小説 - 講談社文芸文庫作品一覧

  • コチャバンバ行き
    値引きあり
    4.0
    安穏・安全な「生」とは何か? 読売文学賞受賞の明篇――湘南で多少の土地を持ち、家を貸して自適生活する主人公。妻は仕事で不在がち。「安全な生活」とは何か……。元上司との様々なやりとりのあと、上司は妻を失う。南米・ボリビアでのバスの乗客の、何の苦痛もない死……。ささやかな生活の描写の中に、人生の哀歓をつむぎ出す、永井龍男独自の「美学」の結晶。『皿皿皿と皿』を併録。読売文学賞受賞作品。
  • この百年の小説 人生と文学と
    -
    西欧文学に100年以上遅れて出発し、そのエッセンスを学びながら追いかけてきた日本の近代文学。明治期の誕生以降、発展を続けているその歴史を、漱石、鴎外、露伴、谷崎、芥川、川端、三島、大江、石原らの代表的な作品を取りあげながら概観し、青春、恋愛、少年、心理、老年、歴史等々、「人生と文学」の断面から照射した、壮大かつ心揺さぶる精神のドラマ。博覧強記の小説家が遺した名著。
  • 金色の死
    3.5
    潜在的な<妻殺し>を断罪 江戸川乱歩の「パノラマ島綺譚」に影響を与えたとされる怪奇的幻想小説「金色の死」、私立探偵を名乗る見知らぬ男に突然呼びとめられ、妻の死の顛末を問われ、たたみ掛ける様にその死を糾弾する探偵と、追い込まれる主人公の恐怖の心理を絶妙に描いて、日本の探偵小説の濫觴といわれた「途上」、ほかに「人面疽」「小さな王国」「母を恋ふる記」「青い花」など谷崎の多彩な個性が発揮される大正期の作品群7篇。 清水良典 『小さな王国』のような政治小説も、探偵小説も、怪奇幻想小説も、足フェチ小説も、母恋い小説も、みんな谷崎文学という偉大な大樹の、大正期の枝に生った果実である。昭和に入って谷崎文学は急速に日本の伝統に近づき、大家として飛躍的な成長を遂げた。(中略)谷崎の大正期は、決して失われた時代ではない。むしろ作家谷崎が、全力を傾けて拡大と成長に努めた時代だったのであり、その土台が彼を「大谷崎」へと押し上げたのである。――<「解説」より>
  • 紺野機業場
    値引きあり
    -
    芸術選奨受賞の聞き書長篇。淡々と綴る浄福の世界――北陸の海端の、さびしい河口の町。快活で研究心に富み、情に厚く飾り気のない人柄の、小さな織物工場を営む老主人・紺野友次。家族の消息やありふれた日常の中に、年中行事、信仰、習俗などにささえられた、100年にも及ぶ一族の歴史が描かれ、懐かしい日本の原風景が刻される。地方に生活する人々の真情を淡々と綴る浄福の世界。芸術選奨受賞作品。
  • 五月巡歴
    -
    突然舞い込んだ「メーデー事件第二審の証人として法廷に出て頂きたくお願い申し上げる次第であります」との手紙。20年前の己れの遠い過去の甦りに、怯えを隠せぬ男の、同時に捲き込まれる現勤務先での一就業規則違反事件。昭和27年、高揚するメーデーのデモ隊に加わって、皇居前広場に乱入し逮捕された者、逃げ惑った学生らのその後の時間の重みと心の傷の襞を鮮烈に追う長篇力作。
  • 極楽 大祭 皇帝 笙野頼子初期作品集
    -
    群像新人賞「極楽」を含む最初期の作品三篇。地獄絵を描くことを人生の究極の目的とした男の心象を追求した「極楽」、現実からの脱出を願う七歳の子供の話「大祭」、初期の代表作「皇帝」。著者の原点三篇を収録。(講談社文芸文庫)
  • 五勺の酒・萩のもんかきや
    値引きあり
    3.0
    たった5勺の酒に酔う老教師の口舌の裡に、天皇制を批判する勢力の既にして硬直し始めた在り方を、痛罵し、昭和20年代の良心としての存在を確立した名篇「五勺の酒」をはじめ、萩の街の中で、見出した戦争の傷跡を鮮烈に描き出した「萩のもんかきや」など12の名篇。中野重治の詩魂と精神の結晶とも呼ぶべき中短篇集。
  • ゴットハルト鉄道
    値引きあり
    4.4
    “ゴット(神)ハルト(硬い)は、わたしという粘膜に炎症を起こさせた”ヨーロッパの中央に横たわる巨大な山塊ゴットハルト。暗く長いトンネルの旅を“聖人のお腹”を通り抜ける陶酔と感じる「わたし」の微妙な身体感覚を詩的メタファーを秘めた文体で描く表題作他2篇。日独両言語で創作する著者は、国・文明・性など既成の領域を軽々と越境、変幻する言葉のマジックが奔放な詩的イメージを紡ぎ出す。
  • ゴーストバスターズ 冒険小説
    4.0
    謎のゴーストを探し求めてアメリカ横断の旅に出るブッチ・キャシディとサンダンス・キッド。そしてBA-SHOとSO-RAもアメリカを旅し、「俳句鉄道888」で、失踪した叔父を探すドン・キホーテの姪と巡り合う。東京の空を飛ぶ「正義の味方」超人マン・タカハシは、ついにゴーストからの呼び出しを受ける……。隠されたゴーストの正体とは? 時空を超え、夢と現を超え、疾走する冒険小説。
  • 才市・簑笠の人
    -
    念仏に生き、83歳で一生を終えた、下駄職人・浅原才市。下駄作りの際に出るかんな屑に書き残した、1万首に及ぶ信仰の歌……。「わしのこころわ わやわやで/くもともとれの/きりともとれの/かぜともとれの」……無名の庶民の営為に心惹かれて、その謎めく生涯を深く追究した、伝記小説「才市」。一所不住・清貧孤独に徹した良寛の境涯に迫る「蓑笠の人」。信仰を主題の力作2篇。
  • 坂口安吾と中上健次
    4.0
    闘う知性が読み解く、事件としての安吾と中上――日本の怠惰な知性の伝統の中で、「事件」として登場した坂口安吾と中上健次。二人は、近代文学の根源へ遡行しつつ、「自然主義」と「物語」の止揚を目指す。安吾は、自らを突き放すような他者性に文学の「ふるさと」を見出し、中上は、構造に還元することなく、歴史の現在性としての「路地」と格闘する。闘う知性としての安吾と中上を論じた、74年から95年までの批評を集成した、伊藤整文学賞受賞作。 ◎「文学」とは、どんな秩序にも属さず、たえず枠組を破ってしまう荒ぶる魂であった。文学をやっている人がすべてそうなのではない。むしろその反対である。文学という枠組を吹き飛ばすようなもの、それが「文学」だった。私と中上は文壇において暴風雨のような存在であった。そして、われわれがともに敬愛していたのが坂口安吾である。(中略)私は安吾を高く評価していた。しかし、小説家としてではない。私にとって、彼の作品は、哲学であり、歴史学であり、心理学あり……、それらすべてをふくむ何か、要するに、「文学」であった。<「著者から読者へ」より>
  • 砂丘が動くように
    値引きあり
    3.0
    海沿いの砂丘のある町にやってきたルポライターの男が、少年に誘われ迷い込んでゆく奇妙な町の夜と昼の光景。超能力を持つ少年と盲目のその姉。女装する美しい若者。夜の闇に異常発生する正体不明の無数の小動物キンチ。刻々に変化して砂防林にも拘らず死滅へと向かう砂丘。現代人の意識の変容を砂丘の物質のイメージに托しつつ未来宇宙への甦りを象徴させる。第22回谷崎潤一郎賞。
  • 桜 愛と青春と生活
    値引きあり
    -
    六尺二十貫、ロス五輪、ボートの日本代表選手・田中英光。太宰治を敬愛すること深く、太宰の逝った翌年、文化の日、三鷹禅林寺の太宰の墓前にて自裁。巨大な体躯をもてあますような傷つきやすい魂を持ち、純粋に、戦中・戦後を生きようとして果てた著者の初期秀作「桜」、また、結婚までの青春の錯綜を描く「愛と青春と生活」。
  • 桜島 日の果て 幻化
    4.3
    処女作「風宴」の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作「桜島」の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作「日の果て」。「桜島」「日の果て」と照応する毎日出版文化賞受賞の「幻化」。不気味で純粋な"生"の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。
  • 桜の森の満開の下
    4.0
    なぜ、それが"物語・歴史"だったのだろうか――。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する"大いなる野性"坂口安吾の"物語・歴史小説世界"。
  • 酒と戦後派 人物随想集
    -
    「近代文学」創刊同人(荒正人、平野謙、佐々木基一、小田切秀雄、山室静、本多秋五)、藤枝静男、野間宏、原民喜、堀辰雄、椎名麟三、梅崎春生、高橋和巳、三島由紀夫、大江健三郎、安岡章太郎、辻邦生、石川淳、中村真一郎、武田泰淳・百合子、竹内好、丸山真男、渡辺一夫、大岡昇平他。20世紀日本を代表する文学者をユーモラスに、時に感動的に素描する。戦後派屈指の文章の上手さ、描写の確かさ、知的センスに舌を巻くはず。
  • 叫び声
    4.1
    新しい言葉の創造によって"時代"が鼓舞される作品、そういう作品を発表し続けて来た文学者・大江健三郎の20代後半の代表的長篇傑作『叫び声』。現代を生きる孤独な青春の"夢"と"挫折"を鋭く追求し、普遍の"青春の意味"と"青春の幻影"を描いた秀作。
  • さざなみの日記
    4.3
    平凡にひそやかに生きる女たちの心のさざ波……「明るく晴れている海だって始終さざ波はあるもの、それだから海はきらきらと光っている。」――手習いの師匠を営む母と年頃の娘、そのひっそりと平凡な女所帯の哀歓を、洗練された東京言葉の文体で、ユーモアをまじえて描きあげた小説集。明治の文豪・幸田露伴の娘として、父の最晩年の日常を綴った文章で世に出た著者が、一旦の断筆宣言ののち、父の思い出から離れて、初めて本格的に取り組んだ記念碑的作品。
  • さして重要でない一日
    4.5
    未知の空間、会社という迷路を彷徨う主人公。トラブル、時間、おしゃべり、女の子、コピー機。著者独特の上品なユーモアの漂う、なにか、もの哀しくも爽やかな空気の残像。会社員の日常を鮮やかに切り取った、野間文芸新人賞受賞作。サラリーマンの恋と噂と人間関係、奇妙で虚しくて、それでも魅力的な「星の見えない夜」も所収。
  • 数奇伝
    3.0
    著作のほとんどが発禁となったことで知られる叛骨の思想家。思わぬ病で歩行の自由を失い、余命の長からぬことを悟った彼が「生きながらの屍の上に自ら撰せる一種の墓誌」として語る生い立ちは、まさに「数奇」というほかない。幼少期に見た土佐の民権運動、大阪や東京での勉学の日々、作州津山での灼熱の恋と別れ、ジャーナリズムの夜明けと大陸への渡航、従軍、筆禍での下獄……。近代日本人の自叙伝中の白眉。
  • さようなら、ギャングたち
    4.1
    詩人の「わたし」と恋人の「S・B(ソング・ブック)」と猫の「ヘンリー4世」が営む超現実的な愛の生活を独創的な文体で描く。発表時、吉本隆明が「現在までのところポップ文学の最高の作品だと思う。村上春樹があり糸井重里があり、村上龍があり、それ以前には筒井康隆があり栗本薫がありというような優れた達成が無意識に踏まえられてはじめて出てきたものだ」と絶賛した高橋源一郎のデビュー作。
  • 山躁賦
    5.0
    確かなものに思われた日常の続きをふと見失った「私」は、病み上がりのけだるい心と体で、比叡高野等の神社仏閣を巡る旅に出る。信仰でも物見遊山でもない中ぶらりんの気分で未だ冬の山に入った「私」を囲み躁ぐ山棲みのモノ達――。現在過去、生死の境すら模糊と溶け合う異域への幻想行を研ぎ澄まされた感覚で描写。物語や自我からの脱出とともに、古典への傾斜が際立つ古井文学の転換点を刻する連作短篇集。
  • ザボンの花
    値引きあり
    4.5
    家庭や生活のいとおしさ。生活を愛し慈しみ、多くの人の心をつかんだ庄野文学の「家庭小説」の始まりであり、のちに名作『夕べの雲』に発展していく魅力の長篇小説――『ザボンの花』から庄野潤三独特の家庭小説が始まる。これは、著者にとって最初の長篇小説であり、麦畑の中の矢牧家は、彼がまさに創りつつある、新しい家庭であり、生活を愛し育んでいく本質と主張を、完成度の高い文学作品にしあげている。一生のうち、書くべき一番いい時に書かれ、やがて『静物』『夕べの雲』へ続く作品群の起点でもある。
  • 残光のなかで 山田稔作品選
    値引きあり
    3.0
    ゾラを偲ぶ旅で出会った老文学者の孤独な姿を描いた「残光のなかで」、パリの街とそこで勁くつましく暮らす人々をやさしく見つめる「メルシー」「シネマ支配人」等、フランス滞在に材を求めた作品群に、記憶のあわいの中でゆらめく生の光景を追った「糺の森」「リサ伯母さん」等、8篇を収録。ユーモアとペーソスの滲む澄明な文体で、ひそやかで端正な世界を創り出した山田稔の精選作品集。
  • しあわせ/かくてありけり
    値引きあり
    -
    母と別れた父親の“果たせぬ夢”であった慶応幼稚舎に入学。しかし母は芸者屋の主人でありみずから左褄もとっていたので、家業や住所は“秘匿”する習性がついていた。幼時・少年時に住んだ土地を訪ねるに始まり、時代を写し自らの来しかたを凝視して読売文学賞を受賞した表題作と短篇の名品と呼ぶべき「しあわせ」を併録した鏤骨の一冊。
  • 紫苑物語
    4.3
    優美かつ艶やかな文体と、爽やかで強靱きわまる精神。昭和30年代初頭の日本現代文学に鮮烈な光芒を放つ真の意味での現代文学の巨匠・石川淳の中期代表作――華麗な"精神の運動"と想像力の飛翔。芸術選奨受賞作「紫苑物語」及び「八幡縁起」「修羅」を収録。
  • 屍の街・半人間
    値引きあり
    4.5
    真夏の広島の街が、一瞬の閃光で死の街となる。累々たる屍の山。生きのび、河原で野宿する虚脱した人々。僕死にそうです、と言ってそのまま息絶える少年。原爆投下の瞬間と、街と村の直後の惨状を克明に記録して1度は占領軍により発禁となった幻の長篇「屍の街」。後遺症におびえ、狂気と妄想を孕んだ入院記「半人間」。被爆体験を記した大田洋子の“遺書”というべき代表作2篇。
  • 志賀直哉・天皇・中野重治
    値引きあり
    -
    医師として、遅咲きの小説家として、独自の文学世界を築きあげた藤枝静男。平野謙と本多秋五という刺激を与え続けた友人、そして深く傾倒した師・志賀直哉の存在。志賀直哉に関わる作品を中心に名作「志賀直哉・天皇・中野重治」など、藤枝文学の魅力をすくいとった珠玉の随筆選。文学の師に関わる思いと藤枝文学の底流が、ここにある!
  • 詩集「三人」
    -
    反骨の詩人金子光晴と妻・森三千代、息子・森乾が綴った詩を、光晴が手書きで私家製の詩集にまとめあげた、家族愛と戦争への嫌悪に満ちた、貴重な戦中詩集。 戦争よ。/破砕くな。/年月よ。/もつてゆくな。 父とチヤコとボコは/三つの点だ。/この三点を通る/三人は一緒にあそぶ。 (中略)三本の蝋燭の/一つも消やすまい。/からだをもつて互いに/風をまもらふ。(「三点」より)
  • 静かな生活
    3.9
    精神の危機を感じて外国滞在を決意した作家の父に、妻が同行する。残された3人の兄弟妹の日常。脳に障害を持った長男のイーヨーは"ある性的事件"に巻き込まれるが、女子大生の妹の機転でピンチを脱出、心の平穏が甦る。家族の絆とはなんだろうか――。〈妹〉の視点で綴られた「家としての日記」の顛末に、静謐なユーモアが漂う。大江文学の深い祈り。
  • 詩とダダと私と
    値引きあり
    -
    吉行文学の抑えた描写に垣間見える詩情――学生時代、萩原朔太郎に影響を受けての詩作が、その文学的出発となった作家の、生涯変わらぬ本質の現れであった。若き日に書いた詩の数々、苦悩の中で文学を志した戦中戦後の回想、昭和初期文壇で異彩を放った父エイスケの詩篇、恩師が翻訳した「ダダの歴史」をあわせて収録。吉行淳之介の全体像把握に必須のユニークな詩文集。
  • 死の影の下に
    値引きあり
    -
    無意識の記憶の突然の喚起をきっかけとして、主人公の城栄は、静岡県の田舎で伯母に育てられた牧歌的な日々の回想に誘いこまれる。早くも「喪失」の意味を知った少年は、伯母の死後、冒険的実業家の父親と暮らし始め、虚飾に満ちた社交界をつぶさに観察することになる。新しいヨーロッパ文学の方法をみごとに生かした、戦後文学に新たな地平を拓き、戦後文学を代表する、記念碑的長篇ロマン。
  • 死の淵より
    -
    つめたい煉瓦の上に/蔦がのびる/夜の底に/時間が重くつもり/死者の爪がのびる(「死者の爪」)。死と対峙し、死を凝視し、怖れ、反撥し、闘い、絶望の只中で叫ぶ、不屈強靱な作家魂。醜く美しく混沌として、生を結晶させ一瞬に昇華させる。"最後の文士"と謳われた高見順が、食道癌の手術前後病床で記した絶唱63篇。野間文芸賞受賞作。
  • シベリヤ物語
    値引きあり
    4.0
    逃亡兵が闇の中で射殺され横たわる「小さな礼拝堂」。凍てつく酷寒の町に一人出されて道路掃除する「掃除人」。シベリヤの捕虜収容所体験をもつ作家の冷静な眼は、己を凝視し、大仰な言挙げとは無縁の視座から出会った人々、兵士、ロシヤの民衆の生活を淡々と物語る。「舞踏会」「ナスンボ」「勲章」「犬殺し」等11篇により、人間の赤裸に生きる始原の姿を綴る現代戦争文学の名著。
  • 写生の物語
    -
    『万葉集』や『おもろさうし』に特徴的でその後は顧みられなくなった語法、子規や啄木など明治期歌人の試み、また塚本邦雄・岡井隆といった現代前衛歌人の新作、そして俵万智『チョコレート革命』に至るまでの短歌(謡)表現を貫くものは何か? 起源以前と死後を等価とし、表現を緻密に追いつづけることで見えてくる豊穣な世界。
  • 上海
    4.3
    1925年、中国・上海で起きた反日民族運動を背景に、そこに住み、浮遊し彷徨する1人の日本人の苦悩を描く。死を想う日々、ダンスホールの踊子や湯女との接触。中国共産党の女性闘士芳秋蘭との劇的な邂逅と別れ。視覚・心理両面から作中人物を追う斬新な文体により不穏な戦争前夜の国際都市上海の深い息づかいを伝える。昭和初期新感覚派文学を代表する、先駆的都会小説。
  • 上海・ミッシェルの口紅 林京子中国小説集
    値引きあり
    4.0
    戦争の影迫る上海の街で、四人姉妹の3番目の「私」は、中国の風俗と生活の中で、思春期の扉をあけ成長してゆく。鮮烈な記憶をたどる7篇の連作小説「ミッシェルの口紅」と、戦後36年ぶりに中国を再訪した旅行の記「上海」。長崎で被爆して「原爆」の語り部となる決意をした著者が、幼時を過ごしたもう一つの文学の原点=中国。
  • 終着駅
    値引きあり
    4.0
    敗戦直後の焼け跡・東京で、ウニ三という正体不明の男が、どぶにはまって変死。その位牌は、まるで死のバトンの如く引き受けた男たちに、つぎつぎと無造作な死を招き寄せる。絶対的価値が崩壊した後、庶民はいかに生き、いかに死んでいったのか? 独白体、落語体、書簡体など、章ごとに文体を変え、虚無と希望の交錯する時代を活写。『軍旗はためく下に』の戦争テーマを深化した、純度高い傑作。焼け跡闇市に生き、死んだ、無名の人たちへの哀歌! 吉川英治文学賞受賞作品。
  • 少年たちの戦場
    値引きあり
    -
    「私は怖れていたのだ。私などが絶対に踏み込んでは行けない場所を頑なに守っている生徒という他人が怖かったのだ」――敗戦の色濃くなった昭和20年の初め、農村に学童疎開した34名の少年たちの、不安と飢えの日。最もおとなしいはずの生徒の脱走の波紋。没後見つかった引率教師の当時の日記に綴られた、激しく揺れる文字。少年らの裡に生まれる孤独を見据えて描く、鮮烈な秀作。
  • 庄野潤三ノート
    5.0
    小学校、旧制中学、就職先の放送局で庄野潤三の後輩として過ごした阪田寛夫は、いつしか庄野文学最大の理解者となった。習作から刊行当時の最新長篇、そして随筆集までも順に丁寧に読み解くことによってのみ、鮮やかに見えるその豊穣な世界――正確かつ簡潔でありながら深い愛情に溢れる筆致が、読む者を思わず感動へと誘う。類まれな作家論の達成。
  • 書物の解体学
    -
    欧米を代表する文学者思想家に批評の直感で挑んだ画期的作家論集! バタイユ、ブランショ、ジュネ、ロートレアモン、ミシェル・レリス、ヘンリー・ミラー、バシュラール、ヘルダーリン、ユング――現代の世界に多大な影響を与えた欧米の作家・詩人・思想家9人の著作は、翻訳を通じて、どこまで読み解くことが可能なのか。批評家としての経験のみを手がかりに、文字通り縦横無尽に論じた画期的作家論集。
  • ショート・サーキット 佐伯一麦初期作品集
    4.0
    若くして父となったかれは生活のため配電工となった。都市生活者の現実に直面するうち3人の子供の父となり、妻はすでに子供たちのものになってしまった。今日も短絡事故(ショート・サーキット)が起こり、現場にかけつける――。野間文芸新人賞受賞の表題作に、海燕新人文学賞受賞のデビュー作「木を接ぐ」をはじめ、働くということ、生きるということをつきつめた瑞々しい初期作品5篇を収録。
  • 死霊I
    4.2
    晩夏酷暑の或る日、郊外の風癲病院の門をひとりの青年がくぐる。青年の名は三輪与志、当病院の若き精神病医と自己意識の飛躍をめぐって議論になり、真向う対立する。三輪与志の渇し求める<虚体>とは何か。三輪家4兄弟がそれぞれのめざす窮極の<革命>を語る『死霊』の世界。全宇宙における<存在>の秘密を生涯かけて追究した傑作。序曲にあたる1章から3章までを収録。日本文学大賞受賞。
  • 詩礼伝家
    値引きあり
    5.0
    哀惜の想いで描いた恩師・阿藤伯海への鎮魂歌――川端康成とは東大同級で、上田敏令嬢への恋に破れたためか、生涯独身の漢詩人・阿藤伯海。法政教授時代は斎藤磯雄に、太平洋戦争下の昭和16年から19年まで旧制一高教授時代は、著者・清岡を初め、若き三重野日銀総裁、高木中央大学学長らに、多大な影響を与えた、高雅な人格と美意識を生きた文学者。痛切な哀惜の想いで描かれた、清岡卓行の恩師への「鎮魂歌」。
  • 白い人 黄色い人
    3.1
    第2次世界大戦中のドイツ占領下のリヨンで、友人の神学生をナチの拷問にゆだねるサディスティックな青年に託して、西洋思想の原罪的宿命、善と悪の対立を追求した「白い人」(芥川賞)汎神論的風土に生きる日本人にとっての、キリスト教の神の意味を問う「黄色い人」の他、「アデンまで」「学生」を収めた遠藤文学の全てのモチーフを包含する初期作品集。
  • 白い屋形船・ブロンズの首
    値引きあり
    -
    脳溢血で、右半身、下半身不随、言語障害に遭いながら、不撓不屈の文学への執念で歩んだ私小説の大道。読売文学賞「白い屋形船」、川端賞「ブロンズの首」ほか、懐かしく優しい、肉親・知友、そして“ふるさと”の風景。故郷の四万十川のように、人知らずとも、汚れず流れる文学への愛が、それのみが創造した美事な“清流”。
  • 白兎・苦いお茶・無門庵
    値引きあり
    4.0
    敵の戦車に人間爆弾となって廃兵が飛び込む訓練を繰り返す。そんな理不尽きわまる敗けいくさ。夫たちが徴兵され、著者がいみじくも名付けた半後家たちとの置き去りにされた生活。“一年が百年にも感じられる”流謫の生活の中でも、市井に生き続ける“在野”の精神を飄々たる詩魂で支え、正に“人生の歌”を歌った木山捷平、中期・晩年の代表的短篇。
  • 白暗淵
    3.0
    「七十の坂にかかる道すがらの作品群になる。あれもなかなか越すに苦しい坂だった」(著者から読者へ)。爆風に曝された大空襲から高度成長を経て現代へ――個の記憶が、見も知らぬ他者たちをおのずと招き寄せ、白き「暗淵」より重層的な物語空間が立ちあがる。現代文学を最先端で牽引しつづける著者が、直面した作家的危機を越えて到達した連作短篇集。
  • 寝園
    値引きあり
    -
    持ち株の暴落で事業に失敗し破産しかかった青年梶と、その梶を強く慕う奈奈江や、幾組かの男女の"愛"の葛藤。伊豆山中の狩猟の最中に起きた突発的傷害事件への発展。「純文学にして通俗小説」なる"純枠小説"を自ら実践し、恋愛における現代人の"危機意識"を緻密な文体で追った「紋章」「家族会議」等の先駆となった画期的名篇。
  • 新古今の惑星群
    5.0
    正岡子規が称揚した『万葉集』の「写生」から『新古今集』の詩歌理念へ引き戻すことで、戦後日本文化の再建を目指して1975年に書下された『藤原俊成・藤原良経』。新字新仮名で刊行された同書を、塚本邦雄の信念=正字正仮名表記へもどして改題、さらなる深みと凄味を増し、新たな生命を吹き返した。新古今時代を支えた藤原俊成・藤原良経・藤原家隆・俊成卿女・宮内卿・寂蓮・慈円の7人を、渾身の力で論じ尽くした、歴史的名著。
  • 新撰 小倉百人一首
    -
    「沖の石の讃岐以外は悉皆非代表歌、式子と定家とあと二、三人を除けば、他は一切凡作――」。定家の百人一首が「凡作」揃いだとの批判は多い。だがあえて定家と同じ人選で、まったく別の「百人一首」を編んだ強者はいない。本書は前衛歌人・豪腕アンソロジストが放つ、定家への挑戦状である。どちらが秀歌か。読者ひとりひとりの判断を待つ。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。

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  • 新東京文学散歩 上野から麻布まで
    値引きあり
    -
    「文学散歩」という言葉を創案したのは、野田宇太郎である。東京の文人の辿った跡を丹念に歩き尽くしたこの作品――東京は、近代文学史上に名を刻んだほとんどの文学者の私生活の場所でもあった……。近代文学の真実に触れる事、すなわち東京を知ることと考えた著者の、生涯をかけた仕事『新東京文学散歩』は、文学を愛する読者に献げた、文学案内の礎でもある。
  • 新東京文学散歩 漱石・一葉・荷風など
    値引きあり
    -
    東京をこよなく愛し、住んだ文人たち。近代文学の中心・東京は、先の戦争で焦土荒廃の地と化した。野田宇太郎は、消え失せたそこに文学者の影を求め東京を、やがて全国を「文学散歩」し始める。『新東京文学散歩 上野から麻布まで』の後篇を、戦後七十年を機に読者のもとに届けつつ、近代文学の香りと共に、改めて東京文学散歩へ誘う……。
  • 新編 日本の旅あちこち
    -
    木山捷平は、昭和三十年代後半から四十年代前半の彼の晩年ともいえる日々を、日本中を旅する取材執筆に費やした。北海道から九州まで、日本の津々浦々を巡り「新しい紀行文」を書き続け、それは詩や小説にも昇華した。それぞれの土地に、死の陰を刻みながら・・・。初めての北海道旅行での詩「旅吟」から、病床で書かれた最後の詩「オホーツク海の烏」を収録、二九篇厳選。
  • 新編 文学の責任
    値引きあり
    -
    碩学・吉川幸次郎の中国文学の高弟であり、戦後日本文学の思想を根源的に、果敢に継承しようとして早逝した著者。『悲の器』で圧倒的な出発を果たし、『邪宗門』『散華』等々、70年代までの現代日本を代表する文学・思想者、高橋和巳の文壇的出発前を含めた初期の思想を凝集した「志」エッセイ。
  • 新編 物いう小箱
    値引きあり
    4.3
    読むことと、書くことと――生涯をこの2つに凝集し、膨大な資料の渉猟と丹念な読み込みから、世に名高い森史学は生まれた。そのかたわら、資料から離れ、虚実の間に筆を遊ばせるかのような本書収載の珠玉の小品が書かれた。『怪談』を愛してやまなかった著者が、「八雲に聴かせたい」との思いで書き綴った怪異談、中国の説話に想を得た作品など、44篇を収める新編集の増補版。
  • 親和力
    4.0
    富裕な男爵エードゥアルト、エードゥアルトの友人の大尉、エードゥアルトの妻シャルロッテ、シャルロッテの姪のオッティーリエ、この4人の男女の織りなす恋愛図式。それは人倫を越えた、物質が化学反応を示して互いに牽きあう親和力に等しい。夫婦や家族の制度を破り出て人を愛するのも自然の力である。しかし、人間は自覚的な強い意志をもってそれに対抗しようとする。
  • 地唄・三婆 有吉佐和子作品集
    4.5
    伝統芸能に生きる父娘の葛藤と和解を描き、著者の文壇登場作となった「地唄」、ある男の正妻・愛人・実妹の3人の女が繰り広げる壮絶な同居生活と、等しく忍び寄る老いを見据えた「三婆」、田舎の静かな尼寺に若い男女が滞在したことで起こる波風を温かい筆致で描く「美っつい庵主さん」など、5作品を収録。無類の劇的構成力を発揮する著者が、小説の面白さを余すところなく示す精選作品集。
  • 時間
    4.0
    或る日突然変貌し、異常なまでに猛烈に働き出す男。会社を欠勤し自宅の庭の地中深く穴を掘り始める男。企業の枠を越え、生甲斐を見出そうとする男。高度成長時代に抗して、労働とは何かを問い失われてゆく〈生〉の手応を切実に希求する第1創作集。著者の校訂を経て「花を、我等に」「赤い樹木」を加えた新版・6篇。芸術選奨新人賞受賞。
  • 自伝的女流文壇史
    3.0
    少女小説作家として一世を風靡し、若くして文壇にデビューした吉屋信子が描き上げた、「女流文壇」の草分けともいうべき十人の肖像。男性が中心だった近代日本の文壇史において「女流」と一括りにされながら個性豊かに輝いた女性作家たちの魅力を、折に触れての交流の中から余すところなくすくい上げた自伝的エッセイ。章ごとに一人の作家にフォーカスした構成になっていますので、どこからでも読むことができます。
  • 樹影
    値引きあり
    4.0
    被爆地長崎。敗戦後3年目の夏、華僑の女柳慶子と画家麻田晋は出遭った。原爆病に脅かされる2人はいたわり合い、自らの生を確かめるように愛し合い、10数年の苦痛の果てに死んで行った。著者の故郷長崎の、酷く理不尽な痛みを深い怒りと哀惜をこめて強靱に描く。原爆を告発した不朽の名作。野間文芸賞受賞。
  • 殉教・微笑
    値引きあり
    5.0
    キリシタンの女に想いを寄せる賤しい番所の捕方が、狂気めいた一途なその女の俵詰め殉教を物語る「殉教」。小児麻痺児を持つ父親の屈折した心情を伝える「微笑」。ほかに芥川賞受賞作の「アメリカン・スクール」「小銃」「吃音学院」「星」「憂い顔の騎士たち」「城壁」「愛の完結」を収録。寓意性と微妙なユーモアを醸す、小島信夫の代表的初期作品9篇。
  • 女性作家が選ぶ太宰治
    3.6
    「ほとんど奇跡のような成り立ち方をしている」(川上未映子選「古典風」)、「彼自身が、ひとつの作品」(桐野夏生選「思い出」)、「この甘やかさに浸らずにいられない」(松浦理英子選「秋風記」)――七人の女性作家がそれぞれの感性で選ぶ、未だかつてない太宰短篇選集。
  • ジョン・レノン対火星人
    値引きあり
    4.2
    住所はなく、消印は「葛飾」、そして差し出し人の名前は、「すばらしい日本の戦争」……名作『さようなら、ギャングたち』に先立つこと1年、闘争、拘置所体験、その後の失語した肉体労働の10年が沸騰点に達し、本書は生まれた。<言葉・革命・セックス>を描きフットワーク抜群、現代文学を牽引する高橋源一郎のラジカル&リリカルな原質がきらめく幻のデビュー作。
  • 生家へ
    4.0
    生まれ育った生家へ、子どもの頃のままで帰りたい――戦時中、家の下に穴を掘り続けた退役軍人の父が、その後も無器用に居据っていたあの生家へ。世間になじめず、生きていることさえ恥ずかしく思う屈託した男が、生家に呪縛されながら、居場所を求めて放浪した青春の日々を、シュールレアリスム的な夢のイメージを交えながら回想する、連作11篇。虚実織り交ぜた独自の語りで、心弱き庶民の心情に迫った、戦後最後の無頼派の名作
  • 聖耳
    3.0
    眼の手術後、異様に研ぎ澄まされていく感覚の中で、世界が、時空が変貌を遂げていく。現代文学の極北を行く著者の真骨頂を示す連作集。「夜明けまで」「晴れた眼」「白い糸杉」「犬の道」「朝の客」「日や月や」「苺」「初時雨」「年末」「火の手」「知らぬ唄」「聖耳」
  • 成熟と喪失 ―“母”の崩壊―
    4.4
    「成熟」するとは、喪失感の空洞のなかに湧いて来るこの「悪」をひきうけることである(本文より)――「海辺の光景」「抱擁家族」「沈黙」「星と月は天の穴」「夕べの雲」など、戦後日本の小説をとおし、母と子のかかわりを分析。母子密着の日本型文化の中では、「母」の崩壊なしに「成熟」はありえない、と論じ、真の近代思想と日本社会の近代化の実相のずれを指摘した、先駆的評論。
  • 星条旗の聞こえない部屋
    値引きあり
    3.8
    横浜の領事館で暮らす17歳のベン・アイザック。父を捨て、アメリカを捨て、新宿に向かう。1960年代末の街の喧騒を背景に、言葉、文化、制度の差を超え、人間が直接に向き合える場所を求めてさすらう柔らかな精神を描く野間文芸新人賞受賞の連作3篇。「日本人の血を一滴も持たない」アメリカ生まれの著者が、母語を離れ、日本語で書いた鮮烈なデビュー作。
  • 青天有月 エセー
    -
    黄昏と暁闇、反射と点滅など、光を主題としたエセー。「文学」とは光であることを、稀代の表現者が知性と感性を尽くして綴る、珠玉編――黄昏と暁闇、反射と点滅、傷と紐、月と放心、死……モンテーニュ『エセー』にいざなわれ、心をよぎる思いを、筆に随うままに綴った、<光>をめぐる15の変奏。ゴダール、スタンダール、ボードレール、シェイクスピア、吉田健一、西脇順三郎、李白、バルト、アンデルセン……。先人たちのイメージと自らの知性と悟性と感性で、光=言葉が生まれる一瞬を描写した、思索と詩魂の結晶。
  • 清貧の書/屋根裏の椅子
    値引きあり
    4.0
    母と義父とに連れられて幼い頃行商の旅に暮した体験を明るく牧歌的に描き切った短篇「風琴と魚の町」、つましく生活する一組の夫婦の愛情を謳う「清貧の書」、転機を求めてのパリ旅行を素材とした「屋根裏の椅子」、男と女の後姿に、あるが儘の人生を見る客観小説「牡蠣」等。名作『放浪記』を力に、作家はいかに飛躍をとげたか。〈宿命的放浪の作家〉林芙美子の代表的初期短篇7作。
  • 世俗の詩・民衆の歌 池田彌三郎エッセイ選
    値引きあり
    -
    懐かしの童謡、唱歌の世界。歌でたどる都市の風俗――折口信夫の高弟にして、日本芸能研究の重鎮である著者の歌と言葉をめぐる軽妙なエッセイの数々。小学生時代と重なる大正期、その時、口ずさんだ童謡や唱歌を記憶のなかから甦らせ、都市の風俗と言語生活の変遷をたどり、宝塚少女歌劇から戦後の歌謡曲まで、そこに息づく庶民の心を読み解く。軍歌の一方的排斥に異を唱え、歌詞のなかの言葉遣いへの辛辣な評言も著者ならでは。 ◎「文学の歴史の叙述にも、文学作品そのもの、あるいは作者の歴史に対して、読者の歴史が書かれなければならないように、歌の場合にも、それを聴き、習い、歌った、つまり与えられた側の歴史が書かれてもいいと、わたしはかねて思っていた。わたし達のまわりにあるものは、それを制作して与えてきた側の記述が多く、それを聴き、習い、歌った側の記述がほとんどないからである。それには、わたしはかなり不満であった。」<「あとがき」より>
  • せみと蓮の花・昨日の恥 坪田譲治作品集
    値引きあり
    -
    「人間はみな死ぬる。解り切ったことである。然し誰しも直ぐ死ぬるようには考えていない。」(「せみと蓮の花」)ーー老境の童話作家が、過ぎ去った起伏の多い人生と、なつかしい人々への愛憎こもごもを、昔語りにも似た闊達自在さで描いた10篇。幼少期の思い出、肉親との葛藤、師の鈴木三重吉、小川未明のことなど、〈童心の文学〉といわれた譲治の心の陰影が、ユーモアに包まれて独得の味わいを醸し出す。
  • 戦後的思考
    5.0
    1995年、戦後50年目に発表された「敗戦後論」は、単行本刊行後、百を越える批判を左右両翼から浴びた。本書はその反響の醒めぬなか、それらを正面から受け止め、「批判者たちの『息の根』をとめるつもり」で書き始められた。「戦後的思考」とは何か。戦前と戦後はなぜ「つながらない」のか? 今こそ我々に必要な、生きた思想と格闘する画期的論考を、増補改訂を施し、21世紀に再度問う。*解説は収録されていません。
  • 漱石山房の人々
    3.5
    私が漱石山房に出入したのは明治四十年から大正五年先生が亡くなられた時まで、十年間である。その間に私はただの一度も先生に叱られることがなかった。それは私が入門した時の事情から、先生がとくに私の神経をいたわって下さったということもあろうが、とにかく私は一度も先生から叱られたことがなかった。それで私は先生を恐いと思ったことがなかった。神経衰弱でいじけており、この偉い先生の前で畏まってはいたが、恐いと思ったことは一度もなかった。こんな優しい人が世にあろうかと先生の在世中も思いつづけたし、死後の現在でもあんな優しい人には二度と遭えないと信じている。(「世にも優しい人」) 漱石晩年の弟子の眼に映じた師とその家族の姿、先輩たちのふるまい……。文豪の風貌を知るうえの最良の一冊。
  • 測量船
    3.7
    太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。無限のイメージを喚起するわずか二行の詩「雪」他を収録の第1詩集『測量船』。「乳母車」「甃のうへ」「鳥語」「獅子」等、日本古典の詩風と西欧象徴詩風が混然と融合し、魅了する全92篇(「測量船拾遺」を含む)。新詩の可能性を追究する若き詩人・達治が"現代抒情詩"を展開させた画期的詩集。
  • 空吹く風/暗黒天使と小悪魔/愛と憎しみの傷に 田中英光デカダン作品集
    3.0
    太宰治をして「この荒れ果てた竹藪の中にはかぐや姫がいる」と言わしめた「空吹く風」、戦後の混乱の中で春をひさぐ女たちに真実の愛を夢想する「暗黒天使と小悪魔」、運命の女との愛欲の果てに傷害事件に至る顛末を描いた「愛と憎しみの傷に」。共産党の活動など生きる意味への絶望ゆえか女に溺れ、薬と酒で破滅へと突き進んでいく自らの姿を見据え、人間の本性を浮き彫りにする小説集。
  • 橇・豚群
    -
    昭和初期に隆盛したプロレタリア文学運動の潮流の中で、写実的な文章と複眼的想像力による傑作短篇を立て続けに発表して一躍脚光を浴びながらも、肺病による喀血から郷里・小豆島での療養生活を余儀なくされた黒島伝治。官憲の横暴に対する農民の知恵がドラマを生む「豚群」、戦争の悲惨さと裏腹の滑稽な現実を鮮やかに描いた「橇」、「渦巻ける烏の群」など時代を超えた輝きを放つ代表作集。
  • 対談・文学と人生
    値引きあり
    -
    独自の創作理論を打ち立てた、二大巨人による実践的文学論。文学の<現在>はここから始まる――独自の文学世界を打ち立てた二大巨人=小島信夫&森敦による長篇対談。昭和20年代半ばからの知己である二人が、これまでの交遊を振り返りつつ、創作理論の<現在>を縦横に語り合う。悲劇と喜劇、内部と外部、小説におけるモデル問題、夢と幻想、演劇論など、多岐にわたるテーマを通して、二人の文学の根柢に迫る、スリリングでアットホームな試み。幻の未刊長篇対談、待望の文庫化。 ◎小島信夫「この対話は色々の問題をもってきて、互いに論じるというようなものとは大分ちがう。問題も材料も互い自身である。これは息苦しいものであるし、空を切ることもあるので、ときどき散歩をすることもある。ときには、自分自身をダマす必要もある。(略)今月、悲劇、喜劇という言葉が出現して、私は刺戟をうけた。まどろみかけた目がひらいた思いがした。(略)今回のような談話の中での文脈の中でおどり出たのだから、これは生きた言葉である。生きた言葉であるだけに、今後何度も俎上にのぼり、たのしまなければならない。」<「第四回・追記」より>
  • 対談 文学の戦後
    -
    「戦後文学」をどう評価するか? 敗戦後34年を経て、詩誌「荒地」時代からの友人である典型的な戦中派の二人が、社会と文学の動向を縦横に論じ、戦後文学史に新たな視座を提示した、衝撃の対談集――詩誌「荒地」に拠って、戦後現代詩を主導してきた鮎川信夫。詩人として、また文学と思想の新たな理論を展開し、現代をリードしてきた吉本隆明。戦中派の巨人ふたりが、敗戦の衝撃から、身を以て戦後文学史を生きてきた34年を振り返り、社会と文学の動向を鋭く問う。第一次戦後派の限界、江藤淳批判、ソルジェニツィン『収容所群島』の現代史的問題、現代文学の変質など、白熱の議論を交わした対談集。「戦後文学」との別離を告げた記念碑的作品。
  • 台風の眼
    値引きあり
    -
    悪性腫瘍の手術後、作家は最後になるかもしれない小説を書きはじめる。自分が確かに生きていたと思える、記憶に深く刻み込まれた情景をつなぎとめながら。世界というものをふいに感じた4歳の頃の東京・赤坂、小学時代を過ごした植民地・朝鮮の田舎町、京城の中学時代、焼け跡の中の旧制高校、特派員として赴いたソウル、そしてサイゴン。自伝と小説の間を往還するように描かれた、新しい試み。
  • 大陸の細道
    値引きあり
    -
    M農地開発公社嘱託として満州に赴いた木川正介。喘息と神経痛をかかえ、戦争末期の酷寒の中で、友情と酒を味方に人生の闘いをはじめる。庶民生活の中の「小さくて大きな真実」。“日本の親爺”木山捷平が、暖かく、飄逸味溢れる絶妙の語りくちで、満洲での体験を私小説世界に結晶させた。芸術選奨受賞作。
  • 鷹
    値引きあり

    -
    「万人の幸福のために」もっと上等のたばこをつくりたい、そう考えたために国助は専売公社を追われた。ある日、巷の古ぼけた食堂で見知らぬ男に声をかけられ運河のほとりの秘密たばこ工場に雇われる。表題作「鷹」のほか「珊瑚」「鳴神」を収録。透徹する深遠な幻想と独特の文体のリズムに痛烈な世相批判を籠める傑作諷刺小説。
  • 高濱虚子 並に周囲の作者達
    4.0
    文学青年でありながら、家庭の事情でやむを得ず東大医学部へ入学した秋櫻子。在学中に出会った高濱虚子の文章に感銘を受け、自らも作句を始めた秋櫻子は、虚子に師事し、「ホトトギス」の中心的同人になりながらも、やがて虚子の客観写生を旨とした「花鳥諷詠」俳句に反発を感じていく。虚子との出会いと決別までを、山根東洋城、原石鼎、山口誓子、高野素十らとの交流や実作への批評とともに描く、歴史的名著。
  • たった一人の反乱
    3.7
    出向を拒否して通産省をとび出し、民間会社に就職した馬淵英介は、若いモデルと再婚する。殺人の刑期を終えた妻の祖母が同居し始めたことから、新家庭はとめどなく奇妙な方向へ傾き、ついに周囲の登場人物がそれぞれ勝手な「反乱」を企てるに到る。――現代的な都会の風俗を背景に、市民社会と個人の関係を知的ユーモアたっぷりに描いた、現代の名作。谷崎潤一郎賞受賞作。
  • 谷崎潤一郎論
    値引きあり
    -
    『細雪』の刊行、文化勲章受章とまさに谷崎評価の絶頂期、それまで雑誌や新聞の注文に応じて執筆していた著者が、初めて「僕の方から頼んで書かせてもらった」挑戦的評論。武田泰淳は「乱れが無さすぎるほどよく整理された論文」として、その手さばきを有能な外科医の手術に喩え、「病根を知る者の緊張が、彼を徹底的にする」と絶賛した。読み物としても面白い独創的年譜に、補遺を加えた決定版。
  • 谷間/再びルイへ。
    値引きあり
    -
    昭和20年、長崎の兵器工場学徒動員で、被爆。多くの死をくぐり抜け、少女は生き残った。結婚、出産、幼い命を育てるのは、恐怖との闘いであった。20数年後の離婚、それは個の崩壊であり、8月9日の闇なのか。80歳を越えて書いた小説「再びルイへ。」は、著者の歩んだ人生への回答、あるいは到達でもある。川端賞受賞作「三界の家」を含む、心うつ短篇小説集。
  • 旅の話・犬の夢
    -
    若き文学者・江藤淳のほとばしる好奇心、躍動する批評精神。旅先での思索、愛犬との日常――ロンドンでターナーと漱石の内的現実について考え、ドイツで音楽生活の厚みと欧州人の厳格な孤独に触れ、ウィーン国立歌劇場の爛熟と洗練を極めたオペラに酔い、アメリカで世阿弥を読み自己の核心を支えるものを発見し、東京で愛犬ダーキイを傍らに思索を重ね執筆する。著者が20代後半から30代にかけて、横溢する好奇心と旺盛な行動力、躍動する批判精神で綴った、随筆集の名著。
  • たまらん坂 武蔵野短篇集
    2.6
    土地の名が呼びさます昔の幻影。連作短篇集 たまらん坂、おたかの道・・・武蔵野に実在する不思議な土地の名が初老期の男達に垣間見せる青春の残像。時間と空間の交点に人生を映し出す黒井文学の豊かな収穫。
  • 田村俊子
    値引きあり
    3.0
    明治17年、浅草・蔵前に生まれ、昭和20年、上海の路上に死んだ作家・田村俊子。みずからを信ずるままに、奔騰する愛を生き書いた先駆者・田村俊子に、深い愛惜とただならぬ共感を寄せる著者が、故人を知る人を尋ね、俊子の足跡を辿り、知られざる生涯を掘り起こした、決定版評伝。「田村俊子補遺」及び「田村俊子年譜」を付す、瀬戸内晴美の文学的デビュー作。第1回田村俊子賞受賞作品。
  • 男性作家が選ぶ太宰治
    4.0
    「この作品が自分は一番嫌いだ」(奥泉光選「道化の華」)、「不思議な明るさに包まれた怯えの百面相」(堀江敏幸選「富嶽百景」)、「『男性というものの秘密』を知っている作家」(松浦寿輝選「彼は昔の彼ならず」)――七人の男性作家がそれぞれの視点で選ぶ、他に類を見ない太宰短篇選集。
  • 小さな部屋・明日泣く
    4.7
    朽ちかけた貸部屋に我物顔に出入りする猫、鼠、虫たち。いつしか青年は、凄まじい〈部屋〉を自分と同じ細胞をもつ存在と感じ熱愛し始める――没後10年目に発見された色川武大名義の幻の処女作「小さな部屋」、名曲「アイル・クライ・トゥモロウ」そのままの流転の人生を辿る女を陰影深く描く「明日泣く」など12篇。戦後の巷を常に無頼として生きながら、文学への志を性根にすえて書いた色川武大の原質とその変貌を示す精選集。
  • 恥部の思想 現代日本のエッセイ
    値引きあり
    -
    低俗視されていた映画などB級文化の優性の発見――単行本刊行時「恥部を軽蔑するな! 恥部こそ生産的だ!」という挑発的な名コピーで、活字文化信仰を震撼させた快著。映画、演劇、ミュージカル、演歌、浪曲などを低俗と見なす風潮に敢えて抵抗し、溌剌とした批評精神と快適極まる説得力で、「B級文化」を「合法化」した先駆的なエッセイ群。常に既成価値を転倒し、未来性を追求する著者の強靱な力業。
  • 長春五馬路
    値引きあり
    2.3
    ひたすら、淡々と、生きる、長春で。敗戦後、木川正介は、毎日五馬路に出掛ける。知り合いの朝鮮人の配下となり、大道ボロ屋を開業して生きのびている。飄々として掴みどころなく生きながら、強靭な怒りにささえられた庶民の反骨の心情は揺るがない。深い悲しみも恨みもすべて日常の底に沈めて、さりげなく悠然と生きる。想像を絶する圧倒的現実を形象化した木山文学の真骨頂。著者最後の傑作中篇小説。
  • 寵児
    値引きあり
    4.0
    ピアノ教室の講師をする女は、離婚して娘と暮している。娘は受験を口実に伯母の家に下宿して母親から離れようとしている。体調の変化から、ある日女は妊娠を確信する。戸惑う女が男たちとの過去を振返り自立を決意した時、妊娠は想像だと診断され、深い衝撃を受ける。自立する女の孤独な日常と危うい精神の深淵を〈想像妊娠〉を背景に鮮やかに描く傑作長篇小説。女流文学賞受賞作品。
  • 鳥獣戯画/我が人生最悪の時
    3.0
    「凡庸さは金になる。それがいけない。何とかそれを変えてやりたいと思い悩みながら、何世紀もの時間が無駄に過ぎてしまった」――28年間の会社員生活を終え自由の身となった小説家。並外れた美貌を持ちながら結婚に破れた女優。「鳥獣戯画」を今に伝える高山寺を興した高僧明恵。父親になる三十歳の私。恋をする十七歳の私。時を超え、主体を超え、物語は旋回していく。語りの力で何者にもなりえ、何処へでも行くことができる小説の可能性を、極限まで追い求めた谷崎賞作家最大級の野心作「鳥獣戯画」。単行本未収録の傑作短篇「我が人生最悪の時」を併録。自筆年譜付きの決定版。
  • 珍饌会 露伴の食
    -
    博覧強記の文豪が描く、奇奇妙妙の「食」尽くし。露伴とその周辺の好事家たちをモデルに描く抱腹絶倒の戯曲「珍饌会」、河豚を愛した文人たちの漢詩を読み解く「桃花と河豚」、故事来歴から料理法まで網羅した「鱸」など随筆六篇を収録。稀代の碩学・露伴の「食」をめぐる蘊蓄と諧謔を味わう名篇集。南條竹則・編。
  • 月は東に
    値引きあり
    -
    起きてしまった知人の配偶者との「関係」の事実を、男は謝罪し弁明するほどに、ますます窮地に陥ってゆく。露呈する主人公の心の「やましさ」を、作家の眼が凝視する。救いを願う個我の微妙な感情と心理を描いた、意欲的長篇。夏目漱石、志賀直哉らと日本の近代小説が探求し続けてきた、人間の「倫理とエゴ」の重く切実な主題を共有する、『幕が下りてから』に続く著者中期の代表作。
  • つげ義春日記
    4.0
    伝説の漫画家が私生活の苦闘を描いた幻の日記、待望の初文庫化。 昭和50年代、結婚し長男も誕生して一家をかまえた漫画家つげ義春は、寡作ながらも「ねじ式」「紅い花」など評価の高い作品群が次々と文庫化され、人気を博す。生活上の安定こそ得たが、新作の執筆は思うように進まず、将来への不安、育児の苦労、妻の闘病と自身の心身の不調など人生の尽きぬ悩みに向き合う日々を、私小説さながら赤裸々に、真率かつユーモア漂う筆致で描いた日記文学の名篇。解説・松田哲夫。
  • 定家百首 雪月花(抄)
    5.0
    戦後、リアリズム至上の伝統歌壇に激震を起した前衛歌人の中でも歌と評論両輪の異才で光芒を放つカリスマ塚本邦雄。非在の境に虚の美を幻視する塚本は自らの詩的血脈を遡行、心灼かれた唯一の存在として宿敵・藤原定家を見出す。選び抜いた秀歌100首に逐語訳を排した散文詞と評釈を対置、言葉を刃に真剣勝負を挑む「定家百首」に加え、『雪月花』から藤原良経の項を抄録。塚本邦雄の真髄を表す2評論。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。
  • 手の変幻
    値引きあり
    -
    絵画映像など全ゆる手の変幻清岡卓行の想像の冒険――ミロのヴィーナスがあのように魅惑的なのは、彼女が、その両腕を故郷であるギリシアの海か陸のどこか、いわば生ぐさい秘密の場所にうまく忘れてきたからだ。絵画・映像・音楽その他のあらゆる「手」の変幻を捉え、美や真実の思いがけない秘密の瞬間を析出した、清岡卓行の鮮やかな詩的想像力。エッセイ文学の名品。

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