・下、YMS 創流社)など。 -
悪夢工場
「キングがホラーの達人なら、リゴッティはホラーの化身だ。」(ニューヨーク・タイムズ)――祈りなのか、呪いなのか。アメリカのカルト作家による救済なき傑作群が、本邦初単行本化。 「そう、この世界の人々が、神ならぬ新たな神の存在に勘づいていることを漏らしてしまったのは、せいぜい一世紀前のことだった。」 H・P・ラヴクラフトやフィリップ・K・ディックと並び称され、ブラム・ストーカー賞を4度受賞した、文学史上最も危険な作家が、ついに上陸! 【目次】 戯れ (若島正 訳) アリスの最後の冒険 (白石朗 訳) ヴァステイリアン (若島正 訳) 道化師の最後の祭り (宮脇孝雄 訳) ネセスキュリアル (若島正 訳) 魔力 (若島正 訳) 世界の底に潜む影 (若島正 訳) ツァラル (若島正 訳) 赤塔 (若島正 訳) 編者あとがき 若島正 -
現代ユウモア全集 13巻 『涙の値打』 田中比左良
【ご注意】※この電子書籍は紙の本のイメージで作成されており、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 大正~昭和にかけて一世を風靡した人気漫画・漫文家の、女性をテーマとした初期作品、全13篇を収録。 田中比左良は大正時代にデビューし、昭和にかけて一世を風靡した漫画・漫文家で、特に女性を描いた作品で知られる。彼の作品は、当時の女性の生き方や風俗を反映し、95年ぶりに電子書籍として本巻が復刊するのは、昭和の記録の復活と同時に、田中比左良という漫画家の復活としても、大きな意義を持つ。 本巻には、特に貴重な初期作品、全13篇を収録。代表作「連續漫畫 モガ子とモボ郞 上巻」をはじめ、当時の女性のたくましい生き方に感動する「海女の生活」、松竹や東宝の俳優審査委員に就任したことで、女性の外面、内面の美しさを絵と文でほのぼのと説明する「京美人禮讃記」、[漫彫]と称するレリーフ式漫画を自ら考案した「漫彫三十三個」、実際の出来事を小説風の人名に置き換えて書かれている表題作「涙の値打」、子供向けの、一種教訓的な漫画物語「一本足のピヨン太郎」「Pちやんとムク」まで、バラエティー豊かな漫画・漫文作品が並ぶ。 発刊当時の書籍を新たに全ページスキャニングしているので、本巻はリフローではなく、FIX形式。本文の旧字体総ルビはもちろん、ユニークなデザインもそのまま忠実に再現している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2025年11月28日配信開始) ※この作品はカラーが含まれます。 -
宮沢賢治きのこ文学集成
とりて来し 白ききのこを見てあれば なみだながるる 寄宿のゆうべ “日本を代表するきのこ文学者”宮沢賢治の短歌・詩・小説・童話を集成! 『泉鏡花きのこ文学集成』に続く、「きのこ文学」シリーズ第二弾! その魅力を説く「編者解説 きのこ文学者としての宮沢賢治」付! 楢夫(ならお)は夕方、裏の大きな栗の木の下に行きました。其(そ)の幹の、丁度(ちょうど)楢夫の目位高い所に、白いきのこが三つできていました。まん中のは大きく、両がわの二つはずっと小さく、そして少し低いのでした。 楢夫は、じっとそれを眺めて、ひとりごとを言いました。 「ははあ、これがさるのこしかけだ。けれどもこいつへ腰をかけるようなやつなら、ずいぶん小さな猿だ。そして、まん中にかけるのがきっと小猿の大将で、両わきにかけるのは、ただの兵隊にちがいない。いくら小猿の大将が威張(いば)ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ。どんな顔をしているか、一ぺん見てやりたいもんだ」 そしたら、きのこの上に、ひょっこり三疋(さんびき)の小猿があらわれて腰掛けました。(「さるのこしかけ」より) 【内容目次】 短歌四首 詩:何をやっても間に合わない/休息/おい けとばすな/スタンレー探検隊に対する二人のコンゴー土人の演説/秘境/林と思想 小説・童話 さるのこしかけ/三人兄弟の医者と北守将軍/あけがた/車/ビジテリアン大祭/税務署長の冒険(抄録)/谷/二人の役人/どんぐりと山猫/狼森と笊森、盗森/鹿踊りのはじまり/土神ときつね/朝に就ての童話的構図 編者解説 きのこ文学者としての宮沢賢治 飯沢耕太郎 【著者プロフィール】 宮沢 賢治 (ミヤザワ ケンジ) (著) 1896年岩手県花巻生まれ。盛岡高等農林学校(現岩手大学農学部)卒業。1921年から花巻農学校で教諭を務める。1926年に退職し、羅須地人協会を設立、農業技術指導などを行なうが、1928年に過労で倒れ、以後は療養生活を続けながら執筆活動を行なう。1933年9月21日没。享年37。生前に刊行された単著は、詩集『春と修羅』(1924)、童話集『注文の多い料理店』(1924)のみであったが、1934~35年には文圃堂から全3巻の全集が、1939~44年には十字屋書店から全6巻+別巻1の全集が刊行された。戦後も筑摩書房から数次にわたって全集が刊行されている。 飯沢 耕太郎 (イイザワ コウタロウ) (編) 1954年生まれ。写真評論家、きのこ文学研究家。きのこ関連の著書に、『世界のキノコ切手』(プチグラパブリッシング、2007)、『きのこ文学大全』(平凡社新書、2008)、『マジカル・ミステリアス・マッシュルーム・ツアー』(東京キララ社、2010)、『きのこのチカラ きのこ的生き方のすすめ』(マガジンハウス、2011)、『フングス・マギクス 精選きのこ文学渉猟』(東洋書林、2012)など、編書に、『きのこ文学名作選』(港の人、2010)、『きのこ文学ワンダーランド』(共著、DU BOOKS、2013)、『世界のかわいいきのこデザイン』(共著、DU BOOKS、2016)、『きのこ漫画名作選』(Pヴァイン、2016)、『泉鏡花きのこ文学集成』(作品社、2024)など、監修に、玉木えみ『少女系きのこ図鑑』(DU BOOKS、2013)、玉木えみ『増殖・少女系きのこ図鑑』(DU BOOKS、2015)などがある。 -
竪琴を忘れた場所 辻邦生短篇選集 Lumière
老境の弁護士、詩人、すれ違い始めた男女が、それでもなお「今ここに在ること」の素晴らしさを歌いあげる。光に満ちた八篇を著者への深い敬愛を込めて編者が選ぶ。生誕一〇〇年記念。 「人間の生きる姿」と「地上に存在するよろこび」を訴えていた辻邦生の仕事は、どこか孤立しているようにさえ感じられた。逆に言えば、彼の強さはまさにそのような孤立をものともせず、いついかなるときも、コリン・ウィルソンの言う「〈すべては素晴らしい〉という唐突な感情」のわきでる泉に向かって、探索者のように進んでいく膂力を有していたところにあるだろう。 堀江敏幸「噴水の水滴になること――『竪琴を忘れた場所』解説にかえて」より -
現代ユウモア全集 12巻 『紅茶と葉卷』 牧逸馬
多筆名作家で、[文壇のモンスター]と呼ばれた破格の作家のユーモア短編、一口噺、アメリカン・ジョークなど全54篇を収録。 牧逸馬は谷譲次、林不忘、賴市彦、阿多羅緒兒など複数の名義で活躍。翻訳、小説、紀行文、ルポルタージュなど多ジャンルを手がけ、「文壇のモンスター」と呼ばれた破格の作家。 「牧逸馬」は現代通俗・探偵・恋愛小説や欧米コントの翻訳、「谷譲次」はアメリカでの体験に基づいた[めりけん・じゃっぷ]物や海外ルポルタージュ、「林不忘」は歴史小説や時代物で知られていく。特に林不忘名義で執筆した丹下左膳シリーズは、芝居・映画化もされ大ヒットした。父は政治ジャーナリストで教育者。兄弟もそれぞれ文学・芸術分野で活躍した。若くして米国へ渡り、大学中退後に放浪生活。多様な職業を経験し、異文化体験が創作に活かされた。 本巻には、1925年から1928年に発表された、軽妙なユーモア短編、[めりけん・じゃっぷ]物、一口噺、連作笑話、アメリカン・ジョーク集など54篇を収録。谷譲次、林不忘名義作品も混在している。英語と日本語を自在に混ぜた独特な文体で、クレオール女性や移民日本人など、異文化のズレや階級・人種など境界的存在の交錯を描き、ストーリーを語りつつ観客目線で解説もする活動弁士的な語り口は、昭和初頭のモダニズム文学にも影響を与えている。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究者で追手門学院大学准教授・佐藤貴之。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2025年10月31日配信開始) ※この作品は一部カラーが含まれます。 -
創作者のための読書術
「読む」解像度が上がれば「書ける」ようになる! 作家は作品をどう読んでいるのか?──プロの書き手の読み方を知ることで、小説やエッセイ、漫画からウェブメディアでの執筆まで、書く技術を向上させよう 優れた作家になるための第一歩は、優れた読書家になること。プロの書き手が行っている「分析的読み方」を学ぶことで、自分の作品を書き出す一歩が見つかり、さらに書き手としてのスキルを高めることができる──そんな「書く」ための学びとなる読書術を徹底伝授。本書は、ジャンル、ナラティブアーク、キャラクター造形、語りの視点など執筆術の使われ方をひもときながら、現代の小説やノンフィクション、詩、SNS、ブログなどの豊富な引用例を繰り返し読むことで、創作に役立つ効果的な読み方(=精読)が自然と身につく一冊である。 【本書のポイント】 ・すべての「書く」人に役立つ「読み方」がわかる ・創作理論が実際の作品にどう使われているかを学べる ・言葉にする力を育て、自作の文章に応用できる ・引用作品を多角的な視点から何度も読み込むことで、分析的読書の訓練ができる ・各章末に引用作品の考察のポイントと自作のための執筆のヒント付き -
現代ユウモア全集 11巻『らく我記』 高田義一郞
知る人ぞ知る、埋もれた作家唯一の創作集を含め、随筆、雑文など、貴重な全53篇を収録。 高田義一郞はこれまで「医学博士」ということ以外あまり知られていなかった。創作は少なく、医学的な随筆や通俗的な医学記事が多く、まとまった創作作品集は、本巻『らく我記』だけということで、埋もれた作家となっていた。 しかし、2015年に、彼が1929年の国立大学町都市開発初期、国立市に建築した貴重な文化住宅、旧高田邸が取り壊されることになり、邸宅の記録保存に関わる人たちによって、突然、義一郎の名前や経歴がクローズアップされるようになった。 本巻には、創作をはじめ、随筆、雑文など全53篇を収録している。勤務していた大学病院の裏話や通俗雑誌の医療相談欄の記事をおもしろおかしく評する一方、SF調の2作品、「人造人間」では、[試験管ベビー]を扱い、「人間の卵」では、[薬品で卵生化させての出産]をテーマに深刻かつユーモラスにまとめるなど、100年後の今でも考えなければならない問題をすでにこの時代に提示する鋭い洞察力にも溢れている作品も多い。 発刊当時の旧字体総ルビに加えて、より読みやすくした新字体バージョンも新たに追加収録している。解説文は日本のユーモア文学研究の第一人者・浦 和男。付録には、外箱や表紙や裏表紙など、当時の貴重な資料を収録する。 (電子版 2025年9月26日配信開始) ※この作品は一部カラーが含まれます。
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