鈴木仁子の作品一覧
「鈴木仁子」の「アウステルリッツ」「移民たち:四つの長い物語」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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「鈴木仁子」の「アウステルリッツ」「移民たち:四つの長い物語」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
Posted by ブクログ
サフォーク州を徒歩で横断した「わたし」は、旅の果てに力尽きて入院する。ノーフォーク州ノリッジにあるその病院は、トマス・ブラウンの頭蓋骨が眠るとされている場所だった。旅の記憶と本の記憶が交じり合い、連想が連想を呼ぶメランコリックな旅行記小説。
旅の話とブッキッシュな歴史の話がシームレスに繋がれ、脱線に次ぐ脱線をくり返していく。特に6章の橋→竜(ボルヘス『幻獣辞典』)→西太后へとモチーフをするする転換させ、あたかも居合わせたかのように西太后の生涯を語ってみせるくだりは、既読のゼーバルト作品からは感じたことのない陽気さがあって新鮮だった。大英帝国の罪を告発するコンラッドとケイスメントの伝記なども
Posted by ブクログ
①文体★★★★★
②読後余韻★★★★★
アウステルリッツというタイトルは三帝会戦を思わせますが、登場人物の名前です。アウステルリッツは建築史の研究者として、駅舎や裁判所、要塞都市、病院や監獄などに興味をひかれ、文献をあたり、また実際にその場を訪れ記録をする人物です。語り手である「私」は、そんな彼と出会い、彼の聞き手として、文章を綴ります。
アウステルリッツはおのれの出自をたどろうと、ヨーロッパの諸都市を旅します。それはユダヤ人として迫害を受けた両親をたどるまでにつながり、暴力、そして権力による歴史を目の当たりにすることになります。
彼が訪れた様々な建築物、聴こえない声に耳をすませるアウ
Posted by ブクログ
私(語り手)はアントワープの中央駅待合室で建築家のアウステルリッツにふと声をかける。彼は駅の歴史から始まってつらつらと様々な建築の歴史を、果ては自分の生い立ち、イギリスでの学校での出来事、蘇った記憶、ユダヤ人としての出自、両親との別離と捜索、人との出会いと別れを、私(語り手)に会うたびにとめどなく語っていく。
アウステルリッツの語りはあちらこちらへと移り、思考は分岐する河のように流れ、イラストではなく写真が載せられていることもあり、実在人物から話を聞いているように読みました。
意外な写真の効果を再認識しました。真実と思わせる力。いやーすごい。
Posted by ブクログ
もっとも感動的だった表紙の写真が出てくる場面では、名前、故郷、言語を失ったアウステルリッツが自身の確実な過去、存在していた証拠をはじめて目にするのだが、彼はいっそう存在の不安に脅かされていた。ラストには過去が鉱坑の奈落に例えられるように、アウステルリッツにとっての果てしない旅、父親を探しに出る際に「そうしたことがなにを意味するのかわからない」と言うように、幻想とも言える過去への旅を続ける彼にとって、確実な過去は奈落の底のようなものなのでは。
文章から受け取るのはまさに「過去」のイメージで、この感覚はモノクロの暗くて静かな写真→自身の過去にまで波及していくようで、アウステルリッツの過去(鉱坑の