完全には聞き取れなかったが「this plane has minor damage」という言葉が私の耳に入って来た。「マイナーダメージ??」私が考える間もなく、通路を歩いていたCA(当時はスチュワーデスさんですが)の顔色が青ざめたように見えた。
乗客の殆どが外国人、私たちのようなツアー客少数が日本人だったと思うが、外国人がざわつき始めた。その後、日本語のアナウンスで詳細な説明がなされた。
「アンカレッジ空港から報告があり、飛行機のタイヤの残骸が発見され、この飛行機のタイヤがパンクした模様です。でも安全には問題ありません」とのことだった。
「安全には問題ない」と言いながらも、CAの女性たちはとても怖い、或いは沈んだ形相になっていた。私たちツアー客は添乗員に確認したが、添乗員も不安気に説明するばかりである。
「Oh my god!!」という叫び声がどこからか聞こえて来た。
それから数時間、私は生きた心地がしなかった。生まれて初めて乗った飛行機で事故に遭い死んでしまうのか。なんて運が悪いのだろうと覚悟した。
コペンハーゲン空港に着陸する直前になると、CAが乗客全員に非常時着陸の態勢を取るように指示しながら通路を回る。彼女たちの顔もどこか寂しげである。
前かがみになり膝に手を回していた私にCAが寄って来て「眼鏡を外してください」と英語で言った。ああ、やはりそんなに危険な着陸なのだとあらためて思った。