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“ゴット(神)ハルト(硬い)は、わたしという粘膜に炎症を起こさせた”ヨーロッパの中央に横たわる巨大な山塊ゴットハルト。暗く長いトンネルの旅を“聖人のお腹”を通り抜ける陶酔と感じる「わたし」の微妙な身体感覚を詩的メタファーを秘めた文体で描く表題作他2篇。日独両言語で創作する著者は、国・文明・性など既成の領域を軽々と越境、変幻する言葉のマジックが奔放な詩的イメージを紡ぎ出す。
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Posted by ブクログ
面白かった!! 独特の言葉の使い方ゆえか、鮮烈なイメージは湧くけど掴みきれない感じが良い。 三作品とも甲乙つけがたいなー。 他の作品も読んでみたい!強くそう思える作家に久々出会った感じ。
多和田葉子さんをちゃんと読んだのは初めてです。 「無精卵」が、言葉は驚くほど滑らかでここち良いのに出てくる人物がみんな不思議でアクが強くて、穏やかに流れる底に蟠っているヒリヒリする感じが何とも言えず魅力的だった。 なんかそんな気がしたんだけど、書き出しがああだし、やっぱりそうだったの?という。でもそ...続きを読むうじゃなくてもいいや。
感情ではなく身体で知覚していく登場人物。 心という概念が誕生する以前の人間は、おそらくこれほどまでに繊細な肉体を持ち合わせていたのだろうと思いを馳せる。 出逢ったことがない光景の描写なのに、どうしてこれほどまでに脳内で鮮明に再生されるのだろう。 表題作は、特にそういった表現もないのに、少し霧がか...続きを読むった情景がずっと浮かんでいた。 ドイツ語で綴った自分の作品を初めて翻訳してみた作品でもあるという。 翻訳、とは、表題作同様、長いトンネルの先に現れる景色と向き合うことだとのこと。
作家の川上未映子が、小説を書く感覚を掴むために「ゴットハルト鉄道」を写したというのを読んだのがきっかけで手にとった。 「ゴットハルト鉄道」は紀行文のようで、でも、所々に作者の鋭い感覚が伺える表現がある。それが小説であることを表している。 一番好きなのは「無精卵」どこの国の話なのか分からないし、他にも...続きを読む謎が多い。なのに、生々しさがすごい。「隅田川の皺男」でも感じたけど、女の生々しい臭いを感じる。 女というと、花とか石けんの良い匂いのする存在であるかのように表現されることがわりとある。けれど、人間も動物であると気づかされる。作中の女からは獣のような臭いがする。 謎めいた部分が気になって、一気に読んでしまった。
どれも濃密な雰囲気の短編集。ストーリーはグロテスクでさえあるのに言葉選びが美しく、独特の世界に引き込まれるように読んだ。
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多和田葉子
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