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表題作ほか11の短編を収録。喪失、孤独、秘密、愛情……深みのあるテーマを扱っている小説だが、率直ゆえの辛辣さのなかにユーモアを感じる。唯一無二の作家による待望の一冊。
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Posted by ブクログ
『何年も前、友達になった年上の作家が執筆中の本のことを手紙で尋ねてきた。「小説はいかがでしょうか。人は病人のことを訊くようにそう訊きますが、まだ書き終えていない小説とはそんなものです。終わったら、それは死んでいるか、ずっと具合がよくなっているかのどちらか。死者をわずらわせてはいけません」』―『水曜生...続きを読むまれの子』 久しぶりに読む、イーユン・リー。もう、この作家を「千年の祈り」を読んだ時のようには読めないことを改めて意識してしまう。其処彼処に散らばる孤独、そして他者の死によってもたらされる喪失感。そこに作家の私生活における影を見ずにはいられない。 「理由のない場所」を読んだ時に、そこに長男の自死の影響を見たこと。それが「もう行かなくては」で喪失感を常に抱えながらも、やや昇華した形に変化した兆しを見たのが三年以上前のこと。その時に自分は「この作家の抱えている絶望感はとても深い。しかし、その絶望の水底を見通すために水面を揺らす小波[さざなみ]を息をこらえて鎮め覗き込もうとする強さも同時に持っている」と綴っている。そしてこの「水曜生まれの子」でのやや冷笑的に登場人物の愛らしさを描くまでの復活。よもやこの後に二人目の息子を失う出来事が起きようとは想像していなかっただろう。 『母親業というのは、よくある自動更新の契約みたいなものだ。何もせずにいるとクレジットカードに請求が来る。でも、自動装置に人生を乗っとらせてなぜいけない』―『非の打ちどころのない沈黙』 だが果たしてそうだろうか。この短篇集の中に既に来るべき喪失への警戒心が溢れているような気がするのは、作家の身に起きてしまったことを知っての先入観が為せる偏見か、あるいは作家の心情が率直に表れていたと見るべきか。この作家の抱える闇の深さを考えれば、そんなことをどうしても考えてしまっての読書となる。そしてその問いへの答えの一部はその出来事の後に発表された回想録「自然のものはただ育つ」の中で明かされているに違いない。 多くを語れない読書がある一方で、多くを語りたくない読書というものもある。イーユン・リーを読むということは、ただ黙して作家の一人語りに寄り添うように聞くことなのだと、改めて思う。
様々な年代の、様々な仕事を持つ人々の人生を、こんなにも物語れるなんてー。すべてのエピソードが本当にあったことのように息づいていて、なぜだか泣きそうになる。「列車の前に歩み出てきた」と言う鉄道職員。三十六個の植木鉢から流れ出る水。母親になるなんて、なんて向こうみずだったのだろう。こんにちは靴さん。さよ...続きを読むうなら靴さん。「くたばれ」。 イーユン・リーの作品を読むと、目の前が淡い寒色系のマーブル模様に染まっていくような気持ちになる。うっすらほのあかるい諦観。 登場する子どもの多くが、賢く繊細で生きづらそうにしているところに、筆者の長男の影を色濃く感じ、どうしようもなく悲しくなる。 あとがきで紹介されているインタビューで、「世界でひどいことが起きている中で、意味がないと感じてしまう時こそ、生活を回し続ける小さな物事(ケーキを焼いたり庭仕事をしたりすること)に喜びを見出す意思の力が必要である」という趣旨の発言をしているイーユン・リー。その哲学が大好きだし、どうか長生きしてほしい。
僕のささやかな人生を投影して、共感したと言いたいわけじゃない。 イーユン・リー自身の人生と重なる箇所を探して、分かった気になれるわけでもない。 ここにあるのは、汎用性や互換性があるような、消化吸収しやすい感情ではない。 それなのに、どうしようもなく心が震える。短い物語たちに心が取り込まれてゆく。 ...続きを読む外側から眺めるように読むことなどできず、登場人物たちの中から彼らの目を通して世界を見る。 そんな読書になる。 こんなに不完全な世界で、子供を産み育てると決めたとき、生まれてきた子に何がいえるだろう。 苦しみや悲しみにも不条理からも、目を背けなさい。喜びや明るい面だけを見て生きなさいと? 子供たちから鈍感だ、いんちきだと馬鹿にされたとしても、生きているのは楽しいよと言い続ける以外に親に何ができるというのだろう。 イー・ユンリーの以前に読んだ本にあったセリフが忘れられず、ここでもまた思い浮かべてしまう。 “「人生は完璧じゃない。でも何らかの意味がある。違う?」 「うん。それは残念賞だな。でも、僕は残念賞のために生きることはしないんだよ。」” 結婚はどうだろう。愛情という曖昧で不確実なものよりも、礼儀正しさと思いやりで維持していく契約だと捉えた方が、いっそ楽に息ができるのではないか。 必要以上に相手を深く覗き込まなければ、相手の中に自分を刻み込む危険を避けることができる。 そうすれば、誰かを傷つけることも、傷つけられることもない。 家族と共にあっても、孤独は自らを守るための鎧であり、潤滑油だと思う。 養女、乳母、メール・オーダー・ブライド、金持ちに囲われるように暮らすこと、愚鈍な善人を選んで結婚すること、さまざまな女性たちが、自分たちなりの生き延びる術を身につけて、息を凝らすようにして生きている。 そして、死を選んだ子どもたちの多くは、生き延びる術を身につけることを望まなかった。 なにがよいことなのかと論じることはできないだろう。 ーー イーユン・リーがインタビューで語った言葉が、後書きで紹介されている。 “私は不幸だとは感じていません。悲しいのです。とても悲しいとは言えます。悲しい過去があるのです。でも不幸ではありません。なぜなら、悲しみと喜びは両立しうるからです。” この言葉は、もちろん前向きな希望を抱かせてくれる。だが一方で、僕は深く静かな諦念を感じてしまうのだ。 悲しみと喜びは両立する。それはとりもなおさず、喜びでは悲しみを拭い去ることはできないということだ。 喜びを糧としながら、癒されることのない悲しみを手離すことなく生きていくと、自分自身に告げるひっそりした覚悟の言葉に思えるのだ。
訳し方なのでしようか。淡々と話が進んで登場人物の個性が私には見えませんでした。 三篇ほど読みましたが変化がなく私には合わないな。と中断してしまいました。
翻訳小説が苦手なこともあって、なかなか没頭するのが大変だったが、他の方のレビューを読んで、あとがきを先に読んでみたら、初めて読む彼女の世界観の根底にあるものに触れることができ、グッと読みやすくなった。「目に見えないところに、心をかき乱すやっかいな何かが本質的に存在しているという確信があります。その部...続きを読む分を覆い隠すよりも、発見するために書きたいのです」「悲しみと不幸は大きくちがうとも考えています。不幸と喜びは両立しない場合が多いのです。不幸というのはむしろつらい状態に似ていて、それはよくないことです。そして、私は不幸だとは感じていません。悲しいのです。とても悲しいとは言えます。悲しい過去があるのです。でも不幸ではありません。なぜなら悲しみと喜びは両立しうるからです」。11の短編の中で、刺さる作品は人によって大きく異なるだろう。私は「かくまわれた女」「非の打ちどころのない沈黙」「すべてはうまくいく」が好きだ。
孤独や喪失と向かい合い静かに淡々と暮らす人たちの短編集。諦観した人ゆえの静かな強さみたいなものが感じられて良かった
中国のチェーホフと称されるアメリカ在住の作家 訳者あとがきを読んでから本文を 読めば良かった 何とか読み進めたが読みながら 何か凄い苦しみを体験した人なのかな と感じた それは当たっていた 北京大学までの中国での生活や思いは 分からないが 進路変更して作家の世界へ 自殺未遂や子どもの自死 容易で...続きを読むは無い それぞれの作品の後に シェークスピアやマザーグースなど 関連があるのも私には新鮮だった 何回か読むといろんな事を考えさせられそう
ちょっとウィリアム・トレヴァーを思い出したりもしたのだが、トレヴァーとは友人だったのね。 悲しいだけじゃなく、途中クスクス笑ってしまうところもあって、それが一層リアルだなあと思った。どれもよいが、最初の1篇と最後の1篇が特によかった。
名久井直子さんの装丁に惹かれて。短編集。なんだか馴染みにくかった。『理由のない場所』はすきだったんだけど。
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